2012年11月01日
2012年10月の読書
Kindleストアは今のところ、端末を買ってまで読みたい品揃えではありません。
Amazonをもってしても、これが出版社との限界点だったのかしら。
馬鹿買いしようと待ち構えているユーザーがいたのにもったいないわ(笑)。
なんのタガが外れたのかわからないが、本をやたら買いやたら読んでしまった10月。

読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4169ページ
ナイス数:93ナイス
ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ: 原子力を受け入れた日本 (ちくまプリマー新書)の感想
著者は危惧している。原爆投下後10年そこそこで日本は原発を受け入れた。それは米国の、日本の、政治家の、民衆の、思惑の結果だった。そして肝心は、イデオロギーの対立等に紛れて正しい議論が行われなかったことだった。その後3度もの被爆を経、私たちがすべきは自ら歴史を知り、対話をすること。善悪や対立でなく、立場の違う者同士があるべき倫理を検討し、確立すること。そうでなければまたも歪んだ歴史が生まれ、原発を不完全な存在のまま、次世代の悲劇の種にしてしまう。私たちは原子力を受け入れてしまった。もう捨てることはできない。
読了日:10月28日 著者:田口 ランディ
エチオピアからの手紙 (文春文庫)の感想
最近の著者の成熟した文章を読み慣れているので、最も初期のこの短編集は読みづらいものもあった。医者として立ち会った医療の現場で直面したたくさんの生死が一貫した土台となっている。精神のささくれ、波立ち、空回り、苛立ち。どれも仕方ないまま流れていく。文章のこなれなさが当時の著者の精神状態をそのまま映しているように感じる。それでも書かずにいられない、医者の業、患者の死と折り合いをつけるための言葉たち。ひたすら葛藤をからだの外へ押し出すような痛々しさがある。「活火山」と「木の家」がよい。
読了日:10月26日 著者:南木 佳士
風の海 迷宮の岸 十二国記 (新潮文庫)の感想
泰麒は、麒麟にこう言うのも変だけれども、数奇な運命を負っている。本人に罪科、過ちがなくとも、数奇を経ているが故に苦しまざるを得ない。泰王にはそれを和らげる性質を持っていてもらいたいといつも願う。シリーズを繰り返し読んでいると、一国の王であることの重みや責任を思わずにいられない。私が想像する程度の重みなど知れている。それでも、王、名君、ビジネス書風に言えばリーダーの資質は、人のどこに宿るのか、とつらつら思うのだ。折伏の瞬間に後頭部がずんとしびれたのは、風呂に浸かったまま我を忘れて読んでいたせいだろうか。
読了日:10月23日 著者:小野 不由美
福島、飯舘 それでも世界は美しいの感想
自分が美しいと思って住むことを選び、思い出をつくり、愛している場所が、否応なしに汚染され、忌避される不条理。外部の人間から蹂躙されることへの怒り。なにも変わらないと五感が感じる自然と、変わらず一体の生活でありたいのにできなくて、苦しむという破壊。福島の原発事故はそういう環境汚染であり、生活の破壊である。
読了日:10月21日 著者:小林 麻里
レインツリーの国 (新潮文庫)の感想
特異条件の恋愛設定だが、誰でもなにかしら他人と違う要素を抱えている、そのデフォルメととらえることもできる。甘い。レインツリーの国=World of delight。
読了日:10月21日 著者:有川 浩
人と人との快適距離―パーソナル・スペースとは何か (NHKブックス)の感想
著者は一般人向けの雑学本のような著作が圧倒的に多いが、この本に限っては学術寄りで、各国で行われた学術的実験及び知見を多面的に概説し、推論を述べている。パーソナルスペースとは平たく言えば人との距離。レノアハピネスのCMのミムラちゃんがまとっているバブルのようなものと考えると想像しやすい。身体を中心にした真球ではなく、前後左右及び上に一定の形があり、周囲環境や精神状態によって自在に大きさを変える。パーソナルスペースは人が他人と共存しようとするとき、最も原始的な重要素の一つである。
読了日:10月21日 著者:渋谷 昌三
心を上手に透視する方法の感想
