2015年03月01日
2015年2月の記録
読書と武術は相性が良いと思う。
片や視覚から入る文字情報をイメージに翻訳し、意味を処理する。
片や理屈や概念をできる限り排し、動きと共に身体の状態に感覚を澄ませる。
どちらも鍛錬のもの。
双方の均衡があるから、双方に意義を見出すことができる。
積読本104冊。気になっている本389冊。

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか (単行本)の感想
学生時代、居酒屋で頼むのはホッケだった。今、売り場で見るホッケは確かに小さくアジの開きと見間違う。この本は日本の漁業問題に警鐘を鳴らし続ける本職の卸業者さんの10冊目の著書だ。序盤は話好きなおっちゃんの世間話を聞かされているようだが、徐々に日本の漁業事情へと話は深刻化してゆく。ホッケが小さいのもウナギが絶滅するのも、日本がバブル期以来乱獲・乱売・乱食を続けてきたせいだった。地球温暖化は言い訳で、水産行政は統制できていない。その証拠に福島では今、皮肉にも魚が育っているそうだ。魚好きとしては途方に暮れる話だ。
読了日:2月28日 著者:生田與克
無縁社会 (文春文庫)の感想
個人としては、孤独であろうが無縁と呼ばれようが、本人が満足して生きたなら他人に憐れまれる謂れはない。寂しいなら他人と繋がれる生き方を選べばいい。一方、福祉社会としては放任できず、独居世帯増加が確実である今、方策を練ることも当然である。繋がりをつくる方法と場所は益々必要になるだろう。更に、それらと遺骨の処理は別問題ではないのか。苗字が違うとか、生活に余裕がないとか、骨など気持ちさえあれば預かれる物だろう。本人にしても、安置先がないことはそれほど苦痛なものだろうか。宗教観のねじれ、血縁の偏重を根底に感じる。
読了日:2月26日 著者:NHKスペシャル取材班
私はフーイー 沖縄怪談短篇集 (幽BOOKS)の感想
恒川さんのつむぐ物語は、この現実とほんの紙一重にある異世界を描くものが多かった。一方、南国や沖縄には、現実と異世界が同居する空間とそれを日常とする人々の暗黙の了解があるように思う。だから恒川さんは沖縄を舞台に、異世界との境界を取っ払う試みをしたのではないかしら。沖縄離島まるごと異世界みたい。二度と還って来られない切迫感は凄まじく、怖い。表題作の終盤はそんな怖さも忘れさせる美しさで、私は思わず窓の外の空を見上げる。
読了日:2月24日 著者:恒川光太郎
恋する旅女、世界をゆく ――29歳、会社を辞めて旅に出た (幻冬舎文庫)の感想
独身女の長期アジア一人旅。テンションと自意識の高さに少々抵抗を覚えるが、徐々に慣れる。人見知りと自称するわりに、各地でたくさんの友人ができ、行動を共にできるのは、異国旅の持つ力のなせる技なのだろうと想像する。知り合った人にもらった優しさや、言葉にしびれる。こういう言葉をすくい上げて心に留めておける著者は、きっと素敵な女性だ。
読了日:2月22日 著者:小林希
フランシス子への感想
猫エッセイだと思うと間違い。猫の話から始まって、自分の話、父親の話、知人の話。そこからホトトギス、親鸞へと話は展開し、深さに感じ入ったところで自分、猫へと戻ってくる。吉本さん最晩年。こちらはほぅ、と拝聴しているが、ご長女さんによると「あちゃー! 困ったもんだ」であるそうだ。流れるような、力の抜けた、穏やかな午後のひとときの味わい。
読了日:2月22日 著者:吉本隆明
秘伝 2015年 03 月号 [雑誌]の感想
韓氏意拳特集。初級形体訓練、平歩椿法訓練(站椿)、基礎試力、技撃椿、摩擦歩訓練、基礎歩法訓練、そして健身功。写真で理解することはできないが、道が遠いことははっきりわかる。ただ立つこと、手を挙げることさえもこんなにも難しいと受け入れる、それすら難しくて悶絶するというのに。韓氏のインタビューも興味深い。『純粋自然・自然本能』。どうやら老子は避けて通れなそう。あと気に留まるのは湯川さんの連載と、太極拳における武器修練。
読了日:2月21日 著者:
おとなの教養―私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書 431)の感想
若者に薦めたい。過去を知らなければ、現在から未来へも拓くことはできないから。その過去も人類の歴史だけでなく、自分がどのような専門課程にあったとしても、様々の分野、側面から俯瞰する必要がある。全てを覚えなくていいし、全てに興味を持つ必要もない。もちろん大人が読んでも面白い。私にはスペイン風邪など病原菌・ウィルスの人間に与えた影響や、歴史の恣意性・多角性やが興味深く、また少し関心が拡がった。
