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2020年02月01日

2020年1月の記録

欲求不満でがつがつ飢えたように読みまくった年明けから、
少し満足したところでそれどころではなくなった。
猫の原因不明の痛みには馬尾症候群という病名が付き、
差し当たり、痛みを薬で抑えてひと段落。
先はまだ長そうだ。
家族とも、猫たちともちゃんと向き合って暮らすようにと、
誰かが私に言っているのだろう。

<今月のデータ>
購入14冊、購入費用11,189円。
読了14冊。
積読本197冊(うちKindle本80冊)。

ブック

1月の読書メーター
読んだ本の数:14

猫の學校: 猫と人の快適生活レッスン (ポプラ新書)猫の學校: 猫と人の快適生活レッスン (ポプラ新書)感想
我が家の猫が病を得て、すがるように再読。ぎっしり詰まった経験知から、目に留まる言葉を拾っていく。猫は人の気持ちを敏感に感じ取る動物だと私は知っているはずだ。私の不安や緊張が伝わることで、さらに猫を不安がらせ、健康に影響を与えることは避けなければ。今こそ私が強く穏やかでいないとと決意した。改めてお手当てをおさらい。欲求を手放して、猫と一緒にいられることに感謝し、猫に意識を向けて話すこと。『老猫との時間は、起こってもいないことを心配するより、その猫の生きる力を信頼することに使いましょう』。後ではなく、今。 
読了日:01月31日 著者:南里 秀子

人間人間感想
記憶があやふやになったり、すり替わっていることを他人に指摘されて自覚したり。理不尽とわかっていてもやめられなかったり。人間ってほんと不完全でしかない。自分への落胆や諦め、同時に捨てきれない愛着。都会にいると不協和音になるそれらが、ほどける場所を知る物語。そう考えると大阪と沖縄というルーツは最強だ。永山と奥/影島の関係が好い。彼は永山の脳内だけに存在する人物かと勘繰るくらい、あんなレベルで会話できる他人は稀でしょうね。『想像力と優しさが欠落した奴は例外を認めずただの豚』。でもその存在すら許せる場所にいたい。
読了日:01月29日 著者:又吉 直樹

チームのことだけ、考えた。――サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったかチームのことだけ、考えた。――サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか感想
こちらは経営面の話。中でも会社内の多様性について考える。個性を尊重する、多様性がこれからは重要だと言いながら、価値観を過剰に押し付けていないか。休みを取ろうとしないのも、資格を取りたがらないのも、個人の自由と容認することは可能なんだろうか。個性が受け入れられる居心地の良さが、多様な個性の掛け合わせ=イノベーションとなり、生産効率を上げる。と安易に考えては危険だが、やってみてもいいのかなぁ。『制度と風土は車の両輪』。企業の風土づくりも無論肝要。組織内の決め事などにも詳しいが、今はぴんと来ないので流しておく。
読了日:01月24日 著者:青野 慶久 ファイル

タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけタネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ感想
世界の作物のタネの種類は激減している。収益や利便のために一部の品種ばかりを大規模栽培し、一方で各地に代々伝わってきた伝統野菜が消滅しつつあるからだ。伝統野菜つまり多様な在来種を守ることは人間の未来を守ること。伝統野菜のタネを守る活動を小林君はしている。タネを買う。運ぶ。売る。ある土地に代々伝わってきた伝統野菜のタネを他の地域に住む人に橋渡しし、その地域の土地でまた代々育てられるなら、それはその土地の新しい伝統野菜になる。そう未来を描いて見せる彼の行動こそが希望。未来が明るくなるよう、オバサンも頑張るよ。
読了日:01月24日 著者:小林 宙

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)感想
クローンとは、遺伝子の同じ別個体を人為的に発生させる技術。その存在への、人間に喚起する嫌悪感は私にはわからない。人間の便益のために、臓器の畑として生み出されたクローン人間たちの、魂の物語。人間に全否定される魂の物語。この魂はどこからきてどこへ消えるのか。イギリスの、日本とはまた違った自然の中で、魂はどのように想起されるのだろう。時系列を前後しながらエピソードはつながりあい、最後に冒頭とつながったとき、ヘールシャムは閉じた環となる。消えてしまう予感に、胸を突かれる。映像作品で観たら切なくてたまらないだろう。
ルースの存在が胡椒のように効いている。私は女性同士の友情を信じていないので、ルースがキャシーに渡した住所はキャシーにかけた最大の呪いだと思っている。住所を突き止められるくらいなら、そんな話は幻想だと知っていたはずだ。確認できなければ諦めざるを得ない「猶予」に希望を抱かせ、行動に移させ、絶望させる。ルースの持っている生来の性質、意地の悪さ。そして自分自身に欺瞞を信じ込ませる能力。この人間臭さの発露がクローン人間が人間と違わないという裏付けとして機能している。
物語を思い返していると、次から次へと新しい解釈や発見が浮かぶ。マダムがヘールシャムの子供たちに感じていた感情は本当は何だったのか。マダムを訪ねた時、二人は本当に希望を持っていたのか。これは、もう一度読むと感じ方ががらりと変わる小説だと思う。
読了日:01月21日 著者:カズオ・イシグロ

