2020年08月01日
2020年7月の記録
本を読むペースを見返してみる。
ペースが上がるのは、自分の気力と時間と意欲とが揃ったとき。
時間が足りなくて鬱屈しているときはやたらと本を買い込んでみたり、
先月のようになにやら気がそぞろで思ったほど進まなかったり、
記録を見るとその頃が思い出されるが、年末には忘れていることだろう。
<今月のデータ>
購入9冊、購入費用5,480円。
読了9冊。
積読本212冊(うちKindle本96冊)。

7月の読書メーター
読んだ本の数:9
白いメリ-さん (講談社文庫)の感想
ホラーやらSFやら、ジャンル不明の短編集、1994年刊行。山内圭哉が解説で"くっさいおっさん"と呼ぶところのらもさんが世を去って、早や16年が経ったという。16年経っても皆で献杯を重ね、その名を呼ぶ。らもさん面白いと思ぅて書いてみたんやろなと感じるような、しかしなんしてこんなん思いついたんかとつぶやきたくなる筋立てに、ちらと見える透明なもの。そのギャップも含め、らもさんなんだよなあ。「日の出通り商店街 いきいきデー」が好きだ。突飛な展開と意表を突く武器で畳みかけ、悲哀をも漂わせつつ、落語のようなオチ。
読了日:07月31日 著者:中島 らも
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)の感想
個人の寿命がそこまで延びるかは依然疑問として、なるほど、人生のマルチステージ化の可能性に気づくのは早い方が良いだろう。『仕事と私生活をブレンドする生き方』が当たり前になれば、様々の事が変わってしまうと予測されるのに、ほかでもない自分の思考がいかに親の世代というロールモデルに縛られているか自覚させられる。他国より更に変化に鈍い日本で、いかに中期的目的意識に基づいた柔軟な行動を取れるかが、激変の時代を乗り切る切り札となるだろう。それから、『無形の資産』を育てる習慣はいずれ持ちたい。新しいことを始めたくなった。
著者たちが当たり前に語っている、イノベーションや高スキルを求める性質は、人間の本能なのだろうか。いや、世界の先進国と呼ばれる国に住む人のうち、何割が著者たちの語る人生の範疇にあてはまるのだろうか。読んでいてしっくりこないのものを感じるのだが、私の想像力が足りないというよりは、この米国式の思考に対して、なにかが見落とされている気がするからだろう。いずれにせよ、だからといって流すのではなく、違和感は違和感で気に留めつつ、日本の少なくとも一定の範囲では常識になるものと想定しておこう。
ビジネスとして。従来のように、会社の取り決めた決め事に社員を当て嵌めるのではなく、できればサイボウズ型で、社員の望む働き方と会社の決め事をすり合わせる作業を繰り返すことで、これからの激変する時代に適応できる中小企業になれるのではないかと思う。それには社員同士の平等をも考える必要があるので、綱渡りのようなバランス感覚を要するだろう。また、定年制を始め、年齢を基準にした規制を取っ払うのに伴い、採用時の履歴書も、転職の多寡や無職期間の長さではなく、本人のポリシーの一貫性に照準を合わせて判断することになるだろう。
今後大きく社会が変革してゆくのは間違いない。それに対して、可能ならば、個人として、また経営者として先手を打っておきたいという意識が、この本が良く売れた理由だろう。日本の財界人や政治家でも、この本の趣旨を踏まえたと思われる発言を見かける。これらは時代の流れであり、ありうる未来へのコンセンサスのすり合わせでもある。ベーシックインカムについて直接触れてはいないが、人生の多様化に対応するための特効薬になる可能性を感じた。玉木さんのベーシックインカム論に注目したい。
読了日:07月31日 著者:リンダ グラットン,アンドリュー スコット
俺、つしま 2の感想
つしまさんのテリトリーはどんな町なのだろう。つしまさんたちは元野良で、調子が悪いと"びょんいん"に連れて行かれるが、屋外に出入り自由で、他所の家でもごはんをもらって、明らかに肥満だし、不妊去勢手術をしていない猫もいて、「おそらのした」を満喫している。動物愛護的に「正しく」ない。そこにはTNR活動をしている人も現れ、仲間のテルオは連れていかれてしまった。そういう日常を、つしまさんの視線で描いている。良いとか悪いとか、私はわからなくなってきた。おぷうのきょうだいさんがどう思っているのか想像してどうする、自分。
読了日:07月26日 著者:おぷうの きょうだい
何かのためではない、特別なことの感想
『何かのためではない』。Something for Nothing。平川さんは『実感のある小文字の小さな世界』、つまり個人レベルの話から論を展開していく。逆に大文字の世界とは、国の政治や経済レベルの事。小文字の出来事は、大文字の事につなげて考えなければ、それだけの出来事でしかない。逆に、机上で学んだ大文字の事は、個人レベルの経験や他の事物とのつなげ方を知らなければ、ただの暗記項目でしかないということだ。それらを自分の中で切り離すことのできない習慣をつけるのが教養であり、大学の意義だったと今頃理解するとは。
『「考える」という営みは既存の社会が認める価値の前提や枠組み自体を疑うという点において、本質的に反時代的・反社会的な行為』。まあ私の場合、疑うも何も、社会のことなどほとんど知らないまま4年間を過ごしてしまったから、社会に出た時のフリクションは凄まじかったな。でも、二十歳そこらって、そんなもんじゃないのかな?
読了日:07月23日 著者:平川克美
壇蜜日記2 (文春文庫)の感想