読了日:2月18日 著者:池上彰
海と毒薬 (新潮文庫)の感想
戦争と個人を思う。勝呂は善人だ。戸田も悪人ではない。病院の屋上から見た、変わっていく街の様子。それらの日本人が、あのような事件に巻き込まれてゆくのは、やはり戦争、その疲弊や麻痺、非現実感の所為であったと思う。なにか決定的に間違ったものが大きくのしかかるとき、人の平衡感覚は崩れるのだ。
読了日:2月15日 著者:遠藤周作
民宿雪国 (祥伝社文庫)の感想
日本語の粗には目をつぶって勢いで読むべし。二十五の瞳よりは、良いと思う。きっと、元ネタへの愛着度によるのだと思う。この小説もいろいろな事物へのオマージュに満ちている。らしい。よくわからないので、巻末の町山さんとの盛り上がりが異様。
読了日:2月14日 著者:樋口毅宏
知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)の感想
メディアが日々伝えるニュースは、事実ではあるのだろうが、その裏の真実に肉薄することは難しい。そして、素人である私たちが真実を選り分け見極めるのも難しい。このお二人の対談には、思いもかけない真実がごろごろしている。もちろん、うまく隠されている真実もあるのだろうけれど、「インテリジェンスのプリズム」を通した光景に、私には充分すぎるくらい視界が開かれる思いがする。反知性主義という言葉を知り、納得する。日本版NSC。日本版CSA。日本は、いったい大丈夫なのだろうか? できるだけタイムリーに読んでいきたい。
読了日:2月14日 著者:手嶋龍一,佐藤優
日本の森にオオカミの群れを放て―オオカミ復活プロジェクト進行中の感想
シカやイノシシ、サルなどによる森林や農作物の被害が問題になっている。解決策として野生オオカミの存在が浮上している。日本の森林生態系の頂点は古来より人間ではなくオオカミであった。その生態が生態系全体を自然制御するという。人間は場所を選び、放ち、フォローするだけだ。剣山系もリストに上がっている。現在、人間の手に余っているのは明かで、オオカミ案は有効であるように思える。ただ、オオカミ推しが前面に出すぎて、あるいは問題が広範すぎてか、経緯・課題をきちんと整理できている気がしない。取っ掛りとしてはよし。
読了日:2月8日 著者:吉家世洋
ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチの感想
シンプルで、肯定的なビジネス本。そして私は苦手意識。社員ひとりひとりについて考える時間をつくることと、機会を逃さず話しかけること。基本はその繰り返し。面倒に感じる一方で、これは有効だとピンときている。ならやるべきだ。まずは自身が声をかけやすい表情でいること。耳を傾けること。アドバイスしない、問題解決しない、正解を求めない、ただ一つの結論を押しつけないこと。ポイントが細かく書かれているが、できることからやればよさそう。<自分メモ>迷ったら唱えよ『会話は楽しい』。会話の習慣ができたら、もう一度読み直すこと。
読了日:2月7日 著者:伊藤守
Another エピソード S (単行本)の感想
一般的に、男子は女子よりもいわゆる精神年齢が低いものだけれど、それにしても彼は幼い。どうにも切ない物語だ。鳴が息を切らしたり転んだりするのが不思議に感じるのは、私の中の鳴がアイコンとして時間とともに人形化するのだろう。ザ・綾辻的描写ありますので、期待される方はどうぞ。
読了日:2月5日 著者:綾辻行人
パイレーツ―掠奪海域― (ハヤカワ文庫NV)の感想
パソコンに遺されていた最後の小説はヴェルヌの読み心地を思い出させる正統派冒険小説だった。いつもの科学技術至上主義への警告がない。知的で魅力的なならず者、ハンターが陸に海に大暴れする。自分に残された時間がほとんどないと知ったクライトンが「NEXT」に次いでこれを書き上げた思いはなんだったか知りたく願うが、もう叶わない。クライトン、たくさんの楽しみと、若かった私に世界への見かたを与えてくれたこと、ありがとう。私の宝物だ。
読了日:2月2日 著者:マイクルクライトン
注:
はKindleで読んだ本。
片や視覚から入る文字情報をイメージに翻訳し、意味を処理する。
片や理屈や概念をできる限り排し、動きと共に身体の状態に感覚を澄ませる。
どちらも鍛錬のもの。
双方の均衡があるから、双方に意義を見出すことができる。
積読本104冊。気になっている本389冊。

