< 2024年05月 >
S M T W T F S
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
オーナーへメッセージ

2024年01月05日

2023年12月の記録

2023年の総括文をそろそろ考えなければと思い、
2022年の総括を読み返して腰を抜かしそうになった。
『月に1冊でいいから、古典、智の源と称される本に取り組むことを目標に』、
なんて3月の時点で忘れ果てている。
とりあえずショーペンハウアーで締めてみた。
忘却は加速度的に早まっている。


<今月のデータ>
購入12冊、購入費用8,844円。
読了15冊。
積読本320冊(うちKindle本157冊)。


ブック

読書について (光文社古典新訳文庫)読書について (光文社古典新訳文庫)感想
10年積んでいた。難解やろなあ、自省を迫られるんやろなと尻込みしていたからで、彼が19世紀のドイツ人であることも知らなかったのだ。さて、主著の注釈として書かれた論集の一部である。切れ味良くも深い類の文章で、わかりやすい。自分が誤りとする対象に対して手厳しい。というより最早罵っている。19世紀半ば、当地では通俗的で底の浅い娯楽本などが流行しており、真に良いものが廃れることを危惧していたと解説にある。今の日本でもありそうな現象を、「ドイツ人という国民はまったく」の調子で批判するあたりも面白い。多読の戒め。
読了日:12月29日 著者:アルトゥール ショーペンハウアー ファイル

君が戦争を欲しないならば (岩波ブックレット)君が戦争を欲しないならば (岩波ブックレット)感想
岡山県での講演から。高畑さんは9歳の時、岡山の大空襲に遭っていた。その体験が明瞭な表現で語られる。焼夷弾の落ちかたや焼けかたは「火垂るの墓」に正確に描かれた。しかし体験を語ってはこなかった。それは、自分たちが受けた悲惨な体験を語っても、これから突入していくかもしれない戦争を防止することにはならないから、と言う意味は深い。空襲が即ち一般人に対する無差別攻撃であることは、今のガザを見れば疑いない。だからと被害を強調するのではなく、平和を保つ努力、戦争をしない努力をひたすら続けるほうが、戦争を遠ざける道なのだ。
読了日:12月27日 著者:高畑 勲 ファイル

夜明け前(が一番暗い)夜明け前(が一番暗い)感想
ひとつひとつ忘れている訳ではないが、この4年間に国政がしでかした数多の愚策失策奸策を一挙に並べると、奈落に臨む崖の縁が風化して大きく欠け落ちていくような寒々しい気分になった。しかし表題は「夜明け前(が一番暗い)」だ。今は暗くとも、ここから明るくなるのだよというニュアンスがある。長く生きれば「たいへんな時代」が前にもあったことを覚えているから絶望的にはならないのだと内田先生は言う。『歴史はそこそこ合理的に推移している』という経験が私には無い。だから個人レベルでくらいは親切な人であろうと思うのかもしれない。
読了日:12月26日 著者:内田 樹 ファイル

根に帰る落葉は根に帰る落葉は感想
根に帰る落ち葉。南木さんは私の親の同世代だ。自身の人生の終いを意識した文章が多くなった。それでも私の行く先を照らしてくれる言葉は健在で、人間のからだというものは揺れるものだと、死に向けて絶え間なく老いていくもの、しかしつよいものだと教えてくれる。『記憶をおのれに都合よく改編しつつしたたかに生きのびている』。意に沿わない記憶の改ざんもまた、生き抜くためのスキルと受け入れていい。夫婦での登山の文章にある『人間ドックの検査結果説明では禁煙と歩くことの大切さ以外に、受診者に伝えることはほとんどない』も肝に銘ずる。
沁みた一文。『東京へ、東北へと帰る友の乗るタクシーを見送った夜空に膨らんだ月が重なって出ていた。あえて酔眼を凝らす必要もないので、二つの月をそのままにし、冷えた夜気を胸が痛くなるまで深く吸ってため息をつき、とりあえず今生きて在る事実を確認してみた』。
読了日:12月25日 著者:南木 佳士

森の力 植物生態学者の理論と実践 (講談社現代新書)森の力 植物生態学者の理論と実践 (講談社現代新書)感想
日本の本来の森(原植生)は現代の日本にほとんど残っておらず、あとは全て人間が改変したもの(現存植生)だという。少なくとも広葉樹林は、本物の森だと私は思っていたが、自然な森ではないと知った。著者は何十年も各地の現地植生調査を行ない、もともと生育していた土地本来の木(潜在自然植生)を突き止め、その苗を多層になるよう、また競争原理が働く形で密植することによって、「人間が管理せずとも維持できる森」を早く生育させる方式を編み出した。長期の観察から導かれる論理は強い。とりあえず神社の鎮守の森を見に行こう。それが本物。
読了日:12月23日 著者:宮脇 昭 ファイル

