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2018年05月01日

2018年4月の記録

順調に積読本が減っていたはずなのに、
GW恒例のKindle本セールが始まってしまったのだ。
欲しい本リストに検索をかける裏技も発見してしまったので、
嬉々として本を買い込む羽目になった。
調べたところ、セールだからといって著者の印税は減らされないのだそうだ。
ならば古本を買うより余程、作家さんへの貢献になる。
買え買え読め読め。

リクライニングチェア用にサイドテーブルをDIYした。
素晴らしい出来栄えに至極満足。



<今月のデータ>
購入13冊、購入費用11,254円。
読了13冊。
積読本106冊(うちKindle本20冊)。

ブック

4月の読書メーター

小説 日蓮(1981年 光風社出版)小説 日蓮(1981年 光風社出版)感想
祖父の遺品。祖父は信心薄いように見えて、足繁く寺へ通った。考えていたのだろうか。信仰とは、宗教とは何か。日蓮が宗派を興した理由はと。著者は日蓮を描くため「立正安国論」をはじめ様々な資料を当たったはずで、その日蓮は法華経のみを信じる純粋さと、表裏として他派を貶める苛烈さ、常に国難を憂う大きな眼界を持っていた。個の損得ばかり懸念して汲々とする民の姿は、末法じみて、しかし現代と変わりない。祖父は家族には身勝手だったが、伝統文化や地域の歴史に注力した。祖父の思うところ、それは日蓮の思想につながっていたのだろうか。
読了日:04月30日 著者:大佛 次郎

キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか デラックス (朝日文庫)キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか デラックス (朝日文庫)感想
雑誌の連載で、「小さな勇気」を要するミッションに挑戦する企画物。そんなことはしようとも思わないよ、というお題も多々あるが、やってみると発見することもあるもので、著者の必死さからちょっと離れて気楽に眺めるように読んだ。一世を風靡した「オバタリアン」に片足を突っ込んだからか、ある程度のことは、他人様に言えるようになったみたいだ。鼻毛とかブラの紐とかは平気だよ。同時に無視する術も身につけたから、言いたいことだけ言える人で結構なんだけど、善意の他人を嘲笑う人にはなりたくないな。ハローワーク体験はシャレにならん。

読了日:04月30日 著者:北尾トロ ファイル

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
美しい邦題に惹かれて読んだが、なんと恐ろしい小説か。ジョーンは私の母だ。クリスティは身近な誰かをモデルにしたのだろう。冷徹な眼で観察しただろう。そして彼女を支配する欺瞞を見事に描き、私はこの小説によって母の内面を見た様に思った。結局のところ、真実が彼女の魂に留まることは無いのだろう。彼女には私の呪いの言葉も蜃気楼のようにしか届かない。全ては彼女の表層で変質してしまうからだ。代わりに、クリスティは最大の呪いを与えた。私は彼女を憎みながら、祈らずにいられない。しかし栗本薫は周りのそれも怯懦怠慢だと指摘した…。
読了日:04月27日 著者:アガサ・クリスティー

ヤマケイ文庫 くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しをヤマケイ文庫 くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを感想
読んでいると公言するのもはばかられる表題だが、著者はキノコ写真家、菌類専門家の経歴を持ち、さらには爽やかな風貌だ。人間の排泄物は水洗トイレと下水システムによって生活から切り離された。だが人間も自然の一部、排泄物も本来は廃棄物でなく、自然の循環に資する栄養源だと強烈に思い出させてくれる。しかも水洗トイレと野〇なら、野〇のほうが余程エコでもある。野〇の掘り返し調査は見事だ。野〇に集まる植物、動物、菌類が共生し入れ替わりながら豊かな土壌を生成する様子には、自然の驚異に陶然とさえなる。しかし、やはり臭い気がする。
読了日:04月27日 著者:伊沢 正名 ファイル

不連続殺人事件 (角川文庫)不連続殺人事件 (角川文庫)感想
雑誌の連載だったようだ。館にひしめき合う文人たちには品性も節操もありゃしない。『キサマらは天罰によって皆殺しにあうぞ。キチガイ共め! 大馬鹿ヤローめ!』医者が叫ぶ。トリックのためには人間関係も乱痴気にしておく必要があったということなのか。文人たちの有閑と山合いの不便の状況下で連続殺人が起きる。俗な語り口でも地の文はさすが、簡潔で勢いが良く、矢継ぎ早に展開していく。「大探偵は大犯罪者の表と裏」を引いて、小説をつくる文学者こそ大犯罪者の裏と表、大犯罪者の素質を持っていると弁を述べさせるあたり、自虐的で面白い。
読了日:04月23日 著者:坂口 安吾 ファイル

体の知性を取り戻す (講談社現代新書)体の知性を取り戻す (講談社現代新書)感想
再再読。この本が私にとって特別なのは、尹氏が同じ「思考でねじ曲がった身体」から探求を発しているからだ。日常的な話題からより深みへ進めていくどこかに、言葉が切実に響く箇所がある。第3章『型を学ぶとは、「こうすればいい」といった正解を体に当てはめることではない』。正しい形を再現しようとか、先生の言ったとおりにしようとか、それは思考優先の、歪で鈍い動きの繰り返しでしかないのだ。そのループをもう一歩脱することができていない自分に気づくと、また目指す方向が見える。『自分にとっての本当』を探求する。迷った時の常備薬。
読了日:04月19日 著者:尹 雄大 ファイル