日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)感想
「日本沈没」のパロディというので手に取る。著者の意図を推量する術もなく解らないなか、本人に許可を取ってまで書きたかった内容なんだろうかと一読して思った。「ヒノマル酒場」は気に入った。大阪人と酔っぱらいは強い。メディアがなんだ。一貫した下品さがいただけないがこれは人間の持つ熱量なんだろう。つくりこまれたコントさながらのドタバタっぷりの中、風刺が効いている。そう、これは社会への苛立ち。当事者たちの発する奇妙な熱気への、冷めた視線。昨日の施政方針演説時の議場も似た空気をはらんで、そのままここに収録できそうね。
読了日:01月21日 著者:筒井 康隆 ファイル

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法感想

相関関係と因果関係は違う。メディアでは因果推論の論理を外れた"驚きの真実"が横溢し、地方行政でも全く論理的でない調査分析結果を根拠にした施策決定が日常茶飯事だと友人も嘆いていた。日本が直面する問題についての研究結果には瞠目した。『海外で行われた先駆的な研究成果を参考にすることもなければ、自国のデータを活用して効果を明らかにすることも十分に行われていない』。リテラシーを持っていない人間が行政の要所で虚論を通していることが、今の日本の困窮っぷりに拍車をかけているのだろう。もう、ひたすらげんなりする。
アメリカのシンポジウムでの発言「個人の経験談の寄せ集めはデータではなく、エビデンスでもありません。われわれはきちんとデータを集めており、オバマケアの効果を検証しています。その結果、平均的には、アメリカ国民の保険料はオバマケアオバマケアによって安くなっていることがわかっています。人によっては残念ながら保険料が上がって損しているかもしれませんが、そういった個々の話に惑わされずに、データを用いて全体像を見るようにしてください」。
「「学力」の経済学」でも行政は研究成果を土台に政策決定すべきとあったが、本書では更に医療行政、どころか日本の行政全体がエビデンスに基づいた施策決定をしていないと指摘している。メタボ健診には1200億円の税金が投入されたが、メタボ健診と長生きに因果関係はないとの研究成果がある。他に「医療費の自己負担割合」と「健康」のあいだに因果関係はない。「高齢者の医療費の自己負担割合」と「死亡率」のあいだに因果関係はない。「医療費の自己負担割合」が下がると「外来受診」は増加する。等。活かして日本の社会福祉を存続してくれ。
読了日:01月18日 著者:中室牧子,津川友介 ファイル

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)感想
シャーマンの示唆を受け、著者はヤギの群れに交じりヤギに倣った生活を試みた…という展開を予想したが、著者がトースターをイチから作ろうとした男だという経歴を失念していた。彼がヤギになると言ったら心も体も思考もヤギになるのだ。奮闘の末の、ぼっちヤギのくだりは爆笑した。ほら、ヤギになれる訳ないやん! この「ヤギになる手法を人間は未だ持っていない」事を実際に行動して確認する手法は、トースターのときと同じ。ヤギについて人間は理解しつつあるが、ヤギになることはできない。だがやって初めて判ることもある。イグ・ノーベル賞。
読了日:01月14日 著者:トーマス トウェイツ ファイル

50(フィフティ) いまの経済をつくったモノ50(フィフティ) いまの経済をつくったモノ感想
予想以上に読み応えがあった。人間社会に大きな影響を与えたと挙げる50の"モノ"。その発明は人間の生活を時間面、経済面で"便利"にしただけでなく、生活や思考にまで影響を与えた来歴を提示する。便利とはより少ない時間や手間で目的を達成できる事だ。未来に発明される"モノ"も想像もつかない利便と同時に不利便をも人間にもたらすだろう。だとしても『正しい決断の恩恵は驚くほど長く続く』。更なる変革を選んで進むのが現代人の賢明な態度と著者は言いたいようだ。このまま進め、か。長期を展望しているようで実は近視眼的じゃないかと。
利便と不利便を認識した上でその"モノ"を使うか使わないか、現代人は選べる。しかし個人が選ぶのは個人的な好みの範囲内であり、社会システム全体でいえば否応なく、善かろうが悪かろうが変革の方へ進んでいくだろう。人間の未来は、なるべくしてなる。何だろう。私のこの悲観主義的な態度は。人間の頭脳よりも、地球の予測不可能性のほうが、人間の未来を握っていると思っているからか。悪い部分が目に付くとしても全体で見れば良くなっているとする論調が「ファクトフルネス」と似ている。今までそれで来れたとしても、今後もそうとは思わない。
読了日:01月14日 著者:ティム・ハーフォード ファイル

即動力 (SB新書)即動力 (SB新書)感想
田村淳そのままの語り口。人間としては常識的で、テレビ人としては非常識的な思考に好感が持てる。ただ、18才で上京して以来、ずっと都会に住んで都会の速度で生きて来て、コンテンツの賞味期限の極端に短い業界にいるから、行動に移す速さを余計に重視して"生き残れないよ"と煽っている感はあるかな。それだけではないにしても、詰め込みすぎて論旨がぶれ気味でよくわからない。学びたい気持ちを受験に結び付けるやり方は、世間の流れ通りに進学してその意味を自問してきた私には奇妙なものだが、ピュアというか、今どきというか。まあいいね。
読了日:01月11日 著者:田村 淳 ファイル

