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オーナーへメッセージ

2020年07月02日

2020年6月の記録

一箱古本市に出店した。
華やかな場所で楽しかったが、売上げは楽しくなかった。
服やアクセサリーや、その他誘惑の多い場所では特に、
本を物色する行為に惹かれる人はそう多くない。
あと、もっとたくさんブースがあるほうがいいみたいだ。




<今月のデータ>
購入18冊、購入費用12,442円。
読了13冊。
積読本211冊(うちKindle本94冊)。


ブック

6月の読書メーター
読んだ本の数:15

リンゴが教えてくれたこと 日経プレミアシリーズリンゴが教えてくれたこと 日経プレミアシリーズ感想
前に読んだのを忘れて買ってしまった。しかし面白いのでもう一度読む。『お米はイネに実るのです。リンゴはリンゴの木に実るのです。人間には米一粒、リンゴ一個も実らないのです』。農業は本当に大変な仕事だと尊敬している。しかし肥料や農薬を使うのは、効率化の為であり、体が楽だからであり、実は思考停止でもあるのだと、木村さんの言葉を聞くたび思う。自然に真剣に向き合う日々は壮絶だ。同時に豊かだ。肥料や農薬がなくても山の草木が繁茂するように、人間も肥料や農薬無しに命の糧を充分得ることができる。私もそういう考え方でありたい。
読了日:06月27日 著者:木村 秋則

【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち感想
この本は2つの事実を指摘する。まず、AIにできるのは論理、確率、統計のデータ処理であり、シンギュラリティは絶対に起きない点。次に、日本の多くの若者の文章読解能力が教科書を読めないレベルにある点。しかし確実に日本の従事する労働の業種や職種は様変わりし、あらゆる単純作業や士業のようなおよそ事務的な処理はAI技術に奪われる。ただ、そこからの推論は著者の守備範囲外だ。人間にしかできない仕事は世に溢れている。絶対にAIが敵わないのは、人間が自然の一部であることだ。感覚を使う仕事が人間に戻ってくると私は期待している。
物事の意味を理解しないAIよりも低く、さらにはランダムよりも低いのが、中高生を対象にしたRST調査の正答率。それが意味するものは何だろう。昔の学生と比較してみることは叶わないが、この試験結果が今の若者の教科書読解力を示すならば、これだけの割合いるものを「障害」とは呼べない。とすれば義務教育の形に原因があると推測してみたい。問題を解くことよりも、短時間で処理することよりも、物事を読み解く能力を育てることを皆に意識させる教育に解を見いだせないだろうか。
真の世界と確率を混同することで技術は進歩する。しかしそれは他分野の研究者が行うことであって、数学者には許容できない事だという述懐が興味深かった。『意図や意味などの観測できないものは無視して、確率と統計を意図的に混同する』ことができるかできないか。数学はいろんな技術の基盤となるものだけれど、純粋に数学を信じる故に、このあいまいな人間世界に直接的に役立つことは、数学の世界では起きづらいのだろう。
読了日:06月26日 著者:新井 紀子 ファイル

【Amazon.co.jp 限定】1冊ですべて身につくHTML & CSSとWebデザイン入門講座 (DL特典: CSS Flexbox チートシート)【Amazon.co.jp 限定】1冊ですべて身につくHTML & CSSとWebデザイン入門講座 (DL特典: CSS Flexbox チートシート)感想
会社のサイトのリニューアルを計画する。HTML5時代になり、Flexboxレイアウトが主流になり、トップに写真をどどんと広げる構成がトレンドであり、スマホでの検索が多くなればレスポンシブ対応も必須である。時代遅れになった元サイトを下敷きにコーディングしていく。一度つくったことがある私にはわかりやすく、変な癖もなく、スマートな書き方だと感じた。それなりなものができそう。無料で利用できる機能も多々紹介されている。便利な時代になったものだ。ウェブサイトでも役立ち情報をアップされているので、併せてお勧めする。
読了日:06月26日 著者:Mana

茶色の朝茶色の朝感想
安田菜津紀さんがブログで触れていた本。数ページの寓話。「なにが」や「どうして」は明らかにされないのだが、一見害のなさそうな法の成立によって平穏だった二人の周りはみるみるきな臭くなり、最後には自分で命を守るか、国の為政者に怯えて暮らすかを余儀なくされる。一見無害の法律。しかし為政者が成立させようとする裏には、大きな意図があるものだ。今、日本の与党がどさくさ紛れに成立させようとしている法律はそんなのだらけだ。高校の授業に取り入れて、この危機を察する術を教えるべきだと思う。じゃなきゃ生きることすら危うくなるよ。
その法律はなんと「茶色のペット以外は飼ってはいけない」なのである。それがあのような結末になるとは誰も想像できない。しかし、なぜ「茶色のペット以外は飼ってはいけない」が法律として必要とされるのかを考え、為政者に問い質し、真意を突き詰めて反対を表明することは、民主国家なら国民皆に与えられた権利であり、こんなきな臭い世の中ではもはや義務なんだと私は思う。
読了日:06月23日 著者:フランク パヴロフ,ヴィンセント ギャロ,藤本 一勇,高橋 哲哉

漫画 君たちはどう生きるか漫画 君たちはどう生きるか感想
原作を読んだときも思ったのだったか、中学生コペル君のおじさんって独身青年なんだな。幼き者が世界の真実に矢継ぎ早に目覚めていく様を、自身に子供があれば目の当たりにするのだろうが、大人の眼には最早奇跡だ。若き叔父も甥に触発されて走り始めるという物語が画で好く描かれている。上野千鶴子が言っていたように、叔父と甥のようなナナメの関係は、直の親子関係とは違った意味合いを持てるのだそうで、私も姪との間にこんな関係を持てたりするのだろうか。今から根気よく刷り込んでおかないといかんなあ。頁に描かれた手の表現が細かい。
読了日:06月22日 著者:吉野源三郎

北極海へ (文春文庫)北極海へ (文春文庫)感想
マッケンジー川を下る。floating life。カヌーに乗ったまま川を一日中流れっぱなしなんて、まさに男の旅。長い時間ぼーっとする贅沢は釣りに似て、私みたいな忙し屋には耐えられないだろう。でも『すべての幸福も不幸も自分のせい』という自由には憧れる。死に至る決断をしたとしても、他人の行動を禁止する権利は誰にもない。そこが日本と決定的に違う。そしてその無限の決断と引き換えに、この上なく美しいものに出合うのだ。極地の『地球上の流木が全部集まっているかのよう』な海岸を想像する。その青く燃える火を想像する。いい。
インディアンやエスキモーと日本人はよく似ている。狩猟民族であるインディアン/エスキモーと主に農耕民族である日本人の生活様式は全然違うのだけど、なんか似ている。だから、裏表の存在であるような、欧米人にはない余情が生まれる。
読了日:06月21日 著者:野田 知佑

私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏感想
私の読みたい本が少なくても、これからの若者の為にはリアル書店環境が大切と、できるだけ地元書店で本を買うようにしてきた。しかし平台一等地に堂々置かれたヘイト本あるいは歴史修正主義者による本は、目障りで仕方なかった。そんなもやもやの中で手に取った本。結論としては、その類の本がもし無神経また無思慮に配置されるのならば、もうそこで買うのをやめると決めた。書店には配慮する義務があるが、私がそこで買わない選択をすることは自由だ。私はアイヒマンには同情しない。そこに良心があるか、置き場のニュアンスを注視することにする。
それにしても売れるから企画する、売れるから配本する、売れるから売り場に置く。売れれば儲け、売れなかったら返本するだけのこと。積みあがった駄本の山よ。私が思っていたほど出版界にモラルなんて無かったんだなとがっくりきた。いや、今もあるところにはあると知ってる。そういう存在をもっともっと大切にしよう。
読了日:06月15日 著者:永江朗

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)蟹工船・党生活者 (新潮文庫)感想
人を人と思わぬ搾取は、現代の派遣契約労働者に似ていると言って言い過ぎでもないだろう。本人の事情に構うことなく、一部の資本家に生計を握られる。こんなことが本当に現実かと驚き、疑い、目を逸らし、やがて怒りがうねる。搾取への反発が新たな社会活動を誘うさま。日々生きることに汲々としながら、共産主義に惹かれてゆく流れを、私は感情で理解した。おそらく意図的にぶつ切りにされた文章のリズムは、北の荒い波であり、社会運動に拙く傾いていった時代の人々の意志なのだろう。一方、党生活とは人々の強かさでありつつ、なんとも痛い。
読了日:06月13日 著者:小林 多喜二

文庫 手の治癒力 (草思社文庫)文庫 手の治癒力 (草思社文庫)感想
この本を買う時、書店の店主と「今回の新型コロナによって、こういった手の触れ合いはより忌避されるようになるのでは」という話をしたのだった。現状は少なくともそうだ。人が寄り集まる場所ほど急拡大し、接触を避ける日々は人間への呪いのようだ。今必要なのに。人の肌に触れることは「互いに支え-必要とされる」関係の証明であり、「自分は生きて存在している」確認と同時に「ひとりで生きているのではない」確認である。生命力の向上は自己治癒能力の発現として現れる。科学的解明も進んでいる。身近な人にはいっぱい触れようと改めて決める。
アルゼンチンにある洞窟「クエバ・デ・ラス・マノス」の壁画を見てみたい。まるで「手当て」賛歌のような存在感には、ヒポクラテスも現代医学も負けるわ。

読了日:06月13日 著者:山口 創

イトウの恋 (講談社文庫)イトウの恋 (講談社文庫)感想
小説家ってすごいな。イザベラ・バードのあの著述から恋物語を描き出す想像力。私が日本紀行を読んだ印象では、バードは日本人の貧相な体つきや不潔を忌むのは無論、無自覚な卑しさをも嫌っていた。伊藤も例外ではなく、更には打算的で思い上がった性根を、バードは嫌ったと読んだ。どころかバードが伊藤に好意を持ったなど、伊藤にちっとも親愛を持てない私には無理だった。でも、少なくともずっと連れて歩いたのだから、可能性は無くもないのか。すでに出来上がった印象とは恐ろしい。成績は悪いかもしれないが素直で成長株のまこっちゃんが癒し。
読了日:06月12日 著者:中島 京子 ファイル

霧の山稜 (1959年)霧の山稜 (1959年)感想
読むタイミングが悪いか。山荘とか山道とか、せめて屋外で読んだら心に響くかもしれないけれども、家の中にこもっているとするする読んでしまう。服部文祥氏がこの本を推し本に挙げていたので読みたくなったのだった。どの辺に熱中したのかな。この頃の山行は、自由でいいなあ。今みたいに小うるさく言う部外者も無く、晴れてもずぶ濡れになっても滑落しても、全て自分だけの大切な記憶。『美しい裾野を語りつつ歩いた。頂を踏まぬ山行は、何だか忘れものをしたようだ。それでも常に山は楽しい』。
読了日:06月09日 著者:加藤 泰三

地球環境問題がよくわかる本地球環境問題がよくわかる本感想
環境問題全般の解説書。原発問題や国家間のあれこれについても一般的な表記に留めているようにみえるが、若者に伝えておかねばならない事項がたくさんある中では、一つ一つのトピックは短くならざるを得ない。世界で起きている事と身近な事を結び付けて考えられるよう“地球にやさしく暮らそう”があったり、猿のイラストが怒っていたり、工夫が詰め込まれている。著者はおそらく親子だろう。1963年から環境問題の研究を始めたと奥付にあるから、もう60年弱も日本の環境問題を見続けた思いが行間に滲むようで感じ入ってしまった。おすすめ。
読了日:06月09日 著者:浦野紘平,浦野真弥

上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください (光文社新書)上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください (光文社新書)感想
お二人とも本音を隠さないので、古市氏の発言に上野先生と一緒に呆れつつ、面白く読んだ。現在の日本は、戦後からの各世代が自らの為に創り上げた社会基盤に拠っている。マジョリティかつ今も強者である男性が既得権益を守れるように制度ができている。介護保険など、世の女性が徐々に勝ち得てきた様々は有難く享受する。その上で、今に不満があるなら、変える義務を負うのは今を生きる者であるとの指摘を胸に刻みたい。『政治の領域と、私生活の領域をリンクする仕組みが社会に用意されていないのは、問題だと思』う彼の認識を、私は笑えない。
ツイッターを流し見れば社会への批判が溢れ返っている。そのつぶやきが多くの同意を得ているとどこか安心するし、リツイートなどでなにかした気になる。でもそれは解決につながる行為であっても、まず解決ではない。少し引いて、自分の中で消化して、そのそもそもの問題点と解決策を模索するところまでが必要だ。大勢が模索しているうちに新しい展望が生まれて、起きるムーブメントに賛同して、アクションを起こす。小さなアクションが積み重なって、よりよい「普通」が生まれる。『変化っていうのは、そうやって少しずつ、起きるものなんだよ』。
「家族のいない年寄りは、本当にみじめの一言だった」時代はついこの間まであった。そこに、上野先生が"おひとりさま"という言葉で独り者の立ち位置を変えたことは、私にとっても有難いことだった。それでも弱者に変わりない独り者、女性、若者は、共感を武器に連帯することができる。上野先生は、他者とつるむのが好きではないとしながら、女性同士共感し、連帯しながら社会に関わり続けてきた。そこは矛盾しないという確認を新たにする。逆にそのくらい強く共感を持てる分野ならば、多少人づきあいが嫌いでもやれるのではないか。
読了日:06月08日 著者:上野千鶴子,古市憲寿 ファイル

魔法のコンパス 道なき道の歩き方魔法のコンパス 道なき道の歩き方感想
センスが良い。未来を読んで今行動するセンス。叩かれ慣れのおかげか、考えが世間様に縛られておらず、かつ昔ながらの肌感覚と現代のネットツールを合わせ技で発想することに長けている。言葉の選び方も面白い。クラウドファンディングを『一人の大富豪ではなく、インターネットを介して大勢の方に少額のパトロンになっていただく』と表現する辺り、自身を広義の芸人として、往時における道化や芸術家になぞらえてみせるようで絶妙だ。「空気を読む」行為についても書いているが、この人は海原に漕ぎ出て、吹く風の先を読んでいるみたいだ。
読了日:06月04日 著者:西野 亮廣 ファイル

うきわねこうきわねこ感想
お父さんお母さんに内緒で、おじいちゃんとっていうのが、いいんだなあ。女子と男子ではおじいちゃんとの距離も違うのだろうか。お出かけとか、釣りとか、秘密を分け合うとか、おじいちゃんとできることっていろいろあるんだな。身近には、90歳を超えてなおかくしゃくとした夫の祖父、初めて祖父となった私の父、幾人もの「おじいちゃん」がいる。わけても、未明に独り逝った私の祖父に、最近の自分自身がよく似た言動をすると気づいたことが連想された。
読了日:06月04日 著者:蜂飼 耳


注:ファイルはKindleで読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 08:59Comments(0)読書

2020年06月01日

2020年5月の記録

読みに読んだ1か月だった。
読みすぎて、目が文字の上を滑り始めた。
落ち着くのを待たないと、これ以上読めないっていうのも満足至極。
今月は右脳系の本をゆったり読もう。
引きずり込まれるようなのがいいな。

<今月のデータ>
購入15冊、購入費用16,795円。
読了19冊。
積読本210冊(うちKindle本90冊)。

ブック

5月の読書メーター
読んだ本の数:19

寄付をしてみよう、と思ったら読む本寄付をしてみよう、と思ったら読む本感想
寄付が必要な分野は、行政が行き届かない状況にある問題、行政と違うやり方の方が効果的な問題、社会が十分に認識できていない問題だという。政府がポンコツに思える今は特に、民の力を育てる機会なんだろう。政府が全てやってくれると思うから、なにもしないで文句を言うのだ。行政と企業とNPOにはそれぞれ役割がある。「微力でも集まれば世の中を動かせる」確信がある人は強い。提案される「共感×解決策」に共鳴できたら、どんどん乗っかっていこう。漫然と税金を納めるより、世の役に立ってる気がしてくるし、無駄な物買わなくなったなあ。
阪神や東日本の震災、新型コロナなど突発的な災害が契機にもなって、日本人は自分のお金を他人に役立ててもらうことに馴染み始めているとは思う。私の特別定額給付金10万円は寄付で使い切った(まだもらってもないけど!)。リターンがあるものもないものもある。リターンを喜ぶのは悪いことではないんだね。お金を有効に使ってくれる団体かどうか、それだけは見極めなければならない。『寄付や社会事業とは未来への投資』。最近は様々な団体が増えて情報が伝わり渡りやすいぶん、活動の質も千差万別なのだろうと想像されるから。
今の日本政府は軍需企業の株を大量に税金で購入保持しているし、銀行はせっせと金を貸し付けて利子を稼がなきゃ存続できない時代。日本初の銀行の理念を聞いてあまりの高邁さに腰を抜かしそうになりましたよ。『一個人や一企業が利益を独占するのではなく、社会に還元してみんなで共有することで、国が全体的に豊かになり、築いた富が永続する』。渋沢家は凄いな。ビジネスと社会貢献は背反しない。営む業種がSDGsに資することはそれはそれで重要だが、企業としての寄付というのもあって、優遇税制とうまく組み合わせるのは有りだと思う。
読了日:05月30日 著者:渋澤 健,鵜尾 雅隆 ファイル

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)感想
Facebookで"ブックカバーチャレンジ"なるものに誘われ、7日間毎日好きな本の表紙を投稿した。写真を工夫したり、本の内容には触れない、でも思いが伝わるような短い文章をつけたりの作業は楽しかった。又吉は「本を好きになってほしかった」と言う。又吉が読書へのきっかけになる人がいることを自覚しているからだ。その姿勢の真面目さに、共感するし、好意を新たにする。幼少からのどっぷりな読書経験が興味深い。しかし彼の感性と私のそれが徹底的に違うと、「読書芸人」を観てよく判っているので、読みたい本登録は控えめにしておく。
読了日:05月28日 著者:又吉 直樹

「畳み人」という選択 「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書「畳み人」という選択 「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書感想
「畳む」という概念が面白い切り口。畳み人とはビジネス戦略を発想する広げ人と、実行部隊をつなぐ、マネジメントのできるゼネラリストである。職位としての中間管理職とは違う。単にデキるヤツとも違う。広げ人のアイデアがどれだけ突飛でも、可能性があるなら、一緒に面白がり、手間や時間をもったいながらず、全力で実行する。しかし裏では冷静に検討して現実的な案に落とし込む策士。一人で広げて自分で畳むのだと中途半端になるという所感は興味深い。畳み人がいるから広げられる。広げ人がいるから全力で畳める。こういう関係は強いなあ。
同時に、時代の寵児故の危うさも思う。広げ人/畳み人は箕輪氏のネーミングだ。この本も畳みスキルネタの営業活動の一環である。幻冬舎を時代の産物と、つい斜に見るのは聞こえてくるゴシップと無関係ではない。ご本人の労力はそれは人並み以上だったろうが、たまたまうまくいった、性格が向いていた、時代の波に乗った物の見方を厭わなかった、といった懐疑的な見方はあえて持っておきたい。マイナビや幻冬舎の看板あればこそ、立場の弱い者相手に横車を押すような遣り方だって無かったはずはないのだから。
読了日:05月25日 著者:設楽 悠介 ファイル

顔の読み方 (平凡社新書0910)顔の読み方 (平凡社新書0910)感想
私が他人と出会ったとき、表情や服装などの非言語的兆候からその人について瞬時に判断しており、同時に顔かたちも判断要素である。そこを体系知識化したのが観相なのだろう。漢方医学の診察が人を外から見るところから始めるなら、観相は職域である。だからといってその知識=データの蓄積からAIで人間を判断できる時代へと言われると仰天してしまうな。だって、本当の知識が活字となり公になっているものはせいぜい7~8割と丁先生自身が言っている。それ以外の部分、人間の肌感覚もAI化できちゃうってことになりますよ。それって気持ち悪い。
読了日:05月24日 著者:丁 宗鐵 ファイル

カラスは飼えるかカラスは飼えるか感想
カラスにとどまらない、生き物エッセイ。サルやハヤブサの話題も興味深いが、「カラスの教科書」以来、カラスの魅力をわかりかけている身には少し物足りない。韓国のカササギや日本のツバメに比べてカラスは人気がない。人間の作った環境の中で生きることが得意なカラス故に、人間に憎まれるのも因果なものだと、著者の執拗な恨み節を読みつつ思う。近所のごみステーションに来るカラスを観察したり、ゴミをほじくり返すのを念入りに片づけたりしていたら、あまり見かけなくなった。これは敬遠されていると知り、カラス道の難しさを味わっている。
読了日:05月24日 著者:松原 始

季刊 環境ビジネス『ESG、SDGsに効く 攻めの脱炭素ビル・オフィス戦略』(2020年春号)季刊 環境ビジネス『ESG、SDGsに効く 攻めの脱炭素ビル・オフィス戦略』(2020年春号)感想
世界的にSDGsの取組みが推進される以上、資本主義社会においては環境対策への需要を満たすべくビジネスが乱立している。それが本当に環境のためになるかは別にして、先進的な話題を得ておくことは大事だろう。ZEBでも小さな企業ほど"Nearly ZEB"を目指しやすいことや、再エネコストの動向、脱プラスチックへの各国の取組みは興味深かった。イタリアはゴミ危機を乗り切るため、有機ゴミを分別収集し始めた。袋は生分解性プラ製で、それごと大型コンポスト施設で堆肥化する。大逆転の成果に感嘆した。竹村公太郎氏の連載が面白い。
読了日:05月21日 著者:

話すチカラ話すチカラ感想
夫から手渡され、話が尻切れとんぼになったり辻褄が合わなかったりする私の話し方をなんとかせよという意味かと思ったので、急いで読んだ。主に人前でのスピーチや場の進行、初対面の相手との話し方である。安住アナの「人前で話すときはあえて高めの声がいい」が収穫だった。人に話を聞いてもらいやすいという。経験から言うと電話で相手を威圧するときは低い声の方が効果的なのだが、それは相手が集中して聞いてくれている時だからだそうだ。つまり使い分け。いわゆるキンキン声は耳障りだから、緊張の混じらないフラットな高さということだろう。
読了日:05月19日 著者:齋藤 孝,安住 紳一郎

白墨人形白墨人形感想
『If you like my stuff, you'll like this』。あとがきにあるように、私もキングのSNS投稿を見て手を出した一人だ。私と同じくらい長くキングファンだという著者が書いた物語からは、当然キング臭がぷんぷんする。練られたミステリの趣向に、キングの多用するモチーフ。だからこそ余韻の違いが際立つのだ。キングの物語は愛ゆえの哀しみがその凄惨や生臭さを圧倒する。この物語の、それぞれの人物が持つ秘密は、人を孤独にはしても、結びつきを深めることはなく、失うばかりでいたたまれなかった。
読了日:05月19日 著者:C・J・チューダー ファイル

プリンシプルのない日本 (新潮文庫)プリンシプルのない日本 (新潮文庫)感想
『将来の日本が生きて行くに大切なことは、全部なら一番いいのだが、なるべく多くの人が、日本の国の行き方ということを、国際的に非常に鋭敏になって考えて行くことだ』。白洲次郎が現代でSNSなどやったら、それは数多のフォロワーがつくだろう。ほんとうに格好いい。先見の明があって、理路が整って、原理原則を見失わずに話ができる。しかも茶目っ気まで持っているとは、どうやったらそんな男が日本に生まれるのか。昭和30年頃から40年代に雑誌に掲載された文章。まるで今の日本の話をしているようでもあり、読みやすい。惚れます。
昭和30年頃の日本は行き詰っていた。『終戦直後の真剣な気持も朝鮮戦争のアブク銭のお蔭ですっかり消え失せ、何かこの敗戦破産経済も大体頬かむりで何とかなるとの神風期待論法でこの二、三年ごまかし一点張りでやって来たが、矢張りごまかしはごまかしで、愈々本格的に立直りに踏み出すべく余儀なくされかけたのが現在のほんとの姿ではあるまいか』。この国は変わらん。終戦を震災、朝鮮戦争をオリンピックと置き換えればまさに現在で、二、三年どころか二、三十年も時間と金を空費してきた。そのうえ、三権分立まで今失おうとしているとは。
読了日:05月18日 著者:白洲 次郎

ねことねこねことねこ感想
絵本原画ニャー!展を観てきた。猫の出てくる絵本の原画やラフスケッチなど、猫好きにはたまらん展示で、舐めるように鑑賞した後、グッズと一緒に買い込んだ絵本。作品それぞれに味があるけれど、やっぱり町田尚子さんの猫はたまらんなあ。一匹たりとも同じ猫はいない。それぞれの猫への観察力と、眼の描き込まれ方が素敵だ。この絵本はストーリー性や背景があまりないぶん、描かれた猫に見入ってしまう。もうじき2歳になる姪の英才猫教育に与えようと意気込んでいる。
読了日:05月17日 著者:町田 尚子

読まない力 (PHP新書)読まない力 (PHP新書)感想
巷の雑多な時事を扱った、養老先生には珍しい時評集。20年近く前の話題が古びて感じないのは、養老先生が言うことが変わらないからか、人間というものが変わらないからか。ちょうどSARSやMARSの頃で、それについても触れていて、各国の統計数値がおかしいのは今に始まったことではないと再認する。私も、世の一つ一つの出来事について怒ったり嘆いたりせず、自分の軸で判断した後はすっぱり割り切って行動する年代に差し掛かったのかもしれない。『一段先を考えるのは、たった一段階なのに意外に難しい』。でもその一段がめっちゃ大事。
この数日の報道、やはり腹は立つ。歴史が繰り返している愚行の相似形は頭に留めつつ、怒るべきだし、声は上げるべきだと改めて思った。今生きている日本人の責務だと思った。『一段だけでもいい。先を考えておくれ』。感想に引用したのと同じ文章に書かれた、この部分がしきりと思い出される。割り切った、捉えようによっては突き放したような言い方をよくなさる養老先生だが、今よりお若い出版当時の思い、心底に持っている本当の思いはここにあるのだ。
読了日:05月16日 著者:養老 孟司 ファイル

ソラリス (ハヤカワ文庫SF)ソラリス (ハヤカワ文庫SF)感想
1961年、ポーランドの作家による小説とあとがきで知った。言われてみれば、装備が若干古びている感じがしなくもない。この物語で存在を主張する者は、もちろん海だ。地球人たちはあれこれ実験と思索を重ねて微細に描写するけれど、海は単に散漫なだけだ。だって長い間ずっと独りだった訳だし。変なのが現れたからって、気まぐれに手遊びしてみただけで、どこまでも地球人たちの一人相撲。様々な要素を含んだ物語であることが長く支持される理由だそうだ。私にはその空疎、空回りが諸般の事共に通じて印象的だった。地球人って面倒くさいね。
読了日:05月10日 著者:スタニスワフ・レム ファイル

2030年の世界地図帳  あたらしい経済とSDGs、未来への展望2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望感想
新型コロナによりこの予想未来図は大幅に書き換えられると直感したので、そのうちといわず取り急ぎで読了した。人間の世界を考える材料として、興味深い現象がいくつかあった。しかし何か見落としているようで、腹に沁みてこない。事実に基づいた予測情報としては正しいだろう。ただおそらく、本著の言葉を借りると『人類を主体として現状を捉えること』の、人類という地球の一部だけを俯瞰で見ることの歪さが気持ち悪いのだ。新型コロナによる影響としてはグローバリズム、中でもモノづくりや食料調達のスキームについて見直しを迫られるだろう。
著者と池上彰氏の対談のかみ合わなさも留意しておきたい。これも主義主張が相容れないというよりは、視点の置き方に差異があるからと思われる。昨夜、テレビの報道番組に出演していたが、他の出演者の発言に首を傾げたり、正確を期すように言葉を選びながら発言する様子は、好感の持てるものだった。
読了日:05月08日 著者:落合 陽一

バンクシーを読む (TJMOOK)バンクシーを読む (TJMOOK)感想
バンクシーが日本で広く認知されたのは、私同様2018年のシュレッダー事件のときだったようだ。そのときは奇矯なことをするものだと思っただけだったが、その後徐々に作品を知り、好きになった。『ニュートラルに生きてるだけじゃダメなんだよ。資本主義の世の中では、普通に生きているだけで、誰かを抑圧していることになる』。ユーモア、シンプル、サプライズ。愛ある"アート・テロリスト"。今年日本で予定されていたバンクシー展はどうなるんだろう。バンクシーは「会場」で「作品」が「展示」されることをどう思ってOK出したんだろう。
読了日:05月06日 著者:

軽装版 風と行く者 (軽装版 偕成社ポッシュ)軽装版 風と行く者 (軽装版 偕成社ポッシュ)感想
思春期のバルサ。長い旅で何人もの命を守ってきたバルサも、20年前はジグロたち大人に守られていた。一人前の護衛士らしく割り切って見せても、胸の内はじたばたしていたこと、周りの大人たちにはお見通しだったってことよね。物語を通じて、若者を見守る視線の温かさが常にあったと感じるのは、バルサと同年代だからか。『それにね、人ってのは案外、いくつになっても半端なものです。考えつくしても、いま、それしか見えないなら、選んだら、行くしかない』。歳を重ねたから見える景色を、若者の背を押すために伝える役割が、世の大人皆にある。
読了日:05月05日 著者:上橋菜穂子

新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)感想
情報がこれだけ日々溢れると、自分の判断に自信が持てなくなる。感染症のプロに判断の軸を貰おうと思った。マスクをするよりも他人と距離を取る。家中を殺菌するよりも手指を消毒して鼻や口に触らないようにする。どうやら国の発表は政府であれ専門家であれ鵜呑みにはできないようだ。PCR検査が万能でないとはいえ、自分たちに都合のよいシナリオに合うようにデータや事実の解釈をして見せている疑念はやはり拭えなかった。自国のトップや省庁のアウトプットを信用することができないなんて、私たち日本人には本当に不幸なことだけれども。
読了日:05月03日 著者:岩田 健太郎 ファイル

オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る―「お風呂の愉しみ」 テキストブックオリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る―「お風呂の愉しみ」 テキストブック感想
家にいる時間に石けんをつくろうと思い立つ。久しぶりなので、通読してみた。前田さんの文章は、丁寧で、優しくて、読んでいるだけで楽しくなる空気がある。それにこの写真にある石けんたちの断面の、なめらかで美しいこと。今回はオリーブオイルとマカダミアナッツオイル、ホホバオイルに、柑橘の香りを贅沢につけようと決めた。世間の雑事は忘れて、ゆったりと優しい気持ちで石けんづくりを楽しみたい。
読了日:05月03日 著者:前田 京子

科学的に見る SDGs時代のごみ問題科学的に見る SDGs時代のごみ問題感想
構成が散漫に感じられ、焼却や埋立は是と読める論調に苛々した。しかし整理すると、焼却や埋立は廃棄物が発生した以上、最終的には仕方のないことで、それをどのように減らすかが課題なのである。排出する不要物のうち、自然に還せたり資源としてリサイクルできるものを除いた残余が焼却や埋立になる。そう考えるとすっきりする。サーマルリサイクルは私はリサイクルとは認めない。なぜなら、焼却は資源を使って作った物を、灰と排ガスという無に変える行為だ。焼却ベースで、加えて熱を回収するので円満解決と考える思考軸は間違っていると思う。
そもそも自分たちが出すごみがどのように処理されるかを知りたかった。行政は「分けましょう、洗いましょう」と唱えるばかりで、処理の仕組みを知らなければ、ごみを排出する行動原理を変えることは難しい。行政が説明するべき要点を押さえないために生じる無駄は大きいんじゃないか。早い段階で分けることが大事なんだって言うべきだ。何が正しいか見えないから、行政への疑念ばかり膨らんで、結果的にごみ処理施設への誤解や感情的な拒否感を生んでいるように感じた。現代のごみ処理は思っていたより科学的で、許容できる程度にクリーンだった。
『真の排出量、リサイクル率を知ること、自治体が関与してリサイクル率を上げることは、本当に必要だろうか。また、排出量は資源化量を含んでおり、どれだけリサイクルを進めても排出量を減らすことはできない』と著者は指摘する。それはエコアクション21の活動の中で生じた私の疑問そのものであり、厚労省の対応をはじめ、エコアクション21には根本的な問題があるのではないかという考えが固まりつつある。大なり小なり役立つことはやるが、破綻した論理につきあう暇と金はない。いざとなればこちらから突き放すくらいの意識は持っておこう。
読了日:05月02日 著者:松藤 敏彦

働かないアリに意義がある (中経の文庫)働かないアリに意義がある (中経の文庫)感想
「働かない働きアリ」で話題になった本。今また読み直されてほしい。アリもハチもヒトも真社会性生物であり、社会を形成する種の論理は共通と考えて無理はない。中でも仕事への反応レベル=閾値の考え方は胸に刻みたい。物事への閾値が個体ごとに多様になることは、社会に必然なのだ。余力があるから非常時に対応できるし、個性があるから必要に応じて配置できる。人員を画一的に扱う/評価する志向性は、近視眼的な最適解の追求であり、短期的には利益につながるとしても、"未来の存続可能性"から離れる可能性が強い点は覚えておくべきだ。
『ミツバチにおいては、コロニーに見られる多様な個性の存在がコロニーの成長にとってメリットになると証明された』。なるほど。そこで、実際問題として働きの鈍い社員を許容できるかと問われると言葉に詰まる。この論理で考えると、まずは許容すべきだ。ただし働く意思は必要なのであり、もし他の社員が一杯一杯になっている状況になっても働かないとすればそれはチーター(ただ乗りする奴)なので、これは見切る。逆にチーターと分かった者を見切れなければ、その組織は存続の可能性を自ら削っているというべきだろう。
ビジネス理論の推す組織は、短期的視点に立って構成されていると推測できる。効率を最大限まで上げようとする努力は間違っており、長期ではかえって非効率であるという事実を、図らずもこの新型コロナにおける医療体制において証明してしまった。日本企業は生産効率が悪いと言われるが、一部にはこの要因も関係があるかもしれないと考えてみた。根拠は無い。ただ、社会のグローバル化、企業の大組織化への違和感としか説明できなかったローカリズムの動きは、そのほうが組織の、また種の多様性が保てることをどこかで知っているからかもしれない。
読了日:05月01日 著者:長谷川 英祐 ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。

  

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2020年05月01日

2020年4月の記録

外出時間が減ることで本を読む時間が増える算段だったのに。
家にいる時間が増えれば、忙しさにかまけて省いていた家事が目に付く。
外食が減れば、考えなければいけない献立の段取りと調理時間が増える。
仕事はカレンダー通り出勤。
本を読みたいのにますます読めない原因を、家族に持っていってはいけない。
だいたいお前は読めないと言いながら、10冊も読んだじゃないか。

<今月のデータ>
購入17冊、購入費用21,085円。
読了10冊。
積読本209冊(うちKindle本90冊)。

ブック

4月の読書メーター
読んだ本の数:10

【第160回 直木賞受賞作】宝島【第160回 直木賞受賞作】宝島感想
沖縄では戦争が続いている。基地がある限り終わらない。それを憂う本土人は多くいる。しかし沖縄のことは沖縄人以外が首を突っ込むべきではないと、佐藤優は言っていた。ならば本土人が書く物語はエンターテイメントでなければならないだろう。著者の意欲が伝わる。時代背景や事件はほぼ事実だ。なのに沖縄の美しさ、苦しみ、それ故に有る物事への肌感覚が自分には無いことの隔絶が苛立たしかった。いかにも映画向きのこの物語が未だ映画化されない、これには政治的事情が関与していそうだ。だからこそこの物語が大勢の若者に読まれるよう、願う。
読了日:04月26日 著者:真藤 順丈

森井博子が解説!  建設業の労基署対応森井博子が解説! 建設業の労基署対応感想
著者は労働省出身。役所はこう考えてこういう施策を立てていますよ。という役所側の流れを踏まえて丁寧に説明している。実例集ではないが、実経験を経ているのでポイントは押さえられている。そもそも建設業者もそれぞれだから他社の実例が参考になるとは限らない。まあ、臨検/呼出が来る以前に社内を整えておくのは当然のことで、改善のヒントがいくつか見つかったのはよかった。時間外労働の上限規制が建設業に適用される2024年を期限に、良い体制をつくっておきたいところ。働き方改革推進支援センターの存在を知れたのはよかった。
読了日:04月25日 著者:森井 博子

パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)感想
若い。ロマンチスト全開だ。三角の石を拾い、穴をあけてペンダントにしようと暇があれば削り続けるくだり。それは奥さんへのお土産であり、削る時間が奥さんのことを想う時間であったことが最後に明かされるのだ。思い返すと、エッセイにしろ小説にしろ、美しい景色を丁寧に描写しようという努力が見えたことがあっただろうか。連れになだめられるほど、繊細さが表に出ていて、シーナさん道への飛び石を見つけた気分だ。男同士で旅に出てどんちゃん飲み食いする楽しみも既にここにあって、これはたまらんのだなあ。パタゴニアの語源はでっかい足。
読了日:04月23日 著者:椎名 誠

HOME MADE CAT FOOD 猫が喜ぶ手作りごはんHOME MADE CAT FOOD 猫が喜ぶ手作りごはん感想
ネコリパブリック発行のレシピ本。鶏がらのスープや軽い焼き物など、気軽にできる猫ごはんの紹介で、おっくうがりの私にもできそうだ。調味料やスパイスは使わない。肉類も野菜もさっと火を通す。余ったら調味料を足して人間のごはんになりますよ、とあるあたり、優先順位が猫>人間になっていて好感度大。大事なのは笑顔でサーヴすること! 猫カフェは自粛、猫イベントは延期と、ネコリパブリックも今大変な状態にあるとのこと。志ある人を見捨ててはならぬとばかり、買い物や寄付をしている。支給される10万円はこういう目的に使う予定。
読了日:04月20日 著者:NECOREPA BOOKS

砂をつかんで立ち上がれ (集英社文庫)砂をつかんで立ち上がれ (集英社文庫)感想
連載したエッセイや、本のあとがき集。40歳代半ばのらもさんの、素、な文章。らもさんの豊かさを証明する文章だ。大量の蔵書が震災で水浸しになった話が冒頭にあり、30歳過ぎまで読んでいたというその本たるや並みの娯楽本読みではない。40歳を超えてからは自分に必要な本を読まなくなったと言いつつ、文章から察するにその後も相当の量を読んでいるはずで。「たくさん読んでたくさん忘れる」ものだから読んでいる自覚がないんだろうか。豊かならも世界。「百の力を持っている人が十の世界を描く」、それはあなた自身のことだと思います。
『おれはこう思う。中年の力というのは中年が自分の核の中に抱いている「こども」、これを守ることのためにのみ使われるべきなのではないか。現実の「こども」は「天使」などでは絶対にないが、ことばとしての「こども」の中には「天使の属性」のひとかけらがある。その輝いて美しいけれど何の防御力も智恵もない、自分の中の「こども」を守るのが、中年の力と智恵なのではないだろうか』。らもさんの小説の中に時折きらりと光っていたあれらがそれなんだろう。私はその光を見つけては切なくなるのだ。
読了日:04月19日 著者:中島 らも ファイル

ペスト (新潮文庫)ペスト (新潮文庫)感想
p77『処置は峻厳なものではなく、世論を不安にさせまいとする欲求のために多くのものを犠牲にしたらしかった』。様々な読み方ができるが、この時世では小説世界と現実の出来事が度々錯誤され、伝染病と人類以外の軸で読むのは難しかった。日本の苦境はこれからというのに、私たちは既に慣れ始めている。制限に、辛抱に、疲れに、『息苦しい足踏み』の日々を待つことに。そしてこれがいつか収束するとき、私たちが引き換えに得る、カミュが"知識と記憶"と記したところのものを、忘れないよう只今から刻み始めねばならない。より良くなるために。
読了日:04月17日 著者:カミュ

コロナの時代の僕らコロナの時代の僕ら感想
https://www.hayakawabooks.com/n/nb705adaa4e43 無料公開ありがとうございます。日本人はまだ、この普通でない日々の半分にも到達していないかもしれない。イタリアも収束と言える状態には遠い。その中でどう考え、どう居るべきか、考えることは多い。「コロナウイルスが過ぎたあとも、忘れたくないこと」はそれぞれがどこかに書き残しておくべきだ。今日の私からは、何気なく入った店で、棚いっぱいに並べられたマスクを見た瞬間の、私の中で起きた大混乱を。見なかったことにしようとしたことを。
サージカルマスクが、ウィルスの侵入を防ぐ役目に十分でないことは知っている。現時点で、必需とは思っていない。私が買うよりは、必需とする人々のところに届いてほしいと思っている。しかし、マスクを、手作りだろうが布製だろうがしなければならないという圧力は日々強まっている。私個人が効果ありと思おうが思うまいが、しなければならないのだ。ならば見かけたら見かけただけ買い込まなければならないのか? 何枚あれば十分なのか? そのようなこもごもが一気に脳内に溢れて混乱し、見なかったことにしようと通り過ぎて夫に指摘されたのだ。
読了日:04月12日 著者:パオロ・ジョルダーノ

ロミオと呼ばれたオオカミロミオと呼ばれたオオカミ感想
アラスカ・ジュノーに現れた一匹狼は、人間や犬と交流することを好み、9年を生き抜き、最期は人間に撃たれた。自然が豊富とはいえ、あくまでアメリカらしい考え方と法が貫かれる社会では、野生動物との摩擦は強い。住民のオオカミへの無理解が引き起こしたいくつもの事件や裁判の経緯など、著者の危惧心が強くて、感動の物語とは呼びづらい。しかし著者の記憶に残るロミオの姿は美しい。仕草は犬と似ているようでも生き方が全然違う。氷の溶けかけた湖を渡る姿はまるで水の上を歩いているようで、オオカミが生きる地が持っている神秘につい憧れる。
読了日:04月11日 著者:ニック・ジャンズ

ハルカ・エイティ (文春文庫)ハルカ・エイティ (文春文庫)感想
色恋物は基本的に苦手だが、姫野カオルコのは別。そうなるべくしてなったのよという運命論よりも、もっと理不尽な、不可避に転がっていくような、いくつもの出来事の結果論が人生らしいと思う。それにしても、読み進めるほどにどうやったら冒頭の「仲がよかった」につながるのか予想もつかない、一筋縄でいかない展開の物語だ。『なんでもぜんぶすみからすみまで説明できるもんやあらへんがな』で全てを言い得ているような気もする。ハルカが老境を迎えるまでの空白は、きっと女性が女性らしくい難い時間。その暮らしを我が身に重ねて想像を広げる。
読了日:04月08日 著者:姫野 カオルコ ファイル

着せる女着せる女感想
「捨てる女」の次は「着せる女」。面白かった。知り合いの男性にスーツを見立てて着せる、だけのコンセプトで、緩く続くエッセイが、だらけた姿勢でずるずる読むのにいい。口絵と文章を行ったり来たりしながら、高野氏宮田氏の変貌ぶりをにやにやしながら楽しんだ。そう、親しい友人ならなおさら、歯に衣着せぬ物言いが痛快なのだ。『いいスーツほどハンガーにかかっていると格好悪い』。しかし量販店のスーツはハンガーにかかっているときが一番かっこいいとか。スーツの歴史の長さと奥深さ、それを日本人にマッチさせるプロの知識と審美眼が素敵。
読了日:04月01日 著者:内澤 旬子


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

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2020年04月01日

2020年3月の記録

読み終わった本で手放したくないものは、実家で住んでいた部屋にそのままにしてあった本棚に送り込むことにしていた。
その部屋が父に接収されるに至り、今や本が溢れ出た本棚が災害時には凶器になるだろうことが予想されるため、本棚よりもむしろ搬入出しやすい紙箱がよかろうと、ジャンル別に詰めて納戸に仕舞うことにした。
まあ、あるわあるわ。
今後を考えればあんまりぎちぎちに詰めるのも賢くない、とはいえ、数えると19箱。
手放したくないこの気持ちは物欲なのだろうか。




<今月のデータ>
購入10冊、購入費用9,685円。
読了9冊。
積読本202冊(うちKindle本88冊)。

ブック

3月の読書メーター
読んだ本の数:9

幸せな牛からおいしい牛乳幸せな牛からおいしい牛乳感想
牛乳は買えば飲めるのが当たり前で、賞味期限を延ばしコストを抑えるための不自然な手法を私は初めて理解した。乳脂肪分を上げ、低価格を補うために大規模化した酪農業が、牛を過剰に抑圧していると知った。しかも輸入飼料に過剰依存。著者は自然放牧酪農の牧場主である。自然交配、自然分娩、自然哺乳。放牧牛は医者要らずとは聞いていたが、なんと分娩も母牛単独でこなすとは、驚いた。どれだけの英知が牛の遺伝子に詰まっているのだろう。一方、荒れた里山や山地に牛を放牧することにより、余分な植生を抑え、獣害を減らす利点にも言及している。
"物価の優等生"と呼ばれる牛乳の真実は鶏卵のそれと酷似している。『牛舎という工場で、牛というロボットに、輸入飼料という原材料を用いて、牛乳という工業製品を生産させているのが、日本の酪農の実態である』。
読了日:03月26日 著者:中洞 正

下町ロケット ヤタガラス下町ロケット ヤタガラス感想
よくもこれだけ憎たらしいキャラを集めたものだ。登場人物も多く、問題も山積みで、それらを収めるところに収めるべく、前巻よりも沁みるポイントが少ない感は否めない。ともあれ読者が求めるカタルシスは得られた。伊丹のことを考える。さほど若くもない、真っ当を知っている男が、あのように人を突き放すものだろうか。あるいは、そうさせるほどの感情とはどんなものだろうか。自分はそんなものに囚われない。と思っているが、ひょっとすると程度の差はあれどありふれたことかもしれないと、自戒してみたり。失うものの大きさは計り知れんでね。
読了日:03月22日 著者:池井戸 潤

そもそも島に進化あり (生物ミステリー)そもそも島に進化あり (生物ミステリー)感想
鳥類研究者にとって島は"すべての生態系の箱庭的存在"。島の成り立ちから生物相の特徴まで説明が詳しい。島は種数が少なく、アンバランス。天敵のいない環境で生育する動植物は、防御性能が低いほうへ種を進化させる。だから侵略者は固有性の高い植物を選んで食べるそうだ。つまり絶滅しやすい。研究者は研究対象を守るために外来種駆除をしなければならない。そのため外来種問題は他人事でなく、これについても詳しく書かれているのでいくつか疑問が解けた。あと「パシフィックリム」は『地球規模での外来種問題が描かれた普及啓発映画』である。
さて外来生物問題。外来種は悪者と単純化されて議論になりがちだが、これには理由があるという。研究や生態系を守る事業には税金を使うことになる。税金を使うには一般国民の理解を得なければならず、その図式は単純で分かりやすい必要があった。これが結果的に、それで全てだと誤解を招いた、と著者は言う。生態系は単純ではない。問題はある。捕食者であれ、島に根付いてしまえば新しい生態系の動的平衡が生まれる。今日ではこの問題にも一定のコンセンサスが得られるようになったので、もっと深化させた理解も可能であり、また必要なのだろう。
読了日:03月20日 著者:川上 和人

アドベンチャーレースに生きる! 田中正人×田中陽希 百名山ひと筆書きへの挑戦はEAST WINDのためだったアドベンチャーレースに生きる! 田中正人×田中陽希 百名山ひと筆書きへの挑戦はEAST WINDのためだった感想
「イーストウインドは田中塾」。アドベンチャーレースチーム“イーストウインド”の成り立ちがよくわかる。中でも田中正人は、テレビの放映の中で「人じゃない」とさえ感じる言動をとるが、理系脳の彼も彼なりに悩み、ビジネス書を読み、気を使って発言しているらしいとわかって納得した。3百名山の放映で田中陽希が「まだ戻らないよー」といったような発言をしていた意味合いも、これを読んだ後ではニュアンスがくみ取れる。レースやチャレンジに同行するカメラマンの存在感は大きい。レーサーと同程度の身体能力を持ってないとそら無理やわな。
読了日:03月19日 著者:田中 正人,田中 陽希 ファイル

ゴリラの森、言葉の海ゴリラの森、言葉の海感想
ゴリラはチンパンジーやオランウータンと同じくヒト科に属す。言葉を得たヒトと、言葉を持たないゴリラ。そのこと以外がとても似ているから、ヒトの論理でゴリラを考えたり、ゴリラにヒトの理想を投影したりするのだろう。言葉よりも『接触や行為のほうが信頼の手がかりになる』。ゴリラと長い時間を過ごし、言葉でない手段でつながりあうことを知っている山際さんと、言葉を紡ぐことによって人間の心を表現しようとする小川洋子の立ち位置は対極と言ってよいもので、ゴリラの生と人間の本性を行き来しながらなされる対話は興味深い箇所が多かった。
読了日:03月14日 著者:山極 寿一,小川 洋子

下町ロケット ゴースト下町ロケット ゴースト感想
池井戸作品を読む醍醐味は、様々な立場の人の視点を疑似体験させるところだ。この立場ならこう考える、こう感じると脳内でシュミレーションすると本気で疲れるが、そのうちに現実の出来事に思いが及び、相手はあの時こう考えたのではなかったかと新しい気づきを与えてくれるのだ。仕事に没頭する楽しみ、取引の長さへの慢心、失敗の痛み、仕事への熱量こそが生む怒りと、その落とし穴。この物語のいちばんの見せ場は裁判の場面だが、その他の色々が心に沁みすぎる。帯の意味は最後の最後にわかる仕掛けになっていて憎い。次作が楽しみで仕方ない。
読了日:03月14日 著者:池井戸 潤

汚れた桜 「桜を見る会」疑惑に迫った49日汚れた桜 「桜を見る会」疑惑に迫った49日感想
今の日本の"忖度"風潮の中で、新聞記者が矜持を懸けて取材した内容を書籍化したとあれば読むしかないではないか。『桜を見る会で何が起きたのか、そもそも何が問題なのか』。デジタル時代の新聞社のありかたを模索する中で、毎日新聞はこの事件について日々の詳報をネット上で報道し続けている。事実の積み重ね、正確な記録が持っている力こそが大きい、それを踏まえて国民は正しく選択できると私は信じたい。私たちはちゃんと監視しているという姿勢を政権にもメディアにも見せることだな。事件が終わらない以上、途中経過である点は注意。
"長期政権の緩み"という表現が気持ち悪い。緩みは詰めの甘さを生むかもしれないが、緩んだら白が黒になったり縞になったりするのか。安倍や菅のような人間が身近にいることを想像してみるといい。毎日言うことが変わり、嘘をつき、態度を変えるのではそもそも人として信用できない。既に払ってしまった税金の使途は実感を持って感じづらいかもしれないが、今回の新型コロナウィルスへの場当たり的で論理的思考に欠けた対応は、物理的金銭的心理的にも、日常に直に影響を感じざるを得ない。この政権に致命的な鉄槌となることを心から願う。
読了日:03月10日 著者:毎日新聞「桜を見る会」取材班 ファイル

東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
ハードボイルド、と形容したいような物語だが、この兄弟がまだ10年ちょっとしか生きていないという設定に殺伐とした気分になる。その筋ではいっぱしのメンツでも、アナグマも北斗七星も自分のことも知らないひょろひょろの少年なのだ。ペリーは雇用者として褒められたものではない。しかし彼には初めての温かい居場所、温かい食卓だった。「ありがとう」のカードにじんとくる。彼は東へ向かう。東はアメリカにとって始まりの地だと思い至り、その暗喩を考えるのも楽しかった。アメリカという国のことをもっと知っていると、より楽しめそうだな。
読了日:03月08日 著者:ビル ビバリー ファイル

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)感想
『私たちは捨てすぎている』。衣服と食物の大量生産と大量廃棄が繰り返される、日本の現実。それは深刻な労働問題や環境問題が切っても切れない関係にある。同じ世代の著者二人の方向性は、私にはわかりやすかった。現実を知れば、買い方も捨て方も変わる。現状が持続不可能というだけでなく、何がどのように処理されている(または処理しきれずに積み上げられている)のかを知れば、自分がどうすべきかがわかる。『みんな知ることさえできれば、気配りができるのです』。安いモノがもてはやされる日本全体の雰囲気に対し、新たな動きはまだ小さい。
ビジネスの観点から。下請けの零細企業や外国人研修生を搾取するやり方の上にしか、今のアパレル業界は存続できない。これはおかしい。補助金や制度が中小企業の延命を図っても、結果的にその上にアパレル企業が変わらずあぐらをかいているなら、D・アトキンソンの指摘どおり、社会の為にならない。また、『廃棄物リサイクルの業界は、縮小均衡でええんです』というリサイクル会社社長の言葉。ごみ収集業者の話でも感じたことだが、日々廃棄物と向き合っている人は正しく現実を見ている。外国に輸出してしまえば万事OKなんてごまかしでしかない。
他方、一個人として。ファストファッションは買わない。フェアトレードの服はTPOが限られる。アウトドアファッションばかり着てもいられない。では百貨店で定価で服を買うか? それは問題の先送りにしかならない。結局、ほどほどに環境対策を謳い、ほどほどの値段でしっかりしたつくりの服を売るブランドのものを、心掛けて長く着るという選択にならざるをえない。綿、ウールは比較的リサイクルしやすい。ポリエステル混合のものはリサイクル不能品になりやすく、サーマルリサイクル=焼却になる。資源ごみよりも再利用か寄付か店のボックスへ。
読了日:03月06日 著者:仲村和代,藤田さつき ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 12:03Comments(0)読書

2020年03月02日

2020年2月の記録

今月、一箱古本市が開催されるというので申し込んでいる。
が、御多分に洩れず、"新型コロナウィルス感染予防の観点から"雲行きが怪しい。
最終判断はまだなので、それまでは売り物を溜め込み、値付作業をしなければならない。
ウィルス様と世間様に振り回される。とかく難しい。

<今月のデータ>
購入12冊、購入費用12,405円。
読了12冊。
積読本199冊(うちKindle本85冊)。


ブック

2月の読書メーター
読んだ本の数:12

SDGs入門 (日経文庫)SDGs入門 (日経文庫)感想
自社の取組みとして、できればSDGsの方向性に沿って選べられればと思い手に取った。17の目標と169のターゲットの内容より、SDGsの位置づけや考え方に頁を割いている。自社に引き付ける意欲が湧きづらく、「SDGsは世界共通の成長戦略」との表現に至って、違和感が極まった。言うなれば、自分が「地球にいいこと」と思って手掛ける事々は、SDGsのどれかには当てはまるのだ。とすれば自分が何をこの本に求めていたかと言うと、『今までやったことないけど、実はこんなことをやってみたいという発想』だったのだ。それはなかった。
ペーパーラボがもっと安くて小さくなるといいなあ。あれほしいなあ。
読了日:02月22日 著者:村上 芽,渡辺珠子

GACKTの勝ち方GACKTの勝ち方感想
夫本。自分がしたい生活をするために必要な金を稼ぎたい。という出発点から、GACKTはGACKTというブランドを確立した。自分の満足する生活環境を維持する以上の金を稼ぎ出し、ファンの心の支えとなり、とんでもなく忙しい目をして音楽もやる。なんで読んでる私まで「オマエ」呼ばわりされなあかんのだとは思うが、仕方ないよな、GACKTなんだから。年末年始のTV番組もつい見てしまったくらい、彼は目を引く。でも鬼龍院の本気の怯えようも凄かったのよ。ヤバい経験をチラ見せしてくるのも、GACKTブランド構築のうちなんだろう。
読了日:02月20日 著者:GACKT

私の息子はサルだった (新潮文庫)私の息子はサルだった (新潮文庫)感想
『私はうたがいもなく子供を愛しているが、その愛が充分で、適切であるかどうか、うろたえる』。愛せなかった実の母を直球で書いた「シズコさん」は相当な衝撃だったが、愛する息子のことをもこんなに直球で書けるのか。いや、佐野洋子にしては変化球か。息子が嫌がるからか、架空の物語のように体裁しながら、思春期になって自分をにらみつける息子さえ可愛くて仕方ないと、眼差しが行間から溢れている。お母さんは亡くなっているので文句を言わない。息子さんは心底嫌がった。書くだけ書いて、発表せず大事にしまっていたのも切ない母心。
読了日:02月19日 著者:佐野 洋子

ガンジス河でバタフライ (幻冬舎文庫)ガンジス河でバタフライ (幻冬舎文庫)感想
外国に出ると、私はスイッチが切り替わるような感覚がする(数回しかないが)。自分の意志が確実に伝わるように体で言語で主張するし、何物も見逃さないように感覚をフルに働かせる。日本に暮らしているとそんな必要がないから、怠惰と省エネ根性が相まってどこかで遮断しているんだろう。外国に出たてるこさんは溌剌としている。日本人標準の消化器官では耐えられない美味しさまで堪能していて羨ましい。兄の感想をぜひとも聞きたい。『国と国の距離は、物理的なものじゃなくて、心の距離』。世界の美しさを見に旅に出たくなった。
読了日:02月16日 著者:たかの てるこ

怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック感想
考えるな、自分の目で見たままを感じ取れ、と絵画鑑賞の心得を教えられた世代。もし中野さん方式で教えられていたなら、系統立てて西洋画を鑑賞する無限の楽しみを覚えられていただろうに。宮部みゆきの言うように『世界史や美術史、神話や伝承を面白く学ばせてくれる』糸口がこのシリーズにはある。音楽から時代背景を探るには限界があるが、絵画にはたくさんの手がかりが表れていることに気づき、また画家が年月を費やし身を削って描く絵に、様々な意味を込めずにおれないだろう当たり前のことにようやく気づけた。あー、展覧会行けばよかった。
読了日:02月16日 著者:中野 京子

しらふで生きる 大酒飲みの決断しらふで生きる 大酒飲みの決断感想
無理。酒をやめる気分にもなれんかった。町田氏の文章のポイントはグルーヴ感だと読み友さんが言っていたけれど、私には合わないんだろうな。文章をテンポよく飲み干したいのに、文章のうねりで喉がつっかえて、口の端からだだ洩れになってしまう感じがする。終盤になってようやく時系列が発生するまでは苦痛だった。さて、粕漬けのようになっていた町田氏の脳から酒粕がとれたとのこと、喜ばしい限り。『我を忘れたうえでの失態・粗相による人格評価のマイナス』からも解放され、得た喜びの数々が、行数は少ないけれど誇らしげに明言されている。
読了日:02月14日 著者:町田 康

ずっと犬が飼いたかったずっと犬が飼いたかった感想
犬も猫も百匹百色なんだよね。成毛家の人間と犬猫の事情もまた、成毛家だけのもの。そのエピソードは読んで飽きない。楽しい。ボロボロの状態で保護されたれい子さんの変貌を思い浮かべると、犬猫を“家族”とウェットに呼ぶよりは、伴侶または相棒と呼ぶ関係でありたいと思った。生き抜いてきた彼らに恥じない人間でありたいと思った。細かい観察力と描写力はもちろん、良識ある姿勢で他の飼い主本とは一線を画す。祈りと題された章では保護犬猫事情やボランティアさんの活動も紹介されていて、好い。飼い犬飼い猫を守れるのは、飼い主だけですよ。
読了日:02月11日 著者:成毛 厚子 ファイル

新版 動的平衡: 生命は自由になれるのか (2) (小学館新書)新版 動的平衡: 生命は自由になれるのか (2) (小学館新書)感想
個々の話題の共通項を見出せず、末尾の説明で腑に落ちるパターンまたもや。機械論的な見方と動的平衡的な見方の差に注目すればよかったのだ。つまりある一瞬間を切り取った材料での探求には限界がある。緻密な分析と思考ゆえに、見落としてしまう大きな概念が動的平衡だと言っている。それはさて置いてもゼロテクノロジーという用語や、発がん性の遺伝子レベルでの説明、ネオテニー化がヒトの進化における他のサルとの差異とする仮説など興味深いものがたくさんあった。それぞれの奥深さに感嘆しつつ、また世界を見る感覚を身に着けた…はず。
二酸化炭素排出権取引についての福岡博士の認識に納得した。まず、二酸化炭素の削減が地球環境改善に本当に有効かどうか。次に各国の取組みが本当に二酸化炭素を削減する方に向けて実行されているか。どちらもアウトだ。『地球の動的平衡の回復ははるかに遠い』と断じる。若者たちが怒っているのはこの部分だろう。他国を非難する材料に使ったり、自国の利害のために金銭取引でごまかしたり、結局協定に従って我が身を削るなど嫌なのだ。良い/悪いという言葉の代わりに、美しい/美しくないという言葉を使う方が、なんか効果的なんだろうか。
読了日:02月11日 著者:福岡 伸一

動物のいのちを考える動物のいのちを考える感想
伴侶動物、産業動物、展示動物、実験動物、野生動物。日本人が便宜上区別する各々について、専門家が文章を寄せている。太田記者をはじめ生命倫理に基づいた熱い問題提起もあれば、専門分野の解説に終始するものもあり、相互に連関する企画ではなかった。動物福祉に反する利権者都合で動物の命が扱われる現状はもちろん、日本特有の縦割り行政では税金を無駄にするだけで対応し得ない分野など、総合的に判断なり法整備なり対応しなければならない、ということはこの本からも察することができるだろう。東日本大震災と動物についての考察が目新しい。
読了日:02月10日 著者:高槻 成紀,政岡俊夫,太田匡彦,新島典子,成島悦雄,柏崎直巳,羽澄俊裕

女は後半からがおもしろい女は後半からがおもしろい感想
女性が赤の他人の女性との間に関係を築けるとしたら友情ではなく連帯だと、私は思っている。それに関し興味深い箇所があった。女性の立場がより良くなるとは、女が男の競争に参入し、男と同じ条件で戦い勝つことではないという。勝てば敗者を見下すのみならず、自分の弱さを切り捨てることになるからだ。女は子供を産めばどうしたって弱者になる。だから連帯が必要なのに、難しくなっていると。このことは現代の日本女性を生きにくくする要因になっているに違いない。未婚も子無しも加われる、女性同士がつながる仕組みは想像がつかないけれども。
読了日:02月09日 著者:坂東 眞理子,上野 千鶴子 ファイル

NHK出版 学びのきほん 役に立つ古典 (教養・文化シリーズ NHK出版学びのきほん)NHK出版 学びのきほん 役に立つ古典 (教養・文化シリーズ NHK出版学びのきほん)感想
古典は単に古い書物というだけでなく、何か問題を乗り越えるために人々によって繰り返し揉まれ残ってきたもの。ただし国や時代が違えば常識や精神性が違うのは当然で、求めるものが違えば解釈が違っていくのも考えてみれば当然なのである。文章を改めて読み解きながら、滑らかに推論していく安田先生の思考のしなやかさ、なかでも孔子とHuman2.0を同軸で語るダイナミックさにはしびれる。かっこいい。安田先生の考えに触れる入門としてお勧め。「四十而不惑」を『四十にして区切らず』とする解釈が好きだ。四十だから、敢えてやってみよう。
読了日:02月05日 著者:安田 登 ファイル

2人が「最高のチーム」になる―― ワーキングカップルの人生戦略2人が「最高のチーム」になる―― ワーキングカップルの人生戦略感想
そういえば最近夫を褒めてないなあ。家の中のいろいろに鈍感になりつつもあり、夫のやる気スイッチを無自覚に切ってしまっているのかも。男性には細切れの単発ミッションよりも、まとめて裁量権付与型ミッションのほうが向いているという論は興味深い。現代の会社人の働き方を体現したようなお二人による家族のライフプランニング初級。二人がそれぞれの意見を語ることで幅が広くなっていて、もはや現代のコンセンサスといっていいかもしれない。若々しき独身時代、あるいは新婚数年内に読むべき本です。晩婚子なしの私が読むと少々痛かった。
読了日:02月01日 著者:小室淑恵,駒崎弘樹 ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 12:04Comments(0)読書