激震! セクハラ帝国アメリカ 言霊USA2018激震! セクハラ帝国アメリカ 言霊USA2018感想
このアメリカ情勢の中、発売を心待ちにしていたエッセイ。町山さんやトランプ報道のおかげで、この数年だいぶアメリカに詳しくなったが、最新情報を読むと政治的にも倫理的にもまた想像を超えていた。ヤツの挙動にはうんざりなのだが、一方で鮮烈な希望の光を放つヒロイックな出来事、いわゆるアメリカ的精神を目の当たりにすると、感じ入る。町山さんの著書を読み始めた頃、アメリカの実像に衝撃を受け、嫌いにもなった。しかし近頃は、ニュースやエッセイから垣間見るアメリカ人たちの姿を、日本人にはない魂を持つ人々として好ましくも思うのだ。
読了日:04月16日 著者:町山 智浩 ファイル

今までにない職業をつくる今までにない職業をつくる感想
表題は語ったうちのごく一部で、話題は多岐に渡る。ボタン忌避や食物選好の話は初めてだ。同じ日本人と云えど性質も其々で、生き方だって同じの筈がないのだ。「自分はいかに生きるべきか」「人間として生きることとは何か」問いへのアプローチ手段が稽古とは言い得ている。また生物には生来備わる能力と後天的に習得する能力があり、自由度が高く工夫の余地が大きいのは後天的能力のほうであるとの甲野さんの発見が興味深かった。つまり、自覚的な稽古によって思いがけないほどの、他人とは違う変化進展が可能という見方は途方もなくポジティブだ。
読了日:04月14日 著者:甲野善紀

誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方感想
長年子どもを望んできた訳でもない、心身が壊れる程の不妊治療に耐えた訳でもない私に、悲しがったり辛がったりする権利はないと、我慢していることに気づいた。取材に応えた女性たちの言葉に自分の気持ちを見つけて涙が止まらなかった。子どものいない人生。自分と同じ痛みを抱えた女性が少なくないことに気づけて、気持ちが心持ち軽くなったが、今後も苦しい時期は多々訪れるだろう。悔いはどこか残ると思う。それでも「私はそういう運命だった」「良い伴侶がいて、私は幸せ」そう思えるように少しずつ昇華していこう。私たちは間違ってない。
読了日:04月10日 著者:くどう みやこ ファイル

アルピニズムと死  僕が登り続けてこられた理由  YS001 (ヤマケイ新書)アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由 YS001 (ヤマケイ新書)感想
クライミングへの目覚めからギャチュン・カン登攀を経て、2017年までを振り返る記録。丁寧な口調と裏腹に、クライマーの世界は死人だらけだ。問いは二つ。なぜ登り続けるのか。なぜ彼らは死に、自分は生き残っているのか。登り続ける理由は、ただその運命に出会ってしまったからだ。3000回近くも登り続けられている理由は、運と、生き方だと思った。夫妻は山で、不要な物全て削ぎ落とした生活をしている。それが心身に、生物としての生存本能を研ぐべく働くのだろう。彼の山への思いは孤高の峰のような美学に結実しており、ただ羨望する。
読了日:04月10日 著者:山野井 泰史 ファイル

舞台 (講談社文庫)舞台 (講談社文庫)感想
またも、容易に共感や同調を寄せ付けない主人公の造形。あまりに極端に感じられる彼の過剰意識でぱんぱんの世界は、そりゃ苦しいだろう。ただでさえ人間の密度の高い都会で、生者に加えて死者にまで見られるのだ。他者の目が怖い時期は私にもがっつりあった。いつか怖くなくなった今では、怖くなくなったこと自体忘れていたと気づき、巧みな生物システムに感心する。通り過ぎたのだ。他者の目を意識する「舞台」の上では、人間はずっとは生きていけない。いつかは自分主体で世界を見、生きていけるのだと、若者への応援みたいな小説だった。
読了日:04月08日 著者:西 加奈子

できるクリエイター Inkscape 独習ナビ Windows&Mac対応できるクリエイター Inkscape 独習ナビ Windows&Mac対応感想
印刷に出せるレベルのチラシをつくるべく、パソコンはそこそこ触れるがデザインはど素人の挑戦、再び。GIMPでは基幹となる考え方の専門性が強すぎてさじを投げたが、Inkscapeはなんとかなりそうだ。このソフトで可能な作業は膨大で、全頁の半分以上がリファレンスに充てられている。説明はほどよい細かさ。リファレンスの前にソフトの概説と、読みながら実際に操作してみる練習課題があり、これも初心者が慣れるのにちょうどよい。仕事中に練習するには課題イラストが可愛らしすぎて恥ずかしい。ツールは手に入れた。あとはセンスだ。
読了日:04月05日 著者:大西すみこ,小笠原種高,羽石 相,山本潤一,できるシリーズ編集部

生存教室 ディストピアを生き抜くために (集英社新書)生存教室 ディストピアを生き抜くために (集英社新書)感想
ぱらぱらめくっていたら面白くなって再読。練習のときに途方に暮れることが多く、その突破口を探した。『生存という意味で言うと武術の稽古においては、原初的な古の身体に戻るほうがいい』。まずはそこが大事で、目指すべき方向性だ。この、椅子に座りっぱなしで力を失った足腰を、少しでも古の身体に近づけなければならない。型の意義は『なにをするかが決まっているから、そのなにかをしている自分を観察できる』こと。自信はそれに伴って生まれると考えてみる。乗馬しよう。『乗るために自然と足腰が決まる』感覚を味わいたい。
読了日:04月03日 著者:内田 樹,光岡 英稔


