2019年11月01日
2019年10月の記録
ジュンク堂恒例の、秋の読書キャンペーンが始まったのでそわそわしている。
税込 10,000円で図書カード 500円。税込 2,000円でオリジナル手ぬぐい。
これだけ本棚に本を積んでおきながら、欲しい本には事欠かない。
だから図書カードって、一瞬でなくなっちゃうんですよね…。
<今月のデータ>
購入15冊、購入費用17,607円。
読了14冊。
積読本192冊(うちKindle本73冊)。

10月の読書メーター
読んだ本の数:14
「社会を変える」お金の使い方――投票としての寄付 投資としての寄付の感想
寄付先の選び方に、いつも迷う。世界的な飢餓も大きな問題だが、できればもっと身近な相手を助けられないか、と。著者の経験からヒントを得た。まず「寄付は「見返りを求めない」というセンスを鍛える機会」という考え方が腑に落ちた。それから、国家が動かない(動けない)なら自分たちがNPOを立ち上げて動けばいい、むしろ個々のNPOの取り組みが国家を変えるというビジョン。満濃池も民間ボランティアによって改修された。行政だけが公共ではない。不覚にも自分も立ち上がる側になれるんじゃないかと思ったが、まずは活動を知ることだ。
鳩山元総理のエピソードが胸に重い。現職時、彼は自らNPO団体に声をかけた。『国民が自ら公共を担っていく』政策を模索する為だ。そして諮問会議を開催し、議論を重ね、寄付税制改革が現実になろうとしたところで、総理辞任に追い込まれた。私たちが辞めさせたのは、誰だったんだろう。宇宙人だなどと揶揄して辞めさせた、一人の政治家の思い。確かに、政治はそれだけじゃないし、民主党は総じて政権運営能力に欠けていたんだろうけれど、私たちは大事なものを受け取りそこなってたんじゃないの。鳩山元総理の会議内の発言も収録されています。
読了日:10月31日 著者:駒崎弘樹
白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)の感想
そんなまさかと狼狽えた。泰麒が知ったらと推し量ってはいたわしく思う。いや、彼はもう察知しているのか。泰麒の内心が一向に窺えない。だからこそひたすら思い巡らされる。泰麒はこの状況を是としているのか。いとけない泰麒の記憶を抱いているのは読み手も同じだ。驍宋を慕っていた泰麒ではなく、麒麟としての本性を発揮する泰麒として、本当に王が誰であろうと構わないのか。阿選や王宮内の様子が垣間見えた一方、国内の点景はさらに荒廃と絶望を極め、やがて不穏な蠢きが見え始めた。そろそろ怒涛の如く事態が好転する、と信じたいのだが。
長編小説には、物語や人物の組み立て及びその巧拙とは別に、著者の現実における世情への印象や思想が否応なく反映されるものであり、それらが相まってこそその小説の世界観なのであると、先日観た"深読み読書会"で誰かが言っていた。以前の短編で裁判員制度を主題においたように、小野さんの小説には小野さんが憂うものが現れる。この2巻でそれに確信を得たと思う。小野センセ、それはこの国の今いちばんダークな部分。遠大かつ如何とも捉え難いそれに挑んで、答えを出されたのでしょうか。ぐるぐる巡らされる解題、どこまでも付いていきます。
読了日:10月27日 著者:小野 不由美
植物はヒトを操る (Mainichi Science)の感想
プロの育種家竹下氏といとうせいこうの対談。軽い気持ちで読めるが、さらりと出る話題がべらぼうに面白い。八重咲の花ができる仕組み、純白の花が自然界に存在しない事実、ビールの主原料が大麦である必然性等々。『僕の把握している地球っていう空間が豊かにゆがむ』。いとう氏の関心は、国境なき医師団しかり、私の関心とつながっていると感じる。植物の育種は特異なものを選ぶ作業の連続だ。それは即ち遺伝的な多様性を失わせる。だから、多くの遺伝情報が残っている野生種や古い品種を絶やさないために、種を保存するのだそうだ。
日本人は実利のためにと杉の木を植えすぎて、花粉症という拒否反応を重症化させてしまった。これに懲りた日本人は、他の種類の木を植え始めた。焦った杉は、ここ数年で花粉を出さないタイプの杉を出現させたという。「焦った」という擬人表現以外に、杉が花粉を出さなくなる理由が思いつかないよなあ。植物は、人間によって自らの種を繁栄させるべく進化しているように見える。そこを逆手に取って、「植物がヒトを操る」と題したのは巧い。ちなみに人間に大量に杉を植えさせたのも、杉の策略のうち、である。
読了日:10月22日 著者:いとう せいこう,竹下 大学
これからの本屋読本の感想