私が心理学を専攻していた頃得た知識によるなら、これらの非言語的シグナルの解釈の多くは学術的に認められたものではない可能性がある。では著者が自信ありげに語るこれらの内容は鵜呑みでよいのか。マインド・リーダーなる著者が自信を持って語るからこそ逆に疑いの念が湧いて真剣に読む気が削がれた。相手のシグナルを的確に読み取り、的確な言動を返して物事を潤滑に進めることは普通に生きていく上で望ましい。人を思い通りに動かそうなどひね曲がったことを考えずに自分の糧にできれば、この本を読んだ価値はある。タイトルと帯は煽りすぎ。
読了日:10月17日 著者:トルステン・ハーフェナー
人間失格ではない太宰治―爆笑問題太田光の11オシ (SHINCHO MOOK)の感想
若い頃は人間失格など極限的に私的な作品を好んで読んでいた。今読んでみると富嶽百景やお伽草子のような、自分の内面から一歩切離した、しかし実は全体に我が絡みついたようなものが好きになっているようだ。太宰を読んでげらげら笑うとは、若いころ思いもしなかった。だって太宰って深刻に読むものだと思っていたから。写真も柔らかい表情のものが選ばれていて、この冊子は、太宰はしかめ面をして読むようなものばかりじゃないぞと、こちらのほうが主だぞと、そういうセレクションのようだ。
読了日:10月15日 著者:太宰 治
The Arrivalの感想
本屋で立ち読みして、じっくり浸りたかったので購入。私は生まれた土地に何事もなく住み続けている。だから、気持ちがわかるなど、おこがましい。なにかに追われて慣れた地を離れ、見知らぬ地で独り、脂汗冷や汗を流しながら居場所と生きる糧を得る姿は賞賛に値する。そう、この本文中に文字を持たない物語そのものが、そのように生きる人たちへの賛歌であるように感じた。あの奇妙な生き物は本能によってか、よりよい選択を知らせてくれるようだ。短所としては、足が遅い。
読了日:10月14日 著者:Shaun Tan
シェリ (岩波文庫)の感想
長い旅から戻り、気持ちに整理をつけたレアの歯切れのよさは最高に小気味よい。『おおいやだ! 全部おさらば、そのほうがさっぱりするわ』『あたしほどの女が、綺麗に人生を終える覚悟ができないってことないでしょ!』気高くあれ。誇り高くあれ。女であれ。しかし再びシェリが現れ、最も残酷な形で現実を突きつけるのである。若い男が老いかけた女を最終的に選ぶ構図はやはり歪なのか。今度こそ決定的な別れの後、レアがどのように立ち直ってみせるのか気になる。時代から見れば桁外れに放埓な自身の経験故に書かれた男女像には迫力がある。
読了日:10月14日 著者:コレット
夜市の感想
お気に入りさんのレビューを読んでいたら再読したくなりました。最初は日常にありふれたほんの一歩。それが細長い道へと続き、気づけば広大な異世界の只中にある。ただの異世界ならば、ああおもしろかったで終わるのだと思う。これらの異世界にどうしようもなく惹かれるのは、心の少し翳りを帯びた部分が物語に呼応するから。視界にうっすら刷いたような哀しみが、読み終えても余韻として残る。最初に読んだときと変わらぬ満足感、幸せです。
読了日:10月12日 著者:恒川 光太郎
インビジブルレイン (光文社文庫)の感想
このシリーズは男が格好いい。それも苦みばしった中年の男が渋い。彼らという下地があって初めて姫川が活きる。そこに奴の登場は反則だ。入念に意図されたキャラなのがわかっていてなお惚れた。一方、著者は未だ女心を書くのが下手なのに女主人公を詰めて書こうとするから、せっかく盛り上がった気分は解決を待たずにだだ下がった。もう!と言いたいのはこちらである。漢っぷりだけで読まされた。
読了日:10月8日 著者:誉田哲也
ONE PIECE 総集編 THE 17TH LOG (ONE PIECE 総集編)の感想
読後の食事は当然たこ焼きである。
読了日:10月6日 著者:尾田 栄一郎
発電・送電・配電が一番わかる (しくみ図解シリーズ)の感想
発電、送電、配電、配線をバランスよく、発電所から需要家までの仕組みの概略書。今の時代のキーワードの解説は知らないものもあっておもしろい。章によって濃い薄いが感じられるが、これは私自身の知識の濃淡によるものか。
読了日:10月6日 著者:福田 務
読書メーター
Amazonをもってしても、これが出版社との限界点だったのかしら。
馬鹿買いしようと待ち構えているユーザーがいたのにもったいないわ(笑)。
なんのタガが外れたのかわからないが、本をやたら買いやたら読んでしまった10月。