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 11:37Comments(0)読書

2018年04月02日

2018年3月の記録

Kindle本で読みたいものをチェックするのに、ほしい物リストに入れておく。
読みたい本が増えすぎて、たぶん300冊くらいになっている。
たぶん、というのは、システム変更で冊数がわからなくなったから。
リストに入れた本の検索もできなくなって、そのまま放置。
日替わりセールのメールも来なくなって、Kindle本を買うことが減った。
不便さには不満だが、衝動買いが減るのはいいことだ。

<今月のデータ>
購入14冊、購入費用13,646円。
読了14冊。
積読本108冊(うちKindle本21冊)。

ブック

3月の読書メーター
読んだ本の数:14

ほんとうの環境問題ほんとうの環境問題感想
池田氏の散文の後に、養老先生との対談がある形式。氏の持論はトンデモに聞こえるが、いわゆる温暖化や廃棄物問題にしても、再考の価値が多々ある。つまり、省エネや新しい消費材の普及を国連及び政府が号令することにより、世界各国営利企業が開発を競い、無駄な購買を煽るなど確かにあるからだ。しかし、読み手に対する敬意が決定的に足りない。例えば殺処分される犬を廃犬と呼び、殺処分するくらいなら食料自給率を上げるために食べたらどうだなど、表現が乱暴で到底受け入れられない。知性の下品な発露と呼びたい。真剣に読む気が削がれて残念。
読了日:03月30日 著者:池田 清彦,養老 孟司

雪男は向こうからやって来た (集英社文庫)雪男は向こうからやって来た (集英社文庫)感想
「雪男はいない」は証明できない。そして著名な登山家を含め幾人もが同じダウラギリ山系近くで目撃したとあっては只事でない。日本での調査と現地での探索との構成が綿密で、飽きさせない。そこは物理的にも精神的にも、人間には尋常ならぬ場所だ。様々な条件が重なったとき、人は雪原に「目撃する」。エピローグで著者は、現地での自身の体験と心象の変化、目撃者の証言や客観的データを冷静に分析する。この真面目さ、私は好きだ。タイトルも、その意味がわかった瞬間、人生の運命の不思議さに震えた。良いノンフィクション。続編ぜひ期待します。
読了日:03月28日 著者:角幡 唯介 ファイル

日本人は何を食べてきたか―食の民俗学日本人は何を食べてきたか―食の民俗学感想
マクドゥーガルによれば、クレタ人たちは低糖質の質素な食事によって身体のパフォーマンスを最大限まで発揮したという。では、高糖質の米を主食とする日本人はどうだったか。日本人もかつては、現代人が信じられない程高い身体能力を発揮していた。実は米が半分も入らない糅飯(かてめし)を主食に、地で採れる菜と共に、一汁一菜で少しずつ食べていたようだ。「白い米をいっぱい食う」は貧しさ故の幻想でしかなく、現代日本人は明らかに食べ過ぎである。ちなみに冠婚葬祭等で供される会席が食べきれない量なのは、家内に持ち帰る宗教的慣わしの為。
読了日:03月25日 著者:神崎 宣武

辺境中毒! (集英社文庫)辺境中毒! (集英社文庫)感想
息抜きに。2011年までに各紙に掲載されたもので、主にアジアでの単行本からはみ出たエピソードと、対談。対談相手には内澤さんや角幡氏もおり、話の盛り上がりようを見ると、系統は近いのだろう。「未知の本当」は私の大好物だ。話の内容から、対談と各氏の著作との時系列がわかる。ブックガイドも面白そうで、漏らさずメモを取った。なぜなら、他方面からこれらの本を紹介される機会はないと予想されるから。底抜けに面白い高野本の、骨となる考え方をうかがい知れる。他の長編を読んでからがおすすめ。『旅に持って行くには燃費のよい本』。
読了日:03月22日 著者:高野 秀行 ファイル

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)感想
「焼畑的」とは言い得て妙で、将来の資産である農地をどんどん潰して、20年程しか持たない一軒家や賃貸住宅を建てる風景はもう珍しくない。中高層マンションも増える一方で、個人・企業とも余りに近視眼的だ。原因は1968年に制定された都市計画法の緩和改正、地方分権としての市町村への権限移譲に主にあると見た。超高齢化と人口減少が確実な日本で、もはや建物や土地は資産にならない。行政の再規制・誘導が急がれるだろう。放棄された空き家を管理し、有益な運用を担う非営利組織「ランドバンク」が興味深い。日本でも検討されたようだ。
読了日:03月19日 著者:野澤 千絵 ファイル

石牟礼道子歳時記 (1978年)石牟礼道子歳時記 (1978年)感想
1978年刊。ご本人が「歳時記」と銘打って選んだのではないだろう。装丁は素敵だが、ただ12編のエッセイ集だ。著者の文章は多数あるだろうに、なぜこれらが選ばれたかは不明。日々の描写の、身に沁み込んだ暮らしの様子や、おそらく意識せずに使うような土地の言葉が滋味深く、面白い。まだ見ぬ子孫のためにと年寄りが果樹を庭に植える習わし「手型の樹」、不知火湾へ牡蠣など海のものを採りに行く高揚感など、生き生きとして胸が切なくなる。ただ、石牟礼文学の魅力は人々の発声する「言葉」にあると私は思っているから、もの足りなく思った。
読了日:03月18日 著者:石牟礼 道子

