< 2025年06月 >
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
オーナーへメッセージ

2025年01月07日

2024年の総括

積読の棚のいま



2024年、読んだ本の冊数は160冊。
購入費用199,167円。
積読本335冊(うちKindle本157冊)。

積読本はすべて見えるように並べるべし。という方針のもと、年末に夢中で並べなおした。
積読本とは希望。
未知の世界への扉であり、なにかあっても読むべきものがあるという保証。
努めて読みつつ、素敵な出会いとの期待を常に持ちたい。

2025年も良い本に出会えますように。


ブック

2024年、私の心に留まった本たち。

<多様性を失うことへの恐れ>

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた (河出文庫 ア 11-1) あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた (河出文庫 ア 11-1)
 アランナ・コリン


捕食者なき世界 (文春文庫 S 12-1) 捕食者なき世界 (文春文庫 S 12-1)
 ウィリアム ソウルゼンバーグ


これが見納め: 絶滅危惧の生きものたちに会いに行く (河出文庫) これが見納め: 絶滅危惧の生きものたちに会いに行く (河出文庫)
 ダグラス・アダムス,マーク・カーワディン,リチャード・ドーキンス


世界の終わりを先延ばしするためのアイディア 人新世という大惨事の中で (単行本) 世界の終わりを先延ばしするためのアイディア 人新世という大惨事の中で (単行本)
 アイウトン・クレナッキ


タネが危ない タネが危ない
 野口 勲



<とことんインド>

シャンタラム(中) (新潮文庫)シャンタラム(下) (新潮文庫) シャンタラム (新潮文庫)
 グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ


ラーマーヤナ―インド古典物語 (上) (レグルス文庫 (1))ラーマーヤナ―インド古典物語 (下) (レグルス文庫 (2)) ラーマーヤナ―インド古典物語 (レグルス文庫)
 河田 清史


デオナール アジア最大最古のごみ山――くず拾いたちの愛と哀しみの物語 デオナール アジア最大最古のごみ山――くず拾いたちの愛と哀しみの物語
 ソーミャ ロイ


インド文化入門 (ちくま学芸文庫) インド文化入門 (ちくま学芸文庫)
 辛島 昇



<知の巨人に圧倒される>

日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書 2566) 日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書 2566)
 松岡 正剛


生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫) 生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫) >
 宮本 常一



<人ってやつは>

空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 (ヤマケイ文庫) 空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 (ヤマケイ文庫)
 ジョン・クラカワー


いま見てはいけない (デュ・モーリア傑作集) (創元推理文庫) いま見てはいけない (デュ・モーリア傑作集) (創元推理文庫)
 ダフネ・デュ・モーリア


多様性の科学 多様性の科学
 マシュー・サイド


気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか? 気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?
 スティーブン・E・クーニン


不合理だからうまくいく: 行動経済学で「人を動かす」 (ハヤカワ文庫 NF 405) 不合理だからうまくいく: 行動経済学で「人を動かす」 (ハヤカワ文庫 NF 405)
 ダン・アリエリー

  

Posted by nekoneko at 16:59Comments(0)読書

2025年01月07日

2024年12月の記録

年末年始にスマホやテレビ画面を凝視しすぎるのか、
目が痛い。頭も痛くて病気ではないかと疑う。
発光する画面を見る時間を減らさなければ。

<今月のデータ>
購入11冊、購入費用8,973円。
読了15冊。
積読本335冊(うちKindle本157冊)。


ブック

積ん読の本積ん読の本感想
一日に1冊読んだとしても一年で読めるのは365冊。やばい。もう間近だ。危機感に反して、乱雑に、また整然と積まれた本の写真に見とれてしまう。ここで取材されている方々は総じて積読本という存在にポジティブだ。積読している本があるのは毎日ご飯を食べているのと同じ、ごく自然なこと。読んだ本と一緒に読んでいない本もある家のほうが、未知の世界に自分が開かれている。などなど、金言の宝庫だ。私の、一瞬でも自分の意思で読みたいと思い、お金を払うと決めた本たち。全部の積読本の背中が見えるように並べ直して、今年の締めとします。
読了日:12月29日 著者:石井千湖

一枝の桜: 日本人とはなにか (中公文庫 オ 2-1)一枝の桜: 日本人とはなにか (中公文庫 オ 2-1)感想
ロシア人記者の地元文芸誌連載。時代は先の大阪万博直前。高度成長期の、すさまじい速度で国土を破壊し伝統を捨て去る日本を活写している。読めば読むほど奇々怪々な日本人の相反した性質、対して驚きと魅力に溢れる自然や文化。古今、日本に惹かれた数多の外国人が、それぞれの目的のために日本の姿を著してきた、その労力と情熱に改めて心打たれる。自然の美しさの値打ちを知っていながら、それを自ら損なう行動を取る日本人の矛盾は多くが指摘するところだ。これは私も謎に思っている。美しさでは腹は膨れないと考える即物主義なのだろうか。
読了日:12月25日 著者:フセワロード オフチンニコフ ファイル

きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」【読者が選ぶビジネス書グランプリ2024 総合グランプリ「第1位」受賞作】きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」【読者が選ぶビジネス書グランプリ2024 総合グランプリ「第1位」受賞作】感想
うまくできている。お金とは何かを「お金の向こう研究所」での物語に乗っけて導いてゆく。サクマドルや水たまりの例えがわかりやすい。経済、外国取引、投資、税金、贈与…各章のまとめだけ拾い読んでも何のこっちゃわからないだろう。お金を増やすこと自体を目的にすると、ただの奪い合いになる。貯めることではなく造ることでしか解決できない。特に今の社会で何が問題であるか、視点の置きかたが白眉で、結論だけ聞いたら「この偽善者め」と鼻白みそうな考えかたも、うっかり騙されておきたいような気分になる。会社の本棚に面陳しておいた。
読了日:12月24日 著者:田内 学

社会保険労務士の世界がよくわかる本社会保険労務士の世界がよくわかる本感想
社労士ノウハウ本。自分で資格取っても法改正や環境変化に継続的にキャッチアップするのはハードルが高い。かといって顧問契約が必要かと迷っていた。当たり前だが起業社労士側からの視点が予想以上に面白かった。『日々の労務相談に対応していくことのみで、顧問先企業の未来がよりよくなることはない』。確かに日々の手続きは多くなくとも、社労士の真価は社員育成や制度の整備・最適化など、いわゆるコンサルの部分であると分析している。簡便なクラウドアプリも生成AIもできない付加価値。なるほど斜陽と揶揄される士業だが、これはあるわ。
読了日:12月24日 著者:大津 章敬,林 由希,中村 秀和,出口 裕美,安中 繁,下田直人 ファイル

