2019年03月01日
2019年2月の記録
読む量と買い込む量が釣り合っていない。
積読を80冊台に減らした時期から一転、絶賛リバウンド中。
せめて質の良いものを摂取しよう。
<今月のデータ>
購入22冊、購入費用16,844円。
読了15冊。
積読本154冊(うちKindle本52冊)。

2月の読書メーター
読んだ本の数:15
混ぜる教育の感想
誰も彼も大学に進学できる時代、専攻と職業は必ずしも繋がらない。では大学へ進学した意味は何だったのかと、何度も自問してきた。今思うのは、大学時代はその環境、得た経験で人格をつくる時期だったということ。目の前に15歳の私がいたら「騙されたと思ってAPUへ行け」と言いたい。国際人になる為、国際的な企業に就職する為ではない。"サラダボウルのように"混ぜることで生じる視点や感覚は、現代の細分化された環境では得られ難いのだ。『「混ぜる」というのは混沌を認めること』。それこそ多様性の自覚、生きていくための強さだ。
読了日:02月27日 著者:崎谷 実穂,柳瀬 博一
BEASTARS 5 (少年チャンピオン・コミックス)の感想
おお! またギア上がった。そしてR18要素増えた。そうか、こういうのが描きたかったんか、と納得させてくれた巻。学園もので収める気がないことは、街に出た時点でわかってたことやわね。戦闘方法とか、ケモノネタがよく出てくるもんだなと感心。レゴシもいいキャラ。が。まとめ買いはここまでなので、ここから先も読見続けるかどうかは、Amazonのキャンペーン次第。漫画は私にはコスパが悪くていかん。
読了日:02月23日 著者:板垣巴留
BEASTARS 4 (少年チャンピオン・コミックス)の感想
漫画の連載って、こんな調子だったっけ。記憶が遠すぎて、楽しみにしてた感覚を思い出せない。ひと癖ふた癖ありそうなキャラが続々投入されるんだけど、ネタばらしや解決は先送り気味。日々過ぎていくのに、毎回なんかかんかは出来事が起こっているのに、あれ、もう1冊終わったんかい!だった。ケモノ女子の下着姿への違和感は慣れることも尽きることもない。
読了日:02月22日 著者:板垣巴留
武器なき“環境”戦争 (角川SSC新書)の感想
信頼できる情報の伝え手と信じるお二人の対談。色々唸らされた。出版から日が経ったぶん、じっくり経緯を俯瞰することができる。そもそも地球温暖化対策の流れは、先進国の道義的使命感で発生したものではない。軍事や貿易と同じ種類の、国対国の利権争いが常に裏にある。どの分野なら自国が主導権を握れるかと、各国はインテリジェンスを駆使して戦略をぶつけてくる。京都議定書は二酸化炭素排出権に関して日本がしてやられた墓碑みたいなものだな。『国際的なルールを変えることが、どれくらい大きな影響を及ぼすのか』を今後は考えてみる。
地球温暖化は人間によって引き起こされていることは、ほぼ間違いない。その過程もだいたいわかった。しかし、正確な予測はできないというのが研究者を含めた世界のコンセンサスだ。地球温暖化説の誇張や事実誤認はあっても、もう陰謀論は通用していない。IPCCの報告書等、最先端の知見にアンテナを張ること、メディアの派手な「絵」を鵜呑みにして思考停止に陥らないこと。その姿勢がリテラシーを育てる。
読了日:02月22日 著者:池上 彰,手嶋 龍一
アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)の感想
久しぶりに読んだ伊坂作品は都会的な短編小説。あれだけ人がいたら、人と人のつながりなんてできにくいし、表面的なつながりが切れるのも容易いだろう。そんな中でのちょっとした出会い。そういうのがぽつりぽつりつながって、簡単な編み目みたいになってる、その目の粗さに著者ならではのさじ加減を感じる。この作品、人気があると聞いている。魅力ってどの辺なんだろう。斉藤さん?…斉藤さんね!
読了日:02月21日 著者:伊坂 幸太郎
BEASTARS 3 (少年チャンピオン・コミックス)の感想
うわあ、シカ怖えぇ。ウサギも怖いが、ハイイロオオカミがなに考えてるか見当もつかん。顔中毛だらけなんだもん。そこが読み進めさせる理由ではあったんだけど、このあたりからギア入ってきた感じ。動物の性癖に乗っけた若者の普遍テーマ。ニワトリとかパンダとか、キャラもストーリーも展開が読めないのが楽しくなってきた。そうだそうだ。とかくテーマを読み取ろうとするのは悪い癖だ。読み始めから感じてたキャラの揺らぎが収まってきた。