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲感想
社会で女性が働くことにまつわる問題と、解決の糸口を提起する。COOの地位は、強固な野心ではなく、やりたいと思った仕事を選んだ結果だ。しかし女性故に、交渉や提案には男性の何倍もの注意と先回りが必要だった。自分を殺さず、より良く生きるための考え方を書き留める。男女問わず、キャリアパスは今や梯子でなくジャングルジム。道は一つではないと考える柔軟さと、長期の計画を立てない勇気。率直に個人的な事情を明かし相談する勇気。感情は仕事と切り離せないものと認める勇気。自分にも他人にも厳しいことを良しとしてきた私への提言だ。
読了日:03月18日 著者:シェリル・サンドバーグ

ゆるめる力 骨ストレッチゆるめる力 骨ストレッチ感想
骨が豊かと書いて體。筋肉ではなく骨を意識し、身体の連携を保ったままで身体をゆるめることに主眼を置く。身体のストレッチ本は多々あるけれど、このメソッドは流行りものと流すのはもったいないと思う。まあ、私は自分の身体感覚を信じることができない性質なので、甲野先生の思想を受け継ぐ方の着眼したメソッドなら間違いないという論理だ。自分に必要なメソッドを備忘の為に書き出す。手首肩甲骨ストレッチ、鎖骨ひねり、手首腰伸ばし、烏口突起ほぐし、腸ほぐし、マグロの中落ち、手ほどき・足ほどき、手のひら返し、中指ウォーキング。
読了日:03月18日 著者:松村 卓

限りなく完璧に近い人々 なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?限りなく完璧に近い人々 なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?感想
遠く離れた北欧の社会システムを日本人は賛美する。世界的にその傾向は強く、著者は集団妄想を粉砕すべく貪欲に調査した。5か国各々を訪れ、扱き下ろし、持ち上げ、歴史や政治、生活、国民性、その差異を上手く描写している。互いに近隣国に思うところがあっても、総じてうまくいっているようで、やはり麗しく、魅力的だ。「人生を主体的に生きる」社会を希求し、なお変わることができる柔軟性がある。北欧ミステリは総じて陰惨だが、社会の暗部を憂慮する面が強く出るのだろう。時間をかけて読んだのに、やはり国がごっちゃになった。
読了日:03月16日 著者:マイケル・ブース ファイル

北海に消えた少女(ハヤカワ・ミステリ文庫)北海に消えた少女(ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
口も腕も立つ女性ジャーナリスト。全力で仕事をこなし、恋を選ぶこともできる。しかし社会が男女平等を標榜しようとも、心身を脅かされる危険性は男性より女性が断然高いと著者は明に暗に示す。残虐な犯罪を追う中で、主人公は身の丈を超えた危険の予感に震える。助けを求めたときに、警察も家族も当てにならないと知った絶望感が、独力で事件を解決する方向へと彼女を動かす。翻訳も含め、小説として洗練されていないことにより、心許なさが増幅される。服の管理ができないなど細かいキャラ立てが上手い。恋の行方にはこちらが焦がれ死にしそうだ。
読了日:03月10日 著者:ローネ タイルス,Lone Theils

方丈記方丈記感想
鎌倉時代のエッセイ。老境に至り過去を思い起こして書き残したもの。案外短い。古文の素養が程々でも、素読で大意は掴める。学生の頃は、なるほど昔の日本人は粗野で卑しかったんやなぁと感慨していたが、こちらも大人になると現代の日本人もなんら変わらんなぁという感想に変わる。方丈とはいえ立派な構築物だし、隠棲とは羨ましくもあるけれど、鴨長明も覚ったようでいて、なにがあったんか知らんがひねこびた性格が捨てきれない業がにじむ。静かで憂いない、自分の為だけの暮らし。飢饉のとき、山へ移り住んだ人々がいたという。困ったら山だ。
読了日:03月08日 著者:鴨 長明 ファイル

遺言。 (新潮新書)遺言。 (新潮新書)感想
丁寧に書かれたエッセイ。行儀よく論理が並び、得意技の縦横無尽飛びも無し。ただし必要と考える以上の説明は突っ撥ねられるから、襟を正して読む気にさせられる。さて、ヒトの社会は「意識」ありき。論理的なはずの説明に、養老節が可笑しすぎる。しかしそれはヒトの存在を自ら限った場所に置く行為のおかしさでもある。情報や科学をヒトが世界を理解するための手段とする一方、それが意識の仕業だと常に前提する必要があるだろうと。意識と感覚の乖離及び対立への警鐘。養老先生自身の人生を通じた探求との密接を感じ取れる論理が深い。脚下照顧。
読了日:03月06日 著者:養老 孟司 ファイル

小暮写眞館(下) (講談社文庫)小暮写眞館(下) (講談社文庫)感想
当然ながら、花菱家にも闇はあるのである。上巻で丁寧に張られた伏線は、下巻で丁寧に回収される。わずか、ついに小暮さんには会えなかったことが、心残りのような余韻として漂う。宮部さんは「模倣犯」のような辛い物語を書くのが嫌になったと言う。読み手だってそうだ。人生の機微を知るほど、登場人物の痛みを無意識に汲んで、実生活に響く位の衝撃を受けることだってある。だから、痛ましい事件の起きない物語を求めるのだ。ただ、刑事事件が起きないからといって、痛みがないわけではない。ピカちゃんの涙は、大人の悲しみを超えて余りあった。
読了日:03月02日 著者:宮部 みゆき