開高健名言辞典<漂えど沈まず>: 巨匠が愛した名句・警句・冗句200選開高健名言辞典<漂えど沈まず>: 巨匠が愛した名句・警句・冗句200選感想
開高健のキレッキレの名言を堪能して元本を読む、という流れを期待して読み始めた本だったが、なんか違った。アナログで言葉を拾い集めたという著者の開高健読み込み度は凄い。しかしそれに対して打てば響くレベルで読み手が反応できないと、いや、少なくともその"名言"が書かれた背景をぼんやりとでも思い浮かべられないと、文章の一部であるところのそれはただの言葉でしかないのだ。あと、釣りネタと下ネタ多いからね、余計に文脈の中でないと引くよね。とりあえず「珠玉」を読み直すか、大量に電子化されているエッセイを読むかな。馬馬虎虎。
読了日:12月23日 著者:滝田 誠一郎 ファイル

わたしの農継ぎわたしの農継ぎ感想
これからの日本は大変動と試行錯誤の時代。本人がそれでいいと思うんならなんでもやればいいのだと思う。周りに迷惑をかけない限りは。農のかたちはいろいろある、とわかる。慣行農業、有機、不耕起、自然農法、どれが正しいってものではない。ただ、農家が野菜を育てて採算をとるために今の農法が確立されている現実の尊重と、農家の人が知っていることを何も知らない、お気楽な「真剣な遊び」は別物との自覚を持っておきたい。あと、例えば信州と四国では風土が違う。同じように無農薬や自然農法ができるわけではない、かもしれないと覚えておく。
読了日:12月22日 著者:高橋久美子

タネが危ないタネが危ない感想
野菜のタネは本来、一粒一粒が多様な性質を持つもの。従来と違う環境でも、植えれば気候風土に適応していく力を持つ。日本人がいかに野菜から自家採種し、風土に合うような優れたタネを選抜し固定化してきたかを知ると、タネも驚異だが日本人の根気強さも驚異だ。F1は経済効率性を優先した欠陥種。どうせ家庭菜園をやるなら、固定種の野菜をタネから無農薬×自家堆肥で育ててみたいと思うのは自然だろう。失敗したとしても、私が今から始めればあと20回はタネ取りできる計算だから、どこかの時点で我が家だけのたくましい野菜が完成するはずだ。
F1(一代雑種)野菜は、農家が短期単一栽培しやすく、小売業が大量均一販売しやすくするためにつくられた。伝統野菜・地方野菜っぽい名前がついていても販売側のブランド化したい思惑なだけで、美味しさは目指していない。家庭菜園用に販売しているタネもチェーン店のはF1。F1でない野菜やタネをどこで探せばいいかよくわかった。日々生きていくためにスーパーの野菜もなくてはならないし買う。だけど、できる範囲で、そうじゃない食卓と生活を目指してみる。それにしてもF1、遺伝子組換、放射線育種と人は天に唾する行為を思いつくものだ。
在来種やら固定種やら古来種やらいろいろな呼びかたをするタネの違いを理解したくて。著者は野口種苗研究所の主、三代目。『家庭菜園を楽しむということは、スーパーで売っているような見ばえの良い野菜を、ただ家計の足しに作ることではなく、野菜本来の味を楽しみながら自家採種すれば、野菜の進化の手助けをし、地方野菜を育んで地域おこしの一助にもなる。そんな人が増え、新しい地方野菜が各地に再び生まれる。そんな日がやがて来ることを、毎日夢見ている。』
読了日:12月18日 著者:野口 勲 ファイル

天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4)天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4)感想
素敵な邦題に惹かれて。古いSFを読むとままあることだが、この小説が書かれた時から思い描く未来が、今の私にとって過去という事実は、なんとも郷愁を呼ぶ。あんなふうだと作者は想像したのだろう。想像された過去、そうはならなかった今。私は“星屑”ではないんだけれど、“星屑”の情熱遺伝子は今も昔も変わらず受け継がれ続けて、それはそうはならなかった今を圧倒して余りあった。エレン。政治家とも対等に渡り合い、自ら望んだように振る舞う姿は古臭くないどころか、格好よさが時代を超越していた。配役はレベッカ・ファーガソンを。
読了日:12月18日 著者:フレドリック・ブラウン

蜜蜂蜜蜂感想
2045年、地球のミツバチは絶滅した。それを挟んだ3つの時代、3つの家族。父と母と子供、妻と夫のやりとりはいつの時代でも相似形を描き、3つの家族のエピソードはパラレルに、しかしミツバチの群れがシンクロした動きを見せるように、浮揚し、軋み、降下し、捻じれ、それぞれの結末へ向かう。いつだって誰かの思うようにはならない世界。人もミツバチも。ブンブン舞って生き延びようとしているだけなんだよな。ノルウェーの作家。アメリカと中国の配置が興味深い。ミツバチ養いたい。あ、逆だ。ミツバチに人間が養われる今が続きますように。
読了日:12月17日 著者:マヤ・ルンデ ファイル

ちゃぶ台6 特集:非常時代を明るく生きる (生活者のための総合雑誌)ちゃぶ台6 特集:非常時代を明るく生きる (生活者のための総合雑誌)感想
安定のちゃぶ台。どうしてこんなにほっとするのか思い返してみる。「経済合理性」の否定!みたいな激しい語調ではなく、これってなんかおかしいよね、だから私はこれを選ぶよ、という個々人の感覚がすくい上げられているから、かな。そしてそれを好ましく感じるから。この号は新型コロナ初期の頃だったので、社会の歪みがいろいろ露わになった時期でもあった。それが落ち着いたら今度は物価上昇に振り回されていて、それでもあの頃感じ取った大事なことは手放してはならないと思う。100円より200円の大根。もうそんな値段じゃ買えないけどね、
読了日:12月16日 著者:

ブート・バザールの少年探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ブート・バザールの少年探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
どんでん返しは起きずに落着してしまって呆気にとられた。大都市のスラム、居留区に住む貧しい人々。主人公は9歳、目から鼻に抜ける利発さもないのに、近所の子供が姿を消す事件に的外れに探偵ぶってはあしらわれる男の子。その健気さより、いたたまれなさのほうが強いかな。差別、貧困、格差と大人も子供も理不尽を感じながら生きている日常の描写が長く、遅々として進まない。終盤、デオナールのようなごみ集積所を、子供たちを探して歩く親たちの悲しみと怒りが堰を切って暴走する。それでもうやむやになって何も解決しないのがインドらしい。
読了日:12月12日 著者:ディーパ・アーナパーラ ファイル