読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4169ページ
ナイス数:93ナイス

著者は危惧している。原爆投下後10年そこそこで日本は原発を受け入れた。それは米国の、日本の、政治家の、民衆の、思惑の結果だった。そして肝心は、イデオロギーの対立等に紛れて正しい議論が行われなかったことだった。その後3度もの被爆を経、私たちがすべきは自ら歴史を知り、対話をすること。善悪や対立でなく、立場の違う者同士があるべき倫理を検討し、確立すること。そうでなければまたも歪んだ歴史が生まれ、原発を不完全な存在のまま、次世代の悲劇の種にしてしまう。私たちは原子力を受け入れてしまった。もう捨てることはできない。
読了日:10月28日 著者:田口 ランディ

最近の著者の成熟した文章を読み慣れているので、最も初期のこの短編集は読みづらいものもあった。医者として立ち会った医療の現場で直面したたくさんの生死が一貫した土台となっている。精神のささくれ、波立ち、空回り、苛立ち。どれも仕方ないまま流れていく。文章のこなれなさが当時の著者の精神状態をそのまま映しているように感じる。それでも書かずにいられない、医者の業、患者の死と折り合いをつけるための言葉たち。ひたすら葛藤をからだの外へ押し出すような痛々しさがある。「活火山」と「木の家」がよい。
読了日:10月26日 著者:南木 佳士

泰麒は、麒麟にこう言うのも変だけれども、数奇な運命を負っている。本人に罪科、過ちがなくとも、数奇を経ているが故に苦しまざるを得ない。泰王にはそれを和らげる性質を持っていてもらいたいといつも願う。シリーズを繰り返し読んでいると、一国の王であることの重みや責任を思わずにいられない。私が想像する程度の重みなど知れている。それでも、王、名君、ビジネス書風に言えばリーダーの資質は、人のどこに宿るのか、とつらつら思うのだ。折伏の瞬間に後頭部がずんとしびれたのは、風呂に浸かったまま我を忘れて読んでいたせいだろうか。
読了日:10月23日 著者:小野 不由美

自分が美しいと思って住むことを選び、思い出をつくり、愛している場所が、否応なしに汚染され、忌避される不条理。外部の人間から蹂躙されることへの怒り。なにも変わらないと五感が感じる自然と、変わらず一体の生活でありたいのにできなくて、苦しむという破壊。福島の原発事故はそういう環境汚染であり、生活の破壊である。
読了日:10月21日 著者:小林 麻里

特異条件の恋愛設定だが、誰でもなにかしら他人と違う要素を抱えている、そのデフォルメととらえることもできる。甘い。レインツリーの国=World of delight。
読了日:10月21日 著者:有川 浩

著者は一般人向けの雑学本のような著作が圧倒的に多いが、この本に限っては学術寄りで、各国で行われた学術的実験及び知見を多面的に概説し、推論を述べている。パーソナルスペースとは平たく言えば人との距離。レノアハピネスのCMのミムラちゃんがまとっているバブルのようなものと考えると想像しやすい。身体を中心にした真球ではなく、前後左右及び上に一定の形があり、周囲環境や精神状態によって自在に大きさを変える。パーソナルスペースは人が他人と共存しようとするとき、最も原始的な重要素の一つである。
読了日:10月21日 著者:渋谷 昌三

