2015年10月02日
2015年9月の記録
去年、松岡正剛さんの「多読術」を読んだ際、
『今まばらな点である読書が、密になって繋がり合い、
いつか私だけの網になるイメージ』を得たと感想を書きました。
繋がった感触を自覚することが、この頃とみに増えています。
目に見えない、閾値を超えたということなのでしょうか。
願わくば、贅沢ながら、網を強化する話し相手が欲しいです。
積読本83冊。
気になっている本はもはやオーバーカウントのため、記録をやめます。

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
新装改訂版 小説土佐堀川 ――女性実業家・広岡浅子の生涯の感想
銀行の女性行員や保険の女性セールス担当の原型は、彼女によるらしい。それまでには考えられなかった一方、今では当たり前すぎる有り方だ。商売の才覚を持った女性は、当時も今も珍しくはない。彼女には実家、三井というバックボーンと人脈があり、だから渋沢の助言も得られたに違いないのだが、ここまで突っ走れる女性は女だてらにと相当に悪目立ちしたはずだ。それでも成功することができた、ここに描かれていないこの女性ならではの要素が、なにかあったはず。でなければ成功はあり得なかった、それが気になる。
読了日:9月30日 著者:古川智映子
新潮 2015年 10 月号 [雑誌]の感想
師匠の薦めにより、初筒井康隆が「モナドの領域」。ネタバレは避けるが、馴染みのない私には、冒頭から想像もつかない瞠目の展開だった。上代は「わからないこと」に対し、余計な先入観にならないよう「もう少し何かわかるまで考えないように」しようとした。その在り方が、いわゆる直感、察しの良さにつながっていると思う。しかしそれは、人として「偏在」にちょびっと近い、とはいえ、ほんとうに遍く在ることの異質さを際立たせていると感じた。ほんとにあんななのだろうか…? 『中心がいたるところにあって周辺がどこにもない円』も興味深い。
読了日:9月25日 著者:
史上最強の大臣 (小学館文庫)の感想
この本が面白いのは、荒唐無稽なストーリーや現実の日本社会へ向けた「正論」だけのためではない。教育論にしろメディア論にしろ、それが「正しい」かどうかではなく、私の持っている、あるいは持っていない視点について改めて私の注意を喚起し、疑問に思わせる、その過程が私にはめっぽう楽しいのだ。例えば、世の中に変わってほしいと私も思っている。それが、自分のためなのか、次の世代の誰かのためなのかは、ひとつひとつ足を止めて確認するに値するのだ。
読了日:9月23日 著者:室積光
せとうち暮らし vol.16 Summer 2015の感想
瀬戸内の多島海には、交通便利の良くない故に沿岸県の住民も行ったことのないスポットが当たり前ながらたくさんあり、また、近年のアートプロジェクトで開発されるも簡単な観光地化を許さない。その深さを賛美しつつ、壊さずにおきたいものだな。最後のページ、島のリストに心底驚いた。マジですか…。MeiPAM02の写真展行かなくちゃね。
読了日:9月23日 著者:ROOTSBOOKS
おつまみ横丁-すぐにおいしい酒の肴185 (池田書店の料理新書シリーズ)の感想
一箱古本市で入手。酒のつまみをつくるインスピレーションに。さっとつくれるものが多いので、時間がない時に数品足すのにもいいね。
読了日:9月22日 著者:編集工房桃庵
歳月のはしご (文春文庫)の感想
既婚、未婚、すべてのアラフォー女にお薦めします。ディーリアも私も、独りから始める時間を必要としていたみたい。最初は無自覚だったけれど、ディーリアは1年を経て、家を出る前よりずっと姿勢よく、格好よくなった。独りからの時間で手に入れたものを掴んだまま、日々暮らしていければいいな。少々古風に感じる家族の有り様も、きっと変えていけるのだろう。いや、それはディーリアが世話焼き気質だから無理か。ベルやナットをはじめ、ベイバラの人々が素敵だっただけに、別れはとびきり寂しくなりそう。
読了日:9月22日 著者:アンタイラー
習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法の感想
深い深い探求。なにかの真髄に迫ることは、持続した情熱と、真の技術と習得ノウハウを持った師による導きの相乗で成せる境地と確信する。どちらが欠けてもこの領域には辿りつけない。そしてあるレベルからは自分が自分を導くのだ。彼の体現していることも凄いが、これを論理的に言語化し、開けっ広げることができるのもまた才能。その深さ広さをはかりかね、途方に暮れたので、まずはひととおり読み通すことにした。彼が極めているのは間違いない。ならばもう一度読んで、インスピレーションを必ず私のものに変えてやろう。
読了日:9月18日 著者:ジョッシュ・ウェイツキン
イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)の感想
1878年、イギリス人女性による日本紀行文。貧しく、みすぼらしく、醜く、しなびて、胸のへこんだ貧相な黄色い小人。執拗な蔑視表現に「国へ帰りやがれ!」と鼻白むが、ロバート・キャンベルさんが薦める本だからと我慢、学術的記録物と決め込んで読み進める。町、城下町、農村、景色等々細かい描写が続き、たくさんの発見がある。著者にとって全くの異国だが、私にとっても見たことのない日本である。西洋を真似、歪さを露呈する過渡期の日本でもある。徐々に日本人の礼節や勤勉への尊重を示すようになるも、褒める貶すの振れ幅は激しい。
読了日:9月17日 著者:イザベラ・バード
石川直樹 写真集 Mt.Fujiの感想
私は人の痕跡のない景色が好きだ。しかし、富士山のどこに人の痕跡のない景色が残っているというのか。誰も写っていなくとも、そこここに人の痕跡がある。雪や陰影が痕跡を覆い隠すだけだ。石川氏はそこに人、人のつながり、生き方、信仰の原風景を見ている。それらを含めた富士山を、石川氏は愛している。夜でも、眼下に人の営みが見える。なのにわざわざ目を反らしてどこまでも続くような山肌を眺めている私は歪なのかもしれない。末尾に富士山への思いがみっちり3ページ吐露されている。山を中心に交差する無数の視線、て表現がいい。
読了日:9月10日 著者:石川直樹
人を操る禁断の文章術の感想
ひとくちに文章と言っても色々で、広告で散々見るキャッチコピー臭い技には興味がなくとも、仕事なり、SNSなり、この本が気になった人ならなんらかのヒントは手に入れられるだろう。私も自分の欲しい答えを手に入れたけれど、ここに備忘メモするとなんとあざとい奴だと思われそうなのでやめておく。さすがDaiGo、読みやすいので気になった方は読んでみてください。大切なことはシンプルだ。相手を認め、相手の心に寄り添い、相手の立場で、自分の伝えたい感情が伝わるように表現すること。
読了日:9月8日 著者:メンタリストDaiGo
日本の反知性主義 (犀の教室)の感想
内田先生による「反知性主義」というお題を引き受けて寄稿された諸氏の文章は、全員が反知性主義の前提から話を始める訳ではない。各々の観点から今の日本を解説してみせ、その帰結として日本の社会や政治の特質、現政権の考え方の異様を指摘する。私は、この本に書かれた論理を、私自身が施政に感じている違和感、圧迫感、恐怖の理由付けに安易に流用するのは避けたい。それには私の知識、理解が追いついてこないからだ。ただ、これら知識人も違和感を感じていることになんとなくほっとする。知性的とは、世界の複雑性の増大への耐性を持つこと。
読了日:9月5日 著者:内田樹,赤坂真理,小田嶋隆,白井聡,想田和弘,高橋源一郎,仲野徹,名越康文,平川克美,鷲田清一
注:
はKindleで読んだ本。
『今まばらな点である読書が、密になって繋がり合い、
いつか私だけの網になるイメージ』を得たと感想を書きました。
繋がった感触を自覚することが、この頃とみに増えています。
目に見えない、閾値を超えたということなのでしょうか。
願わくば、贅沢ながら、網を強化する話し相手が欲しいです。
積読本83冊。
気になっている本はもはやオーバーカウントのため、記録をやめます。

