2012年05月01日
4月の読書
4月は3月の反動で娯楽小説満載です。
積読が70冊、読みたい本が160冊の大台、狂気の沙汰です。
時間を鑑みて選ぶ本の取捨選択をしなければならないのだけれど。

4月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4520ページ
ナイス数:104ナイス
ストロベリーナイト (光文社文庫)
警察小説。派手な事件に、キャラの肉づけは盛り盛りである。映像化すれば、それは映えただろう。そういう要素を取り除いてみると、エンターテイメント性とは別に、著者にはなにか言いたいことがあるようではある。それにしてもグロかった。
読了日:04月30日 著者:誉田 哲也
タイニー・タイニー・ハッピー (角川文庫)
大きなツリーがタニハピの象徴、この世界のど真ん中である。そのツリーに、チェーンがかかっているイメージ。重い金属ではなく、子供っぽい紙でもない、パステルカラーの、素材はアクリルだろうか。最後の輪っかだけ、少し色が濃い。お互いに軽く繋がりあっていて、それをガラス越し、カフェから眺めているような小説だった。
読了日:04月29日 著者:飛鳥井 千砂
オスカー―天国への旅立ちを知らせる猫
図書館猫デューイと同じで、猫そのものではなく、猫の住みついた特異な環境を物語る上で偶像的に猫が絡む半実話。ステアー・ハウスは終末医療施設である。認知症を患い、死を間近にした人、その家族と医療従事者との葛藤や開放のエピソードが書かれている。ここにはたくさんの猫が住んでおり、患者や訪れる家族たちに日常感、安心感を与えるようだ。その中でもオスカーは特別な性質で死を嗅ぎとり、そっと当事者に寄り添う。その力は絶大だ。いつか私の家族や私が旅立つとき、傍にいてほしい。医療従事者としての著者の考えも後半に書かれている。
読了日:04月25日 著者:デイヴィッド ドーサ
今夜、すベてのバーで (講談社文庫)
酒呑みなら感じたことがあると思う。酒を呑むと死が近くなる。過度に呑み続けることは緩やかな自殺である。すると逆に生も強く感じられる。妄想か、そう思いたいだけか。だけど酔ぅて不確かな手元の器を眺めながらつらつら考えることの中になにがしかの真実があるから、こうしてらもさんの文章の中にきらりきらり光って見えてるんと違うかな。たいていはとことん己一人のことで、それが健康という幸運の上に乗っかった甘えやてことも知ってるんやけれども。真っ当に生きて100歳に届かんとする老爺の言葉の神々しさをも、らもさんは知ってたんや。
読了日:04月23日 著者:中島 らも
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
オビの児玉清さんの言葉の意味がわかった。おもしろいとしか言いようがない。読みながら何度も、傍目にもわかるくらい、体を震えが走り抜けていた。リスベットの破格な性質、ジャーナリストとしての告発、ミカエルの煩悶、読みやすい文章が、ややこしい物語を追う集中力を与えてくれる。満足です。
読了日:04月17日 著者:スティーグ・ラーソン
深夜快読
古本屋で出会った本。東京にお住まいで、東京がお好きで、東京の市井、歴史、風物に関する本が多く選ばれ、かの土地に思い入れの欠片もない私は閉口した。結局もとから好きなほうである樋口一葉、幸田文、メイ・サートン辺りを、読みたいな、と思い返すに留まった。
読了日:04月15日 著者:森 まゆみ
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
聞いたこともないスウェーデンの地名、耳慣れないスウェーデンの名前、しかもその登場人物の列挙に怖気づき、この小説を選んだのは固有名詞を覚えるのが苦手な私には誤りであったかもしれない、と思った。しかしそれは“ドラゴン・タトゥーの女”が登場した瞬間までの杞憂だった。著者がぼかしておきたいと意図する部分以外にぼけがない、わかりやすい文章。ジャーナリストらしく、社会的問題をいくつか織り糸に混ぜながら、物語は突き進んでいく。おもしろい。レビューを書く間も惜しみ、下巻へ。
読了日:04月15日 著者:スティーグ・ラーソン
東京島 (新潮文庫)
桐野夏生版蝿の王。むせ返るほどの緑に覆われた南方の無人島であろう。しかし描かれるのは自然でなく、人の表皮の内側、内側へと暴いていく。この作家はなぜこれほど人の内の生々しいもの、汚いものを見つめるのだろう。それも特に、女のえげつない欲望を。これを巧く描くことは、それだけ著者自身が長い間向かい合ってきたことの証左でもある。内面に我欲の渦巻く女こそ、愚かではあっても生存本能に長けた女であることは間違いない。ひき比べ、どこか単純な男という生き物は醜怪であると同時に微笑ましくもある。
読了日:04月13日 著者:桐野 夏生
Zの悲劇 (創元推理文庫)
X、Yと変わってサム警部の若い娘の一人称で語られる。これまでとなにが違うかといえば、ものごとや人への主観的印象と直感が多く、瞬間的に人を断じて、はつらつとしている。エラリー・クイーン両氏の意表を突く企みである。あけすけな物言いへの、はすっぱな訳がよく似合っていい。 対比するように、ドルリー・レーンはめっきり老けこんだ。Xから10年。あの美しかった彼は失われてしまったのか。と思えばどっこい、彼の目は欺瞞を逃さず、力強く真実を白日の元にさらしてみせるのだ。ドルリー・レーンよ、永遠なれ。
読了日:04月10日 著者:エラリー・クイーン
ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
本や古書のトリビアに添えられた愛着心で物語が回る。そうか、あの、高いんじゃない?とつい思ってしまう値付けは需要と供給によるものなのだね。書評などから読んでみたいと感じた本が絶版で手に入らない、しかも古本では定価以上の値が付いているという思いをよくするので、得心した。クラクラ日記は新刊で手に入るらしい、とまたメモメモ…。それにしても、このシリーズはまだまだ続く前提らしい。次も、読むだろうとは思う。その前に気になっている古書会館へ行かねば。
読了日:04月07日 著者:三上 延
アシンメトリー (角川文庫)
誰もがそれぞれにアシンメトリー。非対称。歪なわだかまりにそれぞれ絡め取られてもがいていた。しなやかでなくなり始める年頃を、なんとか乗り越えていく。最後は爽やか。オビの結婚云々は年齢故にどうしても絡んでくる問題だけれど、この小説の核ではないだろう。
読了日:04月01日 著者:飛鳥井 千砂
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
本を読むのが好きだから本屋になりたいと、幼い頃言っていた。本を読むのと本を売るのと、資質が違うのは今や承知。古書を商うのもまた違うことなのだよな。近くにあって行きそびれている古書店のことを思い出した。よい加減で軽やかに読める。だからといって中身も軽いとは感じない。古書と、本が好きな人たちに寄り添う気持ちが感じ取れる。本屋大賞か古本屋大賞あげたい。
読了日:04月01日 著者:三上 延
ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)
読んだタイミングが悪い。地震のような天災か、原発事故のような人災か。いずれ東日本大震災を連想して無邪気に入り込めない。どうやら滅びた様相の、町と荒地の繰り返す土地である。生産性が失われ、人は暴力で奪いあうのみ。その中を父と子は歩く。逃げる。生きる。守る。なんとかつなぐ。他人を見ない振りをし、見捨て、そうしてでも生きようとする。この物語は、私には救いがなかった。人の中に神を見出す人もいるのかもしれない。だけど私は、太陽の光も差さず、緑の芽吹きもない世界に神は感じられない。ピューリッツァー賞受賞作。
読了日:04月01日 著者:コーマック・マッカーシー
2012年4月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター
積読が70冊、読みたい本が160冊の大台、狂気の沙汰です。
時間を鑑みて選ぶ本の取捨選択をしなければならないのだけれど。