読了日:02月21日 著者:板垣巴留
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)の感想
『私たちはいつか、今と似ていない時代を生きなくてはならなくなる』。地球上全てが凍った時代があり、南極にも北極にも氷床がない時代もあった。80万年前から現代までは、気温差20℃程度の寒暖を繰り返してきた。数万年分の水月湖の堆積物を中心とした物的資料が既知の現象や理論と一致する様は、真実を直感させる。人類が絶滅する可能性をどんな小説より近く感じた。気候は変わり続ける。二重振り子の喩えは妙で、数年での激変だってあり得るのだ。人類は生きられるところまで生きるしかないのだと思った。巨大な命題。胸震える熱い本だった。
20世紀の100年間で北半球の気温が約1℃上昇した事実を『東京は宮崎になった』、また日本の氷期が今より10℃ほど寒かった事実を『鹿児島が札幌だった』と表現するなど、一般読者が理解しやすくするための書き方の工夫が非常に的確。次作を楽しみに待ちたい。
今は気候が安定しているほうだ。しかし人類が繁栄している今は地球にとってはほんの一瞬の均衡状態でしかない。時が過ぎれば気候は変わり、気温が変われば植生も変わる。変動後には人類の生活スタイルそのものが激変せざるを得ない事実に瞠目した。農耕ができない気候の到来。遠からず人類は絶滅すると言った福岡博士の言葉を思い出した。問題は、デイ・アフター・トゥモローに続く日々なのだ。
温室効果ガスについての仮説。氷に閉じ込められた過去の大気を分析して得られる結果が、推測値を大きく外れて増加推移している事実がある。それも産業革命が起きた100年前頃からではなく、8000年前頃からである。そしてそれが、人類が森林伐採と水田農耕を始めた時期と一致することの意味を考える。ようやく、人間ごときが地球の気候に影響を及ぼすことなどできないのではという疑念を潰すことができた。さらには、人類が温室効果ガスを増やしたことが、氷期の到来を遅らせている可能性の指摘には、絶大なインパクトがある。
読了日:02月20日 著者:中川 毅
終わりと始まり 2.0の感想
2013年から2017年にかけて朝日新聞夕刊に掲載されたエッセイ。3.11、原発、沖縄、どれも大事な問題だし、正当な論だと思う。日本的なリベラル。でも、もう、こういう文章を紙面やインターネットに掲載するだけでは、多くの人々の心には訴求しないのだろうと、絶望に似た暗い気持ちが拡がった。同じ意見の人が読んでひとり肯くだけ。安倍やトランプの、正当ではない派手なパフォーマンスがまかり通って、何年経っても、一切解決していないのだ。むしろ辛い思いをする人はより辛くなっている。そんなままこの国はどこへ行くのだろう。
読了日:02月18日 著者:池澤 夏樹
BEASTARS 2 (少年チャンピオン・コミックス)の感想
『俺が…オオカミが強いってことに…希望はないから…』。レゴシはこの巻以降で覚醒するのだろうね。強さ。強さって何だろう。これは多分この漫画のテーマなんだろう。草食、肉食という生物学的要素(ズートピア用語)を多用することは、動かすことのできない前提要素と強調する一方で、行為の正当性/非正当性を安易に貼りつける危険を内包している。そのあたり、引っ張らず、突き詰めず、ページ数を割かずにするりと進む感じ。
読了日:02月16日 著者:板垣巴留
BEASTARS 1 (少年チャンピオン・コミックス)の感想
評価が高いと聞いたのと、好物の動物ものなので、久しぶりに漫画を手に取った。動物が制服を着て立って歩いているのも不思議なら、精密にかわいく描いた顔でもないので、独特な画風に感じる。主人公は優しきハイイロオオカミさん。肉食と草食の共存ルールとか、そこここに埋め込まれた小ネタが面白い。事件は起きたけど、今のところこれといった目的へ向かって話を進めているわけではないようだ。種別とは無関係に性格と個性があって、そこが好感と意外性を生む。少しずつ彼の表情が読めるようになってきた。
読了日:02月15日 著者:板垣巴留
自家用電気技術者奮闘記の感想
日誌のように、日々のトラブルと解決のエピソードが並ぶ。電気設備にトラブルはつきものだ。よくあるケースから、まじでか!譚まで多種多様。私は技術者ではないので、細かい数値や論理の部分はわからないなりに、状況、原因、機器の種類を頭に入れた。電話で第一報を受ける場合があるからだ。ひとつひとつ原因を特定していく作業はまるで探偵のように大変なものだが、そこが根っからの電気屋な職人にはこたえられない面白さでもあろう。さて、この本は会社の本棚へ置く前に父へ渡した。父も職歴50年。溜まった経験で5冊くらいは書けそうだ。
