2020年10月01日
2020年9月の記録
hontoとBOOX Nova2の設定を詰めたり、
hontoアプリ片手にジュンク堂を徘徊したりしているうちに、
詰ん読がさらに増えてしまった。
本棚もぱつぱつ。
やっばいねー、と軽佻浮薄を装ってみる。
危機的状況だが、飢えたように本を買いたい。読みたい。
<今月のデータ>
購入30冊、購入費用30,224円。
読了16冊。
積読本219冊(うちKindle+honto本89冊)。

9月の読書メーター
読んだ本の数:17
古城ホテルの感想
奇妙にねじれた物語。ヨーロッパの古城の雰囲気が場を支配する。過去の記憶と現在、アメリカの若き成功者とヨーロッパの古城に80世代も続いた貴族の末裔、虚構と現実の決着地点が見えないままに物語は進む。タタール人せん滅のエピソードを聞かされた後だけに、修羅場の予感に身構えるも、あっさり脱出してしまうのね。そうか、肝はそこじゃない。てか、彼はこの場にいたということだよね。ダニーはいったい誰なのか。ミックはその瞬間何を感じ考えていたのか。彼はこの事件をどう思っていたのか。歪んだガラスの向こうの種明かしに嘆息した。
読了日:09月30日 著者:ジェニファー イーガン
颶風の王 (角川文庫)の感想
颶風:強く激しい風。アオとミネ。捨造。ワカと和子。この物語は根室の激しい風の中に生き抜いた人と馬の顛末だ。およぶおよばぬは、そういう自然の中にあってこそ芽生える人のわきまえなのだろう。街に生まれ育ったひかりは祖母和子のため奮闘する。青春物語として微笑ましいし、ひかりが花島で手に入れたそれはそれで貴重だが、奮闘するほどに馬との紐帯が和子の命と共に絶えんとしている事実が際立つ。これこそ運命と呼びたい。馬がいなくなれば花島の植生は変わる。また実はアオの血統は残っている可能性がある。その生命の強かさが読後に残る。
読了日:09月29日 著者:河崎 秋子
「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ (シリーズ22世紀を生きる)の感想
平川さんは父と同い年だ。語りおろしという形態もあってか、言葉に身近な実感がある。消費行動、小商いについての論も面白いが、会社論が肚にずんときた。日本人が今も手本にせんとする"グローバル"な作法は英米のローカルシステムでしかない。それをアメリカが日本へ売りつけるのを真に受け続けている。日本に根付いた会社観には日本人の共同体観につながる合理性があると。アメリカとは歴史もものさしも違うなら、ただ真似るのでは弊害の方が強い。逆に両方のシステムをいったりきたり検討していいとこ取りできるなら、日本人には得になるよね。
平川さんは会社を営んできた人だ。内田先生と似たことを言っているようで、体感が違う。商売や会社の仕組みをよく知りつつ、現状はおかしいという熟慮の帰結を語るから、言葉に実感がある。私のビジネスに対する考え方は読む本によって転々としているようで、徐々に熟してきていると自分では思う。D・アトキンソンもサイボウズも平川さんも、物の見方も結論も全く違うが、問題を指摘し、それを克服する方法を提言している。その中から私は納得できるものを拾い上げ、ためつすがめつ、取り入れ、目指してみることを繰り返している。
読了日:09月27日 著者:平川克美
ニューズウィーク日本版 9/29号 特集 コロナで世界に貢献したグッドカンパニー50の感想
社会貢献は企業にとって、ただのお飾りから事業戦略のコアになりつつある。金銭をただ寄付するのではなく、自社の資源をどう使えば顧客や従業員、地域社会の役に立つかを考えるようになった。社会貢献はビジネスにつながる。また未来に大きな可能性を生む。社会・経済的な不平等や気候の問題で率先して意味のあることをすれば、その先に本物のチャンスがある…ってやっぱ打算か?誤訳か? まあ時勢を継続的に視野に入れておくためにも、副次的な取り組みは必要だろう。もう少し深いところが読みたかった。オランダが沈みつつある衝撃的な写真。
読了日:09月26日 著者:ニューズウィーク日本版編集部
世界で最もイノベーティブな組織の作り方 (光文社新書)の感想
この著者の本はいろんなところから引用や例を挙げるので、組織談義として楽しい。さて、組織のポテンシャルを上げるためのあれこれ。採用時のダイバーシティのみならず、採用後の個性発露が阻害されないことが大事とある。自社の空気にまだ染まらない新参者こそイノベーションの種であり、反対意見や違う発想を聞かせてほしいとこちらから積極的に拾い上げる『聞き耳のリーダーシップ』を勧める。かつ、その後も情報を与え、自分の発言が働く環境をより良くするという実感を与えることが大事だと思う。プリコラージュ方式は企業にも適用できるか?
読了日:09月25日 著者:山口 周
賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか (幻冬舎新書)の感想
卵の採卵後、夏は16日、春秋は25日、冬は57日が生で食べられる期間。卵の食べられる期間が表示より長いのは知っていたが、生でもいいとは。賞味期限はあくまでメーカーが決めた目安でしかない。さて「食品はもともとリスクを含んでいる」件。専門家はそもそもゼロリスクはあり得ないと考えるという。身に取り入れるものはできるだけ体に良いものであるべきと思う私との、その差を考える。少々の添加物は仕方ないが、農薬は少ないほど良く、東洋医学的見地からの良し悪しも気になる。リスクの程度を勘案して選ぶ、その許容基準は人それぞれだ。