島はぼくらと (講談社文庫)島はぼくらと (講談社文庫)感想
瀬戸内の島が舞台と聞いて。高校生たちの友情も恋心も、気持ちが先に立って動いている感じが好い。大人の描写も抜かりない。私には、ヨシノのような人が異星人に思える。こえび隊にいた頃、いろんな場所で人の輪に飛び込んでいく人を胡散臭くさえ思った。そんなたくさんの人を気にかけることができる訳ない、幾つもの人の輪に所属することなどできる訳ないと。でも、人の性質として、できる人はいるのだね。人と人を繋ぐ役割の人。対極が衣花。人の輪ができる、その場をつくり、守り、待つ人に彼女はなった。私もそちら側の人だったのだと納得した。
読了日:01月11日 著者:辻村 深月 ファイル

ホルモー六景 (角川文庫)ホルモー六景 (角川文庫)感想
いや痛快。色々な趣向が試されたホルモー番外6編。どの主人公もそれぞれ京都の街で生きている。なんだか無性に学生時代をやり直したくなった。あの年頃にどこで学生時代を過ごすかは、後の人生に確実に影響を与える。来歴の深い土地に住むことはそれだけで、知らず与えられる、素敵なことなのだと思った。まあ、若さ故の阿呆さ無知さ満載で過ぎ去ってしまうとしてもだ。羨ましい京都。「もっちゃん」を気に入る余り、文庫で即買い直した。“瑞々しい青春ホラ小説”とは有栖氏はよく言ったもので、ある意味年始に相応しい読書になって大変満足だ。
読了日:01月05日 著者:万城目 学 ファイル

無貌の神無貌の神感想
恒川さんの物語は、不思議な異界の摂理と、少しの哀しみとが重ねられて、いつもと変わらない感触だ。なのに何か物足りない、これは私が慣れてしまったのだろう。「夜市」や「秋の牢獄」のような唯一無二の色合いを描き出すために、恒川さんが国や時代の幅を広げ、苦心しているように感じる。「死神と旅する女」、「カイムルとラートリー」だって今までにないパターンだ。でも何かが、満たされない。その理由を、腑に落ちるときを求めて、私はまた恒川さんの物語を読むのだろうと思う。
読了日:01月02日 著者:恒川 光太郎

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)感想
「最後の講義」とあらば、人生の洞察に満ちて、年初らしく背筋のすっと伸びる一冊になろうと想像していたが、普段どおりの講演集だった。他の著作でも何度も触れられている神戸女学院のヴォーリズ建築について、改めて凄いことだと感服した。世の全ては定型化されない、常に奥行きの見通せないものだと、身に沁み込ませることは人の可能性を確実に上げる。ひとつ今年の心構えにしたいのは、自分の知的身体的パフォーマンスを最高レベルに維持するために、できる限り「上機嫌でいる」ことだ。すなわち最低限の生活習慣管理と段取り力、胆力が肝要。
読了日:01月01日 著者:内田 樹


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 12:03Comments(0)読書

2020年01月08日

2019年の総括

2019年、読んだ本の冊数は171冊。
購入費用223,116円。
積読は現在198冊(うちKindle本81冊)。

積読本の中には、運命の一冊もあれば、外れの一冊もある。
200冊もあれば鉱山をひとつ持っているようなものだな。
本棚にもう一冊も詰め込む余地がないと殺伐とするのではなく、
豊かな気持ちで楽しむことにする。


2020年も良い本に出会えますように。

ブック

2019年、私に影響を与えた本たち。
読書メーターのページはこちら

<知らなかった世界>

八甲田山 消された真実 八甲田山 消された真実 伊藤 薫

日本の路地を旅する (文春文庫) 日本の路地を旅する (文春文庫) 上原 善広

丁先生、漢方って、おもしろいです。 (朝日文庫) 丁先生、漢方って、おもしろいです。 (朝日文庫) 丁宗鐵,南伸坊


<自然と生命>

世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち 世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち ロブ・ダン

牛たちの知られざる生活 牛たちの知られざる生活 ロザムンド・ヤング

生命と食 (岩波ブックレット) 生命と食 (岩波ブックレット) 福岡 伸一

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス) 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス) 中川 毅


<生き方>

間違う力 (角川新書) 間違う力 (角川新書) 高野 秀行

好日日記―季節のように生きる 好日日記―季節のように生きる 森下 典子

神なるオオカミ・上 神なるオオカミ・下 神なるオオカミ 姜 戎


<仕事と日本の先行き>

日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり” 日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり” 山田 昭男

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義 日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義 デービッド アトキンソン

経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方 経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方 藻谷 浩介,平田 オリザ

  

Posted by nekoneko at 12:04Comments(0)読書

2020年01月07日

2019年12月の記録

年末年始の休みは長めで、飽き飽きする程本を読むつもりだったのに、
終始ばたばたで、疲れと欲求不満ばかり残る結果となりました。
「眠い」と宣言して寝室にこもり、こっそり布団の中で本を読む。
子供の頃よくやっていたようなことをしました。
でも、邪魔されないことの幸せったらなかったなぁ。

