2013年09月01日
2013年8月の読書
積読山の低山化は体重の減るのと同じくらい嬉しい。
そしてそのくらい難しいことでもある。
そして1日の朝、Kindle月替りセールで3冊ぽち。
積読本105冊。気になっている本383冊。

2013年8月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
李歐 (講談社文庫)の感想
美しい、大陸の男。自ら光を放つような男。能力も運も罪の概念も、すべてのリミッターを外して生きるような、そんな生き方が可能なのだろうか。有限から無限を産むための力、生きることへの強烈な意志を、返って見れば矮小な日本人である私はどこか諦めている。このような男を目の前にしたら、一も二もなく惚れてしまうのだろう。そしてその苛烈さの一握りを内に映すのかもしれない。希望、その力。そしてそれを信じ実現する力よ。果てない大陸に無限のごとく広がる、桃源郷ならぬ、櫻花屯の桜は、清も濁も飲み込んでなお淡淡と美しい。大満足。
読了日:8月30日 著者:高村薫
NOVA1【分冊版】自生の夢の感想
入り込めるSFと入り込めないSFがある。伊藤計劃作品から導かれて選んだこれは入り込めなかった。言語や観念を主題とするなら、実存する身体や自然との乖離、その違和感やおぞましさをも含んでこそ世界観に深みが出るものだと私は思う。これではただの夢。
読了日:8月28日 著者:飛浩隆
くらし方が変わる! おうちでごはんを愉しむIHクッキング (LADY BIRD 小学館実用シリーズ)の感想
小学館から発売された料理本。異色な点は内容の半分ほどもがIHクッキングヒーターの説明であることだ。均一に蒸気がまわる、低温設定でゼラチンがきれいに溶ける…等々、IHの使いやすさを毎ページ説いている。調理説明にも火加減は[中火 IH5]のようにIH設定値で説明する。窯が電気オーブンに変わったように、感覚でなく数値でエネルギー量を推し測るのは文明なのだろうけれど、味気なくもある。料理は上品め。
読了日:8月28日 著者:小山浩子
ノンフィクションはこれを読め! - HONZが選んだ150冊の感想
HONZ会員の話し合っている様子がこのうえなく楽しそうだ! その意気投合ぶりと気兼ねのなさに、読んでいるこちらも気分が高ぶってしまう。紹介されている本もすべて読みたくなる…かといえばそうではない。書評が面白いからといって無条件に買うと、難儀することもあるとこちらも学んだのだ。それでも、読んだノンフィクションの冊数は去年よりはるかに多い。
読了日:8月25日 著者:成毛眞
本にだって雄と雌がありますの感想
いいね。愛だね。今年の上位ランクイン決定。という感想に釣られて読み始めたとして、最初の数ページで目眩がするのではないだろうか。どうどうと溢れる言葉。飽くことなき言葉遊びの連続。その場合は最初の章で感性を馴らして、最後まで読み進めてみてほしい。饒舌な語り手によってどこへ話が帰結するのか、全く見えない。そして大抵の滑稽さは読んでいるうちに疲れて慣れるものだが、この小説に盛りこまれた言葉遊びは不意を突くので最後まで油断ならなかった。徹頭徹尾ふざけた小説、という最初の印象がきれいに拭い去られ…やっぱり愛だよ。
読了日:8月22日 著者:小田雅久仁
<一番やさしい・一番くわしい> 図解でわかるISO14001のすべての感想
環境マネジメントシステムの規格が要求する事項をかみ砕いて説明してくれる。詳しいのは確かだし、易しいのもたぶん確か。規格としても文句なしに合理的なのだろうけれども、私でも読んでげんなりするコレを、1ページだって読めずに投げ出してしまうだろう現場員たちに説明し、遵守させることがはたして可能なのだろうか、と悩む。この本を読んでISOへの理解を深めることはできる。しかしISOを取得するか否かの判断には不向きのようだ。
読了日:8月22日 著者:大浜庄司
僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか 絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想 (幻冬舎新書)の感想
社会問題におけるものの見方などを専門用語を交えて広く解説するばかりで、答えを示すわけでなし、「で?」とばかりフラストレーションが溜まる。しかしどうやら第5章が本題である。目的は答えを与えることにはないのだ。対象は、社会を変えたいと思うなにかがある若者。ダメ出しをするばかりではなく、小さくていいからとにかく始めようよという語りかけである、平たく言えば。
