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2024年10月01日

2024年9月の記録

やあ、すっかりトライバルラグ祭りになってしまった。
そもそもは夫が興味を示して一緒にあちこち見に行きはじめたものが、
お店の人から熱く聞かされているうちに面白くなってしまったのだ。
こういうときが知識を深めるチャンス。
次はトルコのノンフィクションか、宗教のノンフィクションを読もうか。

<今月のデータ>
購入12冊、購入費用10,862円。
読了16冊。
積読本329冊(うちKindle本152冊)。


ブック

エツコとハリメ: 二人で織ったトルコ絨毯の物語エツコとハリメ: 二人で織ったトルコ絨毯の物語感想
絨毯織りの経験があるハリメさんと、ギョレメ村で絨毯を織った日々の記録。絨毯織りは村滞在の口実としつつも熱心で詳しく、興味深い。糸を選び、経糸を縒り、草木染めの原料を集め、染め、模様と配置を決めて初めて織れる。村の女性たちの間には受け継いだ固有の文様と明文化されない知識の蓄積がある。さらに絨毯には織った人の時間がこもっている。その女性が織る作業にかけた長い長い時間、凝らした工夫、織っていた日々の感情、傍らの誰かとの会話。そして私の間にある時間と距離。手元に触れる絨毯の奇跡を思う。『遊牧民の絨毯はラハット』。
化学染料は1856年に発明された。ハリメさんが絨毯を織り始めたのが1950年代として、既に草木染めをする人は村にいなかったという。簡単に様々な色をくっきりと染められる化学染料を、女性たちは喜んで受け入れたのだろう。結果、草木染めの手法がほとんど忘れられた。現在オールドと呼ばれる絨毯にも化学染料が使われた痕跡が残る。それは年月が経った今見るとことさら差が歴然としている。草木染の美しさが際立っている。『この根を握ったら手が赤く染まったから染料に使えると思って』。バルーチ絨毯の紫を思う。
工房ではなく村の家々で織るとき、絨毯を織るのは家の中だ。薄暗いことも多いだろう。文様は間違えなくても糸の色を間違えることもあるだろう。織り進めてから気づいても、ほどくのは大変な後戻りになる。ハリメさんが「アラーの神じゃないんだから間違えて当たり前」みたいな開き直りをする(これは文様)箇所がある。一般に、売るために織った絨毯とはいえ、職人ではないのだから、織り手の性格によるところはあるだろうけれど、間違いを許容する感覚、まさしく人間らしくて好い。
読了日:09月30日 著者:新藤 悦子

日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書 2566)日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書 2566)感想
人は得た知識を繋げ、比較し、発想を飛ばしながら自分だけの立体的な網に仕立ててゆく。それが松岡正剛だと、日本の文化、歴史を縦横無尽に引き、緻密で多次元な網で人を圧倒する。見聞きした事象が即座に網のどこかに繋がる。それらがいつ発生し、変転したかの情報だけでなく、さらにそれが現代に残る種々の形こそ大事と知る。日本の有機的で一貫性が無くて外からわかりづらい感じは固有のもの。欧米の論理で説明し尽くせると思いすぎないこと、外からやってきたものを「苗代」に保留すること、極端を封じて本当の「中道」を見えなくしないこと。
一度では到底消化しきれない量の智を頭に詰め込もうとしたせいか、昨夜は頭が漬物石のように重かった。テーマごとに折々読み返すのが良い本。本で買い直しておこう。
読了日:09月30日 著者:松岡 正剛 ファイル

ベスト・エッセイ2023ベスト・エッセイ2023感想
2022年のエッセイアンソロジー。厳選されたとはいえ、個人的に沁みる打率が高くはならないと気づく。『小説はそれ自体は文字の集積にすぎないものである』。それはエッセイも同じで、楽しむ楽しまないはこちらの都合である。それから、信濃毎日新聞と西日本新聞は人選かセンスか、好いエッセイが多い印象を得た。個別では先に日経で読んだ沢木さんの旅もの、内澤さんのヤギ記は別として、浅田次郎のアジフライと藤沢周の手帳が味わい深い。年の功というべきか。自らの姿を俯瞰して面白がるような、飄々とした文章が字数と釣り合って好ましい。
読了日:09月27日 著者:

ひとり旅立つ少年よ (文春文庫 テ 12-6)ひとり旅立つ少年よ (文春文庫 テ 12-6)感想
聾の少女、犬ときて、今回の主人公は父親に詐欺の技を叩き込まれた12歳の少年。南北戦争前夜、黒人奴隷の解放を巡って民衆同士が対立するアメリカ合衆国を舞台にする意味は深い。皆が自らの権利を主張し不遇を嘆き、立場の異なる者への糾弾や迫害が酷かった時代。でも現代も同じだとテランは伝えようとしている。不平等な世界に独り、その年齢に余る責務を自らに課し進む少年。未来をつくる者。貰い、拾い、盗んだ物がなべて彼を助けるのと同じように、彼を助けた人たちが皆彼の人生の糧になる。尊さが沁みる。『生きものには生き残る力がある』。
読了日:09月27日 著者:ボストン・テラン ファイル

羊飼いの口笛が聴こえる: 遊牧民の世界羊飼いの口笛が聴こえる: 遊牧民の世界感想
1980年代、トルコやイランを巡ってはユルック/遊牧民の村に独り泊まり込む若い日本人女性は勇敢すぎよう。著者の関心は遊牧民の絨毯、羊飼い、ユルト/テント。ヤージュベディル遊牧民の住む村を探し当て、ヤイラで過ごした夏と秋の暮らしは、厳しくものびやかだ。さて絨毯。妻や娘が家事や畑仕事の合間に織った絨毯を、男たちが売りに行く。それぞれ僻地ゆえに、染色技術や文様から織られた地方がわかる。のみならず、トルコの西端で遊牧するユルックが中央アジアのトルクメンの子孫であることの証にもなるのだ。絨毯は雄弁だ。そして美しい。
なお、文様は織り手の腕の見せどころなので、女性たちの工夫と新しい文様の考案によって変遷する部分があるようだ。文様にメッセージ性が強かったのも昔の話、当時でも失われつつあったらしい。口伝は失われるのが早い。それでも古いものには祈りと誇りが込められているのが伝わってくる。昨日見たトゥルクメンのオールドの絨毯も、美しさの先に誇りが窺えて胸がいっぱいになった。
読了日:09月23日 著者:新藤 悦子

Windowsでできる小さな会社のLAN構築・運用ガイド 第4版Windowsでできる小さな会社のLAN構築・運用ガイド 第4版感想
サーバー入替の検討を機に。前版を読んだ8年前から通信技術は格段に進化し、民間レベルのサービスも様変わりした。クラウドやらSaaSやら業者は煽ってくるけれども、小さな会社こそDX化や「簡単・便利!」に踊らされず、手堅くコンパクトに自前でやりましょうという著者の姿勢は好ましい。サーバーの各機能は必要に応じて進めるとして、肝心はセキュリティとアクセスコントロール。ちょっと(かなり)冷や汗の出る部分があるので、着実に修正していく。無線LANも設定さえ着実にできればそうセキュリティを不安に思う必要はないらしい。
読了日:09月21日 著者:橋本 和則

日本の伝統 (知恵の森文庫)日本の伝統 (知恵の森文庫)感想
昭和31年に、岡本太郎は世の中が停滞して"しめっぽい日本"に戻っていると述べた。縄文式土器から銀沙灘/向月台、尾形光琳まで、岡本太郎が評価する芸術は、尖った表現物である。いずれも豊かさゆえに興隆した時代のもの。逆に為政者が人民を抑圧した時代の"ひねこびた"芸術は腐す。その是非は別にして、過去の日本人が遺したものに固執して守るのではなく、糧としさらに展開させてこそ伝統と喝破する主張は押さえておく。元のまま保とうと繰り返し原形をなぞる行為が、逆に本質の逸失、形骸化につながるとの指摘も気に留めておきたい。
読了日:09月20日 著者:岡本 太郎 ファイル

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー感想
著者の主眼は「生物を多様化させる土をつくる仕組みづくり」に集束する。そのための、生ごみも排泄物も全て土に還す行為の必要性は気持ちだけ賛同しておく。さて、森林と草原の土壌依存度の違いについてのトピックが興味深い。木は落葉しても幹や枝に栄養を蓄えることができるが、草、特に一年草はそれができないため、根や葉ごと腐食として還る形で土壌に栄養を蓄積する。つまり早く腐食土層が厚くなる。そこから草を抜かない・耕さない自然農法の理論に、私の中で繋がった。自然の山火事と炭の有用性もまた、繋がっていることを再認識した。
読了日:09月20日 著者:四井真治