読了日:09月22日 著者:井出 留美
脳はすごい -ある人工知能研究者の脳損傷体験記-の感想
交通事故により脳震盪の後遺症が残った一つの症例。網膜と視覚皮質間の経路を損傷しているのだが、視覚システムは中心視覚と周辺視覚だけではない。視空間認識、光覚、サーカディアンリズム、平衡感覚、運動協調性、記憶、象徴的思考など多岐に結びついている上に、情動や集中力、つまり性格すら変え得るのだ。これらのバランスが崩れたことで、著者の日常が頻繁に疲労崩壊する様子には、読むこちらがへとへとになる。回復のカギは脳の可塑性である。網膜と視覚皮質間の信号が経由する経路を新しく書き変える神経科学の知見と技術は、まさに驚異だ。
いくつもの点で「凄い」本だ。まず、脳震盪という見た目に現れない外傷によって、人間の基幹的機能が多大に損なわれること。それを意志の力で抑え込んでシングルファーザーとしての役割、大学教授としての責務を10年近くこなしたこと。子細な記録を続けたこと。副次的な症状を自分で分析して説明したこと。治療につれた症状の変化を、思考のムラやバーチャルな脳空間内の変化に至るまで説明できること。IQが高いとはこういうことか。そして完全に損傷されたと感じるそれらの症状が、検査と眼鏡の処方のみで完全回復を成し得た、知見の高さ。
この本には日常生活に障る現象がいくつも出てくる。病や老化、性格とさえ自身思っているものが、脳の小さな器質的損傷に因る可能性があるようだ。それらも日常的な疲労も、他人の目には解らないばかりに辛く当たられることは怖い。私はスーパーの棚の前で動けなくなってしまうことがままあるが、動けないまま心だけが狼狽えている。人によってシステムが全く違っているという可能性と、人がいつも普通の状態ではいられないことを、忘れてはいけないと思う。つまり些細なことで他人に苛立たず、優しくありなさいよってことなんだけど。
読了日:09月22日 著者:クラーク・エリオット
老犬たちの涙 “いのち”と“こころ”を守る14の方法の感想
来月に企画している写真展の告知をつくるために再読。写真からは今にも悲痛な声が聞こえるようだ。現実には人間が長く飼った犬を捨てるという酷い事実がある。しかし、酷い事実を好んで見つめたい人はいない。犬は長く生きるようになった。人間のように老化し患うようになった。自分が老いた時や犬が老いた時のことを、前もって考えなければならないことを、どう伝えよう。『愛する"家族"との別れは、犬に深い喪失感と哀しみをもたらします。命ある限り、変わることなく、大好きな飼い主のそばで生きることが、犬にとって何よりの幸せなのです』。
読了日:09月20日 著者:児玉 小枝
辺境メシ ヤバそうだから食べてみたの感想
この本は納豆シリーズの前振りなのだろうか。海外で日々つけていた記録が活躍したことだろう。出るわ出るわ、たまたま出会ったもの、わざわざ出かけて行ったもの、世界の地域独特な食べ物、酒、嗜好品の数々。どこの地でも、酔狂だけで変なものを食べている訳ではない。必要があって食べているもの、祭祀的な意味合いから変化したものもある。噂を聞いてわざわざ出かけて行くくらいだから、高野さんは食べることも好きなのだろうな。先日、自宅にGが出た。わかってる。わかってるよGに罪がなく栄養があることは。でも私には、昆虫食すら無理やわ。
読了日:09月19日 著者:高野 秀行
やりたいことがある人は未来食堂に来てください 「始める」「続ける」「伝える」の最適解を導く方法の感想
私自身、飲食店を営みたいと思ったことがないので、個人経営の飲食店主は別人種くらいに思ってきた。中でも著者は異色だ。『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』をつくるという理念に合致したのが定食屋という形態だっただけで、自身は食に興味がないと言う。人間っていろいろな要素が複雑に絡まっていて、性格も思想も丸ごとで具現化するのだと感嘆した。『思考がジャンプするまで情報を頭にインプットする』。既存情報のインプット量がとかく半端ない。それがあってこそ、物事の本質を見抜き、合理的に要不要を査定し、即断できるのだ。
SNSでイベントなどを告知する際の文章の作り方について、思いがけず学ぶところが多かった。既存を無視せず、飛躍しすぎず、単なる「来てください」ではなく、その経緯やこだわりを正直に伝える言葉を丁寧に選ぶことだ。それには自分が考えている中身を明確にしなければならないが、思いがあってイベントなりを手がけるのであれば、既に自分の内側にあるものを取り出すだけのこと。それをしないのは横着、手抜きでしかないってことだ。視界が晴れた思いがした。すごいなあ。
読了日:09月15日 著者:小林せかい
タネと内臓‐有機野菜と腸内細菌が日本を変えるの感想
雑多な情報が混在し、タネと内臓の関係が解りづらいが、言わんとする潮流は確かにある。遺伝子操作や大規模生産化を国家戦略として進めるアメリカに対し、農業大国フランス、食料安全保障を憂えたロシアなどは別の路線を推進している。片や日本はアメリカの言いなりの如く法改正を進めようとしていることを強く危惧する。曰く、栽培の手間を省く等の目的で遺伝子操作されたタネは、本来蓄積されないはずの毒素を蓄積する。その毒素を体内に取り込めばいずれ腸内細菌環境を損ない、種々の疾患を引き起こすとの主旨。それぞれ整理と確認が必要に思う。