あなたに褒められたくて (集英社文庫)あなたに褒められたくて (集英社文庫)感想
父が自身の母を亡くした春に。タイトルの「あなた」はお母様のことと予感して手に取ったエッセイ。あの口調で思い出を語り、読み手の情を喚起する、成熟した男の象徴、高倉健。だけではなかった。好んで重ねた外国への旅や、故郷の北九州の海のエピソード。でも、格好良いだけの本にはしたくなかったのだろう。欲しくなった物は後先考えず買っちゃう困ったさんだったり、映画撮影現場のスタッフにしかける嘘やいたずらが小学生みたいな発想で、かつ犯罪すれすれだったり、ついには「もてる」って自分で言っちゃった。偶像視、してたみたい…。
読了日:03月01日 著者:高倉 健 ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 08:43Comments(0)読書

2018年03月13日

伽藍山

国分寺町から見える岩面が特徴的な里山、伽藍山。



あの大きな岩面はどんな手ざわりなのか。
山頂まで上がれるというけれど、どうやって登るのか。
見るたび気になっていました。

高さは216m。昼過ぎに出かけても全く余裕です。

山の南側、県道12号三木国分寺線から入ります。
調べると、石鉄というのは石鎚のことらしい。つまり石鎚大権現。
萬燈寺の記録は西暦1700年代のものが新居家に残っているらしい。
地名の新居は、福家や新名と同じく大きな家の名字なのですね。



意外に人の歩いた跡のある登山道を上っていくと、
自動車が通れる幅の、舗装されていない道に合流します。
路肩に置かれたお地蔵さんたちに見守られながらの突き当たり、
小さな建物は、登山口に名前のあった薬師如来のお堂のようです。
脇には、岩壁に掘られた不動明王が赤々とした炎を背負って見下ろしています。
その右にあった階段は、後から考えると大きな岩面の下へ出る道。
私はお堂の先、赤く細い鳥居をくぐる道へ進みました。

木の幹に巻かれた赤いテープがないとわかりづらいけれど、
入ってみれば確かに人の歩いてできた道とわかります。
大仰な整備はされていないものの、里山らしい歩きやすい道です。

寒い時期の里山は、木の葉が落ちて見通しが良くて好きです。
国分寺の町を眼下に、向こう側には鷲ノ山、五色台からの蓮光寺山、城山、飯野山も。



どうやら道は山の南から西へ廻り込み、大きな岩面の下を抜けたようです。
ここが岩面の西の端か。
先へ進んでみると、先ほどの岩面の下へ向かった道と合流したようにも見える。
岩面の向こうには六ッ目山、堂山。ふもとに六ッ目山古墳、高松道。



ここからが難所。
隣の六ッ目山と同じ質の、ベースとなっている岩山がむき出しになります。
六ッ目山と違って木々がまばらなぶん荒々しさが勝ち、身が引き締まります。
改めて見ると、よくこんなとこ登ったものだ。



しかし、その「こんなとこ」に信仰の場を構築した痕跡を見、昔の人の凄さを思い知ります。
明らかに石垣ですよね。人力で積んだのか…。



回り込むようにして、石碑の奥、木々に囲まれた、小さな、しかし古い祠。
こころなしか、ここだけ緑が鮮やかなような。
石碑によれば、萬燈寺。
私でも感じるような、神聖な雰囲気に写真は自粛しました。



さらに西側へ回ると、八大竜王の祠。これも古い。



その先に、山頂の標示と三角点。
木の裏側、斜面を落ち込んだところにも石垣で築かれた何かが見えます。
おっと左手、先に道が見える。



六ッ目山と伽藍山、その北の狭箱山(はざこやま、万灯山とも)は"おにぎり山三兄弟"。
先に登った方々のブログによると、縦走できるが基本的に藪こぎとのことでした。
その後、私のようにブログを読んで登る人が多くなったのだろうか。
登る人が増えれば、道ができる。維持される。
行ってみたくてうずうずするが、予定していなかったので元の道を戻る。
岩肌は後ろ向きでないと下りられませんでした。

赤い鳥居から西へ向かう道を下りて行くと、寺の境内へ出ます。
鐘楼があって、それらしいけれども、建物がお堂の感じではなく、不思議です。

そのまま西へ下ると国分寺町の万灯地区。
ここには知る人ぞ知る萬燈珈琲店があります。



想像以上にかわいい。メニューも充実。
またモーニングに来よう。ランチにも来よう。



伽藍山は里山にしても低いし、ガイドブックにも載っていないような山です。
しかし人里に近いからこそ、昔の人の生活や信仰の痕跡がたくさん残っており、
それらに出会うのが里山歩きの醍醐味だなぁと改めて思いました。
次回は、今回歩かなかった岩面下ルートと、縦走ルートを歩いてみます。
  


Posted by nekoneko at 13:36Comments(0)歩く、登る

2018年03月01日

2018年2月の記録



「私の師匠」と勝手に決めた方に、本屋でお会いする機会がありました。
話している間にも、読みたい本が増える増える。
しかしその方の目前で本を買うのは、たいして興味を持って見られてはいないであろうに、
洗ってない顔を見られるくらい恥ずかしくて無理でした。