多様性の科学多様性の科学感想
多様性という言葉は日本でも市民権を得たが、浸透はまだ難しそうだ。会議の場面。参加者の同一性が高いほど話し合いは滑らかで、結論に自信が生まれる。他方、参加者の多様性が高いと反対意見が多く結論はまとまりにくく、自信を持てない結果になる。だからつい同質性の高いグループで出た結論に満足してしまうが、それでは集団の視野が狭く、潜在的固定観念を強化する結果にしかならず、生産性は低くなる。体感と成果が相反する点が重要だ。そこを押して多様性を高めるには人口統計学的多様性/認知的多様性ともに強い意志で取り入れる必要がある。
ヒエラルキー組織は下位メンバーの発言力を弱める。そうでなくても日本人、集団に慣れると違和感を忘れがちだし、無意識に融和的な言葉を選ぶようにもなる。せめてフラットな組織を心掛けるべきだ。あと『標準化を疑う眼』は忘れてはならない。決まりを押しつけたほうが管理は楽だが、最大限、それぞれ独自の環境をつくる権限を与えたほうがメンバーのモチベーションは上がり、総じて生産性は向上する。ほんとうにその決まりは必要か疑う習慣を維持したい。多様性ある集団を評価できる人事評価メソッドは可能か? 課題として覚えておく。
『本書を執筆しようと思ったのは、その多様性がたんに民族的・文化的な問題にとどまらず、ビジネスから政治、歴史学から進化生物学にまで関わる問題だと気づいたのがきっかけだった』。『画一的な集団が抱えるもっとも根深い問題は、情報やデータを的確に理解できないとか、間違った答えを出すとか、与えられたチャンスを十分に活かせないとかいったことではない。真の問題は、本来見なければいけないデータや、訊かなければいけない質問や、つかまえなければいけないチャンスを、自分たちが逃していることに気づいてさえいないことだ』。
読了日:12月11日 著者:マシュー・サイド ファイル

デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場感想
栗城史多、享年35。少々無責任だが普通の、悪気のない若者。幸運により高峰に登れてしまった、映える言動が得意なエンターテイナー。ただし山への情熱も敬意も私は感じられなかった。起業家や芸人として資質があったかもしれない。言い換えれば山師。しかし人として他者に誠実でなかったとしても、ビジネスなら破産程度で済むが、エヴェレストは容赦なく命を奪った。傍で助言してくれる人の真心よりメディアでの映えを優先した、欺瞞や法螺ゆえの帰結。死後の取材は難しい。誰しも悔恨や自責回避、美化のフィルターがかかって、事実が見定め難い。
読了日:12月07日 著者:河野 啓 ファイル

空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 (ヤマケイ文庫)空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 (ヤマケイ文庫)感想
クラカワーは機を得て営業公募隊の一員として登頂に挑戦する。そこで大事故は起きた。生き残った自身の苦悶が癒えるのを待たずクラカワーは書いた。苦渋が濃い。高度7500m以上では高度障害、低酸素、極度疲労で誰もが平常の思考力と運動能力を失う。高いスキルを持ったスタッフや常人ならぬ意欲と身体能力を持った同行者も例外ではなく、生きたまま凍りつき、凍りついてなお生き、絶えた。その遺体を一瞥してまた挑戦者が頂上を目指す。自らの命を天秤にかけるほどのエヴェレストの頂への憧れは、どんな因業があって人間の心に巣くうのだろう。
『わたしは望んでいるのだ――あの惨劇の直後、撹乱と苦悩の只中に、あえて自分の気持ちをさらけだすことによって得るものもあるだろう、と。時が経過し苦悶が消散したあとではもう出てこないかもしれない、生のままの厳しい誠実が、わたしの記述にあれば――』。それは誠実であると同時に、ライターとしての野心でもあるのかもしれない。ブクレーエフが「デス・ゾーン」でクラカワーの著述を否定したことへ反論した後記が付録されている。あのような極限状態を正確に書くことは難しい。しかし私はクラカワーのライターとしての矜持と誠実を信じる。
読了日:12月05日 著者:ジョン・クラカワー ファイル

図解 いちばんやさしく丁寧に書いた 会社法の本図解 いちばんやさしく丁寧に書いた 会社法の本感想
会社法は大企業から一人会社まで広く適用されるべく、多岐にわたる膨大な条文を持つ。自社に新たに役員を登用するにあたり、ひととおり読んでもらうためにととにかくわかりやすいものを選んだ。見開きで同内容を文字と図解で表してあるもので、素人がざっくり把握するにはちょうどよい。会社組織の成り立ちから役員の義務など、長く経営にかかわっていれば当たり前のことが、改めて説明されるとそうだったのかと腑に落ちることも多い。経営破綻や清算、M&Aについての条項に目が留まる。会社の終わりには苦いものがある。さて議事録案を作成する。
読了日:12月04日 著者:


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 14:34Comments(0)読書

2024年12月04日

2024年11月の記録

本が読めてない、読む時間がない、と私はしょっちゅうぼやくが、
先月は今年いちばん読めてないとまたぼやいている。
もっと読みたい欲求の裏返しである。
忙しいのと、懸念事項が多いのと、夫が見ているYouTubeに気を取られて。
静かな心持で満喫する秋の夜長はどこへ行った。

<今月のデータ>
購入14冊、購入費用10,291円。
読了8冊。
積読本335冊(うちKindle本158冊)。


ブック

山怪朱 山人が語る不思議な話山怪朱 山人が語る不思議な話感想
先週読んだ「土葬の村」とどこかつながっている。人ならぬ世界との境界なのは山も同じだ。山に日常的に入る人は自身の内なる声、すなわち生存本能の発する微かなサインに敏感になる。自身の生死がかかるからだ。この世ならざる存在に畏敬を持ち、普通に街で生きているときは滅多に触れない感覚を呼び覚ますことは、生物として誰にも必要だと思った。さて、山の怪異もこれだけ集まればパターンが見える。人に害を為すもの、他愛ないもの、真実を見通すもの。狐狸と名づけた存在への「俺のこと騙そうたってそうはいかねーぞ!」の突破力が頼もしい。
読了日:11月28日 著者:田中 康弘 ファイル

柳宗民の雑草ノオト (ちくま学芸文庫 ヤ 16-1)柳宗民の雑草ノオト (ちくま学芸文庫 ヤ 16-1)感想
著者は園芸研究家、柳宗悦の四男にあたる。古来歌集に詠われる七草をはじめ、日本にごく日常に見る雑草を紹介している。葉や花の写真を撮ると名前を教えてくれるアプリを最近は重宝しているが、この本ほど魅力を知ることはできない。この本が断然良い。生える草を、私は好き嫌いして抜いたり抜かなかったりする。しかし次からはもう抜けないなと思った草花がたくさんある。オミナエシ、オトコエシはもはや植えたいし、ヨウシュヤマゴボウすら育ててみたくなる。外来種も渡来して何十年も経てば日本の風景の一部だ。ほやけど、メヒシバだけはいかん。
読了日:11月25日 著者:柳 宗民