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:11冊

銀行の女性行員や保険の女性セールス担当の原型は、彼女によるらしい。それまでには考えられなかった一方、今では当たり前すぎる有り方だ。商売の才覚を持った女性は、当時も今も珍しくはない。彼女には実家、三井というバックボーンと人脈があり、だから渋沢の助言も得られたに違いないのだが、ここまで突っ走れる女性は女だてらにと相当に悪目立ちしたはずだ。それでも成功することができた、ここに描かれていないこの女性ならではの要素が、なにかあったはず。でなければ成功はあり得なかった、それが気になる。
読了日:9月30日 著者:古川智映子
![新潮 2015年 10 月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/519bO9sr-VL._SX70_.jpg)
師匠の薦めにより、初筒井康隆が「モナドの領域」。ネタバレは避けるが、馴染みのない私には、冒頭から想像もつかない瞠目の展開だった。上代は「わからないこと」に対し、余計な先入観にならないよう「もう少し何かわかるまで考えないように」しようとした。その在り方が、いわゆる直感、察しの良さにつながっていると思う。しかしそれは、人として「偏在」にちょびっと近い、とはいえ、ほんとうに遍く在ることの異質さを際立たせていると感じた。ほんとにあんななのだろうか…? 『中心がいたるところにあって周辺がどこにもない円』も興味深い。
読了日:9月25日 著者:

この本が面白いのは、荒唐無稽なストーリーや現実の日本社会へ向けた「正論」だけのためではない。教育論にしろメディア論にしろ、それが「正しい」かどうかではなく、私の持っている、あるいは持っていない視点について改めて私の注意を喚起し、疑問に思わせる、その過程が私にはめっぽう楽しいのだ。例えば、世の中に変わってほしいと私も思っている。それが、自分のためなのか、次の世代の誰かのためなのかは、ひとつひとつ足を止めて確認するに値するのだ。
読了日:9月23日 著者:室積光