読了日:8月15日 著者:荻上チキ
プロメテウスの罠 2の感想
英仏で加工して再入国するMOX燃料の値段。燃料リサイクル事業の見通し。中間処理施設を誘致した六ヶ所村の事情。誤って警報された津波高さ。事故後の原発推進派と反原発派の攻防。当時の報道の表面で見えなかったあれこれが次々明るみに出る。国民に広く議論をと言いながら意図的な隠蔽が匂うことばかりで、これで原発を疑わずにいられるものか。この日本が原発の輸出国として発展するだなんて、国民としてこっ恥ずかしい。
読了日:8月15日 著者:朝日新聞特別報道部
夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)の感想
人の死なない、青少年のミステリ。だけど、一筋縄でいかないところが米澤穂信。「小市民」、「狼」と「狐」。春から読めば意味がちゃんとわかるのでしょうが、夏だけ読むと、なんとも哲学的な意味をはらんでいそうな仕掛けです。
読了日:8月14日 著者:米澤穂信
博物誌 (新潮文庫)の感想
それぞれの生物の観察記、というのとはちがう。生物をモチーフにした小編小説、というのとも違う気がする。ちょっとしたユーモアと、訳文の端正さ。そのくらいしか感じ取れなかった。合わなかったわね。
読了日:8月14日 著者:ジュール・ルナール
いたずらこねこ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)の感想
こねこが亀に出会い、初めての体験をする。一歩下がるところとか、こねこは愛らしい仕草を見せつつおはなしは展開する。残念なのはこねこの絵が猫らしくないところ。耳がついとるところはそこちゃうし、そういう走り方もせんやろ。
読了日:8月13日 著者:バーナディン・クック
丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫)の感想
願い。祈り。自然を司る天への祈りと治世への望みが、かの地ではそのまま国の王への願いとなる。なぜなら、王が王の座にあり、まっとうな治世を執り行なうことで天災が止み、天地が整うという性質を持つからだ。嘆き、膝をつき、ときに恨み、それでも人の顔を上げさせ、明日へとつながせるなにか。それを追って、小野さんは書く。この短編集にいつもの主要人物たちは影だけだけど、本編と同じように、明日のためにこう在りたいと願う人の姿は、私の顔をも上げさせる。それにしても丕緒の鳥のラストシーンはなんて美しく、胸を震わすのだろう。
読了日:8月8日 著者:小野不由美
ねにもつタイプ (ちくま文庫)の感想
天然と呼ぶにもかなり風変わりな方。奇異な出発点から膨らませて読ませる文章力には感服する。しかし好きではない。著者の翻訳した海外小説に興味があるも、ざっと調べたところやはり風変わりな小説が多いのかと、尻込み気味になった。きっとその素地を最大限に生かして翻訳してくださっているのだろうけれど。
読了日:8月4日 著者:岸本佐知子
The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)の感想
設定が緻密なので、設定ばかりが際立つとゲームっぽい印象になる。今ひとつSF慣れが足りない自分を慣らしつつ読まないと、入り込めないまま終わってしまう。なので、短編には苦戦した。その、生き方や身体を弄られた人間を素材に、それは人間であるか否か。人間らしいか否か。人間の定義は。と問い込んでいくのが伊藤計劃だとも思う。「屍者の帝国」、円城氏に敬意を表しつつ、伊藤計劃の書き上げた長編小説を読みたかったと強く強く(以下略)。「フォックスの葬送」が美しい。湖畔と白い花。侵されず残る記憶。
読了日:8月3日 著者:伊藤計劃
検察側の証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)の感想
芝居仕立てのミステリ。弁護士の部屋と法廷で展開されるだけの物語なのに、べらぼうに面白い。戯曲様式なのでセリフが全てのようなもので、それだけで読者を引きつけるのは並みの引力ではないよね。久しぶりに寝落ちせず読み切った。クライマックスのどんでん返しは目まぐるしく、やられた感満載。そのうえ切ない余韻もついてくる。
読了日:8月2日 著者:アガサ・クリスティー
注:
はKindleで読んだ本。
そしてそのくらい難しいことでもある。
そして1日の朝、Kindle月替りセールで3冊ぽち。
積読本105冊。気になっている本383冊。

