2019年12月02日
2019年11月の記録
十二国記まつりがひと段落。
長く楽しみにできるシリーズがあるというのは幸せなものですね。
さてまだまだ夜は長い。
迷うほど積読本があるのもまた幸せなこと。
<今月のデータ>
購入20冊、購入費用23,178円。
読了14冊。
積読本196冊(うちKindle本74冊)。

11月の読書メーター
読んだ本の数:12
アメリカ炎上通信 言霊USA XXLの感想
どうしても、メガトン級馬鹿のトランプネタが多くなるのは仕方ない。もうほんっっっとに、安倍と同じくらい辟易しているのだが、この両者の何が違うといって、アメリカではメディアや著名人が黙っておらず、手厳しく反対を表明していることだろう。とはいえ、さすがのアメリカでも解任はできてないんだけど。"ガスライト"されたらいかんね。私も顔に落書きしたい。悪魔教寺院みたいな斬新な取り組みや、キアヌやアリアナの芸能ネタがアメリカならではで好き。イラストのキレっぷりは健在。ペニーワイズ風のマイケル・ジャクソンがぞっとさせるね。
読了日:11月30日 著者:町山 智浩
経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方の感想
アトキンソン氏が指摘するような努力を経済界はすべきで、しかし他方では、今と同じを維持できない以上、下り坂の日本の暮らしがどうなるのか気になる。数字とたくさんの実例からお二人が描く像はだいたい共通している。金銭を稼ぐことに消耗するのではなく、かといって帰農100%でもなく、複業や半農半Xなど、古くて新しい多様な生き方が地方では既に生まれている。多様で小さな活動には入りづらい雰囲気があるが、これは必要が生じれば越えられるものだろう。食料とエネルギーの自給率をどうやって上げるかなあ。たくましく楽しく生きる術。
どうやら地方都市より東京が先に衰退しそうだ。東京は大きすぎるし、大資本が投入されていて問題が見えづらい。地方は既に人が減り始めて、それぞれ対策を模索している。だがうまく変われている市町とそうでない市町があって、行政の機動力、特に首長のセンスが問われるという。高松も少し大きすぎる気がする。国分寺や香川町や塩江はもう一度分離したほうがいいんじゃないか。多様性格差を見極めて、元気な地域を今から注視しておこう。こうなるとリニアも四国新幹線も絶対に要らん。
読了日:11月29日 著者:藻谷 浩介,平田 オリザ
白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)の感想
阿選は愚かだが馬鹿ではない。麾下の忠誠と妖魔を利用した殲滅作戦は確実に民の命を棄ててゆく。仲間を失う痛みが辛い。これは最早ファンタジーじゃないだろう。ホワイトハート時代がなんと気楽に思えることか。でも、戦争ってこういうことだ。『嫌な時代に生まれちまったなあ』と朽桟は述懐した。民がそう感じる国は駄目だ。角を斬られた故に麒麟にあり得ぬ方法で驍宋を救うよりなかった泰麒が、やはり痛々しい。ともあれ泰は再起の機を得た。しかし小野さんは大団円を描かない。新元号「明幟」と聞いてまた震える。長くあれ。泰の民の願いと共に。
読了日:11月26日 著者:小野 不由美
会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。の感想
会社という枠組みの中で、私たちが自らにかけている縛り。うちの会社は外からどんなふうに見えるか考えてみる。日々無自覚に従っている慣例や"常識"が、実は会社と経営者を守るためで、従業員を我慢させている、のだろうな。過去にお金で苦しい思いをした経営者は、つい守りを重視する。しかし「充分な内部留保」のラインは無いだろう。それよりも、これからずっと働いてもらうつもりの社員がこれからの苦しい日本を生き抜くうえで有効なものを与えることが大事なんじゃないか。給与と教育、環境、加えて自由。中小企業だからこそ柔軟に変わろう。
読了日:11月26日 著者:青野 慶久
日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義の感想
少子高齢化×人口減少という差し迫った危機に対し、企業の生産性向上こそ解と著者は説く。日本には中小企業が多すぎるという指摘には反射的な抵抗を覚えたが、表層的なビジネス論ではなく、事実分析と研究に基づいた提言は納得至極だった。生産年齢層の減少につれ、中小企業の大淘汰時代が来る。単純計算では、うちと同じ規模の企業は半減するという。逆に取れば、著者の指摘する中小企業の弱みを先手を打って克服するならば、うちにも充分勝機が生まれるということではないか? それには機敏な大転換が必要であり、簡単なことではないんだけども。
『生産性向上のためには企業の規模を拡大するメリットが大きい』。中小企業は環境の変化に事後対応する傾向が強いという。設備投資や教育が行き届きづらい、分母が小さいので休む人員の補填が効きづらいなど、弱点が多々挙げ連ねられている。しかし、技術のみならず、中小企業の長所はあるはずだと頑強に思う。経営者の資質アップと、賃金の底上げによる生産性向上。巷で噂のM&Aもやりようで、他の施策についても考え方の転換ができて良かった。小さな企業を守ることは経営者を守っているだけのこと、とは手厳しいが、認めるところから始めよう。
『日本人の変わらない力は異常』。常日頃から根拠薄弱な反論を受けるとみえ、苛立ちが透けて見える。自国事ながら笑ってしまった。旧態依然の考え方を変革させるべく、皮肉を交えながらも理を尽くす著者の姿勢はその辺の日本人よりも信頼に足る。経済団体やそれに拘束される政党は、大変革に消極的だ。しかし国の政策如何にこの国の未来はかかっている。この国の福祉制度を存続させるためにはGDP維持が必要なのだ。目先小手先の対処ではなく、Low road capitalism="低付加値・低所得資本主義"を抜け出さなければならない。
読了日:11月20日 著者:デービッド アトキンソン
白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)の感想
阿選が王かとの問いに泰麒は明確に否と答え、数多の人を死に追いやった記憶を梃子にして、麒麟としての性質さえ偽りで糊塗してふるまう。こんな痛々しい麒麟は他にない。全ては驍宋を玉座に戻し、戴の民を救うため。阿選が偽王に立って6年。阿選は自分を評価しない民を見捨てた。民にとって6年が6年であったと同じく、仙といえど阿選にも驍宋にも麾下たちにも、6年は6年だった。その間凝らせた暗黒はより深く、戴再興へと集まる民意もより強まる。様々なものが根深くなった中、驍宋が姿を現した瞬間に起きる化学爆発や如何に。待ち遠しい。
読了日:11月19日 著者:小野 不由美
犬は勘定に入れません 下―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-7)の感想
そういやミステリだったか。「このミス」での評価が高かったので読むことにしたのだったが、もう時空連続体の自己修復からもグランドデザインからも興味(意識)が遠のいて、シリルとプリンセス・アージュマンドの"かあいい"様子を見届けるためだけに読み終えたようなものだ。彼らのオチは好かった。まあ、引用の元ネタを知っているほうが楽しい。なんで「犬を勘定に入れない」のかとといえば、「ボートの三人男」の副題に宣言されているからだ。そしてそれがなぜかは、やはり冗長さにうんざりして「ボートの三人男」を投げ出したので不明のまま。
読了日:11月15日 著者:コニー・ウィリス
新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべての感想
企業が利益増大を優先する限り、いくら"環境に配慮"しても環境破壊は止まらない。とっくに持続可能なレベルを超えているからだ。『自然界のお先は真っ暗』とパタゴニア創設者は言う。つい先日、パタゴニアはSNSで「機能性、フェアトレード・サーティファイドの縫製、リサイクル素材の使用について、全ての防水性シェルで100%を達成した」と宣言した。人間は生きているだけで環境に負担をかける。だが負担をかけるなりに、事業がもたらす悪影響の低減に努めつつ利益を上げることが可能だと証明したのだ。この理念、私の胸にしかと刻む。
もはや『天然繊維だけを使って世界中の人々に衣料を供給するなどとてもできない』とパタゴニアは認識している。現状では綿の栽培、ウールの加工、染色も自然に多大な負荷をかけている。コットンよりもせめてオーガニックコットン。ヘンプ、リネン。ポリエステルの再生。パタゴニアが現時点で選ぶ手段は、プラスチックごみをリサイクルして衣料をつくること、自社製品のリサイクル、中古自社製品の再販である。そしてカスタマーの取れるより良い判断は、環境に配慮された製品一つ一つを長く使用すること、もっと良いのはなにも買わないことだ。
『現実とあるべき姿の違い』から目を逸らさない。パタゴニアは売上の1%を地球税と称して慈善活動団体に寄付している。千の市民運動グループのほうが巨大組織一つや政府よりたくさんの成果をあげられると考えているからだ。『草の根の小さな市民団体』の持つ力を信じている。最近は寄付仲介サイトでもたくさんのプロジェクトがある。災害時の寄付も動物愛護もそうなんだけど、自分が寄付しようとしている団体が何をするかのチェックは大事で、えてして名もない小さな団体が大きな成果を生むことはある。だから、ちゃんと見極める目を持ちたい。
読了日:11月05日 著者:イヴォン・シュイナード
はっとりさんちの狩猟な毎日の感想
よぅ結婚したなこの人。とかねがね思っていた。その奥さんのエッセイ。冒険家だから危険な山行をして心配だとか、子育てで大変な時に山へ行ってて居ないとかのレベルではない。服部文祥の研ぎ澄ました美学も他者に強いれば暴力的で、他人なら放置できる事も家族なら丸ごと振り回されるのが明らかだからだ。『平穏に暮らす人々に対し、生きることの意味を無理やり考えさせるような挑発をするので、家族はいつも苦笑いしている』。どうやら小雪さんは押し切られる性格のようだ。だから振り回されながら見守れるのだろう。色鉛筆のイラストが優しい。
読了日:11月04日 著者:服部小雪,服部文祥
犬は勘定に入れません 上―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (1) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-6)の感想
タイムトラベルもの。ヴィクトリア朝時代の登場人物たちは、テニスンやルイス・キャロルを引用しては我が道を邁進し、物事が主人公の思うとおりに進むことがない。その無軌道さはまるきりシリル(犬)やプリンセス・アージュマンド(猫)並みで、果たして時流の齟齬は解消されて終われるのか心配だ。基本的に、逸脱で物語ができている。というのも、『ボートの三人男』の登場人物本人たちに出くわして主人公が感激する場面に象徴されるとおり、これは『ボートの三人男』へのオマージュなのだ。イギリス文学の素養があるともっと楽しめるのかな。
読了日:11月04日 著者:コニー・ウィリス
火を焚きなさい―山尾三省の詩のことばの感想
社会の役に立ちたいのと同じくらい、山に引きこもって自然と対峙しながら生きていきたい願望が私にはある。人間の野生に従い、自然の恵みに祈りを捧げながら、静かに生きる。そんな暮らしを極端に具現した山尾三省の言葉には地面にずっしりと根を張った力がある。読む者を圧倒し、共振させ、空を見上げさせる。詩とは、私はそのようなものであってほしい。現代社会を『悪い時代』と厭う詩は、あんまり好きじゃない。人の美しい営みを詠ってほしい。気に入ったのは、夜中に独りで焼酎を飲みながら、鹿の鳴き声を聴く詩。クィーオウ クィーオウ。
読了日:11月01日 著者:山尾 三省
食にまつわる55の不都合な真実 (ディスカヴァー携書)の感想
確かに「食にまつわる不都合な真実」だが、だいたい皆がそれなりに知っている真実である。女子大学の講師だそうなので、リベラルアーツ的な方向で書かれたのかとも思ったが、それなら数字の羅列ではなく、グラフなど視覚的に把握しやすいツールを活用すべきだろう。数字はともかく、私にはいわずもがなの事柄ばかりだった。書かれている様々の事象は、フードマイレージの高さをはじめ、日本の食料自給率の低さに由来するものが多い。総人口が減るなら減るなりに、農産物及び畜産物の生産者層を一定割合確保しないと、今後大きな懸念事項になりそう。
読了日:11月01日 著者:金丸 弘美
注:
はKindleで読んだ本。
長く楽しみにできるシリーズがあるというのは幸せなものですね。
さてまだまだ夜は長い。
迷うほど積読本があるのもまた幸せなこと。
<今月のデータ>
購入20冊、購入費用23,178円。
読了14冊。
積読本196冊(うちKindle本74冊)。

11月の読書メーター
読んだ本の数:12

どうしても、メガトン級馬鹿のトランプネタが多くなるのは仕方ない。もうほんっっっとに、安倍と同じくらい辟易しているのだが、この両者の何が違うといって、アメリカではメディアや著名人が黙っておらず、手厳しく反対を表明していることだろう。とはいえ、さすがのアメリカでも解任はできてないんだけど。"ガスライト"されたらいかんね。私も顔に落書きしたい。悪魔教寺院みたいな斬新な取り組みや、キアヌやアリアナの芸能ネタがアメリカならではで好き。イラストのキレっぷりは健在。ペニーワイズ風のマイケル・ジャクソンがぞっとさせるね。
読了日:11月30日 著者:町山 智浩


アトキンソン氏が指摘するような努力を経済界はすべきで、しかし他方では、今と同じを維持できない以上、下り坂の日本の暮らしがどうなるのか気になる。数字とたくさんの実例からお二人が描く像はだいたい共通している。金銭を稼ぐことに消耗するのではなく、かといって帰農100%でもなく、複業や半農半Xなど、古くて新しい多様な生き方が地方では既に生まれている。多様で小さな活動には入りづらい雰囲気があるが、これは必要が生じれば越えられるものだろう。食料とエネルギーの自給率をどうやって上げるかなあ。たくましく楽しく生きる術。
どうやら地方都市より東京が先に衰退しそうだ。東京は大きすぎるし、大資本が投入されていて問題が見えづらい。地方は既に人が減り始めて、それぞれ対策を模索している。だがうまく変われている市町とそうでない市町があって、行政の機動力、特に首長のセンスが問われるという。高松も少し大きすぎる気がする。国分寺や香川町や塩江はもう一度分離したほうがいいんじゃないか。多様性格差を見極めて、元気な地域を今から注視しておこう。こうなるとリニアも四国新幹線も絶対に要らん。
読了日:11月29日 著者:藻谷 浩介,平田 オリザ


阿選は愚かだが馬鹿ではない。麾下の忠誠と妖魔を利用した殲滅作戦は確実に民の命を棄ててゆく。仲間を失う痛みが辛い。これは最早ファンタジーじゃないだろう。ホワイトハート時代がなんと気楽に思えることか。でも、戦争ってこういうことだ。『嫌な時代に生まれちまったなあ』と朽桟は述懐した。民がそう感じる国は駄目だ。角を斬られた故に麒麟にあり得ぬ方法で驍宋を救うよりなかった泰麒が、やはり痛々しい。ともあれ泰は再起の機を得た。しかし小野さんは大団円を描かない。新元号「明幟」と聞いてまた震える。長くあれ。泰の民の願いと共に。
読了日:11月26日 著者:小野 不由美

会社という枠組みの中で、私たちが自らにかけている縛り。うちの会社は外からどんなふうに見えるか考えてみる。日々無自覚に従っている慣例や"常識"が、実は会社と経営者を守るためで、従業員を我慢させている、のだろうな。過去にお金で苦しい思いをした経営者は、つい守りを重視する。しかし「充分な内部留保」のラインは無いだろう。それよりも、これからずっと働いてもらうつもりの社員がこれからの苦しい日本を生き抜くうえで有効なものを与えることが大事なんじゃないか。給与と教育、環境、加えて自由。中小企業だからこそ柔軟に変わろう。
読了日:11月26日 著者:青野 慶久

少子高齢化×人口減少という差し迫った危機に対し、企業の生産性向上こそ解と著者は説く。日本には中小企業が多すぎるという指摘には反射的な抵抗を覚えたが、表層的なビジネス論ではなく、事実分析と研究に基づいた提言は納得至極だった。生産年齢層の減少につれ、中小企業の大淘汰時代が来る。単純計算では、うちと同じ規模の企業は半減するという。逆に取れば、著者の指摘する中小企業の弱みを先手を打って克服するならば、うちにも充分勝機が生まれるということではないか? それには機敏な大転換が必要であり、簡単なことではないんだけども。
『生産性向上のためには企業の規模を拡大するメリットが大きい』。中小企業は環境の変化に事後対応する傾向が強いという。設備投資や教育が行き届きづらい、分母が小さいので休む人員の補填が効きづらいなど、弱点が多々挙げ連ねられている。しかし、技術のみならず、中小企業の長所はあるはずだと頑強に思う。経営者の資質アップと、賃金の底上げによる生産性向上。巷で噂のM&Aもやりようで、他の施策についても考え方の転換ができて良かった。小さな企業を守ることは経営者を守っているだけのこと、とは手厳しいが、認めるところから始めよう。
『日本人の変わらない力は異常』。常日頃から根拠薄弱な反論を受けるとみえ、苛立ちが透けて見える。自国事ながら笑ってしまった。旧態依然の考え方を変革させるべく、皮肉を交えながらも理を尽くす著者の姿勢はその辺の日本人よりも信頼に足る。経済団体やそれに拘束される政党は、大変革に消極的だ。しかし国の政策如何にこの国の未来はかかっている。この国の福祉制度を存続させるためにはGDP維持が必要なのだ。目先小手先の対処ではなく、Low road capitalism="低付加値・低所得資本主義"を抜け出さなければならない。
読了日:11月20日 著者:デービッド アトキンソン


阿選が王かとの問いに泰麒は明確に否と答え、数多の人を死に追いやった記憶を梃子にして、麒麟としての性質さえ偽りで糊塗してふるまう。こんな痛々しい麒麟は他にない。全ては驍宋を玉座に戻し、戴の民を救うため。阿選が偽王に立って6年。阿選は自分を評価しない民を見捨てた。民にとって6年が6年であったと同じく、仙といえど阿選にも驍宋にも麾下たちにも、6年は6年だった。その間凝らせた暗黒はより深く、戴再興へと集まる民意もより強まる。様々なものが根深くなった中、驍宋が姿を現した瞬間に起きる化学爆発や如何に。待ち遠しい。
読了日:11月19日 著者:小野 不由美

そういやミステリだったか。「このミス」での評価が高かったので読むことにしたのだったが、もう時空連続体の自己修復からもグランドデザインからも興味(意識)が遠のいて、シリルとプリンセス・アージュマンドの"かあいい"様子を見届けるためだけに読み終えたようなものだ。彼らのオチは好かった。まあ、引用の元ネタを知っているほうが楽しい。なんで「犬を勘定に入れない」のかとといえば、「ボートの三人男」の副題に宣言されているからだ。そしてそれがなぜかは、やはり冗長さにうんざりして「ボートの三人男」を投げ出したので不明のまま。
読了日:11月15日 著者:コニー・ウィリス


企業が利益増大を優先する限り、いくら"環境に配慮"しても環境破壊は止まらない。とっくに持続可能なレベルを超えているからだ。『自然界のお先は真っ暗』とパタゴニア創設者は言う。つい先日、パタゴニアはSNSで「機能性、フェアトレード・サーティファイドの縫製、リサイクル素材の使用について、全ての防水性シェルで100%を達成した」と宣言した。人間は生きているだけで環境に負担をかける。だが負担をかけるなりに、事業がもたらす悪影響の低減に努めつつ利益を上げることが可能だと証明したのだ。この理念、私の胸にしかと刻む。
もはや『天然繊維だけを使って世界中の人々に衣料を供給するなどとてもできない』とパタゴニアは認識している。現状では綿の栽培、ウールの加工、染色も自然に多大な負荷をかけている。コットンよりもせめてオーガニックコットン。ヘンプ、リネン。ポリエステルの再生。パタゴニアが現時点で選ぶ手段は、プラスチックごみをリサイクルして衣料をつくること、自社製品のリサイクル、中古自社製品の再販である。そしてカスタマーの取れるより良い判断は、環境に配慮された製品一つ一つを長く使用すること、もっと良いのはなにも買わないことだ。
『現実とあるべき姿の違い』から目を逸らさない。パタゴニアは売上の1%を地球税と称して慈善活動団体に寄付している。千の市民運動グループのほうが巨大組織一つや政府よりたくさんの成果をあげられると考えているからだ。『草の根の小さな市民団体』の持つ力を信じている。最近は寄付仲介サイトでもたくさんのプロジェクトがある。災害時の寄付も動物愛護もそうなんだけど、自分が寄付しようとしている団体が何をするかのチェックは大事で、えてして名もない小さな団体が大きな成果を生むことはある。だから、ちゃんと見極める目を持ちたい。
読了日:11月05日 著者:イヴォン・シュイナード

よぅ結婚したなこの人。とかねがね思っていた。その奥さんのエッセイ。冒険家だから危険な山行をして心配だとか、子育てで大変な時に山へ行ってて居ないとかのレベルではない。服部文祥の研ぎ澄ました美学も他者に強いれば暴力的で、他人なら放置できる事も家族なら丸ごと振り回されるのが明らかだからだ。『平穏に暮らす人々に対し、生きることの意味を無理やり考えさせるような挑発をするので、家族はいつも苦笑いしている』。どうやら小雪さんは押し切られる性格のようだ。だから振り回されながら見守れるのだろう。色鉛筆のイラストが優しい。
読了日:11月04日 著者:服部小雪,服部文祥

タイムトラベルもの。ヴィクトリア朝時代の登場人物たちは、テニスンやルイス・キャロルを引用しては我が道を邁進し、物事が主人公の思うとおりに進むことがない。その無軌道さはまるきりシリル(犬)やプリンセス・アージュマンド(猫)並みで、果たして時流の齟齬は解消されて終われるのか心配だ。基本的に、逸脱で物語ができている。というのも、『ボートの三人男』の登場人物本人たちに出くわして主人公が感激する場面に象徴されるとおり、これは『ボートの三人男』へのオマージュなのだ。イギリス文学の素養があるともっと楽しめるのかな。
読了日:11月04日 著者:コニー・ウィリス


社会の役に立ちたいのと同じくらい、山に引きこもって自然と対峙しながら生きていきたい願望が私にはある。人間の野生に従い、自然の恵みに祈りを捧げながら、静かに生きる。そんな暮らしを極端に具現した山尾三省の言葉には地面にずっしりと根を張った力がある。読む者を圧倒し、共振させ、空を見上げさせる。詩とは、私はそのようなものであってほしい。現代社会を『悪い時代』と厭う詩は、あんまり好きじゃない。人の美しい営みを詠ってほしい。気に入ったのは、夜中に独りで焼酎を飲みながら、鹿の鳴き声を聴く詩。クィーオウ クィーオウ。
読了日:11月01日 著者:山尾 三省

確かに「食にまつわる不都合な真実」だが、だいたい皆がそれなりに知っている真実である。女子大学の講師だそうなので、リベラルアーツ的な方向で書かれたのかとも思ったが、それなら数字の羅列ではなく、グラフなど視覚的に把握しやすいツールを活用すべきだろう。数字はともかく、私にはいわずもがなの事柄ばかりだった。書かれている様々の事象は、フードマイレージの高さをはじめ、日本の食料自給率の低さに由来するものが多い。総人口が減るなら減るなりに、農産物及び畜産物の生産者層を一定割合確保しないと、今後大きな懸念事項になりそう。
読了日:11月01日 著者:金丸 弘美

注:

Posted by nekoneko at 17:52│Comments(0)
│読書