2018年09月01日
2018年8月の記録
手に入る限りは、本は新品を買って読む。
これは自分の収入で生活できている大人の責務だと思っている。
だから、図書館や新古書店へは行かない主義だ。
しかし1か月の書籍代が2万を超えた、これはやりすぎ。

<今月のデータ>
購入28冊、購入費用22,592円。
読了24冊。
積読本113冊(うちKindle本25冊)。

8月の読書メーター
読んだ本の数:24
土の学校 (幻冬舎文庫)の感想
無農薬のリンゴづくりに成功した木村さんの講義。旧来の農家の常識を、自らの体験で覆していくことの繰り返し、その凄みに、畏敬の念に打たれる。農業の機械化により牛馬が不要になり、雑草が生えるから除草剤を使い、土中細菌が減ってバランスが崩れ、虫が発生するから除虫剤を散布し、植物の力が弱まるから肥料を使い、ますます植物の生命力が弱まる悪循環。知識は失くしても生き物の、土の、地球の力を信じる心は失くさないことだと思う。リンゴの木の育て方も教えてくれる。土いじりをするならバイブルにしたい本。山の土の匂いを嗅ぎに行こう。
読了日:08月31日 著者:木村 秋則,石川 拓治
日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)の感想
今通っているお稽古を辞めたい思いが消えず、再読。『やめるまで、やめないでいる』という著者の言葉を何度も反芻して、私もここまできた。でも、苦しいのだ。解き放つことができない。何より自分で自分を苛んでいる。『心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一心に味わいなさい。(中略)自由になる道は、いつでも今ここにある』。そう感じられることがないわけではないけれど、それすら本物かどうか、自分でも信じられない。今回目に沁みた言葉は『会いたいと思ったら、会わなければいけない』。師匠だと感じた人に会いに行こう。
読了日:08月29日 著者:森下 典子
都市と野生の思考 (インターナショナル新書)の感想
対談本は、その二人の志向や人柄を知る入門本として読むことが多いのだが、これは手に負えなかった。山極氏の専門であるゴリラの生態から人間の性質の根源を見、人間社会つまり都市の現象を読み解こうという趣向だと推測するのだが、読んでいてもすぐに取り残される。少しのヒントからすぐに高次元の考察に移ってしまうからだ。交流がすでに深いこともあってか、論の展開も話題の移り変わりも速い。タイトルがレヴィ=ストロースの著作名を踏んでいることにすら気づかない私の知性がそもそも足りてない。ゴリラについてのエッセイを読むのが先かな。
中高年の日本人が、余暇やお金を自身の趣味に費やす件が面白かった。趣味は自分のため、「やってもやらなくてもいいこと」なので、人が集まってやっても本当の人のつながりは育たない。大切なのは「命の世話を一緒にやること」で、それこそ共同体の役割、中高年の果たすべき役割であるという論だ。時間をおいて再読だな。
読了日:08月29日 著者:鷲田 清一,山極 寿一
トヨタの片づけ (中経の文庫)の感想
事務所も倉庫も物だらけ。溜まっていく一方だ。しかし『人を責めるな。しくみを責めろ』なのである。考え方とノウハウがセットになっている。曰く「いつかは使う」には期限をもうける。「いらないもの」探しは壁ぎわから。「使わないもの」「使えないもの」を明らかにする。「見よう」としなくても「見える」が大事。様々なノウハウはすぐに取り入れたいところだが、重要なことに気づいてしまった。「決めたことができない」のはリーダーの責任。社長自身が5Sのわからない人である場合、社長にはどのようなきび団子を用意すればよいのか。悩む。
読了日:08月28日 著者:(株)OJTソリューションズ
美森まんじゃしろのサオリさん (光文社文庫)の感想
杉江松恋の書評が気にかかった小説。よくできたラノベと思いきや、どこか変わっている。住民が高齢化した山村が舞台だ。何でも屋の若者と最新技術や機械で生活が持続できている設定。風景描写が、ただ今見ているかのように美しい。住んでいる者の複雑な気持ちが、自分のそれのように詳しい。『時代が進むとともに、入ってくる人たちも昔よりはるかに異質になった』。ここは著者の住む村なのか。新しい者と古くから住む者を融合させるための祭。変えるのではなく、生むための。最後の真っ白な大仕掛けも劇的で面白い。ミステリとしては少々難あり。
読了日:08月27日 著者:小川 一水
猫びより 2018年 09 月号の感想
