2014年06月02日
2014年5月の読書
初の体験。
つい先月書いたばかりの自分の感想に胸を突かれ、背中を押される。
積読本124冊。気になっている本415冊。

2014年5月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
猫持先生随筆帖の感想
猫にまつわる句が面白いので、エッセイも読んでみた。愛猫家で愛妻家で友人も大事にして知識も豊富、駄菓子菓子、想像に反してご性格がぐずぐずというかごろにゃんというか、病身には申し訳ないが、合わず楽しめなかった。
読了日:5月30日 著者:寒川猫持
インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)の感想
いつからか囃される「インテリジェンス」。今に始まったことではない、諜報のことである。国際政治の裏で暗躍する印象の仕事人が、このように表で流儀や顛末を長々話し合っている光景は、ものすごく不思議だ。あの逮捕劇が佐藤氏の運命を変えたのだろう。お互いに相手を持ち上げたりラスプーチンと呼んだり、本心だかなんだかキモチワルイな、と思いきや、しっかり牽制もしている辺り、にやりとしてしまう。インテリジェンスを担うことに自尊心をお持ちだ。弱体化している日本の諜報機能を日米安保に頼らず独自に育てようぜ、という主旨。
読了日:5月28日 著者:手嶋龍一,佐藤優
華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)の感想
派手なカタルシスはないが、微かな、しかし各々にとっては大切なよすがが描かれている短編集。異色なのは「華胥」。ミステリであるとともに、前作でも書いたと思うが、一国=一企業と読み換えればこれは企業小説だ。『責難することは容易い、けれどもそれは何かを正すことではない』、そして『どんな王だって最初はそう』。沁みる。この後を「帰山」で締めるところがまた良い。十二国の総括にもなっていて、時系列を確認できる。ちょうど先週葬式を出した祖父の戒名には〈隆洽〉と、お寺さんが入れてくれた。奏国の首都と同じだと、覚えておこう。
読了日:5月25日 著者:小野不由美
よろずのことに気をつけよ (講談社文庫)の感想
事件は凄惨でグロい。夜の居室で思わず後ろを振り返ってしまう不気味さが、人物で中和されている。呪いといっても超常的なものではなく、つまりは人の思いの強さゆえ、相手に対して力を持つものだ。しかし、場所に感じるほどの憎悪とはどのようなものか。少し想像しづらかった。彼らの憎悪よりも真由の最後の決意が印象的。江戸川乱歩賞受賞、だけれど、乱歩や横溝正史のような、明かりが十分に行き渡らない暗さがもっとあればこの小説は凄かっただろう。
読了日:5月20日 著者:川瀬七緒
驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)の感想
明るく清潔に保たれた老人施設には介護や介助を必要とする老人が集まってくる。それは生きるためにただ介助されるべき最弱の存在ではなく、現代に多種多様の生き方があるように、それぞれ唯一の生き方で80年をも生き抜いてきた日本人の姿だ。介護の現場では利用者の気持ちを察することに重きを置き、語られる内容についてはさして注意を払ってこなかった、のかどうか私にはわからない。自身の祖父母にだって敬意をもって接せているとはいえない。ただ、「できないんだから世話してやっている」感の裏で失われているものには気づけたように思う。
読了日:5月6日 著者:六車由実
富士山 (文春文庫)の感想
暗く大きな穴の縁にランディさんはいる。穴に踏み込んでしまった人達と、踏み込みかけた過去の自分に寄り添うためだ。生と苦しさの意味を主人公と共に自問し、主人公に解放を与えて物語を終わらせている。主人公のうち3編は男性で、最後の1編だけ女性だ。生への疑いは子供を産むとぶっ飛んでしまうのかもしれない。そのように論理を踏み倒してしまう女性性を排除して考えてみたくて、男性を主人公にしたのではないだろうか。最後の1編の主人公は、ランディさんだ。身の内に巣食う激しい怒り。あの怒りはかつてランディさん自身のものだった。
読了日:5月5日 著者:田口ランディ
RDG6 レッドデータガール 星降る夜に願うこと (角川文庫)の感想
これが最終巻で、はじまりのおわり。彼らはこれから、まだ見ぬ、初めての未来へ駆けていくのだ。未来は、本人が気づきさえすれば、いつだって広がっていくものだ。歳をとってもね。楽しかったです。
読了日:5月1日 著者:荻原規子
注:
はKindleで読んだ本。
つい先月書いたばかりの自分の感想に胸を突かれ、背中を押される。
積読本124冊。気になっている本415冊。