<今月のデータ>
購入17冊、購入費用9,873円。
読了10冊。
積読本108冊(うちKindle本20冊)。

ブック

ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った“野生"のスキルをめぐる冒険ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った“野生"のスキルをめぐる冒険感想
ゼウス生誕の地、クレタ。そこには身体操作にまつわる随一の知が現存している…。軸を第二次世界大戦下のクレタ島における対ナチス抗戦に置きつつ、世界あちこちに飛ぶ挿話は冗長に感じる。主題を二つ設定したのは欲張りだろう。しかしすぐに、前作並みの熱い展開に引き込まれた。私が興奮したのは現代にも生きる英雄の技術のほうだ。パルクール、詠春拳、ナチュラル・ムーブメント、他にも。真の身体への探索と、神話や叙事詩に『役に立つ肉体というギリシャの理想』を読み取る辺りなど、鳥肌ものだ。【命の再野生化】を私の生涯目標としたい。
読了日:02月24日 著者:クリストファー・マクドゥーガル ファイル

小暮写眞館(上) (講談社文庫)小暮写眞館(上) (講談社文庫)感想
表紙の印象からは思いがけない方向へ展開されようとしているのを、私は安心して楽しんでいる。身を委ねている。だって宮部みゆきだもの。東野圭吾とはまた違った職人技で、上巻は起承。場がつくられ、伏線が張られた。若い子たちが主人公なので、私の現実のヘヴィさからすれば気楽なものだ。なんて油断していたら、下巻でヤられるのかもしれぬ。楽しみだ。
読了日:02月23日 著者:宮部 みゆき

100年予測 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)100年予測 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
世界各地における支配と収奪がアメリカの存在意義であるような考え方だ。紛争を誘発し介入することで自国の立ち位置を確保している国、アメリカの世界支配はまだ100年続く「予測」にうんざりした。結局のところ世界の模範だの正義だのは虚構でしかない。確かにアメリカには地政学的アドバンテージと人的・物的資源のポテンシャルがある。対して日本は、地政学的にも、資源的にも、人口的にも今後増強は見込めない。だから次にアメリカに戦争を仕掛けるのは日本との論の立て方は、予想である以上否定もないが、あえて何かを見落としている。
読了日:02月16日 著者:ジョージ・フリードマン

ふたごふたご感想
彼らの関係は、実に稀な均衡の上に成り立っている。月島/深瀬のあやうさが核にあり、病名がつこうとつくまいと、彼の在りかたこそが独特であり、それを描写しえたところにこの小説の評価はある。唯一無二の声で歌う彼の言語が私の心を掴んで離さない理由は、痛みを知った者の生々しい強さだ。さて、彼とふたごであった生きかたを区切る気持ちが、藤崎彩織にこの小説を完成させたように感じる。彼らのうち二人が伴侶を得た今、均衡は揺らがざるを得ない。小説は彼らのデビューで明るく終わるが、どこか喪失を予感させるような切なさが後を引いた。
読了日:02月11日 著者:藤崎 彩織(SEKAI NO OWARI) ファイル

橋をかける (文春文庫)橋をかける (文春文庫)感想
IBBYこと国際児童図書評議会の世界大会における皇后美智子様のご講演2編。社会的責務に基づく活動、とはいえ多々様々な依頼があることだろう。さて、子供時代の読書体験など、興味深く拝読した。美智子様とて戦争は他人事ではなく、疎開もされている。真摯な語り口を直に聴いたなら、どんなに胸を打たれたことかと思う。中でも日本神話を読まれたときのお話が印象深い。倭建と弟橘媛の物語から感じられたという、意志的な犠牲、愛と感謝が、今の美智子様の芯に持たれているお気持ちと明確に通じて想像されるのは、余りに短絡的だろうか。
読了日:02月09日 著者:美智子

図解入門ビジネス最新産廃処理の基本と仕組みがよ~くわかる本[第2版] (How‐nual Business Guide Book)図解入門ビジネス最新産廃処理の基本と仕組みがよ~くわかる本[第2版] (How‐nual Business Guide Book)感想
排出事業者向け。産廃処理の現状、マニフェスト制度の仕組み、不法投棄の現状、関連法の概説など、環境省の発表データに沿った丁寧な記述でわかりやすい。建設業絡みの不法投棄は大規模になりがちなので、建設業はより重点を置いて規制されていることもわかった。知りたかったのはそれぞれの産廃の定義と処理方法だったのだが、これを知ったことにより、排出事業者としての義務はもとより、可能な小さな工夫のアイデアも増えたと思う。当然ながら、産廃排出量の抑制と、より正確な分別は望ましい。エコアクション取るべきか、本腰入れて検討すべし。
読了日:02月08日 著者:尾上 雅典

ダーク・タワー〈7〉暗黒の塔〈下〉 (新潮文庫)ダーク・タワー〈7〉暗黒の塔〈下〉 (新潮文庫)感想
長い旅だった。しかし小説の終盤には唖然とさせられ、物語の意味を考えた。思うに、これは失敗の旅だった。ローランドが非情だったから。象徴を失くしたから。だから<カ>は古い、しかし変容した世界にローランドを送り込んだのだ。真の心を手に入れた今、彼は心と自身の身体をいや増して痛めながら進むだろう。角笛を取り戻した次回こそは、旅を本当に終えることができるだろう。その塔の前には<カ・テット>が揃うべく<カ>が働くはずだ。さて、結末は唯一無二とキングは断言した。その物言いからして、キング自身の魂の決算は成されたようだ。
読了日:02月07日 著者:スティーヴン キング