土葬の村 (講談社現代新書 2606)土葬の村 (講談社現代新書 2606)感想
いかなる信仰であれ、人にはあるべき葬送の方式がある。それは『非科学的であるとはいえ、死者の霊魂の安静を期するため一層礼意を厚くする趣旨によって行われるもの』かつ、忌まわしきものを寄せないための儀式である。だから本人も遺族も簡単には妥協できない。さて日本国内でも時代や地方をまたいで火葬、土葬、風葬、遺棄葬および様々な風習があったと紹介され、興味深い。少し前まで日本人は葬送に時間と手をかけていた。そこには現代の私が肌で感じられない意味があった。それは失われるが、今後また新しい意味と方式も生まれ行くのだろう。
ほんとうに少し前まで、火葬は主流ではなかった。小豆島では石積葬、佐柳島では海岸葬など、近い地域にも風変わりな葬送が行われていた。葬祭業なんて無くて、村を挙げて儀式を執り行った。いかに壮絶な奇習に見えても、それが人々の心の安寧につながっていた。これから、葬式も埋葬も形がどんどん変わっていく。親のそれと私のそれも既に違う。納得できる形は考えておかないとと思う。
読了日:11月21日 著者:高橋 繁行 ファイル

半分世界 (創元SF文庫)半分世界 (創元SF文庫)感想
突飛な着想を、普遍のものとして世界を描くのとは違って、異質なものは異質なままに、大勢によってさらに展開されていく。そうきたか、と唸ること多し。表題作が面白かった。例えばフジワラーたちが藤原家の本棚に興味を覚え、片っ端から読むという展開には留めず、子供たちが「百年の孤独」の読書感想文を提出するとか、その教養をもって奇想小説を書きあげるあたり。そして、終盤のフジワラーたちをギャフンと言わせる仕掛け、そしてそれすら踏み倒して進むフジワラーたちのエネルギーと発想には人類の進化の謎を連想させるものがある。気がする。
読了日:11月13日 著者:石川 宗生 ファイル

ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルトザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト感想
財務省は税収アップと歳出カットを至上命題とする官僚組織、と森永さんは前提する。私は税務や国家運営についてまともに学んだことがないし、森永さんの説明もじゅうぶん理解できたとも言えない。しかしあれこれ辻褄が合うことが多くて、そういうことなのかと瞑目した。とすれば、今報道を賑わせる103万円の壁やトリガー条項について、財務省出身の玉木さん率いる国民民主党が主張していること、財務省は無論、自民党や立憲民主党内からも懸念が示されていることについても符合が合う。財務省の「ご説明」布教は、日本への呪いなのではないか。
読了日:11月07日 著者:森永 卓郎 ファイル

もういちど育てる庭図鑑もういちど育てる庭図鑑感想
良原さんの庭、樹木も花も野菜もごっちゃの庭に私は憧れた。それで2冊目、リボベジ。野菜の果物の種はもちろん、スーパーで買った温室育ちの野菜の切れっぱしや、乾物のカラカラの豆でも、水や土に触れれば葉や芽を出して成長しようとする、その生命力に目を見張る。切れっぱしや休眠期間のない野菜は待ったなしで育とうとするので、時期を間違えると収穫まで到達しないという。あれもこれもやってみたいものが多すぎて、取り急ぎ季節ごとの表に書き出してみた。概して春と秋が試すのに良いようだ。旬も理解できそう。今朝コマツナの根っこ植えた。
読了日:11月04日 著者:良原リエ

パワーパワー感想
反転した世界。ディストピア。物理的な力を手に入れたら、私は同じことをするのだろうか。誇示し、行使し、蔑み、脅し、支配するだろうか。無自覚に。男たちがするのと同じように。やろうと思えばやれるから。力を手に入れた確信が、内から人を変えてしまうみたいだ。道具を得て、人間が動物より上位の存在だと勘違いしたように。否、と思えるのは、目下被虐の立場に無いからで、ただ今も暴力に服従を強いられている女性たちこそ、最初は恐怖から、じきに歓喜をもって力を行使する様はさもあるべく感じる。最初と最後の手紙のパートがまた深い。
トゥンデが恐怖に震える場面には既視感がある。例えば会議室一室に男性40人がいる中で私ひとりいるとき、スーツを着た社会的な会合であっても、腹の底には本能的な緊張が凝る。知人でも黙って真後ろに立たれると怖い。チョコザップも日本版ライドシェアも、自分一人のときは利用をためらうだろう。いわんや夜道をや。これには年齢や容姿は関係ない。ただ力で敵わない相手が傍にいる、腕力を笠に着た誰かに威圧されたことがある、その記憶は否応なくアラームとして働く。
読了日:11月03日 著者:ナオミ・オルダーマン ファイル

未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること (講談社現代新書)未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること (講談社現代新書)感想
人口減に伴い、行政や企業に起きる近未来予測。もはや人口減少の影響を受けない組織や個人は無く、現在進行形である。江戸時代の人口に戻るとしても現代人はある程度のインフラが無ければ生きていけない。人口10万人程度の自治体圏/商圏を多極的につくるイメージは憶えておきたい。需要不足と供給能力不足を目前に、各業界で変革が喫緊である。地場の建設業の場合"外需"はまずないので、規模維持、できれば拡大を目指す。あるいは他社との連携・相乗効果が要だろう。多種の業種スキルがほしい所だが、提供する相手は絞り込まざるを得ないか。
読了日:11月02日 著者:河合 雅司 ファイル


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 10:16Comments(0)読書

2024年11月01日

2024年10月の記録

頭が痛い。
読み過ぎのせいか、天気のせいか、親から新型コロナもらったか。
素敵に夜が長くなっているのだから、優雅に本を読んで過ごしたいところだけれど。

<今月のデータ>
購入16冊、購入費用25,242円。
読了17冊。
積読本330冊(うちKindle本152冊)。

ブック

笹まくら (講談社文庫)笹まくら (講談社文庫)感想
主人公が想起するつど、前触れなく現在に過去が交じる。徴兵を忌避した理由が結局何であれ、数年間の地獄または命の代償は、逃亡中の苦労だけで済まなかった。それから20年、生きて戻った男たちとの断絶、絶えず他者の言動の真意を測り続ける暮らし。笹まくら。自分の良心の満足のために行動することを自ら戒める場面は、自分にはその権利が無いとの意味なら、業苦だろう。引き換え、醜い中年の田舎女と蔑んだ阿貴子は、回想の中でどんどん美しく賢く変わりゆき、現実的でしかし自由に振る舞う姿が鮮やかに脳裏に残る。彼女の真摯が切ない。
読了日:10月27日 著者:丸谷才一 ファイル