特集「保護猫ばんざい!」。メディアは世相を反映し、逆もしかり。だから、こういう特集が各誌で組まれるようになったのは嬉しい。個人が草の根で広めるよりも格段に早い速度で、保護猫という常識が広まることだろう。ミグノンやネコリパ、キャットガーディアンのような、組織のしっかりした団体が各地に根を下ろし、取材に対して体系立った知識を伝えられるようになったことも大きい。体験と知識を持ったタレントも増えた。「NO KILL」から「LOW KILL」へなど、動物愛護の流れに変化が起きていることもしっかり書かれていて良い。
読了日:08月26日 著者:
独裁の宴 - 世界の歪みを読み解く (中公新書ラクレ)の感想
「ウルトラ・ダラー」現実化の確認から、恒例のディープな話題へ。信頼関係と話題への踏込程度のコンセンサスができているので、安定感がある。実はあれはね、と舞台裏の「真実」を明かされる快感に私はすっかりはまっている。インテリジェンスの肝である近未来予測は健在で、それ故に世界の一寸先を脅かす不安要素が現実味を増す。”ほっぺたのおでき”こと、北朝鮮の核武装への短期的戦略についての議論には、凄まじい忌避感を覚える。日本が本物の主権国家として国を守る為に核は不要、ではすまないなんて、認めたくなくても広く議論は必要、か。
読了日:08月25日 著者:手嶋 龍一,佐藤 優
まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)の感想
都会って怖いとこやわ。偽装するとか、騙すとか、ヤられるとか、自傷するとか。まあ都会に限らないのだろうけど、なーんか見失って、自分を損なってしまうのは、なぜなんだろうね。そして尽果には、都会に跋扈するあれこれのものがない。食べることや相手を気遣うことをはじめ、人が生きることの大事なところを取り戻して、彼らは帰って行く。同じ場所で生きる他人を家族と、尽果を新しい故郷と思えるようになるという宝物付きで。…ってか、ほんまの母ちゃん生きとるんやけん、さっさと帰らんかー! 彼らの名前に特別な意味があるのかが気になる。
読了日:08月23日 著者:原田 マハ
朝、目覚めると、戦争が始まっていましたの感想
1文字当たり単価に鼻白むも、企画は興味深い。真珠湾攻撃すなわち太平洋戦争開戦の日、報道を聞いて著名人が何を書き残したか。検閲の厳しい時勢を考えると、心にもない文筆もあったのではないかと疑われ、執筆及び発表のタイミングが気になるところだが、ごく少数の激怒落胆を除いたほとんどの人は、どうも本当に感激し、喜び、陶酔したようなのだ。この日までに国内の鬱屈は最高潮だった。その空気を皆して醸成したことを、彼らは後年悔やみ、いまも声高に反戦を掲げている。もう少しで戦後80年。同じことを繰り返さずに済むか不安で仕方ない。
折口信夫『宣戦のみことのりの降ったをりの感激、せめてまう十年若くて、うけたまはらなかったことの、くちをしいほど、心をどりを覚えた』。こんなことを書かせても、美しい響きの文章になるんだなと変に感心した。
読了日:08月22日 著者:
ジャングル・ブック (文春文庫)の感想
健やかな物語。ジャングルで動物たちに育てられた少年の話は有名だが、私には今までに観たどの映画よりも、少年の心も身体も伸びやかに感じた。『ぼくにはジャングルがあるし、ジャングルの恵みがある! 陽の昇るところから沈むところまで、どこを探したってほかに欲しいものなんかない』。なんと羨ましい自由さだろう。『きみもぼくもひとつの家族だ』。ジャングルの動物たちがお互いに敵意のないことを伝える言葉だ。オオカミもクマも黒ヒョウも、ゾウもニシキヘビも共に生きる。共に闘う。村がジャングルに呑まれていく様子は圧巻だった。
読了日:08月21日 著者:ラドヤード キプリング
ウルトラ・ダラー (新潮文庫)の感想
面白かった! 外務省やインテリジェンス機関の描写が深い。それもそのはず、プロなのだから。それどころか、佐藤優氏曰く本物の情報が埋め込まれているという。『本当のような嘘』と『嘘のような本当』。告発、だろうか。虚構の中に、読む人が読めば気づく世界の様相と真実。そして10年後の今、北朝鮮の核兵器などいくつも実現化しているではないか。対談でも触れていたが、国境をまたいで仕事をする人たちは、自国や相手国の歴史や文化に造詣が深いことが必須だという。著者が着物の意匠や浮世絵、果ては競走馬を描くのも意外すぎて良かった。
『今後も日本が主権国家として“鋭い牙”を持たないのなら、ウサギがそうであるように、少なくとも“長い耳”は持っていなければいけません。長い耳をそばだてて、遥か彼方の微かな異変を、他者よりも何層倍の鋭敏さで感じ取り、それが引き起こす危機を予測し、危険を避けなければならない』
読了日:08月15日 著者:手嶋 龍一