前作を読んだとき、壇蜜の自虐的な文調は生来の性格に因るものと思った。しかし彼女に投げつけられる誹謗中傷は、彼女の価値が見目に集約され易いために尚更、想像を超えて酷いものであっただろう。下品短足、勘違いババア、消えろ、勘違いすんな、不祥事起こしていなくなれ。死んで。大量の言葉の刃をあの手この手で逸らすが、この時期、特に辛そうだ。魚や猫を愛で、ひたすら眠る。自分が浮上するために彼女を貶める女らを私が代わりに呪ってやりたいところだが、彼女は言うのだろう。『やめとけやめとけ神様怒るよきっと』。彼女に幸あれ。
読了日:07月21日 著者:壇 蜜
俺、つしまの感想
Twitterで拝見していて、おぷうのきょうだいさんは至って常識人である。一方で、猫の擬人化描写は猫好きよがりになりがちな中でも匙加減が絶妙で、他の猫漫画とどう違うか上手く言えないが、なんとも好い。うちの高齢猫が突然、咳と呼ぶのか喘鳴と呼ぶのか、呼吸に異常が出た。苦しそうでこのまま逝くのかと見守りながら、姐さんの最期まで読み終わってしまったから、もう涙が止まらない。愛猫が自分の腕の中で、笑顔のまま息を引き取る。こんな飼い主冥利なことがあるだろうか。おぷうのきょうだいさんは、それに足る飼い主であるのだなあ。
読了日:07月19日 著者:おぷうの きょうだい
日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)の感想
江戸城の正門は半蔵門、京都が1000年以上日本の都であった理由など、聞いたことも思いついたこともない発見ばかりだ。著者は土木系の元官僚である。文系の専門家でないからこそ、地形、気象、インフラの下部構造の側面から、歴史の真実に自由にアプローチできる。歌川広重の浮世絵や古地図を眺めているときに、歴史の新しい可能性をひらめいたりするのである。世界はなんて面白い発見に満ちているのだろう! 教養の意義を思う。世界の様々なものに関心を覚えることによって、自ら謎に気づき、解き明かす愉しみを得る。そういう人生は豊かだ。
読了日:07月16日 著者:竹村 公太郎
最軽量のマネジメント(サイボウズ式ブックス)の感想
山田氏サイドから見たサイボウズ。『組織図はピラミッド型からキャンプファイヤー型へ』が印象的だ。知識や経験の多寡はあれ、役職はもはや役割でしかない。今まで伏せていた情報を社員に公開するとき、私は胃がずんと重くなる。つい後回しにしたくなる。隠すよりも公開するほうが覚悟は要る。しかし会社を透明にし、"未来の可能性"を拓く為と勇気を貰った。情報は『メンバーにすべてを伝える必要も、自分が理解する必要もありません。情報にアクセスできるようにしておくだけ』でいい。社員が知りたくなったら知られるよう整える作業を続ける。
『制度がイコールである必要はなく、結果がフェアであればいい』の意味を考える。すべての社員に平等でありたいが、そうはできない場合は多々ある。なぜなら、携帯電話の支給にしても備品の購入にしても、全ての社員がそれを望むとは限らないからだ。むしろ一緒である訳がない。しかし"平等"にならないのであれば、その案は没、あるいはうやむやにしてきたと思う。『制度がイコールである必要はなく、結果がフェアであればいい』と考えれば、結果は違う。次に案件が浮上したときには、この言葉を思い出してみよう。
読了日:07月14日 著者:山田理
スギハラ・ダラーの感想
ああ、面白かった。杉原千畝のビザ発給から始まって、先物取引やら競走馬やら話題は多岐に渡り、視点は世界を駆け回る。とにかく広く、インテリジェンスネタが細かい上にややこしい物語を、ひがし茶屋街という日本文化の粋を差し色に締めている。事実と虚構の境は余程知識がないと指摘できないのではないか。第二次世界大戦の戦前戦中戦後と、生命のぎりぎりの状況にあった人達は、情報や人脈、物事を見抜く能力を最大限発揮して生き延びる術を手繰り続けなければ生き抜けなかった。これは彼らへのオマージュだ。しかし、まさかミレディーとはね。
読了日:07月12日 著者:手嶋 龍一
注:
はKindleで読んだ本。
ペースが上がるのは、自分の気力と時間と意欲とが揃ったとき。
時間が足りなくて鬱屈しているときはやたらと本を買い込んでみたり、
先月のようになにやら気がそぞろで思ったほど進まなかったり、
記録を見るとその頃が思い出されるが、年末には忘れていることだろう。
<今月のデータ>
購入9冊、購入費用5,480円。
読了9冊。
積読本212冊(うちKindle本96冊)。

7月の読書メーター
読んだ本の数:9

ホラーやらSFやら、ジャンル不明の短編集、1994年刊行。山内圭哉が解説で"くっさいおっさん"と呼ぶところのらもさんが世を去って、早や16年が経ったという。16年経っても皆で献杯を重ね、その名を呼ぶ。らもさん面白いと思ぅて書いてみたんやろなと感じるような、しかしなんしてこんなん思いついたんかとつぶやきたくなる筋立てに、ちらと見える透明なもの。そのギャップも含め、らもさんなんだよなあ。「日の出通り商店街 いきいきデー」が好きだ。突飛な展開と意表を突く武器で畳みかけ、悲哀をも漂わせつつ、落語のようなオチ。
読了日:07月31日 著者:中島 らも

個人の寿命がそこまで延びるかは依然疑問として、なるほど、人生のマルチステージ化の可能性に気づくのは早い方が良いだろう。『仕事と私生活をブレンドする生き方』が当たり前になれば、様々の事が変わってしまうと予測されるのに、ほかでもない自分の思考がいかに親の世代というロールモデルに縛られているか自覚させられる。他国より更に変化に