私が心理学を専攻していた頃得た知識によるなら、これらの非言語的シグナルの解釈の多くは学術的に認められたものではない可能性がある。では著者が自信ありげに語るこれらの内容は鵜呑みでよいのか。マインド・リーダーなる著者が自信を持って語るからこそ逆に疑いの念が湧いて真剣に読む気が削がれた。相手のシグナルを的確に読み取り、的確な言動を返して物事を潤滑に進めることは普通に生きていく上で望ましい。人を思い通りに動かそうなどひね曲がったことを考えずに自分の糧にできれば、この本を読んだ価値はある。タイトルと帯は煽りすぎ。
読了日:10月17日 著者:トルステン・ハーフェナー

若い頃は人間失格など極限的に私的な作品を好んで読んでいた。今読んでみると富嶽百景やお伽草子のような、自分の内面から一歩切離した、しかし実は全体に我が絡みついたようなものが好きになっているようだ。太宰を読んでげらげら笑うとは、若いころ思いもしなかった。だって太宰って深刻に読むものだと思っていたから。写真も柔らかい表情のものが選ばれていて、この冊子は、太宰はしかめ面をして読むようなものばかりじゃないぞと、こちらのほうが主だぞと、そういうセレクションのようだ。
読了日:10月15日 著者:太宰 治

本屋で立ち読みして、じっくり浸りたかったので購入。私は生まれた土地に何事もなく住み続けている。だから、気持ちがわかるなど、おこがましい。なにかに追われて慣れた地を離れ、見知らぬ地で独り、脂汗冷や汗を流しながら居場所と生きる糧を得る姿は賞賛に値する。そう、この本文中に文字を持たない物語そのものが、そのように生きる人たちへの賛歌であるように感じた。あの奇妙な生き物は本能によってか、よりよい選択を知らせてくれるようだ。短所としては、足が遅い。
読了日:10月14日 著者:Shaun Tan

長い旅から戻り、気持ちに整理をつけたレアの歯切れのよさは最高に小気味よい。『おおいやだ! 全部おさらば、そのほうがさっぱりするわ』『あたしほどの女が、綺麗に人生を終える覚悟ができないってことないでしょ!』気高くあれ。誇り高くあれ。女であれ。しかし再びシェリが現れ、最も残酷な形で現実を突きつけるのである。若い男が老いかけた女を最終的に選ぶ構図はやはり歪なのか。今度こそ決定的な別れの後、レアがどのように立ち直ってみせるのか気になる。時代から見れば桁外れに放埓な自身の経験故に書かれた男女像には迫力がある。
読了日:10月14日 著者:コレット

お気に入りさんのレビューを読んでいたら再読したくなりました。最初は日常にありふれたほんの一歩。それが細長い道へと続き、気づけば広大な異世界の只中にある。ただの異世界ならば、ああおもしろかったで終わるのだと思う。これらの異世界にどうしようもなく惹かれるのは、心の少し翳りを帯びた部分が物語に呼応するから。視界にうっすら刷いたような哀しみが、読み終えても余韻として残る。最初に読んだときと変わらぬ満足感、幸せです。
読了日:10月12日 著者:恒川 光太郎

このシリーズは男が格好いい。それも苦みばしった中年の男が渋い。彼らという下地があって初めて姫川が活きる。そこに奴の登場は反則だ。入念に意図されたキャラなのがわかっていてなお惚れた。一方、著者は未だ女心を書くのが下手なのに女主人公を詰めて書こうとするから、せっかく盛り上がった気分は解決を待たずにだだ下がった。もう!と言いたいのはこちらである。漢っぷりだけで読まされた。
読了日:10月8日 著者:誉田哲也

読後の食事は当然たこ焼きである。
読了日:10月6日 著者:尾田 栄一郎

発電、送電、配電、配線をバランスよく、発電所から需要家までの仕組みの概略書。今の時代のキーワードの解説は知らないものもあっておもしろい。章によって濃い薄いが感じられるが、これは私自身の知識の濃淡によるものか。
読了日:10月6日 著者:福田 務
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Posted by nekoneko at 18:32│Comments(0)
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