風の谷のナウシカ 7の感想
コミック連載で達した結論。巨神兵の行く末もあり、シュワの解明もあり、トルメキアの王の進軍、民族間の対立も難航して、解決しなければならないことはたくさんある中、宮崎駿の行き着いた結末はこれかと、息を吐いた。命は、生きる限りより良い方へ向かおうと日々修正を重ねる。それを、1,000年も前にどうせ人間は駄目だからと修正プログラムを仕込むことが、生命への冒涜だとナウシカは怒ったのだろう。生命はより良く適応する。そして民族が自民族優先であることは、人類が適応する方向を多様化させる意味において、意義があると思った。
読了日:08月13日 著者:宮崎 駿
パゴダの国のサムライたち―「ビルマ国軍士官学校」出身者が築く、日本とミャンマーの絆の感想
亡祖父に戦友が贈った本らしい。日露戦争後、強いアジアを目指したアジア各国が日本の陸軍士官学校に送り込んだ人材は、その後日本軍の侵略に水を差されながらも、戦後の対日関係の礎となったという主旨。祖父はビルマへ出征しており、終戦後も何度となくビルマを訪れている。昭和57年、イラワジ河畔からアラカン山に沈む夕日を一緒に見た思い出を書いた手紙が挟まったままになっていた。祖父が当時現地で何をし、何を思っていたかは、何も語らなかった祖父が亡き今はわからないままで、少なくともその手がかりになる本ではなかった。
読了日:08月12日 著者:大田 周二
風の谷のナウシカ 6 (アニメージュコミックスワイド判)の感想
『人間の汚したたそがれの世界で私は生きていきます』。ナウシカが還ってきた。しかし寄りによってヤツを連れてこなくていいだろう。と思いながら、千尋がカオナシがついてくるのを拒まなかったのを思い出した。ただ優しいのとは違う。それも私の一部だから、か。拒まないことはたくさんを背負うこと。それでも思い描いていたものを目の当たりにすることで、いっそう強くなったように見える。そしてひょんな成り行きとはいえ、最大級の厄介を抱えこんでしまった。そもそも原因の悪人はあっさり退場してしまうし、最終巻どうするんだろね。
読了日:08月11日 著者:宮崎 駿
風の谷のナウシカ 5 (アニメージュコミックスワイド判)の感想
いろんな謎が解けつつある5巻。なんと、ナウシカは粘菌の声も聞こえるのか。王蟲は世界を自浄する術を知っている。オアシスの植物の苗床となるアフリカのゾウの話を思い出した。王蟲の目の美しい青色が印象深い。人間たちも、失ったものを悼みながら、民族の確執を越えて生きていく道を探るんじゃないか、なんて想像は、楽観的すぎるんだろう。また変なの出てきたし、片づいていない案件が多すぎる。物語はどんどこ進んだようで、道半ば。
読了日:08月10日 著者:宮崎 駿
風の谷のナウシカ 4 (アニメージュコミックスワイド判)の感想
ナウシカは再び旅立ち、戦争は続く。人々は武器を手に進攻し、上空で機銃掃射し爆撃を繰り返す攻撃では飽き足らなくなってきた。自然に人為を加えた生物兵器や核爆弾みたいに、この世界では粘菌や巨神兵を利用して、戦争はエスカレートしていく。やればやるほど人間の「想定外」の事態が手に負えなくなり、人間も蟲も住めない土地が増えていくわけで、希望が見えない。この時期、宮崎駿には見えていただろうか。一緒に惑っていた感じもする。それにしてもいくつもの民族が入り交じって、5巻まで読んで誤解に気づいたので書き直し。
読了日:08月10日 著者:宮崎 駿
父帰るの感想
私の祖母のような言葉遣いだから、菊池寛にはあえて現代讃岐弁で書いた小説、になる。さて20年前に家を捨てた父を迎え入れるか否か。賢一郎の啖呵は小気味良く、道理だ。そこで迎え入れては我こそが父代わりと踏んばってきた賢一郎が報われんやないか。我がが選んだ道なんやけんどこででも野垂れ死ねと私は思うのだが、母も弟も妹も迎え入れたい様子。最後には賢一郎も宗太郎を捜しに飛び出して行く、そこにはやはり親子の情愛があった…という落ち。なんやろな。私はそこに情愛が発生するとは思わん。説教臭く偉そうな菊池寛、やっぱ好かんわ。
読了日:08月09日 著者:菊池 寛
十五の夏 下の感想
下巻は佐藤少年がソ連に親しみを抱いた経緯と、ソ連横断からの帰国、その後の進路へ続いた道程だ。佐藤少年の目に映る世界が、40日間の旅の間にも、画一的な公立高校を離れてどんどん変わっていく。人生はなんと面白いのだろう。画一的な学生生活を送った私はなんとつまらない、成長のない日々だったか。そして、私たちは正しく知らずにロシア(ソ連)という国を忌避している。佐藤少年の目に映るソ連は優しかった。『日本人とロシア人、それからロシアの少数民族はお互いをあまりに知らなすぎる。政治体制、社会体制が違っても人間は人間です』。
