2015年12月01日
2015年11月の記録
そろそろ今年も総括、2015年ベストテンを選出するべく見渡すと、
年初にベスト本が偏っている様子です。
読んだ記憶もいささか薄まりかけながら、表紙を見れば納得の面子。
特に私の目が厳しくなった理由もなく、これも巡りあわせでしょうね。
さらに良い本に相見えるべく、ラストスパートです。
積読本91冊。

2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
ヒトの脳にはクセがある: 動物行動学的人間論 (新潮選書)の感想
あとがきにあるとおり、題材は著者の関心を軸に集められている。なので、読み物としては専門性が強く、主題がばらばらに感じる。著者によれば、著者の考えるヒト像が具体化された書。人間は世界をどこまで理解し、科学的に解明できるか。狩猟採集の世界に適応した脳では、ヒトの生存・繁殖につながる能力を超えた領域、例えば宇宙の果てを想像することも難しい。一方、火など生存に有効な道具には、人間いずれは関心を持つように本能づけられている。シンプルにそれで良いことにしたい。「専用モジュール」仮説によるアプローチは好きではない。
読了日:11月27日 著者:小林朋道
曙光: The Light of Iya Valleyの感想
祖谷の風景。実のところ、写真展で直に見た写真のほうが良かった。写真が大きいほど、観る者は苦労無しに入り込めるし、場の雰囲気づくり、見せ方の工夫でもあっただろう。この人の視点は、好きだ。
読了日:11月25日 著者:宮脇慎太郎
ゼロからトースターを作ってみた結果 (新潮文庫)の感想
タイトルを一見して「無理やろ」と思わずにいられないこの企画、やはり無理は無理である。奮闘ぶりが可笑しい。しかし著者の企んだとおり、人ひとりの力では到底つくることのできない「道具」が、数枚の貨幣さえ持っていれば子供でも手に入れられ、しかもその「道具」を製作するために環境にかけた負荷が莫大であることにちらりとも思い至らずにいられる社会の異様さをこの企画は知らしめる。取説に廃棄時の解体方法を書き加え、完全分別できない消費者からは埋立ゴミ処理税を取る。その案、賛成。身の丈を超えるものを安く買えるっておかしいよ?
読了日:11月24日 著者:トーマストウェイツ
水鏡推理 (講談社文庫)の感想
時事ネタが満載のため、読むなら早めが正解。どの件も門外漢にはそれは判断しづらく、研究者の良心に恃むしかない部分もあるとは思う。しかし、捏造や予算詐取がこんな稚拙な方法で日夜量産されているのか、そして官僚はこれほど簡単に騙され、無価値な研究を認可し、国家予算を垂れ流しているのかと想像すると頭が痛い。事実はこれ程ではないと信じたい。これ、おかしくね?と直感する能力は人間が生き延びるのに不可欠で、そういう身体感覚こそを養って生きていない官僚にはこの任務は無理だな。
読了日:11月20日 著者:松岡圭祐
ひとさじで料亭の味! 魔法の糀レシピ (講談社のお料理BOOK)の感想
麹尽くしのごはんを店でいただいて、その美味しさに俄然興味が湧いた。塩糀のほか、甘糀、だし糀と、調味料との組み合わせで使い勝手良く日持ちも良く多用できるようだ。まずつくってみたい塩糀は熟成に1週間から10日かかるが、6か月程度も保存できるという。そういう、期限をぎりぎりと気にしなくていいの、大好き。いろいろな使いかたを想像させ、気楽に末永く使っていける調味料にしたいと思わせてくれる素敵な糀レシピ本。
読了日:11月19日 著者:浅利妙峰
恋歌 (講談社文庫)の感想
直木賞を受賞しただけあって、人物が立ち、整った小説。するりと読み終えて印象は薄い。登世の書き遺した文という設定は、一人称なのにそれらしくないように感じた。ただ、『君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ』にこめられた想いを推し量り、心にじんと感じたことは、ずっと覚えているだろう。
読了日:11月16日 著者:朝井まかて
その女アレックス (文春文庫)の感想
冒頭から展開される事件がこの小説の全てではないと気づくのに、そう時間はかからない。大転換の後、私はなぜ?なぜ?とひとりごちながら読み進み、読み終えた者だけが知ることができる全容を見た。著者の企みが効いて、劇的で、おもしろかった。しかし、これ程の悲惨を人物に与えなければならなかったのかと溜め息をつかずにいられない。
読了日:11月11日 著者:ピエールルメートル
海辺の家の感想
海辺の家へ移り、サートンは独りの時間を味わう。旧知の友人の訃報が立て続けに届き、老人ホームから泊まりに来る大切な人、ジュディは老齢ゆえの認知症が進みつつある。そういった諸々を悲しくは思うのだけれど、自身は至って平穏に、独りと犬と猫との生活、景色、庭仕事、たまの友人の訪れを楽しんでいる。前作の激しい感情の起伏は鳴りを潜めた。充電の期間を経て、創作へ集中するべくサートンは日記を閉じる。『老齢はかならずしも老人にとって脅威ではないと銘記しなくてはならない。老齢はすばらしいものでもありうるのだから』。
読了日:11月8日 著者:メイサートン
かばん屋の相続 (文春文庫)の感想
それぞれの短編に、世の銀行員は身につまされるのだろう。一方、中小企業の辛さ切なさは知っているよとささやかんばかりの著者の語り口には反発したくも、表題作と「芥のごとく」には胸乱される。両者の結末は正反対、しかし一方の思いが一方に劣っていたと、誰が言えるだろう。
読了日:11月3日 著者:池井戸潤
注:
はKindleで読んだ本。
年初にベスト本が偏っている様子です。
読んだ記憶もいささか薄まりかけながら、表紙を見れば納得の面子。
特に私の目が厳しくなった理由もなく、これも巡りあわせでしょうね。
さらに良い本に相見えるべく、ラストスパートです。
積読本91冊。