読了日:02月15日 著者:木塚 正明
世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たちの感想
「ファーマゲドン」が工業型農業による環境汚染を指摘したのに対し、本書は工業型農業の特徴である単一栽培による作物の多様性の衰退、伝統農業とその累積された知恵の喪失を指摘する。『多様性の中心地』とはその種が栄え進化する環境がある原産地を指す。原産地でこそ植物は近縁野生種と交配し多様化できるのに、その土地はえてして貧しく、大資本農場に侵略されている。ここでも資本主義が未来の資源を食い潰している現実がある。動植物の多様性喪失は人類の食物の多様性喪失を意味する。気候変動を免れない今こそ、動植物の多様性が必要なのに。
『生物多様性とは正反対の極端な画一性』。多様性の意味。種が研究所に保存されていることが大事なのではなく、自然界に自生し、他の植物や生物との相互作用、交雑の繰り返しの中で変わり続ける力を保持することが肝要なのだ。いまや害虫、病原菌、気候変動への人間の対応能力も落ちていると著者は指摘する。
ロシア人ヴァヴィロフの種子コレクションのエピソードに感動した。政治や資本主義者による刹那主義の蔭で、ほんとうに大切な事に気づく研究者がいること、その崇高な自己犠牲がこの先の人間の抱える問題を解決するであろう予感に震える。一方、『伝統的な育種は作物の多様性を高めるが、商業目的の育種はそれとは逆に作用し、次第に作物の多様性が失われ』る。最近話題になる遺伝子工学は、新しい種の開発に掛ける時間が短縮される点が注目されているが、そもそも人為選択された品種にばかり遺伝子操作するので、結果的に植物の多様化には資しない。
読了日:02月13日 著者:ロブ・ダン
水に似た感情 (集英社文庫)の感想
バリ島は、余程らもさんの郷愁を誘ったようだ。言動は決して上品でなかったし、尊敬できたものでもなかったのに、なぜか懐かしいらもさん。人間の最も貴いところ、純粋なところを、らもさんはきっと知っていたと、なぜか私は読みながら感じる。らもさんの分身である主人公モンク氏は、やはりでたらめを言い、ドラッグをやり、酒浸りの上に躁鬱でどうしようもない。「廃人になる」と劇団員に泣かれたのは実話だろう。なのに、モンク氏が口にした格言『大愚は大賢に通ず』と、モンク氏が流した涙を、私はこの小説の印象としてずっと覚えているだろう。
読了日:02月09日 著者:中島 らも
若冲原寸美術館 100%Jakuchu! (100% ART MUSEUM)の感想
母の誕生日に贈る前にこっそり読んだ。画集というものはそれだけで贅沢だが、これは絵の部分を原寸大でも載せる趣向だ。葉から滴り落ちる雪、鳥の一枚一枚の羽根の毛流れ、なかでも白の遣いかた。若冲の「動植綵絵」の原寸は、ほんとうに見応えがある。以前ニワトリの本を読んで疑問に思っていたことだったが、鶏は、古来日本では確かに鑑賞物だ。群鶏図の鶏たちの、なんと豪華な競演。雀から鳳凰に至るまで、一羽一羽に目があり、表情があり、意思があるように感じられる。母には老後の趣味として模写を勧めておいた。舐めるように楽しんでほしい。
読了日:02月08日 著者:辻 惟雄
動物保護入門ードイツとギリシャに学ぶ共生の未来の感想
太田匡彦氏がペット流通の暗部を告発してから8年余。今年の動愛法改正に向けた気運は感じられない。世間では「殺処分ゼロ」運動が声高に言われるが、既に限界が見え始めている。いくら殺処分を止めても、ペットショップではどんどん仔犬仔猫が陳列販売されているからだ。本書は主に法律・制度面から施策を探る。よく理想的と挙げられるドイツには、長い動物保護の歴史がある。一方、アテネ五輪のために急きょ制度改革を迫られたギリシャのケースは、財政に余裕がないなりに工夫はできることを示している。『動物保護と人間の保護は矛盾しない』。
読了日:02月04日 著者:浅川 千尋,有馬 めぐむ
注:
はKindleで読んだ本。
積読を80冊台に減らした時期から一転、絶賛リバウンド中。
せめて質の良いものを摂取しよう。
<今月のデータ>
購入22冊、購入費用16,844円。
読了15冊。
積読本154冊(うちKindle本52冊)。

2月の読書メーター
読んだ本の数:15

誰も彼も大学に進学できる時代、専攻と職業は必ずしも繋がらない。では大学へ進学した意味は何だったのかと、何度も自問してきた。今思うのは、大学時代はその環境、得た経験で人格をつくる時期だったということ。目の前に15歳の私がいたら「騙されたと思ってAPUへ行け」と言いたい。国際人になる為、国際的な企業に就職する為ではない。"サラダボウルのように"混ぜることで生じる視点や感覚は、現代の細分化された環境では得られ難いのだ。『「混ぜる」というのは混沌を認めること』。それこそ多様性の自覚、生きていくための強さだ。
読了日:02月27日 著者:崎谷 実穂,柳瀬 博一


おお! またギア上がった。そしてR18要素増えた。そうか、こういうのが描きたかったんか、と納得させてくれた巻。学園もので収める気がないことは、街に出た時点でわかってたことやわね。戦闘方法とか、ケモノネタがよく出てくるもんだなと感心。レゴシもいいキャラ。が。まとめ買いはここまでなので、ここから先も読見続けるかどうかは、Amazonのキャンペーン次第。漫画は私にはコスパが悪くていかん。
読了日:02月23日 著者:板垣巴留


漫画の連載って、こんな調子だったっけ。記憶が遠すぎて、楽しみにしてた感覚を思い出せない。ひと癖ふた癖ありそうなキャラが続々投入されるんだけど、ネタばらしや解決は先送り気味。日々過ぎていくのに、毎回なんかかんかは出来事が起こっているのに、あれ、もう1冊終わったんかい!だった。ケモノ女子の下着姿への違和感は慣れることも尽きることもない。
読了日:02月22日 著者:板垣巴留


信頼できる情報の伝え手と信じるお二人の対談。色々唸らされた。出版から日が経ったぶん、じっくり経緯を俯瞰することができる。そもそも地球温暖化対策の流れは、先進国の道義的使命感で発生したものではない。軍事や貿易と同じ種類の、国対国の利権争いが常に裏にある。どの分野なら自国が主導権を握れるかと、各国はインテリジェンスを駆使して戦略をぶつけてくる。京都議定書は二酸化炭素排出権に関して日本がしてやられた墓碑みたいなものだな。『国際的なルールを変えることが、どれくらい大きな影響を及ぼすのか』を今後は考えてみる。
地球温暖化は人間によって引き起こされていることは、ほぼ間違いない。その過程もだいたいわかった。しかし、正確な予測はできないというのが研究者を含めた世界のコンセンサスだ。地球温暖化説の誇張や事実誤認はあっても、もう陰謀論は通用していない。IPCCの報告書等、最先端の知見にアンテナを張ること、メディアの派手な「絵」を鵜呑みにして思考停止に陥らないこと。その姿勢がリテラシーを育てる。
読了日:02月22日 著者:池上 彰,手嶋 龍一


久しぶりに読んだ伊坂作品は都会的な短編小説。あれだけ人がいたら、人と人のつながりなんてできにくいし、表面的なつながりが切れるのも容易いだろう。そんな中でのちょっとした出会い。そういうのがぽつりぽつりつながって、簡単な編み目みたいになってる、その目の粗さに著者ならではのさじ加減を感じる。この作品、人気があると聞いている。魅力ってどの辺なんだろう。斉藤さん?…斉藤さんね!
読了日:02月21日 著者:伊坂 幸太郎

うわあ、シカ怖えぇ。ウサギも怖いが、ハイイロオオカミがなに考えてるか見当もつかん。顔中毛だらけなんだもん。そこが読み進めさせる理由ではあったんだけど、このあたりからギア入ってきた感じ。動物の性癖に乗っけた若者の普遍テーマ。ニワトリとかパンダとか、キャラもストーリーも展開が読めないのが楽しくなってきた。そうだそうだ。とかくテーマを読み取ろうとするのは悪い癖だ。読み始めから感じてたキャラの揺らぎが収まってきた。
読了日:02月21日 著者:板垣巴留


『私たちはいつか、今と似ていない時代を生きなくてはならなくなる』。地球上全てが凍った時代があり、南極にも北極にも氷床がない時代もあった。80万年前から現代までは、気温差20℃程度の寒暖を繰り返してきた。数万年分の水月湖の堆積物を中心とした物的資料が既知の現象や理論と一致する様は、真実を直感させる。人類が絶滅する可能性をどんな小説より近く感じた。気候は変わり続ける。二重振り子の喩えは妙で、数年での激変だってあり得るのだ。人類は生きられるところまで生きるしかないのだと思った。巨大な命題。胸震える熱い本だった。
20世紀の100年間で北半球の気温が約1℃上昇した事実を『東京は宮崎になった』、また日本の氷期が今より10℃ほど寒かった事実を『鹿児島が札幌だった』と表現するなど、一般読者が理解しやすくするための書き方の工夫が非常に的確。次作を楽しみに待ちたい。
今は気候が安定しているほうだ。しかし人類が繁栄している今は地球にとってはほんの一瞬の均衡状態でしかない。時が過ぎれば気候は変わり、気温が変われば植生も変わる。変動後には人類の生活スタイルそのものが激変せざるを得ない事実に瞠目した。農耕ができない気候の到来。遠からず人類は絶滅すると言った福岡博士の言葉を思い出した。問題は、デイ・アフター・トゥモローに続く日々なのだ。
温室効果ガスについての仮説。氷に閉じ込められた過去の大気を分析して得られる結果が、推測値を大きく外れて増加推移している事実がある。それも産業革命が起きた100年前頃からではなく、8000年前頃からである。そしてそれが、人類が森林伐採と水田農耕を始めた時期と一致することの意味を考える。ようやく、人間ごときが地球の気候に影響を及ぼすことなどできないのではという疑念を潰すことができた。さらには、人類が温室効果ガスを増やしたことが、氷期の到来を遅らせている可能性の指摘には、絶大なインパクトがある。
読了日:02月20日 著者:中川 毅


2013年から2017年にかけて朝日新聞夕刊に掲載されたエッセイ。3.11、原発、沖縄、どれも大事な問題だし、正当な論だと思う。日本的なリベラル。でも、もう、こういう文章を紙面やインターネットに掲載するだけでは、多くの人々の心には訴求しないのだろうと、絶望に似た暗い気持ちが拡がった。同じ意見の人が読んでひとり肯くだけ。安倍やトランプの、正当ではない派手なパフォーマンスがまかり通って、何年経っても、一切解決していないのだ。むしろ辛い思いをする人はより辛くなっている。そんなままこの国はどこへ行くのだろう。
読了日:02月18日 著者:池澤 夏樹

『俺が…オオカミが強いってことに…希望はないから…』。レゴシはこの巻以降で覚醒するのだろうね。強さ。強さって何だろう。これは多分この漫画のテーマなんだろう。草食、肉食という生物学的要素(ズートピア用語)を多用することは、動かすことのできない前提要素と強調する一方で、行為の正当性/非正当性を安易に貼りつける危険を内包している。そのあたり、引っ張らず、突き詰めず、ページ数を割かずにするりと進む感じ。
読了日:02月16日 著者:板垣巴留


評価が高いと聞いたのと、好物の動物ものなので、久しぶりに漫画を手に取った。動物が制服を着て立って歩いているのも不思議なら、精密にかわいく描いた顔でもないので、独特な画風に感じる。主人公は優しきハイイロオオカミさん。肉食と草食の共存ルールとか、そこここに埋め込まれた小ネタが面白い。事件は起きたけど、今のところこれといった目的へ向かって話を進めているわけではないようだ。種別とは無関係に性格と個性があって、そこが好感と意外性を生む。少しずつ彼の表情が読めるようになってきた。
読了日:02月15日 著者:板垣巴留


日誌のように、日々のトラブルと解決のエピソードが並ぶ。電気設備にトラブルはつきものだ。よくあるケースから、まじでか!譚まで多種多様。私は技術者ではないので、細かい数値や論理の部分はわからないなりに、状況、原因、機器の種類を頭に入れた。電話で第一報を受ける場合があるからだ。ひとつひとつ原因を特定していく作業はまるで探偵のように大変なものだが、そこが根っからの電気屋な職人にはこたえられない面白さでもあろう。さて、この本は会社の本棚へ置く前に父へ渡した。父も職歴50年。溜まった経験で5冊くらいは書けそうだ。
読了日:02月15日 著者:木塚 正明

「ファーマゲドン」が工業型農業による環境汚染を指摘したのに対し、本書は工業型農業の特徴である単一栽培による作物の多様性の衰退、伝統農業とその累積された知恵の喪失を指摘する。『多様性の中心地』とはその種が栄え進化する環境がある原産地を指す。原産地でこそ植物は近縁野生種と交配し多様化できるのに、その土地はえてして貧しく、大資本農場に侵略されている。ここでも資本主義が未来の資源を食い潰している現実がある。動植物の多様性喪失は人類の食物の多様性喪失を意味する。気候変動を免れない今こそ、動植物の多様性が必要なのに。
『生物多様性とは正反対の極端な画一性』。多様性の意味。種が研究所に保存されていることが大事なのではなく、自然界に自生し、他の植物や生物との相互作用、交雑の繰り返しの中で変わり続ける力を保持することが肝要なのだ。いまや害虫、病原菌、気候変動への人間の対応能力も落ちていると著者は指摘する。
ロシア人ヴァヴィロフの種子コレクションのエピソードに感動した。政治や資本主義者による刹那主義の蔭で、ほんとうに大切な事に気づく研究者がいること、その崇高な自己犠牲がこの先の人間の抱える問題を解決するであろう予感に震える。一方、『伝統的な育種は作物の多様性を高めるが、商業目的の育種はそれとは逆に作用し、次第に作物の多様性が失われ』る。最近話題になる遺伝子工学は、新しい種の開発に掛ける時間が短縮される点が注目されているが、そもそも人為選択された品種にばかり遺伝子操作するので、結果的に植物の多様化には資しない。
読了日:02月13日 著者:ロブ・ダン


バリ島は、余程らもさんの郷愁を誘ったようだ。言動は決して上品でなかったし、尊敬できたものでもなかったのに、なぜか懐かしいらもさん。人間の最も貴いところ、純粋なところを、らもさんはきっと知っていたと、なぜか私は読みながら感じる。らもさんの分身である主人公モンク氏は、やはりでたらめを言い、ドラッグをやり、酒浸りの上に躁鬱でどうしようもない。「廃人になる」と劇団員に泣かれたのは実話だろう。なのに、モンク氏が口にした格言『大愚は大賢に通ず』と、モンク氏が流した涙を、私はこの小説の印象としてずっと覚えているだろう。
読了日:02月09日 著者:中島 らも

母の誕生日に贈る前にこっそり読んだ。画集というものはそれだけで贅沢だが、これは絵の部分を原寸大でも載せる趣向だ。葉から滴り落ちる雪、鳥の一枚一枚の羽根の毛流れ、なかでも白の遣いかた。若冲の「動植綵絵」の原寸は、ほんとうに見応えがある。以前ニワトリの本を読んで疑問に思っていたことだったが、鶏は、古来日本では確かに鑑賞物だ。群鶏図の鶏たちの、なんと豪華な競演。雀から鳳凰に至るまで、一羽一羽に目があり、表情があり、意思があるように感じられる。母には老後の趣味として模写を勧めておいた。舐めるように楽しんでほしい。
読了日:02月08日 著者:辻 惟雄

太田匡彦氏がペット流通の暗部を告発してから8年余。今年の動愛法改正に向けた気運は感じられない。世間では「殺処分ゼロ」運動が声高に言われるが、既に限界が見え始めている。いくら殺処分を止めても、ペットショップではどんどん仔犬仔猫が陳列販売されているからだ。本書は主に法律・制度面から施策を探る。よく理想的と挙げられるドイツには、長い動物保護の歴史がある。一方、アテネ五輪のために急きょ制度改革を迫られたギリシャのケースは、財政に余裕がないなりに工夫はできることを示している。『動物保護と人間の保護は矛盾しない』。
読了日:02月04日 著者:浅川 千尋,有馬 めぐむ
注:

Posted by nekoneko at 13:11│Comments(0)
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