読了日:08月08日 著者:佐藤 優
風の谷のナウシカ 3 (アニメージュコミックスワイド判)の感想
クシャナを裏切ったのは実父だった。自らを慕う軍隊を取り戻すべくクシャナは進軍、ナウシカも同行する。「トルメキアの白い魔女」と「青き衣の者」。この巻は二人の関係がおもしろい。クシャナがナウシカを「戦友」と呼んだ。クシャナの中でナウシカが敵でも隷属者でもない関係になった近しいひと時、二人は実によく似て見える。陰と陽の双子みたいだ。血塗られた道を割り切ったクシャナに対し、蟲と人間と動物、全ての命を大切にすることができない戦乱の世界にナウシカは打ちのめされている。しかしもちろん、挫けることはない。
読了日:08月07日 著者:宮崎 駿
Lily ――日々のカケラ――の感想
彼女の手や顔にはそれなりに年齢が表れている。しかし嫌らしさがない。年齢を重ねれば、生活の跡が手に、心の中が顔に表れる、はずが、こんなに美しいなんて。女優であれ一般人であれ、美しく力強くい続けるために大切なことをよく知っていて、自身を律せる人は美しい。ここに書かれていることが彼女の魅力を生む全てではないけれど、こういうことのひとつひとつがその人の佇まいをつくるのだ。ひとつ真似したいのは毎晩「微笑んだ顔で眠ること」。しわや筋肉の癖のことだけではなくて、それは世界を、自分自身を、とりあえず肯定する行為だから。
読了日:08月07日 著者:石田ゆり子
風の谷のナウシカ 2 (アニメージュコミックスワイド判)の感想
血なまぐさい。映画では最低限まで取り除かれていた戦闘シーン、飛行シーンに大きく頁が割かれている。映画ではクライマックスであった王蟲たちとの交流あたりから、物語は映画と大きく離れていく。異民族もたくさん出てきて、ナウシカの意思で物語が進むというよりは、ナウシカはいつもトルメキアや諸民族の謀に巻き込まれては、風の谷のため蟲たちのために独り飛び立っていくのだ。クシャナもまた孤立している。黄金の三つ編みが失われたくだりは切ない。アスベルの『戦場がいつも自分の国の外にあると思うのはまちがいだ』という台詞が印象深い。
読了日:08月06日 著者:宮崎 駿
風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)の感想
先月読んだ本で、漫画のナウシカにはライフワークの意味合いがあったと知り、大人買い。奥付を見ると1983年の発行からなんと135刷を重ね、国民的と言っていい作品だ。しかし当初のあとがきには『「アニメージュ」の人々にマンガを描くようにすすめられて、ついうかうかと自分流のナウシカを描きたいと思ったのが運のつき』と自嘲されるあたり、このような売れ行きになるとはつゆほども思われていなかったらしい。映画版の半分ほどまでの展開。馴染みがあるようで、ナウシカの内なる声や「辺境の民の誇りと自治」など不穏を予感させる。
読了日:08月05日 著者:宮崎 駿
産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)の感想
自分の子供を産めないとわかった後、養子を考える女性は2割という調査結果があるという。この本は不妊治療等と並行して、特別養子縁組を選択肢に入れることを提案する。なので、紹介されるケースは不妊治療を経た夫婦が多く、子供を授かることへの熱意は強い。最近はワーキングマザーでも育て親になれるというが、私にその意志があるかを強く問われていると感じた。子供のいる人生といない人生、優劣ではない。善悪でもない。どちらを選ぶか、自分の心に問い、あとは夫との話し合いだ。まだ間に合う。特別養子縁組の方法、条件、手続きも詳しい。
読了日:08月03日 著者:後藤 絵里
十五の夏 上の感想
いや、15歳じゃないやろ。とツッコミを入れたくなるくらい、公立高校一年生の佐藤君は破格である。勉強したての外国語でハンガリーの男子と文通し、一人で訪れた諸国の人々に暮らし、思想、国のことを訊ねまくる。コミュニケーション能力が高い。ご両親は佐藤氏に外国への関心という種を撒き、芽を育てた。それがこの旅なのだが、これが佐藤氏の人生に与えた影響は計り知れない。外国にさほど接触の無い両親でも、的確な教育指向があれば子供の未来を世界に広げていける事実に瞠目する。上巻は東欧諸国経由ロシア入国まで。食べ物がとかく旨そう。
読了日:08月02日 著者:佐藤 優
注:
はKindleで読んだ本。
これは自分の収入で生活できている大人の責務だと思っている。
だから、図書館や新古書店へは行かない主義だ。
しかし1か月の書籍代が2万を超えた、これはやりすぎ。

