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2017年11月01日

2017年10月の記録

世界には知らないことがたくさんある。
知ることだけが大事ではないし、
文字にならない、大切なこともたくさんある。
でも、知ることはこんなにも楽しい。

<今月のデータ>
購入11冊、購入費用10,388円。
読了13冊。
積読本92冊(うちKindle本14冊)。

ブック

七つの会議七つの会議感想
会議も様々なら、人も様々な立ち位置に配され、ぐいぐいとひとつの核心に近づく展開はもはや職人技だ。大企業の不正は今日の時事とぴたり重なる。なぜ企業人は道を踏み外すのだろう。今作、軸となる人物には必ず来歴が挟まれる。家族や家業、進んできた道。大企業系列会社に就職できる人間なら、ごく普通と言っていい。しかし業績やノルマの圧迫に折れる時、言い訳をし、責任を逃れ、人の道に悖る手段を是とする。不正は、必ず起こる。内部告発のような自浄作用を期待するしかないのか。『いつも損な役回りばかり』と笑って言える生きかたがいい。
読了日:10月28日 著者:池井戸 潤

建築知識特別編集 猫のための家づくり建築知識特別編集 猫のための家づくり感想
曰く“猫ファースト”。猫を長く飼うと、人が快適に住まえる環境と猫が快適に住まえる環境の折り合いをつけることを覚える。両者は度々相反するが、もし注文住宅で一から家を建てるなら、猫最優先とはいかなくとも、両者が快適に住まえるつくりの実現をと夢見させる。著者たちは猫の生態や行動を知悉しており、仔猫から老猫、デブ猫の為の安心空間のつくり方まで、建材の材質、形、サイズ、配置など配慮が惜しみなく注ぎ込まれている。人間工学と猫工学の一致しない狭間こそ設計のねらい目のようだ。いつか家を建てる日の為に取っておく価値あり。
読了日:10月23日 著者:

成長から成熟へ さよなら経済大国 (集英社新書)成長から成熟へ さよなら経済大国 (集英社新書)感想
広告業界ど真ん中で感じ取った時代の変転。物質的な豊かさを求めた高度成長期から、1980年代には製品づくりも広告づくりも袋小路、大量消費社会の広告は薄っぺらになっていた。「ほしいものがないけど何か買いたいから福袋を買う」のが現代との評がいい。もう経済成長にしがみついている場合じゃないのに、日本人に染みついた幻想、そして経団連や与党が妄想をやめるには、人が代替わりし、時代が変わらないと無理だ。いま広告に望めるのは、広告主の代理店から消費者の代理店への移行だと著者は言う。なら、広告もそう悪いばかりでもないよな。
『これからの広告に可能性があるとすれば、夢の現実化のためのアイデアを出したり、実現のために集まった人々の運動を支援したりするようなところにあるんじゃないでしょうか』
読了日:10月21日 著者:天野 祐吉 ファイル

ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)感想
「ソマリランド」で使われた手法は、ここで生れたらしい。つまり、ミャンマーの政情を日本の歴史上の人物になぞらえて描いたのであって、本物の柳生家が渡緬した訳では決してない。読み終えてからミャンマーの歴史に目を通してみたが、柳生とか伊達とかくっついていないとわからないのに苦笑した。いつもの旅よりも政情に重心はあるも、著者本来の文化や人への好奇心がこの本を「らしい」ものにしている。『アジアの民族・信仰・文化が縦横に交錯している』雰囲気が、ミャンマーを魅力的に見せ、また今後の発展を期待させる。行ってみたい。
読了日:10月20日 著者:高野 秀行

増補 学び舎中学歴史教科書 ともに学ぶ人間の歴史増補 学び舎中学歴史教科書 ともに学ぶ人間の歴史感想
灘中他が採用して問題と言われた教科書を読んでみた。いやはや、大人にもおもしろい。数十年前とは解釈が変わったり、新しく発見された事柄が追加されたりした所為もあるが、当時の子供の日記や絵などの興味をそそるような仕掛け、多面的な表現が工夫されている。売国的とは決して思わない。教科書のちょうど真ん中で1800年である。つまり近代以降の帝国主義、世界大戦、冷戦、それらの副産物としての世界の紛争に頁を多く割いて東日本大震災まで。これからの世界を生きる子供達に必要な要素が考え抜かれている。私は喜んで子供達に読ませたい。
例えば高句麗へのふりがなが「こうくり」と「コグリョ」の両方表記される、日本軍の進駐各地での略奪や爆撃、従軍慰安婦の記述、蝦夷地と琉球王国が別項で記述されるなどの特徴が、「愛国的」な日本人の気に障るのだろうと推測される。竹島の領有やロシアとの北方領土のやり取りもしっかり書かれているし、公平な視点を心がけてある。「先進国」と呼ばれる国が「後進国」と呼んだ国々に何をしたか、また日本がアイヌや琉球をはじめ、朝鮮、中国、東アジア諸外国に何をしたか、日本人は皆、政治に歪められない歴史を知っておく必要があると私は思う。
読了日:10月18日 著者:

昭和の犬昭和の犬感想
『犬、ときに猫のいる風景』。戦後に産まれたイクの周りには犬がいた。現代のように家の中までべったりの飼い方ではなく、家の外で、繋留もしない、出入り自由な昭和の飼い方は私もおぼろげに覚えている。犬たちをひとつのレイヤーとしたイクの人生が淡々と、点々と描かれる。底抜けに理不尽な両親の管理下にあった子供時代から、心身ともに健やかと言い難い中年時代まで、「恵まれていた」とイクが思っているらしいことに心底驚いたが、考えてみればどんな人生も肯定しなければ生きていられないのだ。イクと、時代の流れと、犬。その風景。
読了日:10月17日 著者:姫野 カオルコ ファイル