4月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4520ページ
ナイス数:104ナイス

警察小説。派手な事件に、キャラの肉づけは盛り盛りである。映像化すれば、それは映えただろう。そういう要素を取り除いてみると、エンターテイメント性とは別に、著者にはなにか言いたいことがあるようではある。それにしてもグロかった。
読了日:04月30日 著者:誉田 哲也

大きなツリーがタニハピの象徴、この世界のど真ん中である。そのツリーに、チェーンがかかっているイメージ。重い金属ではなく、子供っぽい紙でもない、パステルカラーの、素材はアクリルだろうか。最後の輪っかだけ、少し色が濃い。お互いに軽く繋がりあっていて、それをガラス越し、カフェから眺めているような小説だった。
読了日:04月29日 著者:飛鳥井 千砂

図書館猫デューイと同じで、猫そのものではなく、猫の住みついた特異な環境を物語る上で偶像的に猫が絡む半実話。ステアー・ハウスは終末医療施設である。認知症を患い、死を間近にした人、その家族と医療従事者との葛藤や開放のエピソードが書かれている。ここにはたくさんの猫が住んでおり、患者や訪れる家族たちに日常感、安心感を与えるようだ。その中でもオスカーは特別な性質で死を嗅ぎとり、そっと当事者に寄り添う。その力は絶大だ。いつか私の家族や私が旅立つとき、傍にいてほしい。医療従事者としての著者の考えも後半に書かれている。
読了日:04月25日 著者:デイヴィッド ドーサ

酒呑みなら感じたことがあると思う。酒を呑むと死が近くなる。過度に呑み続けることは緩やかな自殺である。すると逆に生も強く感じられる。妄想か、そう思いたいだけか。だけど酔ぅて不確かな手元の器を眺めながらつらつら考えることの中になにがしかの真実があるから、こうしてらもさんの文章の中にきらりきらり光って見えてるんと違うかな。たいていはとことん己一人のことで、それが健康という幸運の上に乗っかった甘えやてことも知ってるんやけれども。真っ当に生きて100歳に届かんとする老爺の言葉の神々しさをも、らもさんは知ってたんや。
読了日:04月23日 著者:中島 らも