2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:9冊

あとがきにあるとおり、題材は著者の関心を軸に集められている。なので、読み物としては専門性が強く、主題がばらばらに感じる。著者によれば、著者の考えるヒト像が具体化された書。人間は世界をどこまで理解し、科学的に解明できるか。狩猟採集の世界に適応した脳では、ヒトの生存・繁殖につながる能力を超えた領域、例えば宇宙の果てを想像することも難しい。一方、火など生存に有効な道具には、人間いずれは関心を持つように本能づけられている。シンプルにそれで良いことにしたい。「専用モジュール」仮説によるアプローチは好きではない。
読了日:11月27日 著者:小林朋道

祖谷の風景。実のところ、写真展で直に見た写真のほうが良かった。写真が大きいほど、観る者は苦労無しに入り込めるし、場の雰囲気づくり、見せ方の工夫でもあっただろう。この人の視点は、好きだ。
読了日:11月25日 著者:宮脇慎太郎

タイトルを一見して「無理やろ」と思わずにいられないこの企画、やはり無理は無理である。奮闘ぶりが可笑しい。しかし著者の企んだとおり、人ひとりの力では到底つくることのできない「道具」が、数枚の貨幣さえ持っていれば子供でも手に入れられ、しかもその「道具」を製作するために環境にかけた負荷が莫大であることにちらりとも思い至らずにいられる社会の異様さをこの企画は知らしめる。取説に廃棄時の解体方法を書き加え、完全分別できない消費者からは埋立ゴミ処理税を取る。その案、賛成。身の丈を超えるものを安く買えるっておかしいよ?
読了日:11月24日 著者:トーマストウェイツ

時事ネタが満載のため、読むなら早めが正解。どの件も門外漢にはそれは判断しづらく、研究者の良心に恃むしかない部分もあるとは思う。しかし、捏造や予算詐取がこんな稚拙な方法で日夜量産されているのか、そして官僚はこれほど簡単に騙され、無価値な研究を認可し、国家予算を垂れ流しているのかと想像すると頭が痛い。事実はこれ程ではないと信じたい。これ、おかしくね?と直感する能力は人間が生き延びるのに不可欠で、そういう身体感覚こそを養って生きていない官僚にはこの任務は無理だな。
読了日:11月20日 著者:松岡圭祐

麹尽くしのごはんを店でいただいて、その美味しさに俄然興味が湧いた。塩糀のほか、甘糀、だし糀と、調味料との組み合わせで使い勝手良く日持ちも良く多用できるようだ。まずつくってみたい塩糀は熟成に1週間から10日かかるが、6か月程度も保存できるという。そういう、期限をぎりぎりと気にしなくていいの、大好き。いろいろな使いかたを想像させ、気楽に末永く使っていける調味料にしたいと思わせてくれる素敵な糀レシピ本。
読了日:11月19日 著者:浅利妙峰

直木賞を受賞しただけあって、人物が立ち、整った小説。するりと読み終えて印象は薄い。登世の書き遺した文という設定は、一人称なのにそれらしくないように感じた。ただ、『君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ』にこめられた想いを推し量り、心にじんと感じたことは、ずっと覚えているだろう。
読了日:11月16日 著者:朝井まかて

冒頭から展開される事件がこの小説の全てではないと気づくのに、そう時間はかからない。大転換の後、私はなぜ?なぜ?とひとりごちながら読み進み、読み終えた者だけが知ることができる全容を見た。著者の企みが効いて、劇的で、おもしろかった。しかし、これ程の悲惨を人物に与えなければならなかったのかと溜め息をつかずにいられない。
読了日:11月11日 著者:ピエールルメートル


海辺の家へ移り、サートンは独りの時間を味わう。旧知の友人の訃報が立て続けに届き、老人ホームから泊まりに来る大切な人、ジュディは老齢ゆえの認知症が進みつつある。そういった諸々を悲しくは思うのだけれど、自身は至って平穏に、独りと犬と猫との生活、景色、庭仕事、たまの友人の訪れを楽しんでいる。前作の激しい感情の起伏は鳴りを潜めた。充電の期間を経て、創作へ集中するべくサートンは日記を閉じる。『老齢はかならずしも老人にとって脅威ではないと銘記しなくてはならない。老齢はすばらしいものでもありうるのだから』。
読了日:11月8日 著者:メイサートン

それぞれの短編に、世の銀行員は身につまされるのだろう。一方、中小企業の辛さ切なさは知っているよとささやかんばかりの著者の語り口には反発したくも、表題作と「芥のごとく」には胸乱される。両者の結末は正反対、しかし一方の思いが一方に劣っていたと、誰が言えるだろう。
読了日:11月3日 著者:池井戸潤
注:

Posted by nekoneko at 09:37│Comments(0)
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