<今月のデータ>
購入28冊、購入費用22,592円。
読了24冊。
積読本113冊(うちKindle本25冊)。

8月の読書メーター
読んだ本の数:24

無農薬のリンゴづくりに成功した木村さんの講義。旧来の農家の常識を、自らの体験で覆していくことの繰り返し、その凄みに、畏敬の念に打たれる。農業の機械化により牛馬が不要になり、雑草が生えるから除草剤を使い、土中細菌が減ってバランスが崩れ、虫が発生するから除虫剤を散布し、植物の力が弱まるから肥料を使い、ますます植物の生命力が弱まる悪循環。知識は失くしても生き物の、土の、地球の力を信じる心は失くさないことだと思う。リンゴの木の育て方も教えてくれる。土いじりをするならバイブルにしたい本。山の土の匂いを嗅ぎに行こう。
読了日:08月31日 著者:木村 秋則,石川 拓治


今通っているお稽古を辞めたい思いが消えず、再読。『やめるまで、やめないでいる』という著者の言葉を何度も反芻して、私もここまできた。でも、苦しいのだ。解き放つことができない。何より自分で自分を苛んでいる。『心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一心に味わいなさい。(中略)自由になる道は、いつでも今ここにある』。そう感じられることがないわけではないけれど、それすら本物かどうか、自分でも信じられない。今回目に沁みた言葉は『会いたいと思ったら、会わなければいけない』。師匠だと感じた人に会いに行こう。
読了日:08月29日 著者:森下 典子

対談本は、その二人の志向や人柄を知る入門本として読むことが多いのだが、これは手に負えなかった。山極氏の専門であるゴリラの生態から人間の性質の根源を見、人間社会つまり都市の現象を読み解こうという趣向だと推測するのだが、読んでいてもすぐに取り残される。少しのヒントからすぐに高次元の考察に移ってしまうからだ。交流がすでに深いこともあってか、論の展開も話題の移り変わりも速い。タイトルがレヴィ=ストロースの著作名を踏んでいることにすら気づかない私の知性がそもそも足りてない。ゴリラについてのエッセイを読むのが先かな。
中高年の日本人が、余暇やお金を自身の趣味に費やす件が面白かった。趣味は自分のため、「やってもやらなくてもいいこと」なので、人が集まってやっても本当の人のつながりは育たない。大切なのは「命の世話を一緒にやること」で、それこそ共同体の役割、中高年の果たすべき役割であるという論だ。時間をおいて再読だな。
読了日:08月29日 著者:鷲田 清一,山極 寿一

事務所も倉庫も物だらけ。溜まっていく一方だ。しかし『人を責めるな。しくみを責めろ』なのである。考え方とノウハウがセットになっている。曰く「いつかは使う」には期限をもうける。「いらないもの」探しは壁ぎわから。「使わないもの」「使えないもの」を明らかにする。「見よう」としなくても「見える」が大事。様々なノウハウはすぐに取り入れたいところだが、重要なことに気づいてしまった。「決めたことができない」のはリーダーの責任。社長自身が5Sのわからない人である場合、社長にはどのようなきび団子を用意すればよいのか。悩む。
読了日:08月28日 著者:(株)OJTソリューションズ

杉江松恋の書評が気にかかった小説。よくできたラノベと思いきや、どこか変わっている。住民が高齢化した山村が舞台だ。何でも屋の若者と最新技術や機械で生活が持続できている設定。風景描写が、ただ今見ているかのように美しい。住んでいる者の複雑な気持ちが、自分のそれのように詳しい。『時代が進むとともに、入ってくる人たちも昔よりはるかに異質になった』。ここは著者の住む村なのか。新しい者と古くから住む者を融合させるための祭。変えるのではなく、生むための。最後の真っ白な大仕掛けも劇的で面白い。ミステリとしては少々難あり。
読了日:08月27日 著者:小川 一水