オビの児玉清さんの言葉の意味がわかった。おもしろいとしか言いようがない。読みながら何度も、傍目にもわかるくらい、体を震えが走り抜けていた。リスベットの破格な性質、ジャーナリストとしての告発、ミカエルの煩悶、読みやすい文章が、ややこしい物語を追う集中力を与えてくれる。満足です。
読了日:04月17日 著者:スティーグ・ラーソン

古本屋で出会った本。東京にお住まいで、東京がお好きで、東京の市井、歴史、風物に関する本が多く選ばれ、かの土地に思い入れの欠片もない私は閉口した。結局もとから好きなほうである樋口一葉、幸田文、メイ・サートン辺りを、読みたいな、と思い返すに留まった。
読了日:04月15日 著者:森 まゆみ

聞いたこともないスウェーデンの地名、耳慣れないスウェーデンの名前、しかもその登場人物の列挙に怖気づき、この小説を選んだのは固有名詞を覚えるのが苦手な私には誤りであったかもしれない、と思った。しかしそれは“ドラゴン・タトゥーの女”が登場した瞬間までの杞憂だった。著者がぼかしておきたいと意図する部分以外にぼけがない、わかりやすい文章。ジャーナリストらしく、社会的問題をいくつか織り糸に混ぜながら、物語は突き進んでいく。おもしろい。レビューを書く間も惜しみ、下巻へ。
読了日:04月15日 著者:スティーグ・ラーソン

桐野夏生版蝿の王。むせ返るほどの緑に覆われた南方の無人島であろう。しかし描かれるのは自然でなく、人の表皮の内側、内側へと暴いていく。この作家はなぜこれほど人の内の生々しいもの、汚いものを見つめるのだろう。それも特に、女のえげつない欲望を。これを巧く描くことは、それだけ著者自身が長い間向かい合ってきたことの証左でもある。内面に我欲の渦巻く女こそ、愚かではあっても生存本能に長けた女であることは間違いない。ひき比べ、どこか単純な男という生き物は醜怪であると同時に微笑ましくもある。
読了日:04月13日 著者:桐野 夏生

X、Yと変わってサム警部の若い娘の一人称で語られる。これまでとなにが違うかといえば、ものごとや人への主観的印象と直感が多く、瞬間的に人を断じて、はつらつとしている。エラリー・クイーン両氏の意表を突く企みである。あけすけな物言いへの、はすっぱな訳がよく似合っていい。 対比するように、ドルリー・レーンはめっきり老けこんだ。Xから10年。あの美しかった彼は失われてしまったのか。と思えばどっこい、彼の目は欺瞞を逃さず、力強く真実を白日の元にさらしてみせるのだ。ドルリー・レーンよ、永遠なれ。
読了日:04月10日 著者:エラリー・クイーン

本や古書のトリビアに添えられた愛着心で物語が回る。そうか、あの、高いんじゃない?とつい思ってしまう値付けは需要と供給によるものなのだね。書評などから読んでみたいと感じた本が絶版で手に入らない、しかも古本では定価以上の値が付いているという思いをよくするので、得心した。クラクラ日記は新刊で手に入るらしい、とまたメモメモ…。それにしても、このシリーズはまだまだ続く前提らしい。次も、読むだろうとは思う。その前に気になっている古書会館へ行かねば。
読了日:04月07日 著者:三上 延

誰もがそれぞれにアシンメトリー。非対称。歪なわだかまりにそれぞれ絡め取られてもがいていた。しなやかでなくなり始める年頃を、なんとか乗り越えていく。最後は爽やか。オビの結婚云々は年齢故にどうしても絡んでくる問題だけれど、この小説の核ではないだろう。
読了日:04月01日 著者:飛鳥井 千砂

本を読むのが好きだから本屋になりたいと、幼い頃言っていた。本を読むのと本を売るのと、資質が違うのは今や承知。古書を商うのもまた違うことなのだよな。近くにあって行きそびれている古書店のことを思い出した。よい加減で軽やかに読める。だからといって中身も軽いとは感じない。古書と、本が好きな人たちに寄り添う気持ちが感じ取れる。本屋大賞か古本屋大賞あげたい。
読了日:04月01日 著者:三上 延

読んだタイミングが悪い。地震のような天災か、原発事故のような人災か。いずれ東日本大震災を連想して無邪気に入り込めない。どうやら滅びた様相の、町と荒地の繰り返す土地である。生産性が失われ、人は暴力で奪いあうのみ。その中を父と子は歩く。逃げる。生きる。守る。なんとかつなぐ。他人を見ない振りをし、見捨て、そうしてでも生きようとする。この物語は、私には救いがなかった。人の中に神を見出す人もいるのかもしれない。だけど私は、太陽の光も差さず、緑の芽吹きもない世界に神は感じられない。ピューリッツァー賞受賞作。
読了日:04月01日 著者:コーマック・マッカーシー
2012年4月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター
Posted by nekoneko at 12:08│Comments(0)
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