保育園児だった頃「本屋さんになりたい」と言っていた私と、ええ中年になった今、一箱古本市への出店を楽しんでいる私はつながっているのだろう。一箱古本市の店主としての私は、自分の棚の後ろに立つと話しかけられたくてそわそわしてしまう。だが、読書する行為も本自体もプライベートなものであるならば、本を買う時も他者の存在抜きで買いたいのは私だってそうだと納得した。また客の視点で読んでは、時間が経つにつれて本棚が深くなっていくという表現に陶然とした。同時にルヌガンガのことを思う。もっと頻繁に通って、その深化を楽しみたい。
地元書店の支店店舗の、平板でブツ切りの棚に幻滅するのはそういう理由なんだなとも納得した。書店には目に見えない制限がたくさんあり、書店員の誰もが本のプロフェッショナルであるとは限らない。しかしそんな書店でも無いよりは有るほうがよいのであって、それなりに応援していこうと思った。というわけで、最近は「ネットで注文した本を受け取る場所」と化している。
読了日:10月22日 著者:内沼 晋太郎
ハチミツの「危ない話」―本物のハチミツを食べてみたい!の感想
日本のハチミツ事情及びミツバチの飼育に詳しい。日本のハチミツの規制が異常に緩いために、本物のハチミツを店頭で見分けるのは難しい。しかし養蜂ブームのおかげか、最近は自家製の本物のハチミツを手に入れることはより容易になったと感じる。時間が経てば必ず結晶化することや、花粉が含まれるので完全透明ではありえないことなど、見分け方も参考になった。西洋ミツバチに比べ、日本ミツバチは常緑樹や薬草の蜜源を好むという。病気にも強い。こうして比較されると、やはり日本ミツバチのハチミツを食べたいし、いずれ日本ミツバチを飼いたい。
読了日:10月20日 著者:川島 茂
白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)の感想
物語の中では6年が経ち、現実の世界では18年が経った。この巻はその記憶をなぞるように、溝を埋めるように物語を整えていく。概形が見えたところで、泰麒は走り出す。戴は秋の終わりにある。迫りくる厳しい冬が泰麒を急き立てる。
国が国として施策をしなければ、棄民も同然に民は死んでいく。あまりの窮状に墓標すら立たない民も多かろう。まだまだ消えない、いくつもの「なぜ」。阿選は何をしている。その「病む」ってなんだ。驍宗はどこにいる。影ばかりがちらつき、人々の記憶の中の驍宗は威厳に満ちた姿のままだ。ねえ、泰麒還ってきたよ。
読了日:10月18日 著者:小野 不由美
アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-の感想
人間の不合理な行動の中でも、個人の経済活動に話題を特化した共著。前回読んだアリエリーの単著より衝撃度が下がったのは、人間の不合理さを私が意識できるようになったからか。だからといって、私の行動は一向に合理的になったりしていない。お金を失う痛みを感じたくないし、自分の判断は正しいと信じたいし、お金を失った事実はさっさと忘れたい。情報を食べるんじゃないかと思うくらいパッケージを見て買うし、包装の開け方指南には細心の注意を払う。それらのノイズに拘わらず、お金はただの交換手段であることを素人なりに理解しておきたい。
『決済にかかる時間と注目を減らし、どんどんお金を使わせようとする技術は要注意』。かけ払いやクレジットカードはその先駆けだが、今や技術はさらに進化して、人間の脳はついていけないままに罠に嵌められている。プリペイド、デビッドカード、オンライン決済、なんとかペイなどのキャッシュレス制度は、お金を払うタイミングを商品を手に入れる時点から前や後ろにずらすことで、また支払いという「心の痛み」の時間を短縮することで、人にどんどんお金を使わせる方向に働く。遅れていると言われようと、現金主義で人生貫いてみるとか?
読了日:10月17日 著者:ダン アリエリー,ジェフ クライスラー
虫眼とアニ眼 (新潮文庫)の感想
今、時代は大変転期にあると人は言う。それを意識無意識に感じるから、人は宮崎駿のアニメを観るのだと養老先生は言う。時代が変わりゆくこと、何かを失いゆくこと。若い世代の日本人に対し『なんでこの人たち、こんな不幸な考え方に縛られて生きているんだろう』『そんなに世間を狭めて考えたらつまんなかろうに』と思うが、特に働きかけようとは思わないんだ、と嘯く。いいえ、充分お節介いただいていますよ? さて、世間が減層化させんとするレイヤーを、努めて多層化させておくこと、自分だけのそれを確保すること。人生を豊かに保つ秘訣らし。
読了日:10月15日 著者:養老 孟司,宮崎 駿
蜃気楼 (パレスチナ選書)の感想