2014年5月の読書メーター
読んだ本の数:7冊

猫にまつわる句が面白いので、エッセイも読んでみた。愛猫家で愛妻家で友人も大事にして知識も豊富、駄菓子菓子、想像に反してご性格がぐずぐずというかごろにゃんというか、病身には申し訳ないが、合わず楽しめなかった。
読了日:5月30日 著者:寒川猫持


いつからか囃される「インテリジェンス」。今に始まったことではない、諜報のことである。国際政治の裏で暗躍する印象の仕事人が、このように表で流儀や顛末を長々話し合っている光景は、ものすごく不思議だ。あの逮捕劇が佐藤氏の運命を変えたのだろう。お互いに相手を持ち上げたりラスプーチンと呼んだり、本心だかなんだかキモチワルイな、と思いきや、しっかり牽制もしている辺り、にやりとしてしまう。インテリジェンスを担うことに自尊心をお持ちだ。弱体化している日本の諜報機能を日米安保に頼らず独自に育てようぜ、という主旨。
読了日:5月28日 著者:手嶋龍一,佐藤優

派手なカタルシスはないが、微かな、しかし各々にとっては大切なよすがが描かれている短編集。異色なのは「華胥」。ミステリであるとともに、前作でも書いたと思うが、一国=一企業と読み換えればこれは企業小説だ。『責難することは容易い、けれどもそれは何かを正すことではない』、そして『どんな王だって最初はそう』。沁みる。この後を「帰山」で締めるところがまた良い。十二国の総括にもなっていて、時系列を確認できる。ちょうど先週葬式を出した祖父の戒名には〈隆洽〉と、お寺さんが入れてくれた。奏国の首都と同じだと、覚えておこう。
読了日:5月25日 著者:小野不由美

事件は凄惨でグロい。夜の居室で思わず後ろを振り返ってしまう不気味さが、人物で中和されている。呪いといっても超常的なものではなく、つまりは人の思いの強さゆえ、相手に対して力を持つものだ。しかし、場所に感じるほどの憎悪とはどのようなものか。少し想像しづらかった。彼らの憎悪よりも真由の最後の決意が印象的。江戸川乱歩賞受賞、だけれど、乱歩や横溝正史のような、明かりが十分に行き渡らない暗さがもっとあればこの小説は凄かっただろう。
読了日:5月20日 著者:川瀬七緒

明るく清潔に保たれた老人施設には介護や介助を必要とする老人が集まってくる。それは生きるためにただ介助されるべき最弱の存在ではなく、現代に多種多様の生き方があるように、それぞれ唯一の生き方で80年をも生き抜いてきた日本人の姿だ。介護の現場では利用者の気持ちを察することに重きを置き、語られる内容についてはさして注意を払ってこなかった、のかどうか私にはわからない。自身の祖父母にだって敬意をもって接せているとはいえない。ただ、「できないんだから世話してやっている」感の裏で失われているものには気づけたように思う。
読了日:5月6日 著者:六車由実

暗く大きな穴の縁にランディさんはいる。穴に踏み込んでしまった人達と、踏み込みかけた過去の自分に寄り添うためだ。生と苦しさの意味を主人公と共に自問し、主人公に解放を与えて物語を終わらせている。主人公のうち3編は男性で、最後の1編だけ女性だ。生への疑いは子供を産むとぶっ飛んでしまうのかもしれない。そのように論理を踏み倒してしまう女性性を排除して考えてみたくて、男性を主人公にしたのではないだろうか。最後の1編の主人公は、ランディさんだ。身の内に巣食う激しい怒り。あの怒りはかつてランディさん自身のものだった。
読了日:5月5日 著者:田口ランディ

これが最終巻で、はじまりのおわり。彼らはこれから、まだ見ぬ、初めての未来へ駆けていくのだ。未来は、本人が気づきさえすれば、いつだって広がっていくものだ。歳をとってもね。楽しかったです。
読了日:5月1日 著者:荻原規子

注:

Posted by nekoneko at 21:24│Comments(0)
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