新ドリトル先生物語 ドリトル先生ガラパゴスを救う新ドリトル先生物語 ドリトル先生ガラパゴスを救う感想
愛だなあ。福岡センセが好きなものをいっぱいに詰め込んだ物語。ドリトル先生とスタビンズ君たち、センスオブワンダーの数々、フェルメールとレーウェンフック、それに念願のガラパゴス諸島でのエピソードももちろんてんこ盛りだ。伝説のナチュラリスト、ダーウィンさんも出てきちゃうもんね。自然の不思議もいくつも出てきているので、興味を持って自然科学を志す子供がここから現れたら素敵だな。ガラパゴス諸島での活動はごく一部だけど、そこまでが大冒険だったし、その後もアッと驚く大冒険。ゾウガメを撫でたら10ペソのところが好き。
読了日:12月22日 著者:福岡伸一

忘れる読書 (PHP新書)忘れる読書 (PHP新書)感想
『むしろ忘れるために本を読んでいます』なんて格好いい。でもそれは、若い頃からそういう素地を養えたから。この人はほんとうに頭が良いのだと感じる一方、この人の本はこれ以上読まないでおこうと決める。この卓抜した頭脳が深く潜ろうとしているのは、イメージはできるが、私が全く関心を持てない方向だ。六本木から通学だったのか。それを読む時間に充てられたのはすごい。私なら寝る。ペデ沿いの古書店街で漁った、パラフィン紙に包まれた岩波文庫を思い出す。若造には理解できなかったものを、今ならきっと感じ取れる。読み返したくなった。
読了日:12月21日 著者:落合 陽一 ファイル

池上彰の世界の見方 インド: 混沌と発展のはざまで池上彰の世界の見方 インド: 混沌と発展のはざまで感想
無駄にため込んだ断片的な知識を系統立てる、また増強するために。中学校での授業がベースだけあって平易でわかりやすい。宗教、識字率、人口分布を数字で見ることや、生活システムとしてのカースト制、ジャーティへの近代化の影響など、理解が深まる。差別や格差など課題が多い一方で、その多様さ、豊かさゆえの凄まじいエネルギーには期待せずにいられない。仏教はインドでは衰退しているが、日本の一部宗派のお経の詠唱には、インド映画で聴く音楽の節回しに似たものを感じるときがあって、ヒンドゥー教も多神教だし、勝手につながりを感じる。
イギリスはインドとパキスタンの間のみならず、インドと中国の間にも勝手に国境線を引いたのか。パレスチナ/イスラエルといい、なんと罪つくりな。近頃はアフリカからフランス軍が叩き出されているようで、こういう禍根を乗り越えながら、新しい和解が生まれるのだと信じたい。
理解が深まったメモ。「バジュランギおじさんと、小さな迷子」の、印パ問題の根深さ。「きっとうまくいく」の、IITのエリートさと厳しさ。「あなたの名前を呼べたなら」の、寡婦差別。「パドマーワト」の、ジャーハルの理不尽さ。もう一度映画を観直したくなる。そういえば「響け!情熱のムリダンガム」も確か、ジャーティが深くかかわったテーマだったはず。観たいなあ。そういえば池上さんは無いと言い切っていたけれど、映画カーストはあります。新しいカーストは生まれうるということか…。
読了日:12月20日 著者:池上 彰 ファイル

巡礼の家巡礼の家感想
道後湯之町、道後温泉。先日泊まった旅館のそこここに、この小説が置いてあった。天童さんが高校時代まで暮らしただけでなく、その後今に至るまで交流を続けているからと知った。呑みながら読んでいたので、この世界はなんて残酷なんだろうと涙が止まらなくなった。事故も自然災害も民族紛争も、容赦なく大切な者を奪っていく。その傷んだ心が癒えるには、時間だけじゃ足りないのだ。人間同士の温かい気持ち、それが最高の手当てだ。身体も心も癒える場所としての道後。ユートピアのような遍路宿"さぎのや"に、天童さんの理想と願いをみる。
読了日:12月16日 著者:天童 荒太 ファイル

世界で一番美しい人体図鑑世界で一番美しい人体図鑑感想
テレビで紹介されていて気になった図鑑。絵の精緻さ、人体の組織の精巧さが相まって溜息がこぼれる。スケルトンシートで重ねている部分が見どころで、表にめくったり裏にめくったり戻ったりと眺めて楽しい。各部位の名称や機能は、ビジュアルを損なわないようにかそれほど細かく書き込まれていない。そもそも、自分の身体に不調があるとき、それがどのあたりなのか見当をつけるために自宅に備えつけておくつもりだった。今朝は骨盤の内側に違和感があって、図鑑によると小腸から大腸につながるあたり。これはあれだなと、マッサージしておきました。
読了日:12月14日 著者:

任せるコツ任せるコツ感想
「正しい丸投げ」の方法論。使っている言葉は易しいが、実は深く、真面目なリーダーシップ論、マネジメント論として、わかりやすくて良かった。望まず中間管理職になった社員の目に触れるよう置いておこうと買い、読み出したら自分がひりひりする羽目になった。社員に仕事を任せるノウハウもそうだけど『育成の最終ゴールは、自分が不要になること』。あの人仕事してないんじゃね?と思われるような人にならないと実はぜんぜん安泰じゃない。未来工業の創業者は「社員には"餅"を与える」と言った。任せることも、"餅"のひとつなのだと思った。
読了日:12月13日 著者:山本 渉

ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」感想
毎日新聞の連載、加筆修正。人間がゴリラやチンパンジー、サルとの共通祖先と分かれて700万年。その間にそれぞれ営みや集団のありかたを発達させてきた。彼らに関する知見をもって山極さんが見た人間社会の特性は、結論はごく良識的なものながら、切り口で新鮮に感じる。脳の大きさと、集団の平均サイズは相関する。人間の脳は格段に大きくなった。そこから導かれる適正な社会的集団の大きさは150人。深いやりとりをしながら維持できる共鳴集団では10~15人。これをより大人数で運営・管理しようとするから、無理や歪み、格差が出る訳だ。
読了日:12月12日 著者:山極 寿一 ファイル

シャンタラム(上) (新潮文庫)シャンタラム(上) (新潮文庫)感想
夢中。オーヴァーアンダーパンツとかベアハグとか文化摩擦が面白過ぎる。なかでもインド映画でよく見る首振り×笑顔についての考察が大好きだ。自分でやってみると、肩から上の力を抜かないとできないのがわかる。スラムの人口密度は、他の国の都市とはけた違いに高い。欧米人をこの密度に詰め込んだら絶対やってゆけないという主旨の台詞がある。そうならない対人スキルや利他のシステムやがインド人にはあるのだ。ノワールな人生、なのに温かく笑顔に満ちて愛おしい。稚いタリク登場。この素敵なスラムの生活はまだ続いてくれるだろうか。中巻へ。養老先生が面白いと公言されていた小説。インドのスラムが舞台なのが珍しいだけではない。文化の違いに困惑したり、交流を楽しんでいるだけでもない。生まれや立場や来し方の違う人々が互いを受け入れる、理解し合う、愛おしい営みが描かれている。どういう経歴の人が書いているのだろうと奥付を見ると、ほとんど物語と一緒じゃん! どういうこと、これって実話なの?
読了日:12月09日 著者:グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ

笑いのある世界に生まれたということ (講談社+α新書)笑いのある世界に生まれたということ (講談社+α新書)感想
兼近はなんか好きだ。中野信子も好きだ。二人のガチンコ対談は、とても面白かった。中野先生と生徒兼近。兼近先生と生徒中野。遠慮なしで釣り合って見えるのは絶妙だ。同時に、二人が慎重に狙い定めた戦略に、完全に自分がはめられていると気づいて笑ってしまう。笑う行為は人類が生き延びるために手に入れた特性、生来持っているHappy Pillsであり、人間社会を円滑にするための高度な技術でもある。その深遠を、彼は探っているのだな。それぞれのあとがきのちぐはぐ感がまた意外で、興味深い。同じ時代を生きる者として愛おしく思う。
読了日:12月06日 著者:中野 信子,兼近 大樹 ファイル

帝国の亡霊、そして殺人 (ハヤカワ・ミステリ)帝国の亡霊、そして殺人 (ハヤカワ・ミステリ)感想
インド気分を味わうのにちょうどよいミステリ。イギリスからの独立、さらにパキスタン分離独立後のインドは、イギリスの失策ゆえに禍根を残し、恰好の不穏な舞台になる。著者はパキスタン出身の両親を持つイギリス人。インドは支配構造、身分、宗教、性別格差と複合的な社会なので、何からでも動機や障壁にできる。顔立ちが良いと設定されるキャラが多く、ラーム・チャラン、SRKなど脳内設定が忙しい。インドらしい小ネタは満載で楽しいけれど、ゾロアスター教徒設定の主人公といい、西洋的すぎるのが気になる。しゅっとしすぎているのが欠点。
読了日:12月04日 著者:ヴァシーム・カーン ファイル


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。


同じカテゴリー(読書)の記事画像
2024年2月の記録
2023年の総括
2023年6月の記録
2023年3月の記録
2023年1月の記録
2022年の総括
同じカテゴリー(読書)の記事
 2024年3月の記録 (2024-04-01 15:28)
 2024年2月の記録 (2024-03-01 10:25)
 2024年1月の記録 (2024-02-01 13:09)
 2023年の総括 (2024-01-05 15:42)
 2023年11月の記録 (2023-12-05 10:35)
 2023年10月の記録 (2023-11-01 15:31)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
2023年12月の記録
    コメント(0)