<今月のデータ>
購入19冊、購入費用21,643円。
読了13冊。
積読本198冊(うちKindle本81冊)。


ブック

12月の読書メーター
読んだ本の数:13

蔵書の苦しみ (光文社新書)蔵書の苦しみ (光文社新書)感想
積読本が200冊を突破しそうな今年の読み納め。蔵書が数千数万を数える蔵書家の人々の逸話を読むと、わずか数百冊は取るに足らぬと知る。私は読むことの愉悦は覚えたつもりだが、どこまでも常識的な読書人のひよこである。曰く『自分の書棚には、時に応じて、自在にページをひるがえすことができる本が、五、六百冊もあれば十分、その内訳が少しずつ変わってゆく』のが完全な読書人とあった。そして『三度、四度と読み返せる本を一冊でも多く持っている人が真の読書家』とも。取っておく本は実家に送り溜めてある。今年は本棚を新調耐震化したい。
著者は蔵書を手放すのに"一人古本市"を催した体験を書いている。一箱古本市に並んだ本はすべて、私の身体を通ったものたち。そしてそれが人前に並べられて、金銭と引き換えに他人の手に渡っていくのは不思議な感じであったと書いている。一箱古本市の店主をしているとなにやら面映ゆいのはそういうことなんだろうかと、興味深かった。
読了日:12月31日 著者:岡崎 武志 ファイル

往復書簡 無目的な思索の応答往復書簡 無目的な思索の応答感想
不思議な組み合わせに興味をそそられた。一度会っただけの間柄らしき二人による往復書簡形式のエッセイ。往復書簡なので末尾には相手への投げかけや問いかけが置かれていたりするが、それは踏んだりあえて踏まえなかったりと行儀よく緩く連鎖していくので、深いことを言っているが深まっていくのとは違う。二人とも体感や言葉尻に敏感なところが似ている。しかし、理不尽なそれに対して又吉は困惑しそっと身を引くのに対し、武田氏は噛み付く印象がある。その様相はこの装丁のよう、と上手いこと締めたいが、もっともんやりした読後感と評しておく。
読了日:12月29日 著者:又吉直樹,武田砂鉄

猪変猪変感想
海を泳ぐ姿や野を駆ける姿を見ると、その生命力に畏敬の念さえ覚える。しかし里山近くや島の住人にとっては、集落を消しかねない脅威なのだ。猪の餌は冬にドングリ、春にタケノコ。その間を埋めるのが島特産の柑橘類と聞いて瀬戸内海に猪が増えた理由が腑に落ちた。1990年代に柑橘類の輸入が自由化された辺りから島の猪は増えたのだ。それから30年。山に入る人は更に減り、猪は街にも現れ、被害は拡大している。正直、国民が減ると確定した日本で、人間の力だけで対応するのは限界じゃないか。放棄された田畑に牛を放牧するアイデアは好いね。
野生動物の駆除か保護か。この問題は経済問題を抜きに語れない。ジビエという言葉が由来するフランスには、狩猟と食肉加工ビジネスと野生動物保護が、森林管理や獣害補償も含めて総合的にバランスを取ろうとする仕組みがあるそうだ。生命観ほか、相違はあろうが、獣肉を食べる美食面だけでなく、その考え方をも輸入して国策として検討してほしいと思う。山から撤退するにしても猪に「背中を向けて逃げる」のか「顔を合わせたまま後ずさる」のかという10年以上前の問いには、未だ答えが出ていない。『21世紀の日本は、獣害の世紀になりますよ』。
ちなみに『イノシシが海を泳ぎ渡るのはもう、瀬戸内海の常識と覚悟をした方がいい』という警告は現実のものとなりました。
読了日:12月24日 著者: ファイル

おうちでできるおおらか金継ぎおうちでできるおおらか金継ぎ感想
夫の茶碗の縁を欠いてしまって、気に入りだっただけに気落ちも大きい。正月休みもあることだし、金継ぎをしてみようと思い立った。金継ぎ初心者セットがインターネットで売られる時代である。取り掛かる前にそもそも金継ぎとはなんぞやと眺めてみた。欠けたもの。割れたもの。ひびのいったもの。漆に様々なものを混ぜながら工程を経て美しく仕上げる。かすがい継ぎや呼び継ぎのような味わいあるものもあれば、ガラス継ぎに至ってはなぜそこまでして直すかと思ってしまう。実用と風雅のあわいの世界、奥深い。合成樹脂ではなく、漆でがんばってみる。
読了日:12月23日 著者:堀道広

いとしのギーいとしのギー感想
インターネット記事で知った本。香川県など地方には雑種犬があふれ返っているが、都会の譲渡会では珍しがられ人気があると聞いたことがある。さて、ギーは熊本県で野良犬として育ち、1歳くらいになって東京の譲渡会に出たというから、筋金入りの野良っぷりだっただろう。逸走もせず、人や犬に噛みつきもせず、彼女のペースで人間との暮らしに慣れていく様子が描かれている。写実性の高くない絵なのに、ギーの表情の変化がなんかわかる気がする。オリジナリティ極まる"フセ"のエピソードが紹介されているように、雑種は個性がわかりやすいのかも。
読了日:12月20日 著者:おおが きなこ

老犬たちの涙  “いのち”と“こころ”を守る14の方法老犬たちの涙 “いのち”と“こころ”を守る14の方法感想
児玉さんは見たままを伝える。飼い主に捨てられた老犬たちが檻の中で、環境の変化に混乱し、飼い主の不在を不審に思い、悲しみ、吠える。痴呆も入っていれば大きい声で鳴くだろう。それは「もっと生きたい」より「飼い主のもとに帰りたい」だろう。檻のボードに殴り書かれた「放棄」の文字が職員さんの遣る方なさを伝える。私も保健所に収容された犬を見て感じていた。白内障や半身麻痺など、老いて遠くまで歩けないはずなのに迷子?と。彼らは重い疾患や介護が負担だからと、故意に捨てられたのだ。悩む飼い主や犬たちの受け皿は必要。だがしかし。
職員さんの言葉『現時点で、迷子になっている子を一刻も早く家に帰すのに、一番、役立つのは、電話番号が入った迷子札だと私は思いますね。電話番号がわかれば、その子を発見した人が直接、携帯で飼い主に連絡することができるからです』。
読了日:12月17日 著者:児玉 小枝

