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2019年11月01日

2019年10月の記録

ジュンク堂恒例の、秋の読書キャンペーンが始まったのでそわそわしている。
税込 10,000円で図書カード 500円。税込 2,000円でオリジナル手ぬぐい。
これだけ本棚に本を積んでおきながら、欲しい本には事欠かない。
だから図書カードって、一瞬でなくなっちゃうんですよね…。

<今月のデータ>
購入15冊、購入費用17,607円。
読了14冊。
積読本192冊(うちKindle本73冊)。


ブック

10月の読書メーター
読んだ本の数:14

「社会を変える」お金の使い方――投票としての寄付 投資としての寄付「社会を変える」お金の使い方――投票としての寄付 投資としての寄付感想
寄付先の選び方に、いつも迷う。世界的な飢餓も大きな問題だが、できればもっと身近な相手を助けられないか、と。著者の経験からヒントを得た。まず「寄付は「見返りを求めない」というセンスを鍛える機会」という考え方が腑に落ちた。それから、国家が動かない(動けない)なら自分たちがNPOを立ち上げて動けばいい、むしろ個々のNPOの取り組みが国家を変えるというビジョン。満濃池も民間ボランティアによって改修された。行政だけが公共ではない。不覚にも自分も立ち上がる側になれるんじゃないかと思ったが、まずは活動を知ることだ。
鳩山元総理のエピソードが胸に重い。現職時、彼は自らNPO団体に声をかけた。『国民が自ら公共を担っていく』政策を模索する為だ。そして諮問会議を開催し、議論を重ね、寄付税制改革が現実になろうとしたところで、総理辞任に追い込まれた。私たちが辞めさせたのは、誰だったんだろう。宇宙人だなどと揶揄して辞めさせた、一人の政治家の思い。確かに、政治はそれだけじゃないし、民主党は総じて政権運営能力に欠けていたんだろうけれど、私たちは大事なものを受け取りそこなってたんじゃないの。鳩山元総理の会議内の発言も収録されています。
読了日:10月31日 著者:駒崎弘樹 ファイル

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)感想
そんなまさかと狼狽えた。泰麒が知ったらと推し量ってはいたわしく思う。いや、彼はもう察知しているのか。泰麒の内心が一向に窺えない。だからこそひたすら思い巡らされる。泰麒はこの状況を是としているのか。いとけない泰麒の記憶を抱いているのは読み手も同じだ。驍宋を慕っていた泰麒ではなく、麒麟としての本性を発揮する泰麒として、本当に王が誰であろうと構わないのか。阿選や王宮内の様子が垣間見えた一方、国内の点景はさらに荒廃と絶望を極め、やがて不穏な蠢きが見え始めた。そろそろ怒涛の如く事態が好転する、と信じたいのだが。
長編小説には、物語や人物の組み立て及びその巧拙とは別に、著者の現実における世情への印象や思想が否応なく反映されるものであり、それらが相まってこそその小説の世界観なのであると、先日観た"深読み読書会"で誰かが言っていた。以前の短編で裁判員制度を主題においたように、小野さんの小説には小野さんが憂うものが現れる。この2巻でそれに確信を得たと思う。小野センセ、それはこの国の今いちばんダークな部分。遠大かつ如何とも捉え難いそれに挑んで、答えを出されたのでしょうか。ぐるぐる巡らされる解題、どこまでも付いていきます。
読了日:10月27日 著者:小野 不由美

植物はヒトを操る (Mainichi Science)植物はヒトを操る (Mainichi Science)感想
プロの育種家竹下氏といとうせいこうの対談。軽い気持ちで読めるが、さらりと出る話題がべらぼうに面白い。八重咲の花ができる仕組み、純白の花が自然界に存在しない事実、ビールの主原料が大麦である必然性等々。『僕の把握している地球っていう空間が豊かにゆがむ』。いとう氏の関心は、国境なき医師団しかり、私の関心とつながっていると感じる。植物の育種は特異なものを選ぶ作業の連続だ。それは即ち遺伝的な多様性を失わせる。だから、多くの遺伝情報が残っている野生種や古い品種を絶やさないために、種を保存するのだそうだ。
日本人は実利のためにと杉の木を植えすぎて、花粉症という拒否反応を重症化させてしまった。これに懲りた日本人は、他の種類の木を植え始めた。焦った杉は、ここ数年で花粉を出さないタイプの杉を出現させたという。「焦った」という擬人表現以外に、杉が花粉を出さなくなる理由が思いつかないよなあ。植物は、人間によって自らの種を繁栄させるべく進化しているように見える。そこを逆手に取って、「植物がヒトを操る」と題したのは巧い。ちなみに人間に大量に杉を植えさせたのも、杉の策略のうち、である。
読了日:10月22日 著者:いとう せいこう,竹下 大学 ファイル

これからの本屋読本これからの本屋読本感想
保育園児だった頃「本屋さんになりたい」と言っていた私と、ええ中年になった今、一箱古本市への出店を楽しんでいる私はつながっているのだろう。一箱古本市の店主としての私は、自分の棚の後ろに立つと話しかけられたくてそわそわしてしまう。だが、読書する行為も本自体もプライベートなものであるならば、本を買う時も他者の存在抜きで買いたいのは私だってそうだと納得した。また客の視点で読んでは、時間が経つにつれて本棚が深くなっていくという表現に陶然とした。同時にルヌガンガのことを思う。もっと頻繁に通って、その深化を楽しみたい。
地元書店の支店店舗の、平板でブツ切りの棚に幻滅するのはそういう理由なんだなとも納得した。書店には目に見えない制限がたくさんあり、書店員の誰もが本のプロフェッショナルであるとは限らない。しかしそんな書店でも無いよりは有るほうがよいのであって、それなりに応援していこうと思った。というわけで、最近は「ネットで注文した本を受け取る場所」と化している。
読了日:10月22日 著者:内沼 晋太郎

ハチミツの「危ない話」―本物のハチミツを食べてみたい!ハチミツの「危ない話」―本物のハチミツを食べてみたい!感想
日本のハチミツ事情及びミツバチの飼育に詳しい。日本のハチミツの規制が異常に緩いために、本物のハチミツを店頭で見分けるのは難しい。しかし養蜂ブームのおかげか、最近は自家製の本物のハチミツを手に入れることはより容易になったと感じる。時間が経てば必ず結晶化することや、花粉が含まれるので完全透明ではありえないことなど、見分け方も参考になった。西洋ミツバチに比べ、日本ミツバチは常緑樹や薬草の蜜源を好むという。病気にも強い。こうして比較されると、やはり日本ミツバチのハチミツを食べたいし、いずれ日本ミツバチを飼いたい。
読了日:10月20日 著者:川島 茂

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)感想
物語の中では6年が経ち、現実の世界では18年が経った。この巻はその記憶をなぞるように、溝を埋めるように物語を整えていく。概形が見えたところで、泰麒は走り出す。戴は秋の終わりにある。迫りくる厳しい冬が泰麒を急き立てる。
国が国として施策をしなければ、棄民も同然に民は死んでいく。あまりの窮状に墓標すら立たない民も多かろう。まだまだ消えない、いくつもの「なぜ」。阿選は何をしている。その「病む」ってなんだ。驍宗はどこにいる。影ばかりがちらつき、人々の記憶の中の驍宗は威厳に満ちた姿のままだ。ねえ、泰麒還ってきたよ。
読了日:10月18日 著者:小野 不由美

アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-感想
人間の不合理な行動の中でも、個人の経済活動に話題を特化した共著。前回読んだアリエリーの単著より衝撃度が下がったのは、人間の不合理さを私が意識できるようになったからか。だからといって、私の行動は一向に合理的になったりしていない。お金を失う痛みを感じたくないし、自分の判断は正しいと信じたいし、お金を失った事実はさっさと忘れたい。情報を食べるんじゃないかと思うくらいパッケージを見て買うし、包装の開け方指南には細心の注意を払う。それらのノイズに拘わらず、お金はただの交換手段であることを素人なりに理解しておきたい。
『決済にかかる時間と注目を減らし、どんどんお金を使わせようとする技術は要注意』。かけ払いやクレジットカードはその先駆けだが、今や技術はさらに進化して、人間の脳はついていけないままに罠に嵌められている。プリペイド、デビッドカード、オンライン決済、なんとかペイなどのキャッシュレス制度は、お金を払うタイミングを商品を手に入れる時点から前や後ろにずらすことで、また支払いという「心の痛み」の時間を短縮することで、人にどんどんお金を使わせる方向に働く。遅れていると言われようと、現金主義で人生貫いてみるとか?
読了日:10月17日 著者:ダン アリエリー,ジェフ クライスラー ファイル

虫眼とアニ眼 (新潮文庫)虫眼とアニ眼 (新潮文庫)感想
今、時代は大変転期にあると人は言う。それを意識無意識に感じるから、人は宮崎駿のアニメを観るのだと養老先生は言う。時代が変わりゆくこと、何かを失いゆくこと。若い世代の日本人に対し『なんでこの人たち、こんな不幸な考え方に縛られて生きているんだろう』『そんなに世間を狭めて考えたらつまんなかろうに』と思うが、特に働きかけようとは思わないんだ、と嘯く。いいえ、充分お節介いただいていますよ? さて、世間が減層化させんとするレイヤーを、努めて多層化させておくこと、自分だけのそれを確保すること。人生を豊かに保つ秘訣らし。
読了日:10月15日 著者:養老 孟司,宮崎 駿