「不思議な会社」に不思議なんてない「不思議な会社」に不思議なんてない感想
DMを見た時は電気屋がコンサルで稼ごうなど邪道だと思ったが、この本には大いに刺激を受けた。公共工事は要求基準さえ満たせばよい。しかし一般顧客には期待以上の何かがなければ次へつながらない。そして顧客にそれを供与する現場員が喜んで修理や集金へ出て行く状況、これは経営者の夢である。小工事の際、その場で見積から集金までできる端末があるのは強い。時短と社員の成長の両得だ。『新しい仕事を覚え、可能性の幅を広げることは、誰にとっても喜び』。小口の仕事こそ経験と自信を積み、大口の仕事を得る機会である。これが私の気づきだ。
読了日:10月17日 著者:荒木恭司 ファイル

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬感想
『その姿を日本で見られたら、みんなに笑われるだろう。だけど、みんながいないからぼくは真っすぐに楽しめた』。予想どおりの、良い人柄の表れた、読みやすい日本語の文章。明るいキューバ旅行を意外な積極さで謳歌する様子を一緒に楽しめる。しかし、彼には単なるエッセイで終わらせない、文学的企みがあったようだ。その徴を確かめに読み返させられて、感心しきりだった。にくいことするなぁ。どんどん書いてほしい。
読了日:10月12日 著者:若林 正恭

ほつれとむすぼれ (角川文庫)ほつれとむすぼれ (角川文庫)感想
年の功のうちか、近頃は深く考えずとも、無難な道を直感で選ぶことができる。嫌な出来事をするりと忘れることができる。知ることへの意欲は旺盛な一方、触れ、会いに行き、話し、考えることを私はしているだろうか。得た知識の中から今の気分に近いようなものを拾い上げて、さも自分の頭で考えたように唱えていないか。考えることはしんどい。でもランディさんは飛び込み、肌で感じ、遠回りなような道をぐるぐる考えて歩く。毎回同じことを言うけれど、ランディさんの本はこういう刺激を与えてくれるところがいい。アート、写真、岩。触れてみよう。
読了日:10月11日 著者:田口 ランディ ファイル

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)感想
読後に一抹の不安や苦味、ときに希望を残す不思議な短編たち。どれも沁みる。中国とアメリカ。東欧と西欧。伝統社会と情報化社会。集積知と新興知。アンビバレントな二つの世界はグローバル化と共に入り交じりつつあるように見えて、どうしようもなく隔絶している。その深淵に惑う人々というベースの上に物語が生まれる。たぶん、著者の拠り所は中国側にはないのだが、中国や東洋人の持っている何かが彼を触発するのだろう。異文化人との邂逅というテーマを、SFの形を取ってこんなふうに表現できることが私には新鮮だ。好みの作家に出会った。
読了日:10月09日 著者:ケン リュウ

ダーク・タワー〈6〉スザンナの歌〈下〉 (新潮文庫)ダーク・タワー〈6〉スザンナの歌〈下〉 (新潮文庫)感想
キングの遊び心か必要からか。いずれ、本人による描写の奇妙さに笑ってしまう。暗黒の塔、あるいはローランド自身がいかにキングを挫折させ、また呼び戻したか、なかなかに混沌とした綾が織り込まれた。キング家のリアルで読者をにやにやさせてからの痛撃は、キングにもキング信者にも運命の分岐点となった日付に当然重なるのである。一方、問題はマイア。妊娠発覚の辺りから私に生じた、嫌悪感といってもいい程の違和感は、この巻に至ってグロテスクを極めた。カ・テットではないマイアの葛藤を含め、何の為にこの要素が現れたのか皆目わからない。
読了日:10月09日 著者:スティーヴン キング

トルコのもう一つの顔 (中公新書)トルコのもう一つの顔 (中公新書)感想
トルコの民族問題といえばクルド人が頭に浮かぶが、その実、クルド人を筆頭にザザ人、ラズ人など「隠れ」「忘れ」を含め70以上の少数民族がいるという。多民族多言語多文化多宗教混交国家なのだ。しかし国家はトルコ人、トルコ語、トルコ文化、イスラム教しか認めない。国家権力による迫害を恐れ、表向きは皆「トルコ人」を名乗るが、どんなにか自らの民族を誇りたいだろう。古来からの世界の要衝地であるために余計に、意に沿わない暮らしを強いられる人々が多いと想像した。日本を含め、民族と国家は両立しないんじゃないか。歌を聴いてみたい。
読了日:10月04日 著者:小島 剛一 ファイル

玉子と土といのちと玉子と土といのちと感想
A4紙一枚ぶんの金網の上で、餌は配合飼料のみで、短い一生の間じゅう卵を産ませられ続ける。それが日本の鶏と卵だ。そんな卵を私たちは10円でも安くと買い叩いて食べている。いつか、広い地面を駆け回る鶏から産まれた卵をいただく生活をしようと、選んだ本。『両者の関係は歴史上、今が最悪』と著者は言う。大地の上を自由に走り回っている鶏の様子を読むと、やはりそうあるべき姿だと感じる。土から、太陽から、鶏たちは様々な恩恵を受け取っている。黄身を着色したり、ビタミンを餌に混ぜたりは、全部人間のためだ。おかしいと知ってほしい。
読了日:10月03日 著者:菅野 芳秀


注:ファイルはKindleで読んだ本。

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