大家さんと僕大家さんと僕感想
これ、才能でしょう。大家さんとのやり取りのじんわりした温かさや、観察眼、絵の嫌味の無さ。笑いのパターンを踏みつつも、失礼ながら、テレビでの冴えない印象をぶっ飛ばして余りある。いや、テレビの人を馬鹿にした笑いとは異質の、人の心を緩める笑いを彼は知っているのだ。優しい。私はそのほうが好きだ。高齢の大家さんという、終わりがすぐそこにあるかもしれない儚さも手伝って、味わい深い。矢部さんと大家さんのランデヴーが1回でも多く続きますように。
読了日:02月05日 著者:矢部 太郎 ファイル

ある日うっかりPTAある日うっかりPTA感想
最初のPTAに参加した経緯こそ「らしい」と思ったが、なんだ、さすがの杉江松恋も我が子の為ならば長いものにも巻かれるのか。と流し始めたらどっこい。豚の丸焼きパーティー、なんて楽しそうなんだ。可能な範囲で無駄を省き、可能な範囲で子どもの為に活動する。この可能な範囲、というのはけっこう広くて、保護者も教職者もいろいろ、動機も色々なのだな。会社員の経験があって、大事些事含め処理能力も高いからこのように収まって見えるが、人間関係は「どこでも揉める」は間違いないようだ。素敵な祝辞は必読。杉江松恋、かっこいい。
読了日:02月03日 著者:杉江 松恋 ファイル

ユリイカ 2017年11月号 特集=スティーヴン・キング ―ホラーの帝王―ユリイカ 2017年11月号 特集=スティーヴン・キング ―ホラーの帝王―感想
キング特集。本誌の方向性を知らずに買って面食らう。文学史の流れで俯瞰するような仰々しい講釈には興味がないし、映画はキングであってキングでないし、ましてやあらすじなど不要である。好きでディープにキングに浸かってきた人の文章がやはり面白い。装画の藤田新策氏の話が興味深く、しみじみ表紙を眺めてしまう理由がわかった。宮部みゆきや小野不由美をキングチルドレンと呼ぶならば、私自身、思春期以降をどっぷりキングの流れにまみれてきたことになる。骨の髄まで染みているだろう。私にはキングは唯一無二。他と比べることなどできない。
読了日:02月01日 著者:スティーヴン・キング,恩田陸,風間賢二,広江礼威


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 09:22Comments(0)読書

2018年02月01日

2018年1月の記録

何がきっかけだったか、煩悩が暴発。
もっと読みたいけど、社会と家族の手前、幾分我慢している気持ちとか、
読みたい本、特にノンフィクションものは、早く買わないと絶版になる焦りとか。
根源的な煩悩を三毒と呼ぶそうです。
そのひとつ「貪」(とん)は、むさぼり求める心。まさに。

引き換えに、今年の自分ご褒美チョコは自粛とします。



<今月のデータ>
購入14冊、購入費用17,468円。
読了9冊。
積読本102冊(うちKindle本18冊)。


ブック

ねずみに支配された島ねずみに支配された島感想
壮大な絶滅物語。大陸から離れた島は、固有種を育む。海が侵略生物の上陸を阻むからだ。しかしその海を人類の船が渡るようになると、意図的にも偶然にも人間や持ち込んだ生物が侵略種となり、固有種を幾つも絶滅させた事実は動かせないと思う。海鳥がいなくなれば植物体系も損われる。そして今や生態系バランスを元に戻すため、保護団体は侵略種を毒や銃で殲滅している。侵略種とは、海鳥の場合は主にネズミだが、イエネコだって含まれるのだ。固有種保護のために侵略種を殲滅する行為の是非は、私には判断できない。本当にその手段しかないのか…。
読了日:01月28日 著者:ウィリアム ソウルゼンバーグ

直感はわりと正しい 内田樹の大市民講座 (朝日文庫)直感はわりと正しい 内田樹の大市民講座 (朝日文庫)感想
じゅうぶんにリーダブルである。2010年代、メディアが報じた政治や行政の時事が持つ意味を、振り返れば鮮やかに理解できる。日本は取り返しがつきそうにない転換点をいくつも過ぎた。そして今も繰り返している。それを踏まえて、今後どうすればいいか。特に個人がどうあるべきかに私は関心がある。私は自助、次に共助が大事だと思っている。自分と大切な人たちが生き抜くための方策を構築し、着々と進めたい。ただし、コラムに頻出した他人を蹴落としたり、自分の利を優先する発想とは違う、「大市民」の在り方がなんとなくわかった気がする。
読了日:01月25日 著者:内田 樹 ファイル

巨流アマゾンを遡れ (集英社文庫)巨流アマゾンを遡れ (集英社文庫)感想
アマゾン川の源流を目指す旅。若い物言いと、定番の土臭さで、高野さんらしい王道の旅行記を満喫した。野暮というのではなく、やはりこういう、その土地の匂いに雑じっていくスタイルが良く似合うのだ。しかし、あとがきにより執筆の依頼内容はガイドブックだったと知って爆笑した。ツアーの欺瞞に憤慨して離脱してしまうのだ、一般旅行者の参考にはならんやろ。開高健の「オーパ!」のように、コアな探検旅のガイドブック、いや、魂を誘うバイブルとして秀逸な旅行記。レヴィ・ストロースやリョサなどさらりと読んでいる辺りのギャップにやられる。
読了日:01月23日 著者:高野 秀行 ファイル