瀬戸内の多島海には、交通便利の良くない故に沿岸県の住民も行ったことのないスポットが当たり前ながらたくさんあり、また、近年のアートプロジェクトで開発されるも簡単な観光地化を許さない。その深さを賛美しつつ、壊さずにおきたいものだな。最後のページ、島のリストに心底驚いた。マジですか…。MeiPAM02の写真展行かなくちゃね。
読了日:9月23日 著者:ROOTSBOOKS

一箱古本市で入手。酒のつまみをつくるインスピレーションに。さっとつくれるものが多いので、時間がない時に数品足すのにもいいね。
読了日:9月22日 著者:編集工房桃庵

既婚、未婚、すべてのアラフォー女にお薦めします。ディーリアも私も、独りから始める時間を必要としていたみたい。最初は無自覚だったけれど、ディーリアは1年を経て、家を出る前よりずっと姿勢よく、格好よくなった。独りからの時間で手に入れたものを掴んだまま、日々暮らしていければいいな。少々古風に感じる家族の有り様も、きっと変えていけるのだろう。いや、それはディーリアが世話焼き気質だから無理か。ベルやナットをはじめ、ベイバラの人々が素敵だっただけに、別れはとびきり寂しくなりそう。
読了日:9月22日 著者:アンタイラー

深い深い探求。なにかの真髄に迫ることは、持続した情熱と、真の技術と習得ノウハウを持った師による導きの相乗で成せる境地と確信する。どちらが欠けてもこの領域には辿りつけない。そしてあるレベルからは自分が自分を導くのだ。彼の体現していることも凄いが、これを論理的に言語化し、開けっ広げることができるのもまた才能。その深さ広さをはかりかね、途方に暮れたので、まずはひととおり読み通すことにした。彼が極めているのは間違いない。ならばもう一度読んで、インスピレーションを必ず私のものに変えてやろう。
読了日:9月18日 著者:ジョッシュ・ウェイツキン

1878年、イギリス人女性による日本紀行文。貧しく、みすぼらしく、醜く、しなびて、胸のへこんだ貧相な黄色い小人。執拗な蔑視表現に「国へ帰りやがれ!」と鼻白むが、ロバート・キャンベルさんが薦める本だからと我慢、学術的記録物と決め込んで読み進める。町、城下町、農村、景色等々細かい描写が続き、たくさんの発見がある。著者にとって全くの異国だが、私にとっても見たことのない日本である。西洋を真似、歪さを露呈する過渡期の日本でもある。徐々に日本人の礼節や勤勉への尊重を示すようになるも、褒める貶すの振れ幅は激しい。
読了日:9月17日 著者:イザベラ・バード


私は人の痕跡のない景色が好きだ。しかし、富士山のどこに人の痕跡のない景色が残っているというのか。誰も写っていなくとも、そこここに人の痕跡がある。雪や陰影が痕跡を覆い隠すだけだ。石川氏はそこに人、人のつながり、生き方、信仰の原風景を見ている。それらを含めた富士山を、石川氏は愛している。夜でも、眼下に人の営みが見える。なのにわざわざ目を反らしてどこまでも続くような山肌を眺めている私は歪なのかもしれない。末尾に富士山への思いがみっちり3ページ吐露されている。山を中心に交差する無数の視線、て表現がいい。
読了日:9月10日 著者:石川直樹

ひとくちに文章と言っても色々で、広告で散々見るキャッチコピー臭い技には興味がなくとも、仕事なり、SNSなり、この本が気になった人ならなんらかのヒントは手に入れられるだろう。私も自分の欲しい答えを手に入れたけれど、ここに備忘メモするとなんとあざとい奴だと思われそうなのでやめておく。さすがDaiGo、読みやすいので気になった方は読んでみてください。大切なことはシンプルだ。相手を認め、相手の心に寄り添い、相手の立場で、自分の伝えたい感情が伝わるように表現すること。
読了日:9月8日 著者:メンタリストDaiGo


内田先生による「反知性主義」というお題を引き受けて寄稿された諸氏の文章は、全員が反知性主義の前提から話を始める訳ではない。各々の観点から今の日本を解説してみせ、その帰結として日本の社会や政治の特質、現政権の考え方の異様を指摘する。私は、この本に書かれた論理を、私自身が施政に感じている違和感、圧迫感、恐怖の理由付けに安易に流用するのは避けたい。それには私の知識、理解が追いついてこないからだ。ただ、これら知識人も違和感を感じていることになんとなくほっとする。知性的とは、世界の複雑性の増大への耐性を持つこと。
読了日:9月5日 著者:内田樹,赤坂真理,小田嶋隆,白井聡,想田和弘,高橋源一郎,仲野徹,名越康文,平川克美,鷲田清一
注:

Posted by nekoneko at 11:29│Comments(0)
│読書