蜃気楼 (パレスチナ選書)蜃気楼 (パレスチナ選書)感想
エジプトのノーベル文学賞受賞作家による小説だという。初めて読むアラブの小説が、どんな未知の世界を見せてくれるのかと慎ましい気持ちで開いた。なのになんだこの主人公は。過干渉な母親にどっぷり庇護されて育ち、嫉妬不安恐怖羞恥、全ての感情と妄想から逃れることができない息子。自意識過剰にも程があるこの男、現代日本にも普通にいそうだが、男性優位とされるイスラム社会でこれはきついだろう。振り回された妻の死をうっちゃらかして他所の未亡人に鞍替えするに至っては痛罵しか出てこない。イスラム男性に持っていたイメージこそ蜃気楼。
読了日:10月13日 著者:ナギーブ・マハフーズ

ロスト・シングロスト・シング感想
ショーン・タン、初期の作品。『やるべきことが他にたくさんある人たちのために』。見えなかったものは無かったもの。とすると、始終じたばたして、全てに先まわりしようと目を凝らしている私は、見えなかったものだらけ、無かったものだらけなんやろな。この密やかな物語を、ショーン・タンは隅々まで丁寧に飾りつけた。絵と文章の、枠の外側に配された図や記号は、父親の古い教科書の切り貼りだそうだ。あとがきにそう聞いてようやくまじまじと見つめるようでは、ほら言ったとおりだろうとショーン・タンに言われそうだ。遊び心満載の大人の絵本。
読了日:10月13日 著者:ショーン タン

身の下相談にお答えします (朝日文庫)身の下相談にお答えします (朝日文庫)感想
上野先生は社会学の学者。と認識していたので、歯に衣着せぬ快刀乱麻ぶりに笑い転げた。程度の差はあれ相談内容は深刻なものだし、社会学者らしい知見から回答している。本人が受け入れられるかは別として、正しいと感じる。ただ、それが"常識"と一致しないことも多い点は覚えておきたい。『自分のエゴイズムに向きあい、それを肯定するのが生きる覚悟というもの』。それにしても、ホルモン分泌の変化と共に気持ちももう少し枯れると思っていたが、若い男子が可愛くて仕方ない気持ちは、逆に年々増すらしい。割り切って強い気持ちで可愛がるべし。
読了日:10月12日 著者:上野千鶴子 ファイル

黄昏の岸 暁の天 十二国記 8 (新潮文庫)黄昏の岸 暁の天 十二国記 8 (新潮文庫)感想
この巻は、小野さんの迷いを感じる。天帝と条理について、ぐるぐる巡って煮え切らない。戴は沈んだままだ。なぜ彼らは苦しみ続けなければならないのか。答えは出ない。それはさておいて、ここは泰麒。もう一つの物語と脳裏で整合させながら読むと、鳥肌が立ってくる。全てを覚り、瞑目した高里の姿をまざまざと思い出す。どんなに激しいものが胸に渦巻いていることか。「……僕は間に合うでしょうか」。この巻は、大きな災厄を招きながら帰還するところまでだった。泰麒は私たちの光。新作の表紙の彼はどんな光を見せてくれるのだろう。いよいよだ。
読了日:10月11日 著者:小野 不由美

武道的思考 (ちくま文庫)武道的思考 (ちくま文庫)感想
ブログ記事の再構成はぼんやり読むのがいい。集中して理解するより、脳裏に引っかかってくるのを待つのでよいのだと思う。今回何が衝撃だったといって、非核三原則の件だ。1.非核三原則に欺瞞(密約)があることを日本人は皆知っていた。2.そのうえでノーベル平和賞を受け取った。3.自民党政権がそれくらいの嘘は平気で吐くとその頃から皆思っていた。まじか。まだまだ純朴だったわ自分。あと、無理して他人様と親睦を図らなくても、それは私の個性であると同時に、自ら選ぶ武道的処世術という考え方もできるということ。最近とみにしんどい。
パトリオットとナショナリストの差異についての件も、なにか引っかかって残っている。物事の着想点が違うと、人間の在り方まるごとが違ってしまう実例としてビビッドなんだけど、これはもっと他の物の考え方についても応用できそうだ。私は、できれば、パトリオット的でありたいと思っている。
読了日:10月06日 著者:内田 樹

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)感想
オーウェルはSF作家ではない、と認識して読んだ方が読みやすいかもしれない。前半のディストピアっぷりが余りに現代そっくりで鮮烈に感じられてのめり込んでしまうが、オーウェルの言いたいことは中盤以降のくだくだしい部分である。私たちが現代を見ているように、オーウェルは自分の時代を憂えてこれを書いた。それを読んで私たちが「これは現代そのものだ」と感じるならば、歴史は繰り返しているのだろう。記録の改ざん、消去、曲解、暴力。人間のための秩序ではない、秩序のための人間。彼らの得た寒々しさ、苦々しさは他人事ではないかもね。
読了日:10月05日 著者:ジョージ・オーウェル ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 11:14Comments(0)読書

2019年10月01日

2019年9月の記録

秋の夜長。
心ゆくまで本を読み耽りたし。

備忘:今月末より読書週間なので、それまで本を買い控えること。

<今月のデータ>
購入21冊、購入費用27,268円。
読了15冊。
積読本188冊(うちKindle本72冊)。

ブック

9月の読書メーター
読んだ本の数:15

山怪 参 山人が語る不思議な話山怪 参 山人が語る不思議な話感想
シリーズ3冊目になると書く方も読む方も慣れたものだが、山へ行く直前に読んだのはまずかった。夜中2時に山小屋のトイレへ行きながら後悔した。そして怖がりながら自問した。自分は有形無形の恐怖の中で、何を怖がっているのか。それは、生命を持たない悪意だろう。意味もなく「それ」に襲われることを私は怖がる。無論、身体を害する危険も正しく怖がるべきだ。その為には自分の皮膚感覚を研ぎ澄ませておくことだと、山の人たちは言外に語っている。回避する術が私にもあるのか怪しいものだが、喜ばしいことに何事もなく、山を楽しんで帰還した。
読了日:09月28日 著者:田中 康弘 ファイル

漢方的生き方のすすめ漢方的生き方のすすめ感想
38度2分の熱に浮かされながらでも読める面白さ。飲み薬でがんが治る時代はいずれ来る。だとしても、中庸と摂養が人間には大事なんだと、丁先生は重ねて言う。風邪を引くということは、なにか不摂生をしたということ。二日酔いでへろへろしていた私自身が体内に菌を呼び込んだのである。East asian medicine=東亜医学。日本と中国、朝鮮、インドまでを含めた医学・薬学の話が何回聞いても面白い。古来、流動的に進化(後退を含め)してきた医学は人間の英知の結晶。歴史も効用も大切です。丁先生の生い立ちがとかく印象深い。
読了日:09月26日 著者:丁 宗鐵,南 伸坊 ファイル

令和ニッポン改造論令和ニッポン改造論感想
地元出身で、人柄も好きだが、時間の制約や取材者の意図に邪魔されず政策をじっくり聴くことが難しかった。この自筆本は程よい硬さの文章で読みやすく、お勧めだ。数字ベースで考えることができ、なのに正しい肌感覚も持っている政治家の印象が覆されることはなかった。改憲論も子ども国債も、じっくり説明されれば理解できた。食料安全保障は言わずもがな、農業や教育への財政投資も「人重視」からぶれない。政治は社会を変えることができる。一般の国民にとって至極真っ当な内容なのに、伝わりにくい現代の歪さを、本人に成り代わり憂慮する。
読了日:09月25日 著者:玉木 雄一郎 ファイル

仰臥漫録 (角川ソフィア文庫)仰臥漫録 (角川ソフィア文庫)感想
結核患者は栄養を摂らねばならない。しかし正岡子規は食い過ぎで腹を下したり吐いたり、そのために疲労困憊して衰弱するのではと勘ぐるほどよく食う。1食に粥4椀とか、梨2個とか、桃の缶詰3個とか、菓子パン10個とか、異様だった。さらに菓子パンが不味かったとやけ食いする、団子の要求を無視したと妹をなじる、余命宣告されれば御馳走を食わせてもらえるのにと嘆くなど、自力で布団を出ることすらできない人間から発せられる食べ物への恋着は、怨念の如き生への意志だったのだろう。その衰弱もまた凄まじい。『梨腹も牡丹餅腹も彼岸かな』。
読了日:09月24日 著者:正岡 子規 ファイル

ランドネ 2019年 9月号(特別付録:ランドネオリジナル お着替えポーチ)ランドネ 2019年 9月号(特別付録:ランドネオリジナル お着替えポーチ)感想
近々、尾瀬へ歩きに行く、その気分づくりと忘れ物撲滅のために。2日間背負って歩くのだから、荷物は軽ければ軽いほど良いのだが、久しぶり故についあれもこれもと欲張ってしまう。着替えやらスキンケア用品やら、減らすべく自戒。忘れないようにしたいのは枕カバー代わりのタオル。山小屋のお布団は、有るというだけで感謝すべきところだが、顔の当たるところだけは万全であってほしいので。尾瀬はメジャーだから石鎚とは違って、ひょっとするともっと女子向けに整えられているのかもしれず、それならやはりあれもこれも持って行きた(以下略)。
読了日:09月16日 著者:

孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)感想
大衆雑誌「朝日」に昭和4年から連載された小説。乱歩にとっては、通俗娯楽小説の第一作目だという。連載だからだろう、とかく劣情を煽る。現代の週刊誌みたいだ。冒頭のごく普通のオフィスからどのように「孤島」に場面がつながるのかと、穏当至極な興味で読む私を尻目に、在り得ない殺人、"畸形"の者たちの暗躍とどんどんえげつない世界へはまり込んでいく。この小説に更なる異様を加えるのが同性愛だ。乱歩は同性愛に親和性が高いと勝手に想像していたが、ここに描かれた関係性はBL的な耽美よりも、気持ち悪い場面の印象が強烈で意外だった。
読了日:09月16日 著者:江戸川 乱歩 ファイル

ダーウィンの「種の起源」: はじめての進化論ダーウィンの「種の起源」: はじめての進化論感想
かの有名な書物をこれで読んだことにしたい私の魂胆と裏腹に、昆虫の仕掛けなど色彩豊かで楽しい絵本。さて、種の進化は長い時間をかけて進んできた。ある動植物に新種が生まれたといって、その機能が役に立つかはわからない。しかしその進化によって、より生き残りやすい種になっている可能性を全ての生命体は追っている。現代、人間が種を絶滅させることは、未来への芽をまた一つ摘む行為と言える。生物は生き残った種の中から、人間にとっては気の遠くなるような時間をかけて、また進化していく。人間が絶滅した後にも。大きな時間を想像させる。
読了日:09月11日 著者:サビーナ ラデヴァ

小笠原が救った鳥: アカガシラカラスバトと777匹のネコ小笠原が救った鳥: アカガシラカラスバトと777匹のネコ感想
ネコの本能である狩りが固有種を絶滅に追い込んでいる、と世界中で問題になっている。元々は猫がいなかった土地に持ち込み、野放しにした人間の責任であり、その対処法が課題だ。本書は小笠原諸島のケース。固有種が減少する要因を検討したところ、やはり猫が大きな要因であり、実際に猫が減れば固有種は増えた。TNRの手法は使えない。捕獲したノラネコ・ノネコを全て内地へ送り、里親を探す。同時に島内の猫の飼い方を改めた。島内・島外、専門家・住民の連携と協力、その熱意努力に頭が下がる。「ネコ問題は外来種問題ではない」の言葉が重い。
島から運び出された猫の数は777頭を超えて、未だ全てではない。"トラップシャイ"な猫の捕獲が難航し、そこからリバウンドで猫の数が増えるなど、離島ですら「ノネコをゼロにする」ことの難しさが浮き出ている。その事実を踏まえての決定であろうが、オーストラリア政府は2020年までにノネコ200万匹を駆除する計画を宣言している。『どの生きものは殺し、どの生きものは残す。それを人間が決めることができるのか?』。非常に難解で、倫理的で、もはや何が正しいなど、解自体が存在しないが、諦めるわけにはいかない。人間に責任はある。
読了日:09月10日 著者:有川 美紀子

社長のための「中小企業の決算書」読み方・活かし方社長のための「中小企業の決算書」読み方・活かし方感想
企業が経営のために資金を借りる/返すことを前提に、経営の数字の見方を指南する本。今のところ融資は必要ないが、だいたいのところは読めていることと、銀行が企業を見るポイントや知りたがる事項が判って良かった。数字の定石を見る目は今のうちに養っておこう。貸借対照表の経年バームクーヘンは視覚的に把握できる意味で良いみたいなので続ける。一人あたり売上高、一人当たり人件費、一人当たり平均支給額もバームクーヘン化してみたい(従業員数は法人税申告書から)。数字を社員にオープンに、をいずれやってみたい。 
読了日:09月10日 著者:安田 順 ファイル

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴 (角川文庫)RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴 (角川文庫)感想
スピンオフ。完結を見てから久しぶりだったけど、ややあって物語の世界に戻れた。思いがけず豪華なおまけをもらった、得した気分。宗田の三つ子には、どうしても儚い気持ちがつきまとう。泉水子と深行がなんだかんだ盤石なだけに、いつまでこの関係でいられるのか、その不安定が比較されて、こちらの気持ちが過敏になってしまうようだ。だから無邪気な真澄に会えて望外の満足です。次はもうないと思って、余韻を満喫します。余韻といえば、ピエール・マルコリーニのチョコ食いたし。
読了日:09月07日 著者:荻原 規子 ファイル

ミスター・メルセデス 下 (文春文庫)ミスター・メルセデス 下 (文春文庫)感想
善き者/悪しき者など簡単に断じた読み手への罰だな。登場人物が増えるにつれてなんだかわからなくなってきた私に、キングはちゃんと答えを用意している。『気の毒に思う。なにもかも。本当に気の毒でならないよ』。他人のために胸を痛めることができるか。そして喪失を正面から抱えられるか。交差するように、するりと変則的な形で入ってきた登場人物が、目を疑う変身を遂げたのが印象的。アメリカ版リスベット・サランデルだな。チーム・ホッジズは歳も見た目もばらばらだけど、ピクニックの光景は美しく眩しい。そういう強さを私が持たないから。
読了日:09月07日 著者:スティーヴン キング

シルクロードのあかい空シルクロードのあかい空感想
岩波書店の絵本。鮮やかな表紙に目を奪われた。西安から古いシルクロードを辿って西へと旅するフランス人が描いた、新疆の景色が目の前に大きく広がる。トルファン、ウルムチ、カシュガル。アジアの真ん中なんだなあ。きっと豊かな場所だ。著者の目的である蝶とともに描かれた、色彩と細い線を重ねた風景や人が、異国情緒を際立たせている。ウイグル族、カザフ族の生活も、空も砂漠も川も、「チョウの王女」の霊廟に掛けられた布も、行ってこの目で見てみたい気持ちを掻き立てられる。大人のエッセイのような素敵な読後感。他の作品も読みたい。
読了日:09月06日 著者:イザベル・シムレール

琴電殺人事件 (新潮文庫)琴電殺人事件 (新潮文庫)感想
かの西村京太郎がコトデンを舞台に小説を書いた。と聞いたら讃岐人として読まない訳にいかんやないですか。コトデンや金丸座、こんぴら歌舞伎について調べていただいたようで、多少の脚色は加えられているものの薀蓄盛り盛りです。ですが、失礼ながら西村先生、琴電にはお乗りにならなかったのですね。なぜなら、コトデンは特に仏生山から先、上下に激しく揺れるので、走る列車内でファンにサインを書くなんて不可能だからです。缶コーヒーを飲むのも無理です。唇を切るか、服を汚すか、むせるか。そんな小ネタが入っとったら大ウケやったのになぁ。
読了日:09月05日 著者:西村 京太郎 ファイル

ミスター・メルセデス 上 (文春文庫)ミスター・メルセデス 上 (文春文庫)感想
超常現象ものでないのと、まっとうな神経の登場人物が多いことで、キングにしてはすんなり読めるし、わりとお上品(過去作品比、読者私見)。冒頭に出てくる事件の被害者が丁寧に描かれていて、切ない。キングが現実のニュースに怒ったり悲しんだりする様が目に浮かぶ。アメリカの貧しくも慎ましく暮らす、善き者たち。彼らが悪しき者にこれ以上害されないようにと私も願う。これも善き者、オデル。まさか、キングに限って、彼女を害するような展開にはしないはずよね。冷静沈着とは言い難い犯人。お腹の出た色男さん、がつんとやっちゃって。
読了日:09月01日 著者:スティーヴン キング

夏の闇夏の闇感想
女の視点で見てしまう。男は放っておけば寝床から出もせず惰眠を貪り続ける、美食と性欲ばかりの中年。しかし覚醒しているときの会話は理知的で、食の薀蓄が縦横無尽で、楽しい相手だ。男を手放せない女の雄弁が痛くてひりひりする。一方、男は酒でも紛らわせない倦怠のどん底。戦地ベトナムへ行きたいと、ある日生き生きと情報収集を始める。死なないようまじないの言葉を彫ったライターを手放さないでいながら、死地を望むロマンチシズム。そりゃ女は絶望的についていけんわな。どうしようもない人やなぁ。言葉にも貪欲でこってりで、息が詰まる。
男は釣りとなると生き返る。芋虫みたいな生活との余りの落差が、鮮やかすぎる印象を残した。男が開高健自身に重なった瞬間、ぞっとした。開高健が釣りにのめり込んだ理由ってまさかこれなのかと。趣味と呼べる範疇を超えて、まるで生きる理由そのものだ。釣りのエッセイも読んでみよう。
読了日:09月01日 著者:開高 健


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 15:24Comments(0)読書

2019年09月02日

2019年8月の記録

ここまでと決めている積読本の棚がいよいよ詰んできた。
本を買うときに、「この本はもしや既に本棚にあるのでは」と恐れ始めた。
ちょちょっと読めるような本ほど、気軽に買って買ったことを忘れる。
さくさくとこなしにかかろうと思う。
いや待て。
長く積んでいる、ヘヴィなノンフィクションこそ手がけるべきでは。