私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月感想
「こんにちはヤギさん!」で、町中でヤギを飼うことが壮絶に難しいことが理解できたので、今作はそう鼻息を荒くせず読んだ。しかしかわいい。そして賢い。まさおのエピソードは胸がギュっとした。私自身がマンション砂漠から緑豊かな地べたに移り、時機を読んで生える草、芽吹く木々のいちいちがワンダーな今は、内澤さんの草歳時記に夢中になる。九月『長月ながく 酷暑終わらず夏枯れのあと 芽吹き花咲きまるで春』ってまさに今。サツキが咲いたもの。去年は渋柿をいただいたのだった。今年もあるならいただけるかな。吊るす場所ができたので。
読了日:09月17日 著者:内澤 旬子

これでもいいのだ (中公文庫 し 56-1)これでもいいのだ (中公文庫 し 56-1)感想
オバサン期に突入して、気持ちに身体がついてこない歯がゆさはあっても、精神的にはほんとうにラクになった。若者の文化は理解できないが感情は読めるし受け流せるし、年寄りの行動も想像力が働いて生温かく見守ることもできる。私は私のしたいことがわかる。というラクさ加減に安心しきってはいけないのだな。人間の認知力は、類似物を一括りにする傾向があり、歳を重ねるほど加速する。しかし他人はそれぞれ個だ。括れば簡単に傷つけ、関係を阻害してしまう。その観察が著者は細かくて興味深い。
読了日:09月15日 著者:ジェーン・スー ファイル

これが見納め: 絶滅危惧の生きものたちに会いに行く (河出文庫)これが見納め: 絶滅危惧の生きものたちに会いに行く (河出文庫)感想
SF作家が動物学者と絶滅危惧種を見るために僻地へ旅する企画。この作家とは銀河ヒッチハイクシリーズの著者で、R・ドーキンスが親密な序文を寄せるのも肯ける傑作だ。独特のユーモアは読者を面白がらせるだけに留まらない。脱線のようでいて、ぐるっと周って人間の愚かさを横から蹴り飛ばす。そして、奥深い自然の中で動物に遭遇したときの、1対1の個として圧倒される素直な感慨はなにものにも替えがたい。自然との対峙のしかたとか、他生物と共存する世界の豊かさ、そのためにこそ活きる人類の知恵も希少動物同様、加速度的に喪っているのだ。
読了日:09月10日 著者:ダグラス・アダムス,マーク・カーワディン,リチャード・ドーキンス ファイル

遊牧民と村々のラグ キリム&パイルラグの本格ガイド遊牧民と村々のラグ キリム&パイルラグの本格ガイド感想
Aged Rugということで、平織りやパイル織りの、トルコからモンゴルにかけてのトライバルラグガイド。いわゆるギャッベ、生命の樹やライオンや風景が織り込まれたようなものはほとんど掲載されておらず、シンプルなもの、あるいはギュルやメダリオンが緻密に織り込まれたものが多いのは著者の好みか時代か。羊や山羊の毛を使い、当時は茜の根やウコンで染めて、今も遊牧民の女性が織ることが多い。部族の誇りや魔よけの祈りが込められていると知ると畏敬の念に圧倒される。
あったらいいねとリビングに敷くものを捜し歩いていたところ、トライバルラグの面白さに気づいた。トライバルラグの発祥は、つまり遊牧民が主たる中央アジアが中心か。これがモンゴルや中国あたりまで来ると、日本人に馴染みのある文様に寄ってくる。むしろ正確にはシルクロード伝いに、遊牧民のシンボルであったライオンは龍や鳳凰に、オオカミの足跡は花に、ギュルやメダリオンは中華文様に変化し、海を越えて日本の緞通が生まれた。絨毯古臭いと思ってた。ごめんなさい。凄いよ。
読了日:09月05日 著者:グランピエ商会 前田 慎司

電柱マニア電柱マニア感想
電柱マニア向けガイドブック、ではなく電柱マニアが書いたガイドブック。私がこの本を購入したのは、私を含め、現地を見ることが少ない(見ても判別できない)積算担当、資材発注担当が知識を深めるための社内教育図書としてである。さすがオーム社。正しく教育図書だった。当然ながら柱上配電設備だけの説明だが、機器の役割、玉がいしの意味、油入開閉器を柱上で使わない理由などなど知らんことがたくさんあった。がいしの配置パターンや電力会社ごとの腕金形状分類はどちらでもよろしい。窓の外の電柱をちらちら視認しながら読むのが良い。
読了日:09月03日 著者:須賀 亮行


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。


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