特集「保護猫ばんざい!」。メディアは世相を反映し、逆もしかり。だから、こういう特集が各誌で組まれるようになったのは嬉しい。個人が草の根で広めるよりも格段に早い速度で、保護猫という常識が広まることだろう。ミグノンやネコリパ、キャットガーディアンのような、組織のしっかりした団体が各地に根を下ろし、取材に対して体系立った知識を伝えられるようになったことも大きい。体験と知識を持ったタレントも増えた。「NO KILL」から「LOW KILL」へなど、動物愛護の流れに変化が起きていることもしっかり書かれていて良い。
読了日:08月26日 著者:

「ウルトラ・ダラー」現実化の確認から、恒例のディープな話題へ。信頼関係と話題への踏込程度のコンセンサスができているので、安定感がある。実はあれはね、と舞台裏の「真実」を明かされる快感に私はすっかりはまっている。インテリジェンスの肝である近未来予測は健在で、それ故に世界の一寸先を脅かす不安要素が現実味を増す。”ほっぺたのおでき”こと、北朝鮮の核武装への短期的戦略についての議論には、凄まじい忌避感を覚える。日本が本物の主権国家として国を守る為に核は不要、ではすまないなんて、認めたくなくても広く議論は必要、か。
読了日:08月25日 著者:手嶋 龍一,佐藤 優


都会って怖いとこやわ。偽装するとか、騙すとか、ヤられるとか、自傷するとか。まあ都会に限らないのだろうけど、なーんか見失って、自分を損なってしまうのは、なぜなんだろうね。そして尽果には、都会に跋扈するあれこれのものがない。食べることや相手を気遣うことをはじめ、人が生きることの大事なところを取り戻して、彼らは帰って行く。同じ場所で生きる他人を家族と、尽果を新しい故郷と思えるようになるという宝物付きで。…ってか、ほんまの母ちゃん生きとるんやけん、さっさと帰らんかー! 彼らの名前に特別な意味があるのかが気になる。
読了日:08月23日 著者:原田 マハ

1文字当たり単価に鼻白むも、企画は興味深い。真珠湾攻撃すなわち太平洋戦争開戦の日、報道を聞いて著名人が何を書き残したか。検閲の厳しい時勢を考えると、心にもない文筆もあったのではないかと疑われ、執筆及び発表のタイミングが気になるところだが、ごく少数の激怒落胆を除いたほとんどの人は、どうも本当に感激し、喜び、陶酔したようなのだ。この日までに国内の鬱屈は最高潮だった。その空気を皆して醸成したことを、彼らは後年悔やみ、いまも声高に反戦を掲げている。もう少しで戦後80年。同じことを繰り返さずに済むか不安で仕方ない。
折口信夫『宣戦のみことのりの降ったをりの感激、せめてまう十年若くて、うけたまはらなかったことの、くちをしいほど、心をどりを覚えた』。こんなことを書かせても、美しい響きの文章になるんだなと変に感心した。
読了日:08月22日 著者:

健やかな物語。ジャングルで動物たちに育てられた少年の話は有名だが、私には今までに観たどの映画よりも、少年の心も身体も伸びやかに感じた。『ぼくにはジャングルがあるし、ジャングルの恵みがある! 陽の昇るところから沈むところまで、どこを探したってほかに欲しいものなんかない』。なんと羨ましい自由さだろう。『きみもぼくもひとつの家族だ』。ジャングルの動物たちがお互いに敵意のないことを伝える言葉だ。オオカミもクマも黒ヒョウも、ゾウもニシキヘビも共に生きる。共に闘う。村がジャングルに呑まれていく様子は圧巻だった。
読了日:08月21日 著者:ラドヤード キプリング


面白かった! 外務省やインテリジェンス機関の描写が深い。それもそのはず、プロなのだから。それどころか、佐藤優氏曰く本物の情報が埋め込まれているという。『本当のような嘘』と『嘘のような本当』。告発、だろうか。虚構の中に、読む人が読めば気づく世界の様相と真実。そして10年後の今、北朝鮮の核兵器などいくつも実現化しているではないか。対談でも触れていたが、国境をまたいで仕事をする人たちは、自国や相手国の歴史や文化に造詣が深いことが必須だという。著者が着物の意匠や浮世絵、果ては競走馬を描くのも意外すぎて良かった。
『今後も日本が主権国家として“鋭い牙”を持たないのなら、ウサギがそうであるように、少なくとも“長い耳”は持っていなければいけません。長い耳をそばだてて、遥か彼方の微かな異変を、他者よりも何層倍の鋭敏さで感じ取り、それが引き起こす危機を予測し、危険を避けなければならない』
読了日:08月15日 著者:手嶋 龍一