<今月のデータ>
購入18冊、購入費用11,155円。
読了15冊。
積読本183冊(うちKindle本68冊)。


ブック

8月の読書メーター
読んだ本の数:15

杏の気分ほろほろ (朝日文庫)杏の気分ほろほろ (朝日文庫)感想
テレビで見かけない日が無いくらい活躍する杏のエッセイ第2弾。前作同様、嫌味がなくて真面目。そして彼女の文章の魅力はそれだけではない。好奇心旺盛で、新しいことを吸収することに熱心だ。行ったところ、体験したことどこからでも、もちろん読んだ本の中からも気づき、吸収できるのは素晴らしい素質だと思った。モデルから女優の仕事を始めて、それほど経っていないのだっけ。吸収したものは、いずれ醸成されて発揮されるのだろう。楽しみだ。「杏」の字をほどいて「ほろほろ」ってタイトルにつなげる感性が面白い。
読了日:08月29日 著者:

森の聖者 自然保護の父ジョン・ミューア (ヤマケイ文庫)森の聖者 自然保護の父ジョン・ミューア (ヤマケイ文庫)感想
ジョン・ミューアの伝記。ミューアの書いた文章は和訳が少なく、また代表的な和訳本も絶版になっているので読むことは難しいかもしれない。いずれ、この本は彼や当時のアメリカのことを知るのによかった。シエラネバダのジョン・ミューア・トレイルは本人が発案したものではない。しかし過度に舗装されることもなく、商業化されてもなく、ミューアの精神を感じ取るためには素敵な場所みたいだ。自然礼賛と巡礼の匂いがする。アメリカ人はこんな場所を生むこともできるのだな。いつか行きたいが、常人が全て歩き通すには1か月かかるとのこと。
19世紀末、とかく資源は強奪した者勝ちのアメリカにおいて、文明化のためには自然破壊やむなしの風潮にミューアは傲然と抗った。自然保護の思想は、破壊への反動なのだろうか。「自然は人間のための資源」と考える開発推進派との対立の中で、シエラクラブや数人の大統領をはじめ、自然との共存が必要と考える者が増えたのがこの頃で、自然保護運動の機運が国内に高まり、ミューアが"生ける伝説"と持ち上げられたのも時宜だったと言えるだろう。法的に保護しなければ全て壊されうるという前提は、日本も持った方がいい。
ミューアは根っからのナチュラリストで、本来はシエラネバダの自然の中に住んで歩き回ってさえいれば幸福な人だった。しかしそのシエラネバダやヨセミテをはじめの自然が開発という名の破壊行為に晒されるに至って、政治家や行政府に働きかける自然保護活動に全力を注がなければならなくなった。『自然保護運動は政治運動そのもの』。ロビー活動というと激しい政治的行為のように感じるが、戦わなければ自然は守れなかったのだ。それは今も、同じ。
読了日:08月29日 著者:加藤則芳 ファイル

「昔はよかった」病 (新潮新書)「昔はよかった」病 (新潮新書)感想
酒席でこんな話を嬉々として喋る人の隣に座ってしまったら、10分で中座する自信がある。「昔はよかった」は「昔はよかったと思える自分は他者よりまともである」という認識の表面化にすぎない。実は昔もね、と昭和明治江戸と遡って新聞記事などを紹介するまではよいが、現代批判の安易さに呆れてしまった。与太話だね。さて熱中症のくだり。大正三年に秋吉台、昭和八年に富士裾野で陸軍の演習中にいずれも百人超が倒れ、数名が死亡する事件が起きている。八甲田山の暑熱版もあったと知る。こちらは新聞がほとんど批判しなかったというおまけつき。
読了日:08月25日 著者:パオロ・マッツァリーノ ファイル

生命と食 (岩波ブックレット)生命と食 (岩波ブックレット)感想
日本の狂牛病騒ぎが2001年。この冊子が発行された2008年には、とっくに日本人は狂牛病の事を忘れ去っていたはずだ。しかし改めて経緯を知ると寒気がする。草食動物である牛の子を肉や骨の粉(動物の死骸)で育てるという発想をはじめ、問題のある人的作為の大概は金の都合だ。『狂牛病は人災の連鎖』。この類の問題は解決していないどころか増える一方。私たちの身体は動的平衡にある。摂取したものは、文字どおり血肉になる。平衡状態の乱れが病ならば、私たちは注意深く自分の身を守らなければならない。安さで選べばそれなりの体になる。
読了日:08月25日 著者:福岡 伸一

下町ロケット ガウディ計画 (小学館文庫)下町ロケット ガウディ計画 (小学館文庫)感想
中里が気になった。なぜなら、うちにも中里のように利発で鼻っ柱の強いのが何人かいるからだ。そして経営者は聖者ではない。言わんでいいことを言ってしまうし、そこらじゅうに矛盾は転がり、ずっといてくれるか不安にもなる。辞めると言われると、いつも凹む。「この会社じゃ夢がない」とか「泥船だ」とか思われたら負けだよな。でも、ただ人手が欲しいわけじゃない。成長を見たいんだよ。ちょっとやそっとで壊れない信頼関係。企業間でもそうであるように、会社と社員の間も信頼は一日では成らない。言葉と態度で日々積み重ねるしかないんだろう。
読了日:08月25日 著者:池井戸 潤

小商いのはじめかた:身の丈にあった小さな商いを自分ではじめるための本小商いのはじめかた:身の丈にあった小さな商いを自分ではじめるための本感想
ボランティア活動のために、知名度向上と経費補填を兼ねてなにかヒントを得られないかと思って。ここに紹介される店主は皆ユニークで自由な印象を受ける。でももともとは、どこかの会社で窮屈さを感じた経験があったり、きっと「特別な人」ではない。小さなスキルと小さなセンス。なにかを売る。またはワークショップで人々と触れあう機会をつくる。自分に興味があることを取り上げるのがコツ。そこが難しいんだけど。長く続けようとか、儲けようとか思わずに、自分の遊びと思って始めるのが肝心みたいだ。お金の優先順位は3番目くらいにすること。
読了日:08月24日 著者: ファイル

雑草はなぜそこに生えているのか (ちくまプリマー新書)雑草はなぜそこに生えているのか (ちくまプリマー新書)感想
『道のオオバコは、みんな踏んでもらいたいと思っているはずである』。擬人化したくなるのも解る。世代を繋ぎ、種を拡散するため、雑草たちは思いも寄らない策を繰り出す。ゴルフ場で、刈られる高さに合わせて種子の生る高さを変えるよう進化するとは、スズメノカタビラ凄ぇ。ある調査では雑草の種子が畑1平米あたり75,000粒あった。埋土種子と呼ぶ。ほとんどの種子は土の中で休眠しているのだ。敵がいなくなった(=抜かれた)ときを狙って発芽するのだから、そりゃ抜いた端から生えてくるわな。もう、道端の雑草が気になって仕方ない。
読了日:08月22日 著者:稲垣 栄洋 ファイル

誰も戦争を教えられない (講談社+α文庫)誰も戦争を教えられない (講談社+α文庫)感想
「あの戦争」を体で知る世代がいなくなり、ハコモノの博物館は大きな齟齬を抱えたまま経年劣化し続ける。そして日本には"唯一の真実"が無い。他国や日本の博物館を数々訪れたうえで、あえて戦争を知る必要はない、と著者は言う。「あの戦争」を知らず、息詰まる日常こそ平和と教えられた世代への解答のような結論だ。世界に散らばる無数の小さな記憶、その痕跡。これらの価値は高い。戦争の微細な出来事を事細かに記憶する必要はないのだ。ただ、その悲しみと愚かさを伝えるためだけに全ての展示物、全ての記憶に意味はある。私はそう考えたい。
小学生の高学年頃、子供向けの戦争ものばかり読んでいた時期がある。その所為と私は考えているのだが、上空を飛ぶ飛行機やヘリコプターの音が少しでも大きいと怖い。「アルキメデスの大戦」の冒頭シーンを、まるで自分の記憶のように錯覚したりもする。幼い頃に摂取したものは根深く残る。その私の戦争への忌避感に根深く巣食っていた思い込み、それは「次の世界戦争も総力戦」である。AIなどを軍事利用に開発する現代、徴兵制はオワコンか。人の死なない戦争などあり得るのか。何がOKで何がNOかを自分の中で突き詰めていかなければならない。
著者の言うように、古来から人間は戦争をせずにいられなかった。ならば次も必ずあるのだ。確かに、その形は第二次世界大戦とは全く違うだろう。しかし、よしんば無人機同士での戦闘や人工衛星の破壊が主になったとしても、いずれ人間の肉体と精神を損なうものに必ずなる。なぜなら戦争は相手の大事なものを強奪する手段であり、生身の人間が大きな何かに抵抗するには、まず自分の身体をもって行動するからだ。香港では既にデモを歩いているだけの人が傷つけられている。ましてや日本は過去の戦争についてすら結論することができない国なのだから。
読了日:08月21日 著者:古市 憲寿 ファイル