2013年8月の読書メーター
読んだ本の数:15冊

美しい、大陸の男。自ら光を放つような男。能力も運も罪の概念も、すべてのリミッターを外して生きるような、そんな生き方が可能なのだろうか。有限から無限を産むための力、生きることへの強烈な意志を、返って見れば矮小な日本人である私はどこか諦めている。このような男を目の前にしたら、一も二もなく惚れてしまうのだろう。そしてその苛烈さの一握りを内に映すのかもしれない。希望、その力。そしてそれを信じ実現する力よ。果てない大陸に無限のごとく広がる、桃源郷ならぬ、櫻花屯の桜は、清も濁も飲み込んでなお淡淡と美しい。大満足。
読了日:8月30日 著者:高村薫

入り込めるSFと入り込めないSFがある。伊藤計劃作品から導かれて選んだこれは入り込めなかった。言語や観念を主題とするなら、実存する身体や自然との乖離、その違和感やおぞましさをも含んでこそ世界観に深みが出るものだと私は思う。これではただの夢。
読了日:8月28日 著者:飛浩隆


小学館から発売された料理本。異色な点は内容の半分ほどもがIHクッキングヒーターの説明であることだ。均一に蒸気がまわる、低温設定でゼラチンがきれいに溶ける…等々、IHの使いやすさを毎ページ説いている。調理説明にも火加減は[中火 IH5]のようにIH設定値で説明する。窯が電気オーブンに変わったように、感覚でなく数値でエネルギー量を推し測るのは文明なのだろうけれど、味気なくもある。料理は上品め。
読了日:8月28日 著者:小山浩子

HONZ会員の話し合っている様子がこのうえなく楽しそうだ! その意気投合ぶりと気兼ねのなさに、読んでいるこちらも気分が高ぶってしまう。紹介されている本もすべて読みたくなる…かといえばそうではない。書評が面白いからといって無条件に買うと、難儀することもあるとこちらも学んだのだ。それでも、読んだノンフィクションの冊数は去年よりはるかに多い。
読了日:8月25日 著者:成毛眞


いいね。愛だね。今年の上位ランクイン決定。という感想に釣られて読み始めたとして、最初の数ページで目眩がするのではないだろうか。どうどうと溢れる言葉。飽くことなき言葉遊びの連続。その場合は最初の章で感性を馴らして、最後まで読み進めてみてほしい。饒舌な語り手によってどこへ話が帰結するのか、全く見えない。そして大抵の滑稽さは読んでいるうちに疲れて慣れるものだが、この小説に盛りこまれた言葉遊びは不意を突くので最後まで油断ならなかった。徹頭徹尾ふざけた小説、という最初の印象がきれいに拭い去られ…やっぱり愛だよ。
読了日:8月22日 著者:小田雅久仁

環境マネジメントシステムの規格が要求する事項をかみ砕いて説明してくれる。詳しいのは確かだし、易しいのもたぶん確か。規格としても文句なしに合理的なのだろうけれども、私でも読んでげんなりするコレを、1ページだって読めずに投げ出してしまうだろう現場員たちに説明し、遵守させることがはたして可能なのだろうか、と悩む。この本を読んでISOへの理解を深めることはできる。しかしISOを取得するか否かの判断には不向きのようだ。
読了日:8月22日 著者:大浜庄司