庭仕事の愉しみ庭仕事の愉しみ感想
ヘッセも庭を愛した人だったと知る。庭にまつわる散文や詩、手紙などを集めたものである。だだっ広い敷地に立つ姿や、庭でレトロな如雨露や籠に囲まれて作業をする写真なども掲載されている。花壇と畑。人間の領域と森のせめぎ合い。文章も詩的だ。『静かにしていると、瞬時のあいだ世界の調和が草の中で歌うのが聞こえてきたりする、そんなひとときが毎日あります』。草むしりを礼拝に喩えている箇所がある。もし禅を知っていたら「庭禅」とも喩えたかもしれない。惜しむらくは私が詩に不調法な事。長い散文か、短歌程度に短くないと落ち着かない。
読了日:10月23日 著者:ヘルマン ヘッセ

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ (光文社新書)字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ (光文社新書)感想
英語の映画に日本語字幕をつける字幕翻訳者さん。吹替との違いや、字数制限、禁止用語などとの闘いのほか、良い映画を観客の胸に響かせたい思いの障害となる商業主義への批判がかなりを占める。最近のYouTubeは映画も多く公式アップロードされており、日本語対応していなくても自動翻訳機能が使える。ほぼ意味は取れるが、直訳で性別もニュアンスも判別不能である。あれを見ると字幕翻訳者さんの存在は当分重要だと感じる。映画館で観たタミル映画を字幕なしで観ているが、そろそろ字幕が恋しい。翻訳であっても字幕は味わい深いものだから。
読了日:10月16日 著者:太田 直子 ファイル

最新版 小さな会社のWeb担当者になったら読む本最新版 小さな会社のWeb担当者になったら読む本感想
BtoC業種ではないし、BtoB営業の必要もさほど無い。それでも「会社」であることの表明と、なにより求職者向けのアピールが必要な時代である。大きく分けてウェブサイトとSNS、それぞれの考え方と必要を見定めるにはちょうどよかった。なんせ外注が好きでない性分なので、ウェブサイトの内容見直しと、採用専用サイトの立ち上げ、目的にかなうSNSの企画を進める。クラウドソーシング、SNS連動ツール、アクセス解析も新たな武器として試してみたい。ひとり情シス兼ひとりWeb担もそろそろ卒業しないとなあ。2023年版。
読了日:10月15日 著者:山田 竜也

だれも教えてくれなかった エネルギー問題と気候変動の本当の話 (14歳の世渡り術プラス)だれも教えてくれなかった エネルギー問題と気候変動の本当の話 (14歳の世渡り術プラス)感想
フランス発、世界で読まれているという環境本。エネルギーにはグリーンもクリーンも無い。大規模に使えばどれだってダーティと著者は指摘する。エネルギーを人力に換算すると、現代の日本人はひとりが600人の奴隷を使っていることになるという。それくらい、膨大なエネルギーを消費しないと現代人は生きられない。進化も平和も福祉国家も、エネルギー供給あってこそ。そしてこの世界は拡大することでしか安定しえないという事実。これらを考え合わせると原発は最適解、という結論になるか。日本語翻訳監修は「エネルギーをめぐる旅」の古館さん。
長期で歴史を見ると、化石エネルギーを使用することで人間一人の能力をはるかに超えて生産することができるようになった。これにより農業従事者が減って工業従事者が増えた。さらにエネルギーが安価になり、工業従事者が減ってサービス業従事者が増えた。ここで現在、AIが出てきてサービス業従事者が減ることになるのか。そしてAIはとんでもなくエネルギーを喰う。今新たな革命と呼ばれるのはそこも含めての話なのだろう。
読了日:10月15日 著者:ジャン=マルク・ジャンコヴィシ,クリストフ・ブレイン

使い切れない農地活用読本使い切れない農地活用読本感想
農地を持っている訳でもないのに読みたがるのは、家周りの農地の近未来を想像するからだ。この週末は70歳前後と思しき農家さんが協力し合って稲刈りをしていた。しかし近く手が回らなくなる農地の割合は少なくないだろう。手がかからない、といってもそれなりにかかるのだが、クロモジ、クルミ、ミツマタなどの有用植物、ミツバチの蜜源植物、枝物、それ以外の木を植えるなど、各地から集まったアイデアにわくわくする。ただし収穫の無い木を農地に植えるには農業委員会に申請が必要。許可されればさらに税務上および登記上の申請が必要とのこと。
読了日:10月14日 著者:

美は乱調にあり――伊藤野枝と大杉栄 (岩波現代文庫)美は乱調にあり――伊藤野枝と大杉栄 (岩波現代文庫)感想
当時世間を騒がせた二人の道行き。つまるところ野枝には家事子育ての生活能力も独力で稼ぐ自立能力も無い。親戚知人にとっても傍迷惑だったことが初っ端から書かれる。そして男性から見た野枝と女性が見る野枝の評価の落差もつぶさにほのめかされるあたり、意地悪いのう。寂聴さん43歳、出家前の作。地頭の良さ以外に取り得の無い野枝の"野性"、野枝の内にたぎる女の本能が、理性で抑え込んでもすり抜ける恋情が、市子の中にも、また歳が倍ほどもなり経験を積んだはずの自分の中にも確かにあって自尊心と絡み合っていることに気づいて慄く。
読了日:10月14日 著者:瀬戸内 寂聴

日本改革原案2050: 競争力ある福祉国家へ日本改革原案2050: 競争力ある福祉国家へ感想
祝幹事長就任。小川さんの凄いところは、ガチンコの質問に答えられない、または言葉を濁すことが無い政策オタクぶりだ。切り取りで消費税増税論者のように揶揄されるが、ずっと人口激減収入減の日本を救う方策を考え続けてきたことをこの本が証明する。今回、2014年の原案から更に修正を加えている。所得税、法人税、相続税の増税ならびに消費税の時限減税だ。常にインプットを怠らない。実現が難しくてもよりあらまほしき在り方を考え続ける。あくまで個人としての案なので、今の幹事長の立場では違うことも言わざるをえないだろうけれども。
読了日:10月12日 著者:小川 淳也

地球の冷やし方地球の冷やし方感想
ときめいて、やらずにいられなくなるような、お金のかからない、環境に良いこと。って言ってもいち個人でできることは微々たるものだしな、と思ったが。ソーラーフードドライヤーと、パッシブ・ソーラー・ハウスの鶏小屋いいなあ! 楽しいなあ! しかしつくりかたを聞いても難易度が高い。誰かつくって売ってくれんかなの方向に考えてしまう。著者は発明家を自称し、廃バイクで風力発電機をつくってしまうような人だから、と言い訳したいところだが、なんでも自分でやってみる、それが真に環境に優しい生きかたであることは間違いないのだ。
読了日:10月11日 著者:藤村靖之