我的日本:台湾作家が旅した日本我的日本:台湾作家が旅した日本感想
若い作家の滞在記から、老練な作家の深みの際立つ随想まで、幅広い18篇。「在飛騨國分寺、新年許願」や「没有、我没有去過日本看櫻花」など、同胞向けに書かれたものを日本語に翻訳し、編んだものだ。日本の作家の外国滞在記はよく読むが、逆は不思議な感覚がすると知った。また、私の持ち合わせない教養と感性で、京都や建築や言葉に傾倒していただけることに感謝しつつ、いつか私もこんな風に台湾のことを思えるくらい、台湾に通ってディープに味わいたいと思う。恥ずかしながら読んだことのある作家は皆無なので、ぼちぼち読んでいこう。
読了日:08月19日 著者:

流星ひとつ流星ひとつ感想
バーで8杯の火酒を呑む間のインタビューを、全編会話文だけで構成する趣向。年齢の似た二人の、相手を気遣ったり軽く茶化したりの長い会話は、大人らしく柔らかくも真剣だ。藤圭子を知らないからこそ、文章から脳裏に造形する藤圭子は、素直で芯の通った女性だった。後書きで出版までの経緯を読み、ようやく気づくのだ。彼女はこの後宇多田ヒカルを産み、病の末にマンションで自死したのだと。沢木耕太郎の言うとおり、このきらめきを無かったものにするのはもったいない。結末から逆算するのではない、この確かにあったきらめきをただ見上げる。
読了日:08月16日 著者:沢木 耕太郎

平成くん、さようなら平成くん、さようなら感想
いかにも、平成の時代の都会の子。お金はあって、所有物にはたいていブランド名がついていて、食べたいものを食べる。結局のところ、彼がなぜ死にたがっているのかわからないんだよなぁ。『僕にもうこれ以上、欲を持たせないでよ』。自分のように受け答えするGoogleHomeをつくるようなことって、人生の遊びの部分だと思うし。じゃあ生身の人間と会話やスキンシップすることがその解決だと思っている気配は愛にもないし。ただ空疎が残る。生きてる実感?それって何?と聞かれても、答えづらい。令和はその反動の時代にならないかな。
読了日:08月13日 著者:古市 憲寿 ファイル

新装版 武装島田倉庫 (小学館文庫)新装版 武装島田倉庫 (小学館文庫)感想
「戦争」から20年経った日本。国の統治は形骸化し、生き残った人間は敵や略奪者、突然変異のぬめぬめした生物らと戦いながら遺物を漁って生きている。架空の世界、架空の地名、架空の出来事なんだからSFだろうが、変てこな固有名詞ばかりの、見たことのない異世界だ。そしてやたら生臭い。水辺は油まみれの泥濘に変わり果て、汚れた油で厚く覆われた海面が、さざ波すら立てずにてらてらとのたる世界。青くない海。それこそがシーナさんにとってのディストピアの象徴ってところが面白い。"招魂酒"と書いて(ふぬけ)。わぁ、飲みたくないわぁ。
読了日:08月12日 著者:椎名 誠 ファイル

ゲバラのHIROSIMAゲバラのHIROSIMA感想
1959年、ゲバラ来日。13日間の滞在の記録は少ない。熱望して広島を訪れ、『きみたち日本人は、アメリカにこれほど残虐な目に遭わされて、腹が立たないのか』と怒り、原爆症の患者たちの為に泣いてくれたことがわかっている。キューバは1962年、核戦争の瀬戸際までいった国でもあるが、彼らが核の力を望んだのではなかった。ゲバラとカストロがヒロシマを重視したのは、強大なアメリカへの敵愾心と、被爆の桁外れな悲惨さのためだったのだろう。二人の熱心な施策により、キューバ人のほとんどは"ヒロシマ"を知っている。日本人はどうだ?
『軍拡競争はつねに戦争へと発展してきた、と我々の首相は本総会に先立って発言した。現在、世界には新たな核保有国が生まれ、武力衝突の可能性が高まりつつある。我々は、核兵器の完全破壊および、その第一段階としての核実験に例外なき禁止を実現するには、全国家が参加する会議が不可欠だと確信している』。1964年、ゲバラの国連演説より。
碑文の「過ちは繰り返しませぬ」の主語がないことについて、ゲバラをはじめ、何度も文中に触れられている。この件は以前から知っていたが、今回初めて自分の答えを見つけたように思う。主語はやはり「私たち日本人」なのだ。無論、原爆を落とした責任はアメリカにある。しかし、この戦争を起こしたのも、敗色濃厚になっても反撃し続けたのも日本であり、自分たちに責任が無いなどと死者の前で言い切る厚かましさは、当時の日本人の精神性にはなかったのだ。今後も、世界のどこにも核爆弾が使われることのないよう、働きかける義務が日本人にはある。
読了日:08月09日 著者:佐藤 美由紀 ファイル

華胥の幽夢 (かしょのゆめ) 十二国記 7 (新潮文庫)華胥の幽夢 (かしょのゆめ) 十二国記 7 (新潮文庫)感想
その政策が正しいかどうか。つまり、それにより国が立ち行くか否かは、実行して経過を見ないとわからない。確信できないから、王は熟考し、より信じられる政策を実行する。才国の悲劇は、そのプロセス半ばで作為的に歪められたことだった。もし歪められなければ、才国はいずれ立ち直れただろうか。だって、麒麟が選んだ王だったのだから。会社の社長は、麒麟が選んだわけではない。しかも寿命が永遠のわけもない。ただ、資金のあるうちに、人心が離れないうちに、利益を出し続けなければならない。華胥華朶で観た夢を録画して会議にかけたいわ。
読了日:08月08日 著者:小野 不由美

作家の猫 (コロナ・ブックス)作家の猫 (コロナ・ブックス)感想
いただきもの。以前読んだことがあるはずだが記憶にない。猫との生活を愛した作家たち。その作品。近しい人によるエッセイと続く。猫好きはその野生味と、自問を誘う眼差しを愛する。三島由紀夫、開高健、中島らもなど自らをこじらせ気味の作家たちは、猫に見つめられるたび自問自省のあまり七転八倒していたのではないだろうか。そして猫の手触りの柔らかさになだめられ悶絶するのだ。貫禄たっぷりなお腹をした猫も多い。さぞ贖罪のお刺身を献上されたのだろうと想像して楽しい。本人による猫観を読みたいと、前回も思ったのだったな。

読了日:08月05日 著者:夏目 房之介,青木 玉,常盤 新平 ほか


注:ファイルはKindleで読んだ本。

  

Posted by nekoneko at 18:18Comments(0)読書

2019年08月01日

2019年7月の記録

積読本の増殖に歯止めがかからない。
というより、歯止めになる言葉が私には最早ないと気づいた。

ふと思った。
Amazonの電子書籍売上げにかかる印税は正当に払われているのだろうな。
イギリスのAmazonの巨大倉庫で働く人たちのような横暴は許されていないだろうな。
まあ、支払われていなければ、さすがに出版社も作家も黙っていなかろうな。
Kindle本は素晴らしい、と私は思っている。
便利さだけでなく、新古書店の古本と違って正当な印税が著者に払われている。
そう信じているから、盛大に利用させてもらっている。
今までの購入額を試算してみたら、高級車が買えそうな金額になった。
ひゃっほう。

<今月のデータ>
購入29冊、購入費用15,037円。
読了11冊(費用・読了共「進撃の巨人」28冊まとめ読みを除く)。
積読本180冊(うちKindle本70冊)。


ブック

7月の読書メーター
読んだ本の数:11

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂したアマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した感想
著者の行動を不遜と責める向きもあるかもしれない。しかしこれがイギリスの労働者階級の現実には違いない。搾取と侮蔑の連鎖構造。不信頼関係の上に成り立つ雇用の元では、質素堅実になど暮らせないと理解できる。貧しいほど用事を済ませるのに物理的時間がかかる。酒やタバコがなければ精神を保てない劣悪な環境。心の余裕がなければ人当たりは意地悪くなる。EU離脱を望む人が多くなってしまったイギリスにおいて、憎まれるべきは移民ではなく、非人間的な巨大システムで格差を広げ、イギリス人の適正な収入と自尊心を奪った多国籍企業だろう。
私にはこの本の向こうに今の日本、近未来の日本が透けて見える。日本にも貧困状態にある人が増えていると聞く。非正規の劣悪な仕事でも得なければ生きていけない人を減らす社会にするために自分が何をすべきかを考えた。著者の指摘した『ワンクリックの向こう側』。ワンコインの値段の意味。ほんの少しの価格差や便利さの為に、他人を困窮した生活に陥れるのか。「社会の下層にいる人たち」と「勤勉な私たち」の差は、経済的にはとても大きく、時間的にはごく短い。ひとつのアクシデントでいつでも誰でもそうなり得ることを心得るべきだろう。
邦題が最悪だ。真面目で良質なノンフィクションなのに、もう少しマシな邦題をつけられなかったのかと怒りさえ覚える。原題は「HIRED」。この本は商いをする者にとって反面教師としても響く。例えば組織が大きくなりすぎれば、立場の弱い者に歪みが及びやすい。また社内に対立の構造をつくっても同様。社員に「日に日に疲れが増していくような気がする」と思わせる働かせ方ではいけない。働く誇りが得られるのはどのような働き方の中でだろう。その為に必要な雇用条件、給料はどのようなものであるべきかを考える、これは企業の永遠の課題だ。
読了日:07月31日 著者:ジェームズ・ブラッドワース ファイル