読了日:09月13日 著者:吉田 太郎
八卦掌の感想
「実戦八卦掌」より情報量は少なめである。練習法に重きが置かれ、八卦掌の八本の形がより詳しい。第八掌 八仙過海など30ページ近く割かれている。それにしたって、現実に目の前で動いて見せてくださる先生にはかなわない。足運びなどときどき見返しつつ、練習に励むしかない。先生がこの本を私に渡したのは、このペースでは全てを私に教えてしまえるか覚束ず焦るのと、私の習熟度を上げさせたいのと両方だろう。余計な感傷に捉われず、気候も涼しくなったのだし、ひたすら走圏すべし。昔の名人は卓の下でやれる程、体勢を低くできたという…。
読了日:09月12日 著者:佐藤金兵衛
ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)の感想
意味深な表題。いわゆるスパイ小説、しかし国対国、組織対組織のダイナミックな動きが見えない異色な物語。ここにあるのは、どこまでも彼ら個々人の心の動き。誰にも全てを話せない、尻尾をつかまれないよう行動するという業からくる、擦り切れそうな恐れ、不安、迷いを抑え込んでの選択の積み重ね。その孤独故に誘惑に絡めとられたとて何が悪いというのか。既に亡いカースンの影。それは友情だったのだろうか。結局彼を異国へ運んで行ったものは何だったのか。終盤の母親の台詞がなんとも薄く感じるのだ。テレビにぶつかるシーンが象徴的だった。
読了日:09月10日 著者:グレアム グリーン
ヒト ニ ツイテ (シリーズ子どもたちへ)の感想
ヒトの絵が原始を思わせるところが本質に繋がって感じる。ああ、ヒトってそうだよね。こういうことするよね。と納得しながら(獲物がなにかは別として)ページをめくっていくと、なかなか不穏な様相になって笑う。こんなん幼い姪に与えたら親にめっちゃ怒られそうだ。しかし、大人が子供に与えるものをあれこれ取捨選択、つまり制限する行為は、子供に対して失礼であると著者が語っていたのを思い出す。子供は自分に取り入れるものを自分で選べるのだからということだ。面白い。ひとつだけ考え込んでしまったのは、『ヒト ハ キニスル』だった。
読了日:09月06日 著者:五味 太郎
NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草 (講談社+α新書)の感想
スーツにまつわる欧米式の約束事が主に書かれている。公の場における服装は『自分のための装いでありつつ、他者のための装いでもある』ので、マナーは守るべしとある。自然、表舞台に立つ場面が多い政治家や著名人の例が多くあげつらわれる。細かい指摘は厳しいようだが、和装だって常識を外すと違和感が拭えないものだわね。洋装にも数多のセオリーがあり、そんなん気に留めたこともなかったわポイントが鈴なりだった。欧米のアッパーな家庭の子は、幼少期より装いに関する「服育」を親から受けるのだそうだ。スタイリストを雇う価値が理解できた。
読了日:09月05日 著者:安積 陽子
「正伝」実戦八卦掌の感想
先生にお借りした。八卦掌は習得人口が少ないうえに流派があるので、的確な本を教えてもらえることはありがたい。さて、文章化しうる情報も少ない中で、開祖菫海川から著者に至るまでの歴史の他、主は套路と練習法の図解。既知の動きは理解が深まるが、知らないことがまだまだ多い。『行走すること竜の如く、回転すること猴の如く、換式すること鷹の如し』。『掌心は空なるを要し、胸心は空なるを要し、足心も空なるを要す』。武術と健康法は古来厳密に区分されるものでないと確信するようになった。どちらも、人としての生き延びる力を育てる術だ。
読了日:09月04日 著者:佐藤 金兵衛
思考のレッスン 発想の原点はどこにあるのか (講談社+α文庫)の感想
前半が竹内さんのエッセイ、後半がお二人の対談。前半で散々、思考によって物事を区別することの知的優位性を力説していたのに、対談になると茂木さんにばっさり拒否される。いや、その区別を超えての、統合といった意味合いらしい。欧米の流儀が色濃い竹内さんの「グローバル」な考え方に私は馴染めなかったので、茂木さんの流儀が心地よいものに思えた。つまり、文系と理系みたいな社会の決めた区分に捉われず、自分の規範で好いと思うことを選ぶ方が苦しくないし、またその方が停滞する日本の中心ではなく、自由な境界に達せられる道なのだ。
茂木さん『理系か文系かなんて、渋谷からどっかに行くのに銀座線にするかそれとも半蔵門線にするっかっていう程度の問題で、要するにそんなの走って行き着きゃどっちだっていいのさ』。
読了日:09月02日 著者:竹内 薫,茂木 健一郎
注:
はKindleで読んだ本。
hontoアプリ片手にジュンク堂を徘徊したりしているうちに、
詰ん読がさらに増えてしまった。
本棚もぱつぱつ。
やっばいねー、と軽佻浮薄を装ってみる。
危機的状況だが、飢えたように本を買いたい。読みたい。
<今月のデータ>
購入30冊、購入費用30,224円。
読了16冊。
積読本219冊(うちKindle+honto本89冊)。