国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか (講談社+α新書 672-3C)国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか (講談社+α新書 672-3C)感想
諸国と比べ、競争力は圧倒的に高いのに生産性が顕著に低い日本について、根本原因は20人未満のミクロ企業が成長しないまま存続できるシステムだと結論している。企業において生産性と賃金、生産性と企業規模には相関関係があり、生産性と労働者の給料水準がもっとも因果関係が強いと検証されたという。おおむねこの論理により、日本の最低賃金は急上昇を始めた。60年守られてきた中小企業は尻を叩かれるのだ。倒産やM&Aにより淘汰する"グランドデザイン"。これは人口激減と巨大地震を控えた国家には必要なことだろう。正論、8割がた納得。
ミクロ企業は効率が悪いという話。管理する側から言えばそりゃ効率は悪い。しかし一企業の固定費率が高くなりがちなのも社員の守備範囲が広くなりがちなのも、一概に悪いことではない。新しいITツールの取入れが遅いとの指摘は図星だった。規模が小さいからIT化の効果を感じづらく、効率の悪い方法で不便を感じない。最先端会計ソフトの必要も感じない。とはいえ、最近は中小企業向けの諸アプリも充実してきており、それなりに取り入れてはいる。問題は、企業が成長しない点なのだと解釈する。社員、経営者共に教育への貪欲さが必要だろう。
常識が全て根底から変わっていく、という経験を今の日本人はしたことがない。例えばイギリスでは最低賃金を毎年4.2%上げ続けた結果、20年で2倍になったという。それっておかしくないか? それが経済のあるべき姿である、という考えがどうも私は馴染まないのだが(だって20年経ってもニンジンはニンジン、親子丼は親子丼やろ)、資本主義諸国がその方向で動いている以上、同調しなければ脱落するだけである。毎年4.2%以上の昇給、か。労働分割による専門性向上も、歯車の歯が細かくなるだけで良いことだとは思わないがなあ。
読了日:10月10日 著者:デービッド アトキンソン ファイル

評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)感想
岡田氏の動画で内田先生との対談本があると聞き、検索したらKindleの中にあったパターン。2013年の出版なのにリーダビリティありすぎて恐い。もう11年経ってるのにまだ同じこと言わなきゃいけない日本が恐い。岡田氏の経歴と周囲に集まる人々の層がわかると、氏がなぜこんなに若者の行動や心情を理解しているのか、分析するのか察せられる。「イワシ化」に加え「自分の気持ち至上主義」「もういいんです症候群」とか「完全記録時代」とかネーミングが絶妙。異質な二人。岡田氏の持論を受け入れられない内田先生の拒絶ぶりも面白い。
読了日:10月08日 著者:内田樹,岡田斗司夫 FREEex ファイル

時が滲む朝 (文春文庫 や 48-2)時が滲む朝 (文春文庫 や 48-2)感想
1989年の天安門事件前夜、大学生たちは正しく愛国と民主主義を主張し、正しくデモに集った。みんな若く、純粋で本気で。しかし退学処分は即ちエリートコースが約束された身分からの転落、時を経て主人公は日本で非正規職に就く。同志は欧米に亡命し、親友は故郷に沈黙した。天安門広場にいなかったとしても、当時希望を覚えた名もなき数多の若者の、いつにもいずれにもあの日々が影を落としている。繰り返し描かれる輝かしい朝日。それは宿命の象徴、どの朝の光景も自らの宿命だったと悟り受容する結末には、希望が確かにある。芥川賞受賞作。
『素晴らしい朝日だ。この黄色い大地に日が昇ってくるのを見て、中華子孫としての血が騒ぎだすんだ』。
読了日:10月08日 著者:楊 逸 ファイル

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 (新潮文庫 ふ 57-3)ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 (新潮文庫 ふ 57-3)感想
前作同様、格差の拡がるイギリス社会で身近に起きる事件、それらを巡る親子の対話が主軸。彼は中2になった。保守党政権の緊縮財政政策による社会インフラの劣化、外国人労働者が増えて変化する人々の認識。フリーランスになるための教育プログラムといい、日本の一歩先を行っているように感じる。ある状況下において、自分が心で感じたように他の人々も感じるはずだと考えて規則を外れた行動を取るか、あるいはそれを切り捨てて規則どおりに行動するかは、その人が何を信じているかが如実に表れるものだと思う。つまり社会への信頼があるかないか。
日本はイギリスに比べ大人も子供も教育が足りていないと感じた。大人が政治や民主主義について日常的に議論することや、また中学2年生に課す課題として、社会問題についてのスピーチ原稿をまとめさせるとか、大人と同様に投票するイベントを設け、EU離脱、気候危機などに関する政策を読んで議論させるとか、日本には無いものだ。事実を共有して、異なる立場間で対話をする習慣が、作法が、日本人にはほとんどないのではないか。大人も子供もその面での成長が阻まれている。それはいま日本の建設的な社会設計を阻害している主要因なんじゃないか。
読了日:10月07日 著者:ブレイディ みかこ ファイル

鳴かずのカッコウ (小学館文庫 て 2-3)鳴かずのカッコウ (小学館文庫 て 2-3)感想
こんな世界があることを、一般の私たちは意識して生活していない。だけどあるんだなあ、と手嶋さんの小説を読むたび思い出す。『インテリジェンスとは、国家が生き残るための選り抜かれた情報だ。どんなに小さな国も、国家が生き抜くにはインテリジェンス機関は欠かせない』。ただ表面化した犯罪を追うだけでは掴み切れない、他国の思惑や企みをあぶり出す任務。今回は船舶の売買を軸にワールドワイドな頭脳戦が繰り広げられる。ウクライナの空母ワリャーグを中国が買った、それが空母遼寧。裏事情のほのめかしに、どこまで真実かとわくわくした。
読了日:10月04日 著者:手嶋 龍一 ファイル

はっとりさんちの狩猟な毎日はっとりさんちの狩猟な毎日感想
息抜きに。最初に読んだ時は、『平穏に暮らす人々に対し、生きることの意味を無理やり考えさせるような挑発をする』服部文祥に振り回される小雪さんと子供たちの大変さに同情し、エピソードのあり得なさにいちいち驚いたものだったが、今回はそれらを当たり前と受け取って読んでしまった。だってそれは服部家の普通だから。服部文祥は真剣やもんね。人はやりたいことをやるべきで、親が親の好きなようにやっても子供は子供でええように育つ。なるようになる。犬も猫も鶏も。
読了日:10月02日 著者:服部小雪,服部文祥