社会問題におけるものの見方などを専門用語を交えて広く解説するばかりで、答えを示すわけでなし、「で?」とばかりフラストレーションが溜まる。しかしどうやら第5章が本題である。目的は答えを与えることにはないのだ。対象は、社会を変えたいと思うなにかがある若者。ダメ出しをするばかりではなく、小さくていいからとにかく始めようよという語りかけである、平たく言えば。
読了日:8月15日 著者:荻上チキ


英仏で加工して再入国するMOX燃料の値段。燃料リサイクル事業の見通し。中間処理施設を誘致した六ヶ所村の事情。誤って警報された津波高さ。事故後の原発推進派と反原発派の攻防。当時の報道の表面で見えなかったあれこれが次々明るみに出る。国民に広く議論をと言いながら意図的な隠蔽が匂うことばかりで、これで原発を疑わずにいられるものか。この日本が原発の輸出国として発展するだなんて、国民としてこっ恥ずかしい。
読了日:8月15日 著者:朝日新聞特別報道部


人の死なない、青少年のミステリ。だけど、一筋縄でいかないところが米澤穂信。「小市民」、「狼」と「狐」。春から読めば意味がちゃんとわかるのでしょうが、夏だけ読むと、なんとも哲学的な意味をはらんでいそうな仕掛けです。
読了日:8月14日 著者:米澤穂信

それぞれの生物の観察記、というのとはちがう。生物をモチーフにした小編小説、というのとも違う気がする。ちょっとしたユーモアと、訳文の端正さ。そのくらいしか感じ取れなかった。合わなかったわね。
読了日:8月14日 著者:ジュール・ルナール

こねこが亀に出会い、初めての体験をする。一歩下がるところとか、こねこは愛らしい仕草を見せつつおはなしは展開する。残念なのはこねこの絵が猫らしくないところ。耳がついとるところはそこちゃうし、そういう走り方もせんやろ。
読了日:8月13日 著者:バーナディン・クック

願い。祈り。自然を司る天への祈りと治世への望みが、かの地ではそのまま国の王への願いとなる。なぜなら、王が王の座にあり、まっとうな治世を執り行なうことで天災が止み、天地が整うという性質を持つからだ。嘆き、膝をつき、ときに恨み、それでも人の顔を上げさせ、明日へとつながせるなにか。それを追って、小野さんは書く。この短編集にいつもの主要人物たちは影だけだけど、本編と同じように、明日のためにこう在りたいと願う人の姿は、私の顔をも上げさせる。それにしても丕緒の鳥のラストシーンはなんて美しく、胸を震わすのだろう。
読了日:8月8日 著者:小野不由美

天然と呼ぶにもかなり風変わりな方。奇異な出発点から膨らませて読ませる文章力には感服する。しかし好きではない。著者の翻訳した海外小説に興味があるも、ざっと調べたところやはり風変わりな小説が多いのかと、尻込み気味になった。きっとその素地を最大限に生かして翻訳してくださっているのだろうけれど。
読了日:8月4日 著者:岸本佐知子

設定が緻密なので、設定ばかりが際立つとゲームっぽい印象になる。今ひとつSF慣れが足りない自分を慣らしつつ読まないと、入り込めないまま終わってしまう。なので、短編には苦戦した。その、生き方や身体を弄られた人間を素材に、それは人間であるか否か。人間らしいか否か。人間の定義は。と問い込んでいくのが伊藤計劃だとも思う。「屍者の帝国」、円城氏に敬意を表しつつ、伊藤計劃の書き上げた長編小説を読みたかったと強く強く(以下略)。「フォックスの葬送」が美しい。湖畔と白い花。侵されず残る記憶。
読了日:8月3日 著者:伊藤計劃

芝居仕立てのミステリ。弁護士の部屋と法廷で展開されるだけの物語なのに、べらぼうに面白い。戯曲様式なのでセリフが全てのようなもので、それだけで読者を引きつけるのは並みの引力ではないよね。久しぶりに寝落ちせず読み切った。クライマックスのどんでん返しは目まぐるしく、やられた感満載。そのうえ切ない余韻もついてくる。
読了日:8月2日 著者:アガサ・クリスティー

注:

Posted by nekoneko at 11:12│Comments(0)
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