9月の読書メーター
読んだ本の数:17

奇妙にねじれた物語。ヨーロッパの古城の雰囲気が場を支配する。過去の記憶と現在、アメリカの若き成功者とヨーロッパの古城に80世代も続いた貴族の末裔、虚構と現実の決着地点が見えないままに物語は進む。タタール人せん滅のエピソードを聞かされた後だけに、修羅場の予感に身構えるも、あっさり脱出してしまうのね。そうか、肝はそこじゃない。てか、彼はこの場にいたということだよね。ダニーはいったい誰なのか。ミックはその瞬間何を感じ考えていたのか。彼はこの事件をどう思っていたのか。歪んだガラスの向こうの種明かしに嘆息した。
読了日:09月30日 著者:ジェニファー イーガン

颶風:強く激しい風。アオとミネ。捨造。ワカと和子。この物語は根室の激しい風の中に生き抜いた人と馬の顛末だ。およぶおよばぬは、そういう自然の中にあってこそ芽生える人のわきまえなのだろう。街に生まれ育ったひかりは祖母和子のため奮闘する。青春物語として微笑ましいし、ひかりが花島で手に入れたそれはそれで貴重だが、奮闘するほどに馬との紐帯が和子の命と共に絶えんとしている事実が際立つ。これこそ運命と呼びたい。馬がいなくなれば花島の植生は変わる。また実はアオの血統は残っている可能性がある。その生命の強かさが読後に残る。
読了日:09月29日 著者:河崎 秋子