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)感想
わぁ、素敵! この大団円は、殺伐とした中盤からはどうやっても予想できなかった。どころか、こんな近・近未来の予感まで用意するとは! この賑やかで華やかなラストシーンに対比して思い出されるのは、イブロケットの上昇を見つめる泰の静かな眼差しだ。彼は夢を、夢の実現を見続ける。理論の部分はからきし理解できないんだけど。その場が真空かそうじゃないかもわかりづらいけど。そう、人類が宇宙を目指す意味はあるかな。今年はアポロ月面着陸50周年。この小説を読んで、宇宙を目指す若者が増えるといいな。デブリはちゃんと除去してよ。
読了日:07月30日 著者:小川 一水 ファイル

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)感想
『すみません。陰陽師が津波を呪力で止めた塚に行きたいのですが』。磯田先生、遺跡や資料が気になるとわき目も振らず突っ走る。さて、地震や津波は日本各地に突然起きるが、大概初めてではない。古い文書を紐解くと災害についての記述は散見され、昨今の災害により残念ながら立証されたものも多いようだ。防災庁舎など公共施設の立地も、これらを踏まえて検討するべきではないか。古い神社は災害が及ばないと確認された場所を選んで建てられているという。鳥居までで止まる津波。神性と合理性を兼ね備える存在であり、累積された人知の具現である。
香川県も、1854年伊賀上野地震の影響で満濃池が決壊したと高松藩記にある。ため池の耐震化は県下で言われていることだが、実際に罹災が防がれるのかどうかは、その時になってみないと分からないとするべきだろう。警戒はしておかなくては。それにしても記録は大事だ。ゆめゆめ破棄すべからず。
読了日:07月28日 著者:磯田 道史

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)感想
Living for today。"その日暮らし"と聞くと、「そう生きたいから」あるいは「そう生きざるを得ないから」資本主義社会システムから外れて生きる人々を想像したが、この本のテーマは違った。タンザニアやケニアの人々を主に、中国人との商取引、携帯を使った送金システムによる社会の変化などを研究したものだ。彼らは『均質的な時が未来に向かって単線的な道筋を刻んでいく』日本の社会とは異なる論理で動いている。怠惰や知識不足ではない、日本人とは全く違うひとつの解。時間や人生への認識が違うと、社会の様相も違ってくる。
読了日:07月25日 著者:小川 さやか ファイル

日本の路地を旅する (文春文庫)日本の路地を旅する (文春文庫)感想
この「路地」とは穢多と呼ばれた人らが代々住んできた、いわゆる被差別部落だ。城や寺に付随し、都会離島を問わず人の住む集落なら日本全国どこにでもある。路地が被差別部落への差別行為のみを指すなら、早く無くしてしまえで済む。しかし彼らの担ってきた役割と歴史は重く長く、決して無かったことにできるものではない。 『無くてはならないものだが、我々とはちょっと違う』。同じ路地出身だから聞き出せる各地の歴史と現在を描写しながら、著者の抱えた闇と希望が色濃い。私の知らない日本の風景が目の前に二重写しになるようで興味深かった。
県主催の人権研修で、大阪から呼ばれた講師が部落差別について話した事があったが、実はピンとこなかった。私が若かったこともあるだろうが、大阪と当県では温度差があったのだろうと今思う。当県に部落差別がもう無いとは言わない。しかし私の世代では、同和を騙った恫喝や不当要求を除いては、世代を経て薄まってきている感が強い。『この現代に被差別部落があるかといわれれば、もうないといえるだろう。それは土地ではなく、人の心の中に生きているからだ』。『非日常的な出来事が起こると、そのときはじめて路地は「路地」になることがある』。
また"近江牛"と言えば日本人垂涎のブランド牛肉だが、そのルーツが江戸時代、近江彦根藩のかわたたちにあることを知って感嘆した。彼らが江戸をはじめ各地に出て精力的に牛肉を宣伝、販売したことが、明治時代に入って拡大し、現代の知名度につながっている。なんともたくましい。細工物や芸事など、驚くほど身近なところに路地の者の痕跡はある。手づくりの革小物など、その手で必要な物をつくることができる人を無邪気に羨ましく思うが、それは例えば数十年前の基準で言えば、路地に住む者たちの領分だったのだ。
読了日:07月23日 著者:上原 善広 ファイル

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)感想
近い未来、宇宙の惑星や衛星へ出て行く人類の話といえば、アンディ・ウィアーの小説が脳裏に残っている。設備や技術の描写が細かい辺りが似ていて、現代のSFらしい。特徴的なのは、主人公がゼネコンの社員であるところだ。月でどうやって一般人が居住できる施設をつくり維持するのか。宇宙開発に必要なのは航空宇宙的な分野だけではなく、まずは人間が滞在する施設をつくるための土木建設技術だという視点が面白い。月を目指す意義は、有って無いようなもの。とりあえず全力で目指す。人間ってこうして進化し、地球上に広がってきたのね。次巻へ。
読了日:07月18日 著者:小川 一水 ファイル

百年前の山を旅する (新潮文庫)百年前の山を旅する (新潮文庫)感想
便利な登山用具がなかった時代の先達の足跡を、同じ装備で辿るという試みを、私は興味深く思った。残された記録を読み解き、歩く速さや山の読み方を追体験する。人間ひとりの身体と知識で向かう山は深い。心もとなさも含め、真に登った充足感はたまらないだろう。スキルがあればこそだ。服部文祥という人、見た目に反して真面目で繊細だ。物事の根源を求めてしまう性格は私と似ている。結果、恐ろしくストイックな行動につながるのだろう。ご本人はこの計画達成度の中途半端さが気に入らなそうだが、現在の服部文祥へ至る思考の道筋が見えて面白い。
『おそらく人間の限界といえる行為ができる人間は人類の一握りで、そういう人だけが、最先端の道具の本当の価値を体感でき、われわれ凡人はただ、便利な道具で得た余裕の中に安住するだけで、そのぶん知らないうちに本質からは遠ざかっているにちがいない』。
読了日:07月14日 著者:服部 文祥

シュッシュッポッポきかんしゃチャーリーシュッシュッポッポきかんしゃチャーリー感想
キングの「ダーク・タワー」シリーズに登場した絵本。『こういう絵本を、ずっと書きたいと思っていた』ってどういう意味だろう? 既に物語を明瞭に思い出せない。なにも知らずに読めば、ごく普通の、ハッピーエンドの絵本だ。しかしチャーリーの顔だけタッチが怖くないか。「ダーク・タワー」を読んだ私には、恐怖ワードが散りばめられているように感じるのだ。いや、確かにリンクしている。やめて怖いから。発売時には風間さんによる解説の冊子が付属していたらしい。この絵本の存在に気づくのが遅く、古本として買ったらついていなかった。残念。
読了日:07月09日 著者:ベリル・エヴァンス

-リアルRPG譚- 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険-リアルRPG譚- 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険感想
世界に飛び出したいなら必要なのは気持ちとパスポートだけ。と言いたいところだが、この著者、無謀そうでなにげに用意周到だ。読み終える頃にはすっかり感心してしまった。夢や目的の為に努力する。動物の扱い方も語学も、必要性を見定めて自分のものにしていく。客引きの仕事すらスキルのためとはね。ほんとRPGみたい。動物の命の重さや価値は、その国柄や民族によって違うものだなと思った。それは人間として高尚だとか善し悪しだとかとは違う。違って当たり前な背景がその地にあるからだ。でもそれに流されない彼の判断が好かった。次章待つ。
読了日:07月06日 著者:春間 豪太郎 ファイル

このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景感想
ゴミ清掃員の立場から見える社会なんて想像もしたことなかったが、人間の本性が丸見えだな。ゴミを出す方のね。時間を遅れて出したのに収集に来ないとクレームをつけたり、出してはいけない物を出してしらを切ったり、道理を外れるのはたいていゴミを出す側だ。それでも収集するしかない。ゴミ清掃員という職業を見下しているから、品の良さげな中年女性が突然「ゴミ屋のくせに!」と逆切れするのだろう。ゴミ集積所を見るとその地域の治安や住人の人間性がわかるというのも納得してしまう。前半はゴミ収集あるある。笑える。ご苦労様です。
読了日:07月05日 著者:滝沢 秀一 ファイル

中小企業の「働き方改革」労務管理をスムーズに変える本中小企業の「働き方改革」労務管理をスムーズに変える本
読了日:07月01日 著者:小岩 広宣


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 15:01Comments(0)読書

2019年07月02日

2019年6月の記録

今月の一箱古本市に向けて消化にかかった月。
それでも減らないなぁ、読んでも読んでも買い込むから。
Kindle本を安く買える機会は逃さず買い込む。
書店で出会うべくして出会ったと思える本は逃さず買い込む。
この傾向は、ますます激しくなってきている。