コミック連載で達した結論。巨神兵の行く末もあり、シュワの解明もあり、トルメキアの王の進軍、民族間の対立も難航して、解決しなければならないことはたくさんある中、宮崎駿の行き着いた結末はこれかと、息を吐いた。命は、生きる限りより良い方へ向かおうと日々修正を重ねる。それを、1,000年も前にどうせ人間は駄目だからと修正プログラムを仕込むことが、生命への冒涜だとナウシカは怒ったのだろう。生命はより良く適応する。そして民族が自民族優先であることは、人類が適応する方向を多様化させる意味において、意義があると思った。
読了日:08月13日 著者:宮崎 駿

亡祖父に戦友が贈った本らしい。日露戦争後、強いアジアを目指したアジア各国が日本の陸軍士官学校に送り込んだ人材は、その後日本軍の侵略に水を差されながらも、戦後の対日関係の礎となったという主旨。祖父はビルマへ出征しており、終戦後も何度となくビルマを訪れている。昭和57年、イラワジ河畔からアラカン山に沈む夕日を一緒に見た思い出を書いた手紙が挟まったままになっていた。祖父が当時現地で何をし、何を思っていたかは、何も語らなかった祖父が亡き今はわからないままで、少なくともその手がかりになる本ではなかった。
読了日:08月12日 著者:大田 周二

『人間の汚したたそがれの世界で私は生きていきます』。ナウシカが還ってきた。しかし寄りによってヤツを連れてこなくていいだろう。と思いながら、千尋がカオナシがついてくるのを拒まなかったのを思い出した。ただ優しいのとは違う。それも私の一部だから、か。拒まないことはたくさんを背負うこと。それでも思い描いていたものを目の当たりにすることで、いっそう強くなったように見える。そしてひょんな成り行きとはいえ、最大級の厄介を抱えこんでしまった。そもそも原因の悪人はあっさり退場してしまうし、最終巻どうするんだろね。
読了日:08月11日 著者:宮崎 駿

いろんな謎が解けつつある5巻。なんと、ナウシカは粘菌の声も聞こえるのか。王蟲は世界を自浄する術を知っている。オアシスの植物の苗床となるアフリカのゾウの話を思い出した。王蟲の目の美しい青色が印象深い。人間たちも、失ったものを悼みながら、民族の確執を越えて生きていく道を探るんじゃないか、なんて想像は、楽観的すぎるんだろう。また変なの出てきたし、片づいていない案件が多すぎる。物語はどんどこ進んだようで、道半ば。
読了日:08月10日 著者:宮崎 駿

ナウシカは再び旅立ち、戦争は続く。人々は武器を手に進攻し、上空で機銃掃射し爆撃を繰り返す攻撃では飽き足らなくなってきた。自然に人為を加えた生物兵器や核爆弾みたいに、この世界では粘菌や巨神兵を利用して、戦争はエスカレートしていく。やればやるほど人間の「想定外」の事態が手に負えなくなり、人間も蟲も住めない土地が増えていくわけで、希望が見えない。この時期、宮崎駿には見えていただろうか。一緒に惑っていた感じもする。それにしてもいくつもの民族が入り交じって、5巻まで読んで誤解に気づいたので書き直し。
読了日:08月10日 著者:宮崎 駿

私の祖母のような言葉遣いだから、菊池寛にはあえて現代讃岐弁で書いた小説、になる。さて20年前に家を捨てた父を迎え入れるか否か。賢一郎の啖呵は小気味良く、道理だ。そこで迎え入れては我こそが父代わりと踏んばってきた賢一郎が報われんやないか。我がが選んだ道なんやけんどこででも野垂れ死ねと私は思うのだが、母も弟も妹も迎え入れたい様子。最後には賢一郎も宗太郎を捜しに飛び出して行く、そこにはやはり親子の情愛があった…という落ち。なんやろな。私はそこに情愛が発生するとは思わん。説教臭く偉そうな菊池寛、やっぱ好かんわ。
読了日:08月09日 著者:菊池 寛