自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方感想
生産性向上について。近頃よく聞くトレンドワードだ。企業など組織では、より短い時間、より限られた資源で効果を上げる変革を指す。しかし今まで生産性を理解しづらかったのは、個人にとっての生産性向上が多様な意味を含むからだった。まず自分が欲しいものを把握できている必要があって、それを手に入れるための効率化は単なる時間の無機的合理化だけではない。手に入れたいものが違えば「生産性の高い方法」は違うということ。それが理解できると、自分が取捨選択してきた事の意味が色々見えてきた。まだまだ研ぎ澄ます余地はありそう。考えろ。
読了日:12月17日 著者:ちきりん ファイル

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)屍人荘の殺人 (創元推理文庫)感想
久しぶりにはまれた本格ミステリ。本格から新本格を経て、新しい時代の本格へ。あとがきの有栖氏のテンションの高さににんまりした。見取り図、クローズドサークルに若者たち、それにゾンビ。ゾンビという設定の奇抜さよりも、主人公の言うとおり「どこまでがありえることなのか判断がつけられない」ことによる不安定感が楽しい。それでも崩れぬ本格感も頼もしく。『舞い戻ってきたホームズを、ワトソンの手で再び崖下に突き落とすなんて』。なんて切なくドラマチックな台詞! この一言のためにたくさんの設定が成されたと聞いても意外じゃないよ。
読了日:12月16日 著者:今村 昌弘

猫のエルは猫のエルは感想
詩にしろ童話にしろ、珍しい表現形式でも町田節は健在。エルを詠った詩も哀歓に満ちて好きだが、なにより「ココア」が再録されているのが嬉しい。猫特有の、いや、ココア特有の眼差しが、町田さんの最大の愛情をもって描かれ、町田さんとココアの視線が合ったこの一瞬を永遠と呼びたい。その後、ココアは笹蒲鉾を差し出すのだ。ヒグチユウコさんのイラストは猫好きにはたまらん柔らかさに満ちているけれど、この一瞬だけは、脳裏に刻まれたココアの眼差しを至高としたい。猫の、命の、日本に溢れる哀しみを知ってしまった優しい人にお勧めします。
読了日:12月13日 著者:町田 康

神に頼って走れ! 自転車爆走日本南下旅日記 (集英社文庫)神に頼って走れ! 自転車爆走日本南下旅日記 (集英社文庫)感想
高野さん、波照間島まで自転車で旅をする。んで、行く処行く処でなんにでも祈る。インドへ再入国できるように。あと、自分が大阪に偏見を抱いていないようにとか、煩悩を減らしてくれるようにとか祈る。高野さんには探検がらみの、並外れた知人がたくさんいる。田舎や辺鄙な山奥に住んで、住みたいと環境とやりたいこととを合わせて、環境活動のNGOやネイチャーガイドを生業にしている。探検部出身というと、クレイジージャーニー的な放浪する生き方を想像するけれど、彼らの生き方もやはり探検部にいたからやれたことの延長で、素敵だと思う。
読了日:12月12日 著者:高野 秀行 ファイル

交通誘導員ヨレヨレ日記――当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます交通誘導員ヨレヨレ日記――当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます感想
交通誘導警備員という仕事も、世間において見下される種類の仕事だ。人手不足から誰でもなれるが、技量と世間知が必須な職人の世界。しかしよくやって当たり前、ミスをすれば怒鳴られるという理不尽な世界でもある。建通新聞でも記事になっていたが、会社勤めを定年で終えた後に警備員稼業を始めて、心折れる人が後を絶たないという。暑いし寒いしトイレに行けないし矢面に立たされるし、こんな仕事をにこやかに続けられる人って、もはや涅槃の境地じゃなかろうか。そのような警備員に出会ったら僥倖と思って、笑顔で「ご苦労様です」を言っとこう。
個人的には運転中に車線変更や待機などの「ご協力」を求められてむっとした態度をとりがちだったり、会社として警備を頼むときも無駄な出費をできるだけ控えたいと思ったり、警備員さんに優しい気持ちを持ち合わせてないことは認める。考えてみれば、警備員稼業をしている人の話を身近に聞くことなんて滅多にないからね。そういう意味で、この著者が魅力ある文章を書ける人であったことは、警備員の世界を一般人に知らしめられてよかったのだ。
読了日:12月07日 著者:柏耕一 ファイル

生き物の死にざま生き物の死にざま感想
生物は生まれ、繁殖し、死ぬ。生死の意味や意義を考え迷うのは、たぶん人間だけだ。本来、生死に感傷などない。生命体にとっては生きていることも死ぬことさえも生きる甲斐だ。「死」は生命体進化のための発明品で、その途轍もなく大きな流れから見るなら、人間が考え迷い、また畏れ悲しみ、また長寿を願うのも、新たな変化への過程なのだろうか。生物はそれぞれ、あの手この手で効率よく繁栄する方法を編み出す。あまりに突飛な様に面食らうものもある。他の種を絶滅させる人間を皮肉に思うでも、あり得なさを面白がるでも、いろいろに読める本だ。
読了日:12月03日 著者:稲垣 栄洋

新聞記者 (角川新書)新聞記者 (角川新書)感想
『きちんとした回答をいただけていると思わないので、繰り返し聞いています』。今話題の東京新聞社会部望月記者。帯に『「質問できる記者」はなぜ生まれたのか』とあるが、この表現は"全くあたらない"。ごく普通の就活を経て社会部配属となり、経験を積み先輩にしごかれながら記者魂が磨かれ、真実の追及に日々猛進する。それは新聞記者として当然ではないのか。取材相手に聞くべきことを質問できないほうがジャーナリストとしておかしいだろう。なぜ望月記者が叩かれなければならないのか。望月記者の姿勢も取り組み方も真っ当だ。応援している。
読了日:12月01日 著者:望月 衣塑子


注:ファイルはKindleで読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 17:18Comments(0)読書

2019年12月13日

何台目?のKindle

AmazonのCyber Mondayに引っかかってしまいました。
だって、Kindle Paperwhiteの8GB/広告なしバージョンが、
10,000円を切るなんて!
「Kindle Voyageのサブ機」と称して、購入しました。

Kindle Paperwhite、Kindle第10世代。
相変わらず、シンプルながら凝ったパッケージは素敵。
 

でもその後が、もう、最悪でした。
電源を入れると、言語とWi-Fi設定、ここまではいいのですが。
同期のためにIDとパスワードの入力を求められ、
繰り返されるアップデートとスタートガイドのポップアップ、
さらにはAmazon PrimeとKindle unlimitedへの誘導だなんて。

ああ、思い出してもなんと無粋な。

Kindle3の、電源を入れるなり"Dear Emi"と語りかけられた、
Bezosのサイン入りWelcomeメッセージの感動は、もうありませんね。
ただの便利なハードウェアに成り下がった感が強くあります。

ソフト面の使用感はKindle Voyageとほぼ同じです。
持った感触は、背面のカットによるものか、ややもっさり。
表面は物理ボタンも段差もない、一面つるり。防水なのですよね。
電源ボタンが下についたのは防水都合でしょうか。
Kindleの価格とユーザビリティの釣り合う点として、
ここが一つの到達点なのだなと思いました。
物理ボタンは、できればほしいですね。ないと物足りない。
サブ機としてはおおむね満足です。
まあ、サブ機がどれほどの役割を果たすかは私次第なのですが。

左:Kindle Paperwhite(第10世代)、右:Kindle Voyage(第7世代)


恒例。我が家のKindle達
左:Kindle Voyage(第7世代)、右:Kindle Paperwhite(第5世代)


左:Kindle(第4世代)、中:Kindle Paperwhite(第5世代)、右:Kindle(第3世代)


Kindle(第3世代)、Kindle(第4世代)は英語対応。
Kindle Paperwhite(第5世代)、Kindle Paperwhite(第10世代)、
Kindle Voyage(第7世代)は日本語対応。
全部で5台になりました。集めて写真を撮りたくなります。
左右対称とは美しいもので、Kindle Oasisには惹かれないなぁ。

購入済Kindle本は556冊。
うち500冊をさっそくダウンロードして、1.46GB使用。
Decal Girlのスキンは目下輸送中です。
  

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2019年12月02日

2019年11月の記録

十二国記まつりがひと段落。
長く楽しみにできるシリーズがあるというのは幸せなものですね。
さてまだまだ夜は長い。
迷うほど積読本があるのもまた幸せなこと。


<今月のデータ>
購入20冊、購入費用23,178円。
読了14冊。
積読本196冊(うちKindle本74冊)。


ブック

11月の読書メーター
読んだ本の数:12

アメリカ炎上通信 言霊USA XXLアメリカ炎上通信 言霊USA XXL感想
どうしても、メガトン級馬鹿のトランプネタが多くなるのは仕方ない。もうほんっっっとに、安倍と同じくらい辟易しているのだが、この両者の何が違うといって、アメリカではメディアや著名人が黙っておらず、手厳しく反対を表明していることだろう。とはいえ、さすがのアメリカでも解任はできてないんだけど。"ガスライト"されたらいかんね。私も顔に落書きしたい。悪魔教寺院みたいな斬新な取り組みや、キアヌやアリアナの芸能ネタがアメリカならではで好き。イラストのキレっぷりは健在。ペニーワイズ風のマイケル・ジャクソンがぞっとさせるね。
読了日:11月30日 著者:町山 智浩 ファイル

経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方感想
アトキンソン氏が指摘するような努力を経済界はすべきで、しかし他方では、今と同じを維持できない以上、下り坂の日本の暮らしがどうなるのか気になる。数字とたくさんの実例からお二人が描く像はだいたい共通している。金銭を稼ぐことに消耗するのではなく、かといって帰農100%でもなく、複業や半農半Xなど、古くて新しい多様な生き方が地方では既に生まれている。多様で小さな活動には入りづらい雰囲気があるが、これは必要が生じれば越えられるものだろう。食料とエネルギーの自給率をどうやって上げるかなあ。たくましく楽しく生きる術。
どうやら地方都市より東京が先に衰退しそうだ。東京は大きすぎるし、大資本が投入されていて問題が見えづらい。地方は既に人が減り始めて、それぞれ対策を模索している。だがうまく変われている市町とそうでない市町があって、行政の機動力、特に首長のセンスが問われるという。高松も少し大きすぎる気がする。国分寺や香川町や塩江はもう一度分離したほうがいいんじゃないか。多様性格差を見極めて、元気な地域を今から注視しておこう。こうなるとリニアも四国新幹線も絶対に要らん。
読了日:11月29日 著者:藻谷 浩介,平田 オリザ ファイル

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)感想
阿選は愚かだが馬鹿ではない。麾下の忠誠と妖魔を利用した殲滅作戦は確実に民の命を棄ててゆく。仲間を失う痛みが辛い。これは最早ファンタジーじゃないだろう。ホワイトハート時代がなんと気楽に思えることか。でも、戦争ってこういうことだ。『嫌な時代に生まれちまったなあ』と朽桟は述懐した。民がそう感じる国は駄目だ。角を斬られた故に麒麟にあり得ぬ方法で驍宋を救うよりなかった泰麒が、やはり痛々しい。ともあれ泰は再起の機を得た。しかし小野さんは大団円を描かない。新元号「明幟」と聞いてまた震える。長くあれ。泰の民の願いと共に。
読了日:11月26日 著者:小野 不由美

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。感想
会社という枠組みの中で、私たちが自らにかけている縛り。うちの会社は外からどんなふうに見えるか考えてみる。日々無自覚に従っている慣例や"常識"が、実は会社と経営者を守るためで、従業員を我慢させている、のだろうな。過去にお金で苦しい思いをした経営者は、つい守りを重視する。しかし「充分な内部留保」のラインは無いだろう。それよりも、これからずっと働いてもらうつもりの社員がこれからの苦しい日本を生き抜くうえで有効なものを与えることが大事なんじゃないか。給与と教育、環境、加えて自由。中小企業だからこそ柔軟に変わろう。
読了日:11月26日 著者:青野 慶久

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義感想
少子高齢化×人口減少という差し迫った危機に対し、企業の生産性向上こそ解と著者は説く。日本には中小企業が多すぎるという指摘には反射的な抵抗を覚えたが、表層的なビジネス論ではなく、事実分析と研究に基づいた提言は納得至極だった。生産年齢層の減少につれ、中小企業の大淘汰時代が来る。単純計算では、うちと同じ規模の企業は半減するという。逆に取れば、著者の指摘する中小企業の弱みを先手を打って克服するならば、うちにも充分勝機が生まれるということではないか? それには機敏な大転換が必要であり、簡単なことではないんだけども。
『生産性向上のためには企業の規模を拡大するメリットが大きい』。中小企業は環境の変化に事後対応する傾向が強いという。設備投資や教育が行き届きづらい、分母が小さいので休む人員の補填が効きづらいなど、弱点が多々挙げ連ねられている。しかし、技術のみならず、中小企業の長所はあるはずだと頑強に思う。経営者の資質アップと、賃金の底上げによる生産性向上。巷で噂のM&Aもやりようで、他の施策についても考え方の転換ができて良かった。小さな企業を守ることは経営者を守っているだけのこと、とは手厳しいが、認めるところから始めよう。
『日本人の変わらない力は異常』。常日頃から根拠薄弱な反論を受けるとみえ、苛立ちが透けて見える。自国事ながら笑ってしまった。旧態依然の考え方を変革させるべく、皮肉を交えながらも理を尽くす著者の姿勢はその辺の日本人よりも信頼に足る。経済団体やそれに拘束される政党は、大変革に消極的だ。しかし国の政策如何にこの国の未来はかかっている。この国の福祉制度を存続させるためにはGDP維持が必要なのだ。目先小手先の対処ではなく、Low road capitalism="低付加値・低所得資本主義"を抜け出さなければならない。
読了日:11月20日 著者:デービッド アトキンソン ファイル

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)感想
阿選が王かとの問いに泰麒は明確に否と答え、数多の人を死に追いやった記憶を梃子にして、麒麟としての性質さえ偽りで糊塗してふるまう。こんな痛々しい麒麟は他にない。全ては驍宋を玉座に戻し、戴の民を救うため。阿選が偽王に立って6年。阿選は自分を評価しない民を見捨てた。民にとって6年が6年であったと同じく、仙といえど阿選にも驍宋にも麾下たちにも、6年は6年だった。その間凝らせた暗黒はより深く、戴再興へと集まる民意もより強まる。様々なものが根深くなった中、驍宋が姿を現した瞬間に起きる化学爆発や如何に。待ち遠しい。
読了日:11月19日 著者:小野 不由美

犬は勘定に入れません 下―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-7)犬は勘定に入れません 下―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-7)感想
そういやミステリだったか。「このミス」での評価が高かったので読むことにしたのだったが、もう時空連続体の自己修復からもグランドデザインからも興味(意識)が遠のいて、シリルとプリンセス・アージュマンドの"かあいい"様子を見届けるためだけに読み終えたようなものだ。彼らのオチは好かった。まあ、引用の元ネタを知っているほうが楽しい。なんで「犬を勘定に入れない」のかとといえば、「ボートの三人男」の副題に宣言されているからだ。そしてそれがなぜかは、やはり冗長さにうんざりして「ボートの三人男」を投げ出したので不明のまま。
読了日:11月15日 著者:コニー・ウィリス ファイル

新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて感想
企業が利益増大を優先する限り、いくら"環境に配慮"しても環境破壊は止まらない。とっくに持続可能なレベルを超えているからだ。『自然界のお先は真っ暗』とパタゴニア創設者は言う。つい先日、パタゴニアはSNSで「機能性、フェアトレード・サーティファイドの縫製、リサイクル素材の使用について、全ての防水性シェルで100%を達成した」と宣言した。人間は生きているだけで環境に負担をかける。だが負担をかけるなりに、事業がもたらす悪影響の低減に努めつつ利益を上げることが可能だと証明したのだ。この理念、私の胸にしかと刻む。
もはや『天然繊維だけを使って世界中の人々に衣料を供給するなどとてもできない』とパタゴニアは認識している。現状では綿の栽培、ウールの加工、染色も自然に多大な負荷をかけている。コットンよりもせめてオーガニックコットン。ヘンプ、リネン。ポリエステルの再生。パタゴニアが現時点で選ぶ手段は、プラスチックごみをリサイクルして衣料をつくること、自社製品のリサイクル、中古自社製品の再販である。そしてカスタマーの取れるより良い判断は、環境に配慮された製品一つ一つを長く使用すること、もっと良いのはなにも買わないことだ。
『現実とあるべき姿の違い』から目を逸らさない。パタゴニアは売上の1%を地球税と称して慈善活動団体に寄付している。千の市民運動グループのほうが巨大組織一つや政府よりたくさんの成果をあげられると考えているからだ。『草の根の小さな市民団体』の持つ力を信じている。最近は寄付仲介サイトでもたくさんのプロジェクトがある。災害時の寄付も動物愛護もそうなんだけど、自分が寄付しようとしている団体が何をするかのチェックは大事で、えてして名もない小さな団体が大きな成果を生むことはある。だから、ちゃんと見極める目を持ちたい。
読了日:11月05日 著者:イヴォン・シュイナード

はっとりさんちの狩猟な毎日はっとりさんちの狩猟な毎日感想
よぅ結婚したなこの人。とかねがね思っていた。その奥さんのエッセイ。冒険家だから危険な山行をして心配だとか、子育てで大変な時に山へ行ってて居ないとかのレベルではない。服部文祥の研ぎ澄ました美学も他者に強いれば暴力的で、他人なら放置できる事も家族なら丸ごと振り回されるのが明らかだからだ。『平穏に暮らす人々に対し、生きることの意味を無理やり考えさせるような挑発をするので、家族はいつも苦笑いしている』。どうやら小雪さんは押し切られる性格のようだ。だから振り回されながら見守れるのだろう。色鉛筆のイラストが優しい。
読了日:11月04日 著者:服部小雪,服部文祥

犬は勘定に入れません 上―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (1) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-6)犬は勘定に入れません 上―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (1) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-6)感想
タイムトラベルもの。ヴィクトリア朝時代の登場人物たちは、テニスンやルイス・キャロルを引用しては我が道を邁進し、物事が主人公の思うとおりに進むことがない。その無軌道さはまるきりシリル(犬)やプリンセス・アージュマンド(猫)並みで、果たして時流の齟齬は解消されて終われるのか心配だ。基本的に、逸脱で物語ができている。というのも、『ボートの三人男』の登場人物本人たちに出くわして主人公が感激する場面に象徴されるとおり、これは『ボートの三人男』へのオマージュなのだ。イギリス文学の素養があるともっと楽しめるのかな。
読了日:11月04日 著者:コニー・ウィリス ファイル

火を焚きなさい―山尾三省の詩のことば火を焚きなさい―山尾三省の詩のことば感想
社会の役に立ちたいのと同じくらい、山に引きこもって自然と対峙しながら生きていきたい願望が私にはある。人間の野生に従い、自然の恵みに祈りを捧げながら、静かに生きる。そんな暮らしを極端に具現した山尾三省の言葉には地面にずっしりと根を張った力がある。読む者を圧倒し、共振させ、空を見上げさせる。詩とは、私はそのようなものであってほしい。現代社会を『悪い時代』と厭う詩は、あんまり好きじゃない。人の美しい営みを詠ってほしい。気に入ったのは、夜中に独りで焼酎を飲みながら、鹿の鳴き声を聴く詩。クィーオウ クィーオウ。
読了日:11月01日 著者:山尾 三省

食にまつわる55の不都合な真実 (ディスカヴァー携書)食にまつわる55の不都合な真実 (ディスカヴァー携書)感想
確かに「食にまつわる不都合な真実」だが、だいたい皆がそれなりに知っている真実である。女子大学の講師だそうなので、リベラルアーツ的な方向で書かれたのかとも思ったが、それなら数字の羅列ではなく、グラフなど視覚的に把握しやすいツールを活用すべきだろう。数字はともかく、私にはいわずもがなの事柄ばかりだった。書かれている様々の事象は、フードマイレージの高さをはじめ、日本の食料自給率の低さに由来するものが多い。総人口が減るなら減るなりに、農産物及び畜産物の生産者層を一定割合確保しないと、今後大きな懸念事項になりそう。
読了日:11月01日 著者:金丸 弘美 ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 17:52Comments(0)読書