平川さんは父と同い年だ。語りおろしという形態もあってか、言葉に身近な実感がある。消費行動、小商いについての論も面白いが、会社論が肚にずんときた。日本人が今も手本にせんとする"グローバル"な作法は英米のローカルシステムでしかない。それをアメリカが日本へ売りつけるのを真に受け続けている。日本に根付いた会社観には日本人の共同体観につながる合理性があると。アメリカとは歴史もものさしも違うなら、ただ真似るのでは弊害の方が強い。逆に両方のシステムをいったりきたり検討していいとこ取りできるなら、日本人には得になるよね。
平川さんは会社を営んできた人だ。内田先生と似たことを言っているようで、体感が違う。商売や会社の仕組みをよく知りつつ、現状はおかしいという熟慮の帰結を語るから、言葉に実感がある。私のビジネスに対する考え方は読む本によって転々としているようで、徐々に熟してきていると自分では思う。D・アトキンソンもサイボウズも平川さんも、物の見方も結論も全く違うが、問題を指摘し、それを克服する方法を提言している。その中から私は納得できるものを拾い上げ、ためつすがめつ、取り入れ、目指してみることを繰り返している。
読了日:09月27日 著者:平川克美

社会貢献は企業にとって、ただのお飾りから事業戦略のコアになりつつある。金銭をただ寄付するのではなく、自社の資源をどう使えば顧客や従業員、地域社会の役に立つかを考えるようになった。社会貢献はビジネスにつながる。また未来に大きな可能性を生む。社会・経済的な不平等や気候の問題で率先して意味のあることをすれば、その先に本物のチャンスがある…ってやっぱ打算か?誤訳か? まあ時勢を継続的に視野に入れておくためにも、副次的な取り組みは必要だろう。もう少し深いところが読みたかった。オランダが沈みつつある衝撃的な写真。
読了日:09月26日 著者:ニューズウィーク日本版編集部


この著者の本はいろんなところから引用や例を挙げるので、組織談義として楽しい。さて、組織のポテンシャルを上げるためのあれこれ。採用時のダイバーシティのみならず、採用後の個性発露が阻害されないことが大事とある。自社の空気にまだ染まらない新参者こそイノベーションの種であり、反対意見や違う発想を聞かせてほしいとこちらから積極的に拾い上げる『聞き耳のリーダーシップ』を勧める。かつ、その後も情報を与え、自分の発言が働く環境をより良くするという実感を与えることが大事だと思う。プリコラージュ方式は企業にも適用できるか?
読了日:09月25日 著者:山口 周


卵の採卵後、夏は16日、春秋は25日、冬は57日が生で食べられる期間。卵の食べられる期間が表示より長いのは知っていたが、生でもいいとは。賞味期限はあくまでメーカーが決めた目安でしかない。さて「食品はもともとリスクを含んでいる」件。専門家はそもそもゼロリスクはあり得ないと考えるという。身に取り入れるものはできるだけ体に良いものであるべきと思う私との、その差を考える。少々の添加物は仕方ないが、農薬は少ないほど良く、東洋医学的見地からの良し悪しも気になる。リスクの程度を勘案して選ぶ、その許容基準は人それぞれだ。
読了日:09月22日 著者:井出 留美