下巻は佐藤少年がソ連に親しみを抱いた経緯と、ソ連横断からの帰国、その後の進路へ続いた道程だ。佐藤少年の目に映る世界が、40日間の旅の間にも、画一的な公立高校を離れてどんどん変わっていく。人生はなんと面白いのだろう。画一的な学生生活を送った私はなんとつまらない、成長のない日々だったか。そして、私たちは正しく知らずにロシア(ソ連)という国を忌避している。佐藤少年の目に映るソ連は優しかった。『日本人とロシア人、それからロシアの少数民族はお互いをあまりに知らなすぎる。政治体制、社会体制が違っても人間は人間です』。
読了日:08月08日 著者:佐藤 優


クシャナを裏切ったのは実父だった。自らを慕う軍隊を取り戻すべくクシャナは進軍、ナウシカも同行する。「トルメキアの白い魔女」と「青き衣の者」。この巻は二人の関係がおもしろい。クシャナがナウシカを「戦友」と呼んだ。クシャナの中でナウシカが敵でも隷属者でもない関係になった近しいひと時、二人は実によく似て見える。陰と陽の双子みたいだ。血塗られた道を割り切ったクシャナに対し、蟲と人間と動物、全ての命を大切にすることができない戦乱の世界にナウシカは打ちのめされている。しかしもちろん、挫けることはない。
読了日:08月07日 著者:宮崎 駿

彼女の手や顔にはそれなりに年齢が表れている。しかし嫌らしさがない。年齢を重ねれば、生活の跡が手に、心の中が顔に表れる、はずが、こんなに美しいなんて。女優であれ一般人であれ、美しく力強くい続けるために大切なことをよく知っていて、自身を律せる人は美しい。ここに書かれていることが彼女の魅力を生む全てではないけれど、こういうことのひとつひとつがその人の佇まいをつくるのだ。ひとつ真似したいのは毎晩「微笑んだ顔で眠ること」。しわや筋肉の癖のことだけではなくて、それは世界を、自分自身を、とりあえず肯定する行為だから。
読了日:08月07日 著者:石田ゆり子

血なまぐさい。映画では最低限まで取り除かれていた戦闘シーン、飛行シーンに大きく頁が割かれている。映画ではクライマックスであった王蟲たちとの交流あたりから、物語は映画と大きく離れていく。異民族もたくさん出てきて、ナウシカの意思で物語が進むというよりは、ナウシカはいつもトルメキアや諸民族の謀に巻き込まれては、風の谷のため蟲たちのために独り飛び立っていくのだ。クシャナもまた孤立している。黄金の三つ編みが失われたくだりは切ない。アスベルの『戦場がいつも自分の国の外にあると思うのはまちがいだ』という台詞が印象深い。
読了日:08月06日 著者:宮崎 駿

先月読んだ本で、漫画のナウシカにはライフワークの意味合いがあったと知り、大人買い。奥付を見ると1983年の発行からなんと135刷を重ね、国民的と言っていい作品だ。しかし当初のあとがきには『「アニメージュ」の人々にマンガを描くようにすすめられて、ついうかうかと自分流のナウシカを描きたいと思ったのが運のつき』と自嘲されるあたり、このような売れ行きになるとはつゆほども思われていなかったらしい。映画版の半分ほどまでの展開。馴染みがあるようで、ナウシカの内なる声や「辺境の民の誇りと自治」など不穏を予感させる。
読了日:08月05日 著者:宮崎 駿

自分の子供を産めないとわかった後、養子を考える女性は2割という調査結果があるという。この本は不妊治療等と並行して、特別養子縁組を選択肢に入れることを提案する。なので、紹介されるケースは不妊治療を経た夫婦が多く、子供を授かることへの熱意は強い。最近はワーキングマザーでも育て親になれるというが、私にその意志があるかを強く問われていると感じた。子供のいる人生といない人生、優劣ではない。善悪でもない。どちらを選ぶか、自分の心に問い、あとは夫との話し合いだ。まだ間に合う。特別養子縁組の方法、条件、手続きも詳しい。
読了日:08月03日 著者:後藤 絵里

いや、15歳じゃないやろ。とツッコミを入れたくなるくらい、公立高校一年生の佐藤君は破格である。勉強したての外国語でハンガリーの男子と文通し、一人で訪れた諸国の人々に暮らし、思想、国のことを訊ねまくる。コミュニケーション能力が高い。ご両親は佐藤氏に外国への関心という種を撒き、芽を育てた。それがこの旅なのだが、これが佐藤氏の人生に与えた影響は計り知れない。外国にさほど接触の無い両親でも、的確な教育指向があれば子供の未来を世界に広げていける事実に瞠目する。上巻は東欧諸国経由ロシア入国まで。食べ物がとかく旨そう。
読了日:08月02日 著者:佐藤 優

注:

Posted by nekoneko at 09:39│Comments(0)
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