「筋肉」よりも「骨」を使え! (ディスカヴァー携書)「筋肉」よりも「骨」を使え! (ディスカヴァー携書)感想
筋トレは身体を硬化させる。ストレッチで無理に柔らかくした筋肉にはバネがない。思い当たる節がある。"體"は骨が豊かな身体を指す。筋肉ではなく、體の一番中心にある骨で動くこと、やってみようと思う。ただ、わかり難い。『まず骨が動き、筋肉が従う』。頭を使わず、身体の感覚、反応にゆだねる…とは私の従前の課題だが、『どうしても余計なことがついてくる』ので迷うのだ。『面白くて命懸け』が上達の要件と挙げられている。できるかできないか頭で判断する余地がない状況を自分でつくるのだ。しかも楽しい、と言ったら、やはり私には山か。
読了日:01月19日 著者:甲野善紀,松村卓 ファイル

このミステリーがすごい! 2018年版このミステリーがすごい! 2018年版感想
もう読まないと宣言しつつ買ってしまうのはもはや年中行事だからと開き直ろう。たぶん読めないであろう、読みたい本をチェックする。30周年記念、昭和63年のこのミス収録。当時、私はまだミステリを読む年頃ではなかったが、綾辻行人をはじめ新本格の萌芽した時代、後年遡って読んだ本がちらほら見える。宮部みゆきと綾辻行人の対談with大森望が良かった。『すごくしあわせなことに、たぶん、自分が好きなもの、書きたいものをずっと書いてきたよね』。私もそれを好んで読んできた。来し方を想って胸がキュッとした。私もこの時代の子だ。
読了日:01月18日 著者:

月と六ペンス (光文社古典新訳文庫)月と六ペンス (光文社古典新訳文庫)感想
なんと鮮やかにこちらの視界を転換させる小説か。ストリックランドは世間の常識や良心全てに外れた行動に出る。読者は彼の言い草に憤慨し、妻に同情し、ストルーヴに呆れるが、パリでの言動から彼の核心に薄々気づき始める。タヒチでの彼の様子には胸を突かれ、憧憬した。彼が自身の魂に忠実に求めたものが露わになるからだ。生い茂る生命の静けさの中で、彼は幸せに死んだ。この時点で物語の印象は反転しているのだが、語り手がヨーロッパに戻ることで、モーム一流の皮肉が全開になる趣向である。ストルーヴの心は報われたのか。パトロンて大変だ。
読了日:01月17日 著者:ウィリアム・サマセット モーム ファイル

五感経営 産廃会社の娘、逆転を語る五感経営 産廃会社の娘、逆転を語る感想
建設業界にいると凄まじい産廃量に震撼する。業者が出すのではない。日本人全員が出し続けているのだ。なのに悪印象がつきまとう理不尽さ。著者は焼却事業から産廃の減量化・リサイクルへ舵を切り、環境教育にまで昇華させた。リサイクル率は95%。リサイクル率向上すなわち利益率向上とあれば、言うことなしだ。私は人を巻き込んで進むタイプではないが、著者も当初は違った。ただ、明るく、隠し事のない、体当たりな姿勢は必須なのだ。人口減少のなか『働き続ける価値があると思える会社をつくれるか』は鍵。同族経営、事業承継も大きな主題だ。
読了日:01月12日 著者:石坂 典子 ファイル

ダーク・タワー〈7〉暗黒の塔〈中〉 (新潮文庫)ダーク・タワー〈7〉暗黒の塔〈中〉 (新潮文庫)感想
間もなく虐殺されると知りながら膨大なキャラを覚えるのは面倒、とばかり気を抜いていたら、カ・テットの輪があっけなく欠けた。愛着のあるキャラの死。私が悲しいのではない、残された者の悲嘆を思って涙が止まらないのだ。キングは意識的にカ・テットの最後を俯瞰して描いた。作家は神ではなく預言者だから、この死は自分が望んだのではないとうそぶくのだ。しかしキングの存在が物語に挿入されたことで、ローランドはキングを存分に憎み蔑むことができる。殺すかと思った。『ぼくたちは<暗黒の塔>を救うんだ』。それほどの塔ってなんだよ。
読了日:01月04日 著者:スティーヴン キング

もぎりよ今夜も有難う (幻冬舎文庫)もぎりよ今夜も有難う (幻冬舎文庫)感想
映画やもぎりという職への思い入れに満ちたエッセイ。はいりさんの文体は映画館への思いで高揚しており、それぞれのタイトルが映画タイトルのもじりになっていたりもして、楽しい。当時の映画館の様子は、20年ほど前まで高松にもあった東宝や、今もあるソレイユを思い出させる。今は当たり前のようにイオンシネマに通っているけれど、古いカウンターやガラスケースの中の菓子、レトロな扉、完全入替制でないような映画館の記憶は私の中にも残っていたのだ。そう、ポップコーンじゃない。映画に熱狂する気持ちは、残念だけど共有できなかった。
読了日:01月02日 著者:片桐 はいり ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 08:45Comments(0)読書