交通事故により脳震盪の後遺症が残った一つの症例。網膜と視覚皮質間の経路を損傷しているのだが、視覚システムは中心視覚と周辺視覚だけではない。視空間認識、光覚、サーカディアンリズム、平衡感覚、運動協調性、記憶、象徴的思考など多岐に結びついている上に、情動や集中力、つまり性格すら変え得るのだ。これらのバランスが崩れたことで、著者の日常が頻繁に疲労崩壊する様子には、読むこちらがへとへとになる。回復のカギは脳の可塑性である。網膜と視覚皮質間の信号が経由する経路を新しく書き変える神経科学の知見と技術は、まさに驚異だ。
いくつもの点で「凄い」本だ。まず、脳震盪という見た目に現れない外傷によって、人間の基幹的機能が多大に損なわれること。それを意志の力で抑え込んでシングルファーザーとしての役割、大学教授としての責務を10年近くこなしたこと。子細な記録を続けたこと。副次的な症状を自分で分析して説明したこと。治療につれた症状の変化を、思考のムラやバーチャルな脳空間内の変化に至るまで説明できること。IQが高いとはこういうことか。そして完全に損傷されたと感じるそれらの症状が、検査と眼鏡の処方のみで完全回復を成し得た、知見の高さ。
この本には日常生活に障る現象がいくつも出てくる。病や老化、性格とさえ自身思っているものが、脳の小さな器質的損傷に因る可能性があるようだ。それらも日常的な疲労も、他人の目には解らないばかりに辛く当たられることは怖い。私はスーパーの棚の前で動けなくなってしまうことがままあるが、動けないまま心だけが狼狽えている。人によってシステムが全く違っているという可能性と、人がいつも普通の状態ではいられないことを、忘れてはいけないと思う。つまり些細なことで他人に苛立たず、優しくありなさいよってことなんだけど。
読了日:09月22日 著者:クラーク・エリオット

来月に企画している写真展の告知をつくるために再読。写真からは今にも悲痛な声が聞こえるようだ。現実には人間が長く飼った犬を捨てるという酷い事実がある。しかし、酷い事実を好んで見つめたい人はいない。犬は長く生きるようになった。人間のように老化し患うようになった。自分が老いた時や犬が老いた時のことを、前もって考えなければならないことを、どう伝えよう。『愛する"家族"との別れは、犬に深い喪失感と哀しみをもたらします。命ある限り、変わることなく、大好きな飼い主のそばで生きることが、犬にとって何よりの幸せなのです』。
読了日:09月20日 著者:児玉 小枝

この本は納豆シリーズの前振りなのだろうか。海外で日々つけていた記録が活躍したことだろう。出るわ出るわ、たまたま出会ったもの、わざわざ出かけて行ったもの、世界の地域独特な食べ物、酒、嗜好品の数々。どこの地でも、酔狂だけで変なものを食べている訳ではない。必要があって食べているもの、祭祀的な意味合いから変化したものもある。噂を聞いてわざわざ出かけて行くくらいだから、高野さんは食べることも好きなのだろうな。先日、自宅にGが出た。わかってる。わかってるよGに罪がなく栄養があることは。でも私には、昆虫食すら無理やわ。
読了日:09月19日 著者:高野 秀行


私自身、飲食店を営みたいと思ったことがないので、個人経営の飲食店主は別人種くらいに思ってきた。中でも著者は異色だ。『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』をつくるという理念に合致したのが定食屋という形態だっただけで、自身は食に興味がないと言う。人間っていろいろな要素が複雑に絡まっていて、性格も思想も丸ごとで具現化するのだと感嘆した。『思考がジャンプするまで情報を頭にインプットする』。既存情報のインプット量がとかく半端ない。それがあってこそ、物事の本質を見抜き、合理的に要不要を査定し、即断できるのだ。
SNSでイベントなどを告知する際の文章の作り方について、思いがけず学ぶところが多かった。既存を無視せず、飛躍しすぎず、単なる「来てください」ではなく、その経緯やこだわりを正直に伝える言葉を丁寧に選ぶことだ。それには自分が考えている中身を明確にしなければならないが、思いがあってイベントなりを手がけるのであれば、既に自分の内側にあるものを取り出すだけのこと。それをしないのは横着、手抜きでしかないってことだ。視界が晴れた思いがした。すごいなあ。
読了日:09月15日 著者:小林せかい


雑多な情報が混在し、タネと内臓の関係が解りづらいが、言わんとする潮流は確かにある。遺伝子操作や大規模生産化を国家戦略として進めるアメリカに対し、農業大国フランス、食料安全保障を憂えたロシアなどは別の路線を推進している。片や日本はアメリカの言いなりの如く法改正を進めようとしていることを強く危惧する。曰く、栽培の手間を省く等の目的で遺伝子操作されたタネは、本来蓄積されないはずの毒素を蓄積する。その毒素を体内に取り込めばいずれ腸内細菌環境を損ない、種々の疾患を引き起こすとの主旨。それぞれ整理と確認が必要に思う。
読了日:09月13日 著者:吉田 太郎