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:14冊

学生時代、居酒屋で頼むのはホッケだった。今、売り場で見るホッケは確かに小さくアジの開きと見間違う。この本は日本の漁業問題に警鐘を鳴らし続ける本職の卸業者さんの10冊目の著書だ。序盤は話好きなおっちゃんの世間話を聞かされているようだが、徐々に日本の漁業事情へと話は深刻化してゆく。ホッケが小さいのもウナギが絶滅するのも、日本がバブル期以来乱獲・乱売・乱食を続けてきたせいだった。地球温暖化は言い訳で、水産行政は統制できていない。その証拠に福島では今、皮肉にも魚が育っているそうだ。魚好きとしては途方に暮れる話だ。
読了日:2月28日 著者:生田與克

個人としては、孤独であろうが無縁と呼ばれようが、本人が満足して生きたなら他人に憐れまれる謂れはない。寂しいなら他人と繋がれる生き方を選べばいい。一方、福祉社会としては放任できず、独居世帯増加が確実である今、方策を練ることも当然である。繋がりをつくる方法と場所は益々必要になるだろう。更に、それらと遺骨の処理は別問題ではないのか。苗字が違うとか、生活に余裕がないとか、骨など気持ちさえあれば預かれる物だろう。本人にしても、安置先がないことはそれほど苦痛なものだろうか。宗教観のねじれ、血縁の偏重を根底に感じる。
読了日:2月26日 著者:NHKスペシャル取材班

恒川さんのつむぐ物語は、この現実とほんの紙一重にある異世界を描くものが多かった。一方、南国や沖縄には、現実と異世界が同居する空間とそれを日常とする人々の暗黙の了解があるように思う。だから恒川さんは沖縄を舞台に、異世界との境界を取っ払う試みをしたのではないかしら。沖縄離島まるごと異世界みたい。二度と還って来られない切迫感は凄まじく、怖い。表題作の終盤はそんな怖さも忘れさせる美しさで、私は思わず窓の外の空を見上げる。
読了日:2月24日 著者:恒川光太郎


独身女の長期アジア一人旅。テンションと自意識の高さに少々抵抗を覚えるが、徐々に慣れる。人見知りと自称するわりに、各地でたくさんの友人ができ、行動を共にできるのは、異国旅の持つ力のなせる技なのだろうと想像する。知り合った人にもらった優しさや、言葉にしびれる。こういう言葉をすくい上げて心に留めておける著者は、きっと素敵な女性だ。
読了日:2月22日 著者:小林希

猫エッセイだと思うと間違い。猫の話から始まって、自分の話、父親の話、知人の話。そこからホトトギス、親鸞へと話は展開し、深さに感じ入ったところで自分、猫へと戻ってくる。吉本さん最晩年。こちらはほぅ、と拝聴しているが、ご長女さんによると「あちゃー! 困ったもんだ」であるそうだ。流れるような、力の抜けた、穏やかな午後のひとときの味わい。
読了日:2月22日 著者:吉本隆明
![秘伝 2015年 03 月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61OHOKxm3jL._SX70_.jpg)
韓氏意拳特集。初級形体訓練、平歩椿法訓練(站椿)、基礎試力、技撃椿、摩擦歩訓練、基礎歩法訓練、そして健身功。写真で理解することはできないが、道が遠いことははっきりわかる。ただ立つこと、手を挙げることさえもこんなにも難しいと受け入れる、それすら難しくて悶絶するというのに。韓氏のインタビューも興味深い。『純粋自然・自然本能』。どうやら老子は避けて通れなそう。あと気に留まるのは湯川さんの連載と、太極拳における武器修練。
読了日:2月21日 著者:

若者に薦めたい。過去を知らなければ、現在から未来へも拓くことはできないから。その過去も人類の歴史だけでなく、自分がどのような専門課程にあったとしても、様々の分野、側面から俯瞰する必要がある。全てを覚えなくていいし、全てに興味を持つ必要もない。もちろん大人が読んでも面白い。私にはスペイン風邪など病原菌・ウィルスの人間に与えた影響や、歴史の恣意性・多角性やが興味深く、また少し関心が拡がった。
読了日:2月18日 著者:池上彰


戦争と個人を思う。勝呂は善人だ。戸田も悪人ではない。病院の屋上から見た、変わっていく街の様子。それらの日本人が、あのような事件に巻き込まれてゆくのは、やはり戦争、その疲弊や麻痺、非現実感の所為であったと思う。なにか決定的に間違ったものが大きくのしかかるとき、人の平衡感覚は崩れるのだ。
読了日:2月15日 著者:遠藤周作


日本語の粗には目をつぶって勢いで読むべし。二十五の瞳よりは、良いと思う。きっと、元ネタへの愛着度によるのだと思う。この小説もいろいろな事物へのオマージュに満ちている。らしい。よくわからないので、巻末の町山さんとの盛り上がりが異様。
読了日:2月14日 著者:樋口毅宏

メディアが日々伝えるニュースは、事実ではあるのだろうが、その裏の真実に肉薄することは難しい。そして、素人である私たちが真実を選り分け見極めるのも難しい。このお二人の対談には、思いもかけない真実がごろごろしている。もちろん、うまく隠されている真実もあるのだろうけれど、「インテリジェンスのプリズム」を通した光景に、私には充分すぎるくらい視界が開かれる思いがする。反知性主義という言葉を知り、納得する。日本版NSC。日本版CSA。日本は、いったい大丈夫なのだろうか? できるだけタイムリーに読んでいきたい。
読了日:2月14日 著者:手嶋龍一,佐藤優


シカやイノシシ、サルなどによる森林や農作物の被害が問題になっている。解決策として野生オオカミの存在が浮上している。日本の森林生態系の頂点は古来より人間ではなくオオカミであった。その生態が生態系全体を自然制御するという。人間は場所を選び、放ち、フォローするだけだ。剣山系もリストに上がっている。現在、人間の手に余っているのは明かで、オオカミ案は有効であるように思える。ただ、オオカミ推しが前面に出すぎて、あるいは問題が広範すぎてか、経緯・課題をきちんと整理できている気がしない。取っ掛りとしてはよし。
読了日:2月8日 著者:吉家世洋

シンプルで、肯定的なビジネス本。そして私は苦手意識。社員ひとりひとりについて考える時間をつくることと、機会を逃さず話しかけること。基本はその繰り返し。面倒に感じる一方で、これは有効だとピンときている。ならやるべきだ。まずは自身が声をかけやすい表情でいること。耳を傾けること。アドバイスしない、問題解決しない、正解を求めない、ただ一つの結論を押しつけないこと。ポイントが細かく書かれているが、できることからやればよさそう。<自分メモ>迷ったら唱えよ『会話は楽しい』。会話の習慣ができたら、もう一度読み直すこと。
読了日:2月7日 著者:伊藤守


一般的に、男子は女子よりもいわゆる精神年齢が低いものだけれど、それにしても彼は幼い。どうにも切ない物語だ。鳴が息を切らしたり転んだりするのが不思議に感じるのは、私の中の鳴がアイコンとして時間とともに人形化するのだろう。ザ・綾辻的描写ありますので、期待される方はどうぞ。
読了日:2月5日 著者:綾辻行人


パソコンに遺されていた最後の小説はヴェルヌの読み心地を思い出させる正統派冒険小説だった。いつもの科学技術至上主義への警告がない。知的で魅力的なならず者、ハンターが陸に海に大暴れする。自分に残された時間がほとんどないと知ったクライトンが「NEXT」に次いでこれを書き上げた思いはなんだったか知りたく願うが、もう叶わない。クライトン、たくさんの楽しみと、若かった私に世界への見かたを与えてくれたこと、ありがとう。私の宝物だ。
読了日:2月2日 著者:マイクルクライトン
注:

Posted by nekoneko at 14:12│Comments(0)
│読書