注:ファイルは電子書籍で読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 15:39Comments(0)読書

2024年10月01日

2024年9月の記録

やあ、すっかりトライバルラグ祭りになってしまった。
そもそもは夫が興味を示して一緒にあちこち見に行きはじめたものが、
お店の人から熱く聞かされているうちに面白くなってしまったのだ。
こういうときが知識を深めるチャンス。
次はトルコのノンフィクションか、宗教のノンフィクションを読もうか。

<今月のデータ>
購入12冊、購入費用10,862円。
読了16冊。
積読本329冊(うちKindle本152冊)。


ブック

エツコとハリメ: 二人で織ったトルコ絨毯の物語エツコとハリメ: 二人で織ったトルコ絨毯の物語感想
絨毯織りの経験があるハリメさんと、ギョレメ村で絨毯を織った日々の記録。絨毯織りは村滞在の口実としつつも熱心で詳しく、興味深い。糸を選び、経糸を縒り、草木染めの原料を集め、染め、模様と配置を決めて初めて織れる。村の女性たちの間には受け継いだ固有の文様と明文化されない知識の蓄積がある。さらに絨毯には織った人の時間がこもっている。その女性が織る作業にかけた長い長い時間、凝らした工夫、織っていた日々の感情、傍らの誰かとの会話。そして私の間にある時間と距離。手元に触れる絨毯の奇跡を思う。『遊牧民の絨毯はラハット』。
化学染料は1856年に発明された。ハリメさんが絨毯を織り始めたのが1950年代として、既に草木染めをする人は村にいなかったという。簡単に様々な色をくっきりと染められる化学染料を、女性たちは喜んで受け入れたのだろう。結果、草木染めの手法がほとんど忘れられた。現在オールドと呼ばれる絨毯にも化学染料が使われた痕跡が残る。それは年月が経った今見るとことさら差が歴然としている。草木染の美しさが際立っている。『この根を握ったら手が赤く染まったから染料に使えると思って』。バルーチ絨毯の紫を思う。
工房ではなく村の家々で織るとき、絨毯を織るのは家の中だ。薄暗いことも多いだろう。文様は間違えなくても糸の色を間違えることもあるだろう。織り進めてから気づいても、ほどくのは大変な後戻りになる。ハリメさんが「アラーの神じゃないんだから間違えて当たり前」みたいな開き直りをする(これは文様)箇所がある。一般に、売るために織った絨毯とはいえ、職人ではないのだから、織り手の性格によるところはあるだろうけれど、間違いを許容する感覚、まさしく人間らしくて好い。
読了日:09月30日 著者:新藤 悦子

日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書 2566)日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書 2566)感想
人は得た知識を繋げ、比較し、発想を飛ばしながら自分だけの立体的な網に仕立ててゆく。それが松岡正剛だと、日本の文化、歴史を縦横無尽に引き、緻密で多次元な網で人を圧倒する。見聞きした事象が即座に網のどこかに繋がる。それらがいつ発生し、変転したかの情報だけでなく、さらにそれが現代に残る種々の形こそ大事と知る。日本の有機的で一貫性が無くて外からわかりづらい感じは固有のもの。欧米の論理で説明し尽くせると思いすぎないこと、外からやってきたものを「苗代」に保留すること、極端を封じて本当の「中道」を見えなくしないこと。
一度では到底消化しきれない量の智を頭に詰め込もうとしたせいか、昨夜は頭が漬物石のように重かった。テーマごとに折々読み返すのが良い本。本で買い直しておこう。
読了日:09月30日 著者:松岡 正剛 ファイル

ベスト・エッセイ2023ベスト・エッセイ2023感想
2022年のエッセイアンソロジー。厳選されたとはいえ、個人的に沁みる打率が高くはならないと気づく。『小説はそれ自体は文字の集積にすぎないものである』。それはエッセイも同じで、楽しむ楽しまないはこちらの都合である。それから、信濃毎日新聞と西日本新聞は人選かセンスか、好いエッセイが多い印象を得た。個別では先に日経で読んだ沢木さんの旅もの、内澤さんのヤギ記は別として、浅田次郎のアジフライと藤沢周の手帳が味わい深い。年の功というべきか。自らの姿を俯瞰して面白がるような、飄々とした文章が字数と釣り合って好ましい。
読了日:09月27日 著者:

ひとり旅立つ少年よ (文春文庫 テ 12-6)ひとり旅立つ少年よ (文春文庫 テ 12-6)感想
聾の少女、犬ときて、今回の主人公は父親に詐欺の技を叩き込まれた12歳の少年。南北戦争前夜、黒人奴隷の解放を巡って民衆同士が対立するアメリカ合衆国を舞台にする意味は深い。皆が自らの権利を主張し不遇を嘆き、立場の異なる者への糾弾や迫害が酷かった時代。でも現代も同じだとテランは伝えようとしている。不平等な世界に独り、その年齢に余る責務を自らに課し進む少年。未来をつくる者。貰い、拾い、盗んだ物がなべて彼を助けるのと同じように、彼を助けた人たちが皆彼の人生の糧になる。尊さが沁みる。『生きものには生き残る力がある』。
読了日:09月27日 著者:ボストン・テラン ファイル

羊飼いの口笛が聴こえる: 遊牧民の世界羊飼いの口笛が聴こえる: 遊牧民の世界感想
1980年代、トルコやイランを巡ってはユルック/遊牧民の村に独り泊まり込む若い日本人女性は勇敢すぎよう。著者の関心は遊牧民の絨毯、羊飼い、ユルト/テント。ヤージュベディル遊牧民の住む村を探し当て、ヤイラで過ごした夏と秋の暮らしは、厳しくものびやかだ。さて絨毯。妻や娘が家事や畑仕事の合間に織った絨毯を、男たちが売りに行く。それぞれ僻地ゆえに、染色技術や文様から織られた地方がわかる。のみならず、トルコの西端で遊牧するユルックが中央アジアのトルクメンの子孫であることの証にもなるのだ。絨毯は雄弁だ。そして美しい。
なお、文様は織り手の腕の見せどころなので、女性たちの工夫と新しい文様の考案によって変遷する部分があるようだ。文様にメッセージ性が強かったのも昔の話、当時でも失われつつあったらしい。口伝は失われるのが早い。それでも古いものには祈りと誇りが込められているのが伝わってくる。昨日見たトゥルクメンのオールドの絨毯も、美しさの先に誇りが窺えて胸がいっぱいになった。
読了日:09月23日 著者:新藤 悦子

Windowsでできる小さな会社のLAN構築・運用ガイド 第4版Windowsでできる小さな会社のLAN構築・運用ガイド 第4版感想
サーバー入替の検討を機に。前版を読んだ8年前から通信技術は格段に進化し、民間レベルのサービスも様変わりした。クラウドやらSaaSやら業者は煽ってくるけれども、小さな会社こそDX化や「簡単・便利!」に踊らされず、手堅くコンパクトに自前でやりましょうという著者の姿勢は好ましい。サーバーの各機能は必要に応じて進めるとして、肝心はセキュリティとアクセスコントロール。ちょっと(かなり)冷や汗の出る部分があるので、着実に修正していく。無線LANも設定さえ着実にできればそうセキュリティを不安に思う必要はないらしい。
読了日:09月21日 著者:橋本 和則

日本の伝統 (知恵の森文庫)日本の伝統 (知恵の森文庫)感想
昭和31年に、岡本太郎は世の中が停滞して"しめっぽい日本"に戻っていると述べた。縄文式土器から銀沙灘/向月台、尾形光琳まで、岡本太郎が評価する芸術は、尖った表現物である。いずれも豊かさゆえに興隆した時代のもの。逆に為政者が人民を抑圧した時代の"ひねこびた"芸術は腐す。その是非は別にして、過去の日本人が遺したものに固執して守るのではなく、糧としさらに展開させてこそ伝統と喝破する主張は押さえておく。元のまま保とうと繰り返し原形をなぞる行為が、逆に本質の逸失、形骸化につながるとの指摘も気に留めておきたい。
読了日:09月20日 著者:岡本 太郎 ファイル

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー感想
著者の主眼は「生物を多様化させる土をつくる仕組みづくり」に集束する。そのための、生ごみも排泄物も全て土に還す行為の必要性は気持ちだけ賛同しておく。さて、森林と草原の土壌依存度の違いについてのトピックが興味深い。木は落葉しても幹や枝に栄養を蓄えることができるが、草、特に一年草はそれができないため、根や葉ごと腐食として還る形で土壌に栄養を蓄積する。つまり早く腐食土層が厚くなる。そこから草を抜かない・耕さない自然農法の理論に、私の中で繋がった。自然の山火事と炭の有用性もまた、繋がっていることを再認識した。
読了日:09月20日 著者:四井真治

私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月感想
「こんにちはヤギさん!」で、町中でヤギを飼うことが壮絶に難しいことが理解できたので、今作はそう鼻息を荒くせず読んだ。しかしかわいい。そして賢い。まさおのエピソードは胸がギュっとした。私自身がマンション砂漠から緑豊かな地べたに移り、時機を読んで生える草、芽吹く木々のいちいちがワンダーな今は、内澤さんの草歳時記に夢中になる。九月『長月ながく 酷暑終わらず夏枯れのあと 芽吹き花咲きまるで春』ってまさに今。サツキが咲いたもの。去年は渋柿をいただいたのだった。今年もあるならいただけるかな。吊るす場所ができたので。
読了日:09月17日 著者:内澤 旬子

これでもいいのだ (中公文庫 し 56-1)これでもいいのだ (中公文庫 し 56-1)感想
オバサン期に突入して、気持ちに身体がついてこない歯がゆさはあっても、精神的にはほんとうにラクになった。若者の文化は理解できないが感情は読めるし受け流せるし、年寄りの行動も想像力が働いて生温かく見守ることもできる。私は私のしたいことがわかる。というラクさ加減に安心しきってはいけないのだな。人間の認知力は、類似物を一括りにする傾向があり、歳を重ねるほど加速する。しかし他人はそれぞれ個だ。括れば簡単に傷つけ、関係を阻害してしまう。その観察が著者は細かくて興味深い。
読了日:09月15日 著者:ジェーン・スー ファイル

これが見納め: 絶滅危惧の生きものたちに会いに行く (河出文庫)これが見納め: 絶滅危惧の生きものたちに会いに行く (河出文庫)感想
SF作家が動物学者と絶滅危惧種を見るために僻地へ旅する企画。この作家とは銀河ヒッチハイクシリーズの著者で、R・ドーキンスが親密な序文を寄せるのも肯ける傑作だ。独特のユーモアは読者を面白がらせるだけに留まらない。脱線のようでいて、ぐるっと周って人間の愚かさを横から蹴り飛ばす。そして、奥深い自然の中で動物に遭遇したときの、1対1の個として圧倒される素直な感慨はなにものにも替えがたい。自然との対峙のしかたとか、他生物と共存する世界の豊かさ、そのためにこそ活きる人類の知恵も希少動物同様、加速度的に喪っているのだ。
読了日:09月10日 著者:ダグラス・アダムス,マーク・カーワディン,リチャード・ドーキンス ファイル

遊牧民と村々のラグ キリム&パイルラグの本格ガイド遊牧民と村々のラグ キリム&パイルラグの本格ガイド感想
Aged Rugということで、平織りやパイル織りの、トルコからモンゴルにかけてのトライバルラグガイド。いわゆるギャッベ、生命の樹やライオンや風景が織り込まれたようなものはほとんど掲載されておらず、シンプルなもの、あるいはギュルやメダリオンが緻密に織り込まれたものが多いのは著者の好みか時代か。羊や山羊の毛を使い、当時は茜の根やウコンで染めて、今も遊牧民の女性が織ることが多い。部族の誇りや魔よけの祈りが込められていると知ると畏敬の念に圧倒される。
あったらいいねとリビングに敷くものを捜し歩いていたところ、トライバルラグの面白さに気づいた。トライバルラグの発祥は、つまり遊牧民が主たる中央アジアが中心か。これがモンゴルや中国あたりまで来ると、日本人に馴染みのある文様に寄ってくる。むしろ正確にはシルクロード伝いに、遊牧民のシンボルであったライオンは龍や鳳凰に、オオカミの足跡は花に、ギュルやメダリオンは中華文様に変化し、海を越えて日本の緞通が生まれた。絨毯古臭いと思ってた。ごめんなさい。凄いよ。
読了日:09月05日 著者:グランピエ商会 前田 慎司

電柱マニア電柱マニア感想
電柱マニア向けガイドブック、ではなく電柱マニアが書いたガイドブック。私がこの本を購入したのは、私を含め、現地を見ることが少ない(見ても判別できない)積算担当、資材発注担当が知識を深めるための社内教育図書としてである。さすがオーム社。正しく教育図書だった。当然ながら柱上配電設備だけの説明だが、機器の役割、玉がいしの意味、油入開閉器を柱上で使わない理由などなど知らんことがたくさんあった。がいしの配置パターンや電力会社ごとの腕金形状分類はどちらでもよろしい。窓の外の電柱をちらちら視認しながら読むのが良い。
読了日:09月03日 著者:須賀 亮行


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 17:26Comments(0)読書