「実戦八卦掌」より情報量は少なめである。練習法に重きが置かれ、八卦掌の八本の形がより詳しい。第八掌 八仙過海など30ページ近く割かれている。それにしたって、現実に目の前で動いて見せてくださる先生にはかなわない。足運びなどときどき見返しつつ、練習に励むしかない。先生がこの本を私に渡したのは、このペースでは全てを私に教えてしまえるか覚束ず焦るのと、私の習熟度を上げさせたいのと両方だろう。余計な感傷に捉われず、気候も涼しくなったのだし、ひたすら走圏すべし。昔の名人は卓の下でやれる程、体勢を低くできたという…。
読了日:09月12日 著者:佐藤金兵衛

意味深な表題。いわゆるスパイ小説、しかし国対国、組織対組織のダイナミックな動きが見えない異色な物語。ここにあるのは、どこまでも彼ら個々人の心の動き。誰にも全てを話せない、尻尾をつかまれないよう行動するという業からくる、擦り切れそうな恐れ、不安、迷いを抑え込んでの選択の積み重ね。その孤独故に誘惑に絡めとられたとて何が悪いというのか。既に亡いカースンの影。それは友情だったのだろうか。結局彼を異国へ運んで行ったものは何だったのか。終盤の母親の台詞がなんとも薄く感じるのだ。テレビにぶつかるシーンが象徴的だった。
読了日:09月10日 著者:グレアム グリーン


ヒトの絵が原始を思わせるところが本質に繋がって感じる。ああ、ヒトってそうだよね。こういうことするよね。と納得しながら(獲物がなにかは別として)ページをめくっていくと、なかなか不穏な様相になって笑う。こんなん幼い姪に与えたら親にめっちゃ怒られそうだ。しかし、大人が子供に与えるものをあれこれ取捨選択、つまり制限する行為は、子供に対して失礼であると著者が語っていたのを思い出す。子供は自分に取り入れるものを自分で選べるのだからということだ。面白い。ひとつだけ考え込んでしまったのは、『ヒト ハ キニスル』だった。
読了日:09月06日 著者:五味 太郎

スーツにまつわる欧米式の約束事が主に書かれている。公の場における服装は『自分のための装いでありつつ、他者のための装いでもある』ので、マナーは守るべしとある。自然、表舞台に立つ場面が多い政治家や著名人の例が多くあげつらわれる。細かい指摘は厳しいようだが、和装だって常識を外すと違和感が拭えないものだわね。洋装にも数多のセオリーがあり、そんなん気に留めたこともなかったわポイントが鈴なりだった。欧米のアッパーな家庭の子は、幼少期より装いに関する「服育」を親から受けるのだそうだ。スタイリストを雇う価値が理解できた。
読了日:09月05日 著者:安積 陽子


先生にお借りした。八卦掌は習得人口が少ないうえに流派があるので、的確な本を教えてもらえることはありがたい。さて、文章化しうる情報も少ない中で、開祖菫海川から著者に至るまでの歴史の他、主は套路と練習法の図解。既知の動きは理解が深まるが、知らないことがまだまだ多い。『行走すること竜の如く、回転すること猴の如く、換式すること鷹の如し』。『掌心は空なるを要し、胸心は空なるを要し、足心も空なるを要す』。武術と健康法は古来厳密に区分されるものでないと確信するようになった。どちらも、人としての生き延びる力を育てる術だ。
読了日:09月04日 著者:佐藤 金兵衛

前半が竹内さんのエッセイ、後半がお二人の対談。前半で散々、思考によって物事を区別することの知的優位性を力説していたのに、対談になると茂木さんにばっさり拒否される。いや、その区別を超えての、統合といった意味合いらしい。欧米の流儀が色濃い竹内さんの「グローバル」な考え方に私は馴染めなかったので、茂木さんの流儀が心地よいものに思えた。つまり、文系と理系みたいな社会の決めた区分に捉われず、自分の規範で好いと思うことを選ぶ方が苦しくないし、またその方が停滞する日本の中心ではなく、自由な境界に達せられる道なのだ。
茂木さん『理系か文系かなんて、渋谷からどっかに行くのに銀座線にするかそれとも半蔵門線にするっかっていう程度の問題で、要するにそんなの走って行き着きゃどっちだっていいのさ』。
読了日:09月02日 著者:竹内 薫,茂木 健一郎

注:

Posted by nekoneko at 12:02│Comments(0)
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