<今月のデータ>
購入16冊、購入費用28,318円。
読了20冊。
積読本163冊(うちKindle本64冊)。


ブック

6月の読書メーター
読んだ本の数:20

銀狼王 (集英社文庫)銀狼王 (集英社文庫)感想
リアリティの点では、「羆撃ち」に及ばない。しかし現代の日本では絶滅してしまったオオカミがまだ生息していた時代、日本の猟師とオオカミはどのように対峙していただろうかと思いを馳せるとき、息を詰めて銀狼の姿を目前に描かずにいられなかった。計り知れない天賦の知性。犬には敵わない、獣の頂点たる威厳。その眼。どんなに神々しかったろう。一方、猟犬疾風のなんと愛くるしい表情。主人公と疾風の関係は「老人と海」の老人と子供を思わせる。答えを返してくれてもくれなくても、そこにいるだけで心の支えになる、その存在の貴さよ。
読了日:06月28日 著者:熊谷 達也

ストーカーとの七〇〇日戦争ストーカーとの七〇〇日戦争感想
気になり、文庫化など待てなかった。本を開いて数ページ目にして尋常でない状況に転がり落ちていく。怖い! 自分の恐怖体験も思い出して胃がよじれる。全身を苛む苦痛に本当の終わりが無いなんて。前作あとがきの不穏な気配はこれだった。何が衝撃だったと言って、日本人が行かない世界の辺境へ飛び込んでルポを書き上げた内澤さんが恐怖により判断力も思考力も奪われたことだ。島で理想の生活を築き上げた内澤さんが心の安寧をはじめ全てを一瞬で奪われたことだ。私の願いなんぞ何の役にも立たないけれど。きっと、小豆島で生き延びてください。
読了日:06月28日 著者:内澤 旬子 ファイル

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣感想
わかっている。ヒトは多分、世界で起きる全ての事象を理解する能力は持ち合せていない。自分と近しい周りのことくらいだ。なのに情報は溢れていて。遠くの人間や動物が被った不幸を知る度、義憤に駆られて誰かを罵らずにいられない。教育レベルの高い人のほうが世界の状況を誤認しているという調査結果は衝撃的だ。報道は世界を正しく見るための手段ではなく、断片。正確な事実認識は、自らデータを取りに行かなければ得られない。そのうえ、変化し続ける現実を一つ一つ受け止め、知り続けてはいられないのだと知り、驕りがちな自分を戒めることだ。
ユニセフやWWFが寄付を呼びかける広告は、寄付したい気持ちを喚起するために、胸の痛むような写真や哀れな「現実」を繰り返し目の前に突き付ける。そのことが、世界をより良くするための活動に協力したいと思っている私たちの目を、世界が少しずつでも良くなっていっているという、データが証明する事実からずれた認識を持たせる働きをしているという。ロヒンギャ迫害や内戦のような突発的な困窮を除き、子どもや女性をはじめとする弱者・貧困にある人の置かれた状況は良くなりつつある。それはそれとして知っておく必要がある。いろいろ難しい。
福島の原発事故について、「誰の命も奪わなかった放射線から避難したせいで、1000人以上の高齢者が亡くなった」という記述があり、悲しくなった。これは、危険が少ない事実にもかかわらず、恐怖感から重要視するリスクについて扱った章だ。あのとき、放射能を恐れ、避難した福島の人たちの取った行動、報道や行政の動きも妄動だったというのか。そのせいで、皆失意のうちに亡くなっていった、あれは亡くさずに済んだはずの命だと自責するべきだというのか。
読了日:06月28日 著者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド

ウィスコンシン渾身日記ウィスコンシン渾身日記感想
2年間のウィスコンシン滞在記。読み始めてすぐに、素直な性質の女性だと感じた。平易で流れのよい日本語。初めてのアメリカでの生活で、事件は日々起きる。体験しなければわからないことが世界にはたくさんある。その様々の混乱にもかかわらず、感じた率直なところの言葉がつなげられるから、こちらもするする読むことができるのだ。この人はぶち当たった壁を、もがきながらでもしなやかに拡げていける人だ。巻末の内田先生の言葉は羨ましすぎて泣きそうになる。そしてどうやら、先生と慕う人への姿勢、教わる姿勢は、身につくべくしてつくようだ。
読了日:06月25日 著者:白井 青子 ファイル

こうしてイギリスから熊がいなくなりましたこうしてイギリスから熊がいなくなりました感想
ノンフィクションに近いものかと思ったら違っていて戸惑った。不思議な物語。サーカス用のペチコートを履かされたり、潜水士を務めたり、愛嬌がある物語用の熊かと思いきや、その行動や挿絵から感じ取る熊は、冷たく、鋭く、怖い。こちらもたいがいに酷薄である人間に一瞬だけ畏れられ、利用され、狩られ、やがて熊たちは声を聴く。そして熊たちはいなくなった…。実際にイギリスの野生の熊は絶滅している。どころか様々な動物が、主にハンティングによって絶滅に追い込まれている。動物保護大国のように思っていたけれど、これもまた一つの側面だ。
読了日:06月23日 著者:ミック・ジャクソン

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)感想
ゴリラおもしろい。同じ霊長類でも、ゴリラとサルと人間では性質も社会性も違っている。ゴリラは優劣のない社会をつくる。サルは厳密な階層社会をつくる。ゴリラは相手の目を見て意思疎通する。サルが相手の目を見るのは威嚇するとき。ゴリラは総じて温かくて感情豊かで繊細だ。さて、家族という集団をつくる人間。個食が社会問題として浮上した頃の文章だろうか。食事を家族で分け合うのではなく、買って一人で食べる時代になり、家族という仕組みの崩壊を予見して、山極さんは人間の未来を憂える。もっとゴリラ読みたい。ゴリラの歌聴きたい。 
読了日:06月21日 著者:山極 寿一

徳島発幸せここに 第1巻 若い力を惹き付ける地方の挑戦 (ニューズブック)徳島発幸せここに 第1巻 若い力を惹き付ける地方の挑戦 (ニューズブック)感想
全域への光ファイバー敷設など、徳島県は隣県人から見ても目覚ましい取組みが多く目につき、さぞ敏腕の現知事が英断しているのだろうと思っていた。その実は、行政を頼らないことで高まったボトムアップの変化であるという。補助金ではなく、住民の熱意と経営や起業の手法が噛み合ったとき、変革は起こる。「四国若者1000人会議」の頃にはその動きがあったのだなあ。若い人がローカルに目を向けているという現状があるとすれば、行政が敏感に呼応したもん勝ちだろう。価値観の転換はもう始まっている。賛同できるものには積極的に乗っかりたい。
読了日:06月21日 著者:徳島新聞社

水曜日のうそ水曜日のうそ感想
亡き祖父母のことを想いながら読んだ。自分が老祖父母に優しく接せない孫娘であったことを棚に上げて、なんと不誠実な息子だとなじった。娘の拡がりつつある世界、老父の内なる豊かな世界に思い至らない、狭量な父親。『こんなのぜんぶ、ばかげてる!』 子供より孫が気づく事ってあるのだと思う。更には、身内より隣人が気づく事も。老人の内面は、生きた年数の分だけ豊かだ。それに気づける程、また聞き出せる程、若い者はえてして余裕がなく想像力が及ばないものなのかもしれない。表題と章番号が鏡文字なのが暗示的。手触りの優しい装丁が素敵。
読了日:06月18日 著者:C. グルニエ

好日日記―季節のように生きる好日日記―季節のように生きる感想
前作で『やめるまで、やめないでいる』と決意した後も、森下さんは同じ先生の元でお稽古を続けられている。今作は二十四節気に沿った一年ぶんのエッセイだ。今回もたくさんの胸に沁みる言葉に出会った。『習っているのは、技術ではなく、道を進むこと』。まさに。先生の掛軸にあった『柳は緑、花は紅』という言葉には、森下さんの文章を通じて救われた。私は私でしかない稽古をする。それから、先生が先生でいてくださることの貴重さを思った。先生がいつまでお稽古してくださるか。それを思うと、生徒でいられる時間を粗末にしてはいけないと思う。
さらりと読み終えてしまったが、こうして気になった言葉を見返すと、へヴィに響いてくる。『歳をとると人間が丸くなるって言うけど、あれ嘘ね』。『いくつになっても、人は心穏やかになどならない。みんな、生まれ持った自分自身と闘っている』。『目指しても目指しても終わりのない道を歩くことは、なんて楽しいのだろう』。『内へ内へと熟す』。『お点前は完璧を目指すものでありながら、それは狙ってかなうものではなく、その日その時の自分を無欲で生きたとき、はからずも手に落ちてくるものなのかもしれない』。
読了日:06月18日 著者:森下 典子

ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台 Vol.4 「発酵×経済」号ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台 Vol.4 「発酵×経済」号感想
直接関係ないはずなのにどうしてかつながり合った人や思想の流れに触れていると気づくことがある。お気に入りの地元書店ルヌガンガでもミシマ社でも、なにか気になって接触すると、以前気になった他のものとつながっていると知る。磁場か錯覚か。例えば都会より地方。数値より感覚。値段より重み。個人にとっては大事で、でも大勢から見れば些細なもの。ごく一部のムーブメントなのか、なにか大きな変化の先駆けなのか。三島氏の言うように、平川克美氏の思想にその鍵があるように思ったので、これから読む。『これからの10年が黄金時代』ですよ。
読了日:06月15日 著者:

「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす (光文社新書)「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす (光文社新書)感想
家事にまつわる諸問題から拡げて家族の在り方を扱ったもので、表題はインパクトを狙いすぎ。さて、海外の例を引くと必ず出てくる家事の外注を、私は好いと思ったことがない。これは日本人の思い込みというより、家事=身の始末だと思っているからだと思う。他人にしてもらうくらいならしないほうがマシ。考え込んだのは「たとえ忙しくてきちんとできない場合でも、きちんとしているように見えること」への執着についてだ。食事しかり、片づけしかり。"自己満足"と"自分が満足している"ことは違う。断捨離よりも、したい生き方の整理を習慣に。
読了日:06月15日 著者:佐光紀子 ファイル

国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)感想
NHK「推しボン!」に出演されたヤマザキマリの、テレビ画面を通しても伝わるタフさに魅了された。選ぶ本も独特だった。このエッセイの選本は当然ながらだいぶ被っていて、番組よりディープに語られる言葉はヤマザキマリ以外の誰のものでもなく、その深さにまた圧倒された。『人から見たらその人の突出してゆがんでいるポイントにこそ、その人がその人だけの道を切り開いた秘密が隠されているように思うのです』。手に負えない孤独や寂しさこそが想像力や個性の源泉。歪みすら矯めたり繕ったりしなくていい。年甲斐もなく救われた気分になった。
「人生は楽しむもの」とヤマザキマリの母は娘に教え、ヤマザキマリもデルスにそう教えた。私は「人生は耐えて義務をこなすもの」という摺り込みから、そうでない面を知ったはずの今でも、どこか、逃れられないでいる。これは海外に出て見聞を広めたとか教養を深めたとかには関係なくて、人生へのスタンスは、親から子への良かれと思った贈り物なんだろうと思う。
読了日:06月14日 著者:ヤマザキ マリ ファイル

トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える 野鳥のひみつトリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える 野鳥のひみつ感想
日頃見かけているはずの野鳥ばかりだ。見開きワンテーマ、右が4コマ漫画で左が小文。どちらも面白い。写真は無くても愛が溢れているので、うちの敷地を走り回っている鳥がハクセキレイだと知れた。道理で猫が狙うわけだ。川上さんが全ての文章を書いているわけではないが、カラスについてのとことかユーモア炸裂のはきっとそうだろうなと思う(巻末で確認可能)。マクドナルドの看板塔のMの上にカラスが一羽ずついた。あれもなんかの遊びやろか。目が斜め上や窓の外を探ったり、耳が鳴き声を拾ったり、野鳥を意識して世界が広くなる感覚が好い。
読了日:06月13日 著者:川上 和人,マツダ ユカ,三上 かつら,川嶋 隆義

山怪 弐 山人が語る不思議な話山怪 弐 山人が語る不思議な話感想
山の怪の談はまだまだ出る。人の世界と人ならぬ世界の「あわい」なんだろう。そこによく出入りする人のほうが体の感度は上がるようだ。霊感といい、察知する人の能力なんだな。狐狸のせいにできる程度ならいいけど。足音は遠ざかるのではなくいつも近づいてくる。声は呼び、笑う。なんらかの、存在。その思念、その残渣。「切ってはいけない木」がわかる直感は、山で生きる上で必要な力だと思った。いちばん怖かったのは露天焼きの火葬だ。著者も気になったらしく、怖い怖いと繰り返し触れる。火葬場の石でバーベキューとか怖すぎて笑ってしまった。
数年前の大晦日、実家の井戸に供えたパック式鏡餅が、翌朝つまり元旦に空容器だけになって落ちていたことがあった。私は「神さんが食べたんちゃうの」「じゃあカラスの仕業?」とはぐらかしたが、母は性根のねじ曲がった近所の住人の犯行だと言い張った。通りがかったくらいでは見えない位置なのだ、井戸だって。神さんもカラスも私は心の底から信じてはいないが、他人が塀を乗り越えて実家の庭を徘徊していると知るよりは心安い。怪異に対しての人間の反応は「わからない」「動物の仕業」「無視」のどれであれ、自身が平安であれるべきである。
読了日:06月12日 著者:田中 康弘 ファイル

アルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF)アルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF)感想
設定は違えど、未知の宇宙空間での冒険活劇は前作同様、文句なしの面白さだ。予想外の過激な展開も、足りない知識を駆使して楽しんだ。しかし、やはり文体がひっかかる。前作のように宇宙空間に独りなら内心の対話ごっこも有り得ると思えるが、今回の場合、内心で誰に説明していたのか、しかも丁寧語で。さらに「わたし」と「あたし」を使い分けてまで「内面は真面目だけど外向きは下品を装う」二面性の必要を彼女は自覚していただろうか。中途半端な下品を装う必要は、こよなく愛する父上の為にも、無かったんじゃないの。キャラの造形って難しい。
読了日:06月09日 著者:アンディ・ウィアー ファイル

アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)感想
火星の次は月。優秀な技術者の次は、どうしても道を踏み外してしまう極貧のこそ泥。男の次は女。地球から切り離された月で、空気が充填された施設内という閉鎖空間が物語をスリリングにする。上手いね、月上の都市アルテミスの中と外を文字どおり自在に跳ね回るジャズに目が釘付けだ。賢くて器用で、才能もあって、その上愛されてるのに、なんでこの子はこうなっちゃうかね。キャラ設定上仕方ないとはいえ、ひとりごちる口調がヤングアダルトな軽さで居心地悪い。
読了日:06月08日 著者:アンディ・ウィアー ファイル

日本発酵紀行 (d47 MUSEUM)日本発酵紀行 (d47 MUSEUM)感想
そもそも発酵食品を編み出したのは、手に入った食料の賞味期間を伸ばして生き延びる為であって、美食の為でも健康維持の為でもない。だから地方地方で風土と収穫物に合った発酵食品が生まれて現代までつながっている訳で、他所で真似てつくっても別物になるところはおもしろい。まあ他所の人間がやたら美味しがったり貴重がったりするもんではないよな。旅先で出されたら、そら食べるけれども。ただ現代人は安いものに群がる習性がついてしまったので、せめて本物と偽物の区別をつけた上で、自分の食するものを選びたい。日々使う醤油や酢は特に。
読了日:06月08日 著者:小倉ヒラク

色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記 (ハヤカワ文庫 NF 426)色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記 (ハヤカワ文庫 NF 426)感想
原題は「色盲の島」。風土病として先天性全色盲や神経性の奇病が多発するミクロネシアの島を訪れる旅行記だ。患者たちとの交流や原因探究も興味深いが、緩やかな始まりからして単なる探求の旅ではない。オリバー・サックス博士の眼差しには慈愛がある。西欧人の物差しや人知を超えた存在への尊敬の念が一貫しているからだ。『地球と自分が仲間であるという感覚』を、島では実感できる。だからサックス博士はあらゆるもの、たくさんの人を愛せる。暮らしは貧しくとも運命を受け入れて豊かに生き豊かに死んでいくことができる島の人を尊重できるのだ。
なぜいわゆる先進国の人間皆がサックス博士のように生きられないのか。なぜサックス博士のような人を運命は早死にさせてしまうのか。西欧諸国もアメリカも、島々に病原菌や微生物を持込み、侵略し略奪し、米軍施設だらけにし、核やゴミで汚染し、不要だった物を売りつけて貧困という枠組みに貶めた。何が援助だ。干渉がなければミクロネシアの歴史と文化はどこにも劣らず豊かだったはずなのに。憤りはサックス博士の言葉を通して私が受け継ぐ。
先進国というものはほんまにろくなことをせんなあ! 特に日本! 米国領というだけでグアム島を原住民の村ごと爆撃し、上陸してからは食料を略奪したから原住民は毒のあるソテツの実を大量摂取せざるをえなかった。戦後は戦後で隣のロタ島にまでゴルフ場を開発し、豊かな森を分断し破壊した。どのツラ下げて観光になど行けるものか。
読了日:06月06日 著者:オリヴァー・サックス ファイル

わたしの すきな ものわたしの すきな もの感想
月刊誌『婦人之友』連載のエッセイとのこと。エッセイ集と呼ぶにも軽くてカラフルだ。気楽に読んでしまえるが、福岡先生の他の著作を読んでから手に取ることをお勧めする。人生の記念碑的な物や、偶然手に入れたお宝を、「福岡先生らしいな」とほくそ笑みながら、または「これがあの!」と得意げな言い回しを羨ましがりながら読むのが楽しい。ちょこっと気晴らしに。『急速に拡大した種は、その急速さゆえにどこかで破綻を来たし、急速に滅びに向かう。何億年か先、人類は示準化石となる可能性が高い』。これも、いつもどおりのダークネス。
読了日:06月05日 著者:福岡 伸一

働き方改革で潰れない会社の人事戦略働き方改革で潰れない会社の人事戦略感想
著者は行政側の人間でもなさそうだが、まあ厚生労働省のホームページに載せられたパンフレットのコピペかと思うほど当たり前のことしか書かれておらず、何の新鮮味もない。やれるに越したことはないが、逆に、この辺りの行政の思惑どおりの対策でなんとかできる会社は、業務の大部分がITやロボットに置き換え可能なんではないだろうかと思ってしまった。参考にはならない。
読了日:06月03日 著者:谷所 健一郎


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 15:15Comments(0)読書