エジプトのノーベル文学賞受賞作家による小説だという。初めて読むアラブの小説が、どんな未知の世界を見せてくれるのかと慎ましい気持ちで開いた。なのになんだこの主人公は。過干渉な母親にどっぷり庇護されて育ち、嫉妬不安恐怖羞恥、全ての感情と妄想から逃れることができない息子。自意識過剰にも程があるこの男、現代日本にも普通にいそうだが、男性優位とされるイスラム社会でこれはきついだろう。振り回された妻の死をうっちゃらかして他所の未亡人に鞍替えするに至っては痛罵しか出てこない。イスラム男性に持っていたイメージこそ蜃気楼。
読了日:10月13日 著者:ナギーブ・マハフーズ
ロスト・シングの感想
ショーン・タン、初期の作品。『やるべきことが他にたくさんある人たちのために』。見えなかったものは無かったもの。とすると、始終じたばたして、全てに先まわりしようと目を凝らしている私は、見えなかったものだらけ、無かったものだらけなんやろな。この密やかな物語を、ショーン・タンは隅々まで丁寧に飾りつけた。絵と文章の、枠の外側に配された図や記号は、父親の古い教科書の切り貼りだそうだ。あとがきにそう聞いてようやくまじまじと見つめるようでは、ほら言ったとおりだろうとショーン・タンに言われそうだ。遊び心満載の大人の絵本。
読了日:10月13日 著者:ショーン タン
身の下相談にお答えします (朝日文庫)の感想
上野先生は社会学の学者。と認識していたので、歯に衣着せぬ快刀乱麻ぶりに笑い転げた。程度の差はあれ相談内容は深刻なものだし、社会学者らしい知見から回答している。本人が受け入れられるかは別として、正しいと感じる。ただ、それが"常識"と一致しないことも多い点は覚えておきたい。『自分のエゴイズムに向きあい、それを肯定するのが生きる覚悟というもの』。それにしても、ホルモン分泌の変化と共に気持ちももう少し枯れると思っていたが、若い男子が可愛くて仕方ない気持ちは、逆に年々増すらしい。割り切って強い気持ちで可愛がるべし。
読了日:10月12日 著者:上野千鶴子
黄昏の岸 暁の天 十二国記 8 (新潮文庫)の感想
この巻は、小野さんの迷いを感じる。天帝と条理について、ぐるぐる巡って煮え切らない。戴は沈んだままだ。なぜ彼らは苦しみ続けなければならないのか。答えは出ない。それはさておいて、ここは泰麒。もう一つの物語と脳裏で整合させながら読むと、鳥肌が立ってくる。全てを覚り、瞑目した高里の姿をまざまざと思い出す。どんなに激しいものが胸に渦巻いていることか。「……僕は間に合うでしょうか」。この巻は、大きな災厄を招きながら帰還するところまでだった。泰麒は私たちの光。新作の表紙の彼はどんな光を見せてくれるのだろう。いよいよだ。
読了日:10月11日 著者:小野 不由美
武道的思考 (ちくま文庫)の感想
ブログ記事の再構成はぼんやり読むのがいい。集中して理解するより、脳裏に引っかかってくるのを待つのでよいのだと思う。今回何が衝撃だったといって、非核三原則の件だ。1.非核三原則に欺瞞(密約)があることを日本人は皆知っていた。2.そのうえでノーベル平和賞を受け取った。3.自民党政権がそれくらいの嘘は平気で吐くとその頃から皆思っていた。まじか。まだまだ純朴だったわ自分。あと、無理して他人様と親睦を図らなくても、それは私の個性であると同時に、自ら選ぶ武道的処世術という考え方もできるということ。最近とみにしんどい。
パトリオットとナショナリストの差異についての件も、なにか引っかかって残っている。物事の着想点が違うと、人間の在り方まるごとが違ってしまう実例としてビビッドなんだけど、これはもっと他の物の考え方についても応用できそうだ。私は、できれば、パトリオット的でありたいと思っている。
読了日:10月06日 著者:内田 樹
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)の感想
オーウェルはSF作家ではない、と認識して読んだ方が読みやすいかもしれない。前半のディストピアっぷりが余りに現代そっくりで鮮烈に感じられてのめり込んでしまうが、オーウェルの言いたいことは中盤以降のくだくだしい部分である。私たちが現代を見ているように、オーウェルは自分の時代を憂えてこれを書いた。それを読んで私たちが「これは現代そのものだ」と感じるならば、歴史は繰り返しているのだろう。記録の改ざん、消去、曲解、暴力。人間のための秩序ではない、秩序のための人間。彼らの得た寒々しさ、苦々しさは他人事ではないかもね。
読了日:10月05日 著者:ジョージ・オーウェル
注:
はKindleで読んだ本。
税込 10,000円で図書カード 500円。税込 2,000円でオリジナル手ぬぐい。
これだけ本棚に本を積んでおきながら、欲しい本には事欠かない。
だから図書カードって、一瞬でなくなっちゃうんですよね…。
<今月のデータ>
購入15冊、購入費用17,607円。
読了14冊。
積読本192冊(うちKindle本73冊)。

10月の読書メーター
読んだ本の数:14

寄付先の選び方に、いつも迷う。世界的な飢餓も大きな問題だが、できればもっと身近な相手を助けられないか、と。著者の経験からヒントを得た。まず「寄付は「見返りを求めない」というセンスを鍛える機会」という考え方が腑に落ちた。それから、国家が動かない(動けない)なら自分たちがNPOを立ち上げて動けばいい、むしろ個々のNPOの取り組みが国家を変えるというビジョン。満濃池も民間ボランティアによって改修された。行政だけが公共ではない。不覚にも自分も立ち上がる側になれるんじゃないかと思ったが、まずは活動を知ることだ。
鳩山元総理のエピソードが胸に重い。現職時、彼は自らNPO団体に声をかけた。『国民が自ら公共を担っていく』政策を模索する為だ。そして諮問会議を開催し、議論を重ね、寄付税制改革が現実になろうとしたところで、総理辞任に追い込まれた。私たちが辞めさせたのは、誰だったんだろう。宇宙人だなどと揶揄して辞めさせた、一人の政治家の思い。確かに、政治はそれだけじゃないし、民主党は総じて政権運営能力に欠けていたんだろうけれど、私たちは大事なものを受け取りそこなってたんじゃないの。鳩山元総理の会議内の発言も収録されています。
読了日:10月31日 著者:駒崎弘樹


そんなまさかと狼狽えた。泰麒が知ったらと推し量ってはいたわしく思う。いや、彼はもう察知しているのか。泰麒の内心が一向に窺えない。だからこそひたすら思い巡らされる。泰麒はこの状況を是としているのか。いとけない泰麒の記憶を抱いているのは読み手も同じだ。驍宋を慕っていた泰麒ではなく、麒麟としての本性を発揮する泰麒として、本当に王が誰であろうと構わないのか。阿選や王宮内の様子が垣間見えた一方、国内の点景はさらに荒廃と絶望を極め、やがて不穏な蠢きが見え始めた。そろそろ怒涛の如く事態が好転する、と信じたいのだが。
長編小説には、物語や人物の組み立て及びその巧拙とは別に、著者の現実における世情への印象や思想が否応なく反映されるものであり、それらが相まってこそその小説の世界観なのであると、先日観た"深読み読書会"で誰かが言っていた。以前の短編で裁判員制度を主題においたように、小野さんの小説には小野さんが憂うものが現れる。この2巻でそれに確信を得たと思う。小野センセ、それはこの国の今いちばんダークな部分。遠大かつ如何とも捉え難いそれに挑んで、答えを出されたのでしょうか。ぐるぐる巡らされる解題、どこまでも付いていきます。
読了日:10月27日 著者:小野 不由美

プロの育種家竹下氏といとうせいこうの対談。軽い気持ちで読めるが、さらりと出る話題がべらぼうに面白い。八重咲の花ができる仕組み、純白の花が自然界に存在しない事実、ビールの主原料が大麦である必然性等々。『僕の把握している地球っていう空間が豊かにゆがむ』。いとう氏の関心は、国境なき医師団しかり、私の関心とつながっていると感じる。植物の育種は特異なものを選ぶ作業の連続だ。それは即ち遺伝的な多様性を失わせる。だから、多くの遺伝情報が残っている野生種や古い品種を絶やさないために、種を保存するのだそうだ。
日本人は実利のためにと杉の木を植えすぎて、花粉症という拒否反応を重症化させてしまった。これに懲りた日本人は、他の種類の木を植え始めた。焦った杉は、ここ数年で花粉を出さないタイプの杉を出現させたという。「焦った」という擬人表現以外に、杉が花粉を出さなくなる理由が思いつかないよなあ。植物は、人間によって自らの種を繁栄させるべく進化しているように見える。そこを逆手に取って、「植物がヒトを操る」と題したのは巧い。ちなみに人間に大量に杉を植えさせたのも、杉の策略のうち、である。
読了日:10月22日 著者:いとう せいこう,竹下 大学


保育園児だった頃「本屋さんになりたい」と言っていた私と、ええ中年になった今、一箱古本市への出店を楽しんでいる私はつながっているのだろう。一箱古本市の店主としての私は、自分の棚の後ろに立つと話しかけられたくてそわそわしてしまう。だが、読書する行為も本自体もプライベートなものであるならば、本を買う時も他者の存在抜きで買いたいのは私だってそうだと納得した。また客の視点で読んでは、時間が経つにつれて本棚が深くなっていくという表現に陶然とした。同時にルヌガンガのことを思う。もっと頻繁に通って、その深化を楽しみたい。
地元書店の支店店舗の、平板でブツ切りの棚に幻滅するのはそういう理由なんだなとも納得した。書店には目に見えない制限がたくさんあり、書店員の誰もが本のプロフェッショナルであるとは限らない。しかしそんな書店でも無いよりは有るほうがよいのであって、それなりに応援していこうと思った。というわけで、最近は「ネットで注文した本を受け取る場所」と化している。
読了日:10月22日 著者:内沼 晋太郎

日本のハチミツ事情及びミツバチの飼育に詳しい。日本のハチミツの規制が異常に緩いために、本物のハチミツを店頭で見分けるのは難しい。しかし養蜂ブームのおかげか、最近は自家製の本物のハチミツを手に入れることはより容易になったと感じる。時間が経てば必ず結晶化することや、花粉が含まれるので完全透明ではありえないことなど、見分け方も参考になった。西洋ミツバチに比べ、日本ミツバチは常緑樹や薬草の蜜源を好むという。病気にも強い。こうして比較されると、やはり日本ミツバチのハチミツを食べたいし、いずれ日本ミツバチを飼いたい。
読了日:10月20日 著者:川島 茂

物語の中では6年が経ち、現実の世界では18年が経った。この巻はその記憶をなぞるように、溝を埋めるように物語を整えていく。概形が見えたところで、泰麒は走り出す。戴は秋の終わりにある。迫りくる厳しい冬が泰麒を急き立てる。
国が国として施策をしなければ、棄民も同然に民は死んでいく。あまりの窮状に墓標すら立たない民も多かろう。まだまだ消えない、いくつもの「なぜ」。阿選は何をしている。その「病む」ってなんだ。驍宗はどこにいる。影ばかりがちらつき、人々の記憶の中の驍宗は威厳に満ちた姿のままだ。ねえ、泰麒還ってきたよ。
読了日:10月18日 著者:小野 不由美

人間の不合理な行動の中でも、個人の経済活動に話題を特化した共著。前回読んだアリエリーの単著より衝撃度が下がったのは、人間の不合理さを私が意識できるようになったからか。だからといって、私の行動は一向に合理的になったりしていない。お金を失う痛みを感じたくないし、自分の判断は正しいと信じたいし、お金を失った事実はさっさと忘れたい。情報を食べるんじゃないかと思うくらいパッケージを見て買うし、包装の開け方指南には細心の注意を払う。それらのノイズに拘わらず、お金はただの交換手段であることを素人なりに理解しておきたい。
『決済にかかる時間と注目を減らし、どんどんお金を使わせようとする技術は要注意』。かけ払いやクレジットカードはその先駆けだが、今や技術はさらに進化して、人間の脳はついていけないままに罠に嵌められている。プリペイド、デビッドカード、オンライン決済、なんとかペイなどのキャッシュレス制度は、お金を払うタイミングを商品を手に入れる時点から前や後ろにずらすことで、また支払いという「心の痛み」の時間を短縮することで、人にどんどんお金を使わせる方向に働く。遅れていると言われようと、現金主義で人生貫いてみるとか?
読了日:10月17日 著者:ダン アリエリー,ジェフ クライスラー


今、時代は大変転期にあると人は言う。それを意識無意識に感じるから、人は宮崎駿のアニメを観るのだと養老先生は言う。時代が変わりゆくこと、何かを失いゆくこと。若い世代の日本人に対し『なんでこの人たち、こんな不幸な考え方に縛られて生きているんだろう』『そんなに世間を狭めて考えたらつまんなかろうに』と思うが、特に働きかけようとは思わないんだ、と嘯く。いいえ、充分お節介いただいていますよ? さて、世間が減層化させんとするレイヤーを、努めて多層化させておくこと、自分だけのそれを確保すること。人生を豊かに保つ秘訣らし。
読了日:10月15日 著者:養老 孟司,宮崎 駿

エジプトのノーベル文学賞受賞作家による小説だという。初めて読むアラブの小説が、どんな未知の世界を見せてくれるのかと慎ましい気持ちで開いた。なのになんだこの主人公は。過干渉な母親にどっぷり庇護されて育ち、嫉妬不安恐怖羞恥、全ての感情と妄想から逃れることができない息子。自意識過剰にも程があるこの男、現代日本にも普通にいそうだが、男性優位とされるイスラム社会でこれはきついだろう。振り回された妻の死をうっちゃらかして他所の未亡人に鞍替えするに至っては痛罵しか出てこない。イスラム男性に持っていたイメージこそ蜃気楼。
読了日:10月13日 著者:ナギーブ・マハフーズ

ショーン・タン、初期の作品。『やるべきことが他にたくさんある人たちのために』。見えなかったものは無かったもの。とすると、始終じたばたして、全てに先まわりしようと目を凝らしている私は、見えなかったものだらけ、無かったものだらけなんやろな。この密やかな物語を、ショーン・タンは隅々まで丁寧に飾りつけた。絵と文章の、枠の外側に配された図や記号は、父親の古い教科書の切り貼りだそうだ。あとがきにそう聞いてようやくまじまじと見つめるようでは、ほら言ったとおりだろうとショーン・タンに言われそうだ。遊び心満載の大人の絵本。
読了日:10月13日 著者:ショーン タン

上野先生は社会学の学者。と認識していたので、歯に衣着せぬ快刀乱麻ぶりに笑い転げた。程度の差はあれ相談内容は深刻なものだし、社会学者らしい知見から回答している。本人が受け入れられるかは別として、正しいと感じる。ただ、それが"常識"と一致しないことも多い点は覚えておきたい。『自分のエゴイズムに向きあい、それを肯定するのが生きる覚悟というもの』。それにしても、ホルモン分泌の変化と共に気持ちももう少し枯れると思っていたが、若い男子が可愛くて仕方ない気持ちは、逆に年々増すらしい。割り切って強い気持ちで可愛がるべし。
読了日:10月12日 著者:上野千鶴子


この巻は、小野さんの迷いを感じる。天帝と条理について、ぐるぐる巡って煮え切らない。戴は沈んだままだ。なぜ彼らは苦しみ続けなければならないのか。答えは出ない。それはさておいて、ここは泰麒。もう一つの物語と脳裏で整合させながら読むと、鳥肌が立ってくる。全てを覚り、瞑目した高里の姿をまざまざと思い出す。どんなに激しいものが胸に渦巻いていることか。「……僕は間に合うでしょうか」。この巻は、大きな災厄を招きながら帰還するところまでだった。泰麒は私たちの光。新作の表紙の彼はどんな光を見せてくれるのだろう。いよいよだ。
読了日:10月11日 著者:小野 不由美

ブログ記事の再構成はぼんやり読むのがいい。集中して理解するより、脳裏に引っかかってくるのを待つのでよいのだと思う。今回何が衝撃だったといって、非核三原則の件だ。1.非核三原則に欺瞞(密約)があることを日本人は皆知っていた。2.そのうえでノーベル平和賞を受け取った。3.自民党政権がそれくらいの嘘は平気で吐くとその頃から皆思っていた。まじか。まだまだ純朴だったわ自分。あと、無理して他人様と親睦を図らなくても、それは私の個性であると同時に、自ら選ぶ武道的処世術という考え方もできるということ。最近とみにしんどい。
パトリオットとナショナリストの差異についての件も、なにか引っかかって残っている。物事の着想点が違うと、人間の在り方まるごとが違ってしまう実例としてビビッドなんだけど、これはもっと他の物の考え方についても応用できそうだ。私は、できれば、パトリオット的でありたいと思っている。
読了日:10月06日 著者:内田 樹
![一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)](https://m.media-amazon.com/images/I/41ZAgdWin2L._SL120_.jpg)
オーウェルはSF作家ではない、と認識して読んだ方が読みやすいかもしれない。前半のディストピアっぷりが余りに現代そっくりで鮮烈に感じられてのめり込んでしまうが、オーウェルの言いたいことは中盤以降のくだくだしい部分である。私たちが現代を見ているように、オーウェルは自分の時代を憂えてこれを書いた。それを読んで私たちが「これは現代そのものだ」と感じるならば、歴史は繰り返しているのだろう。記録の改ざん、消去、曲解、暴力。人間のための秩序ではない、秩序のための人間。彼らの得た寒々しさ、苦々しさは他人事ではないかもね。
読了日:10月05日 著者:ジョージ・オーウェル

注:

Posted by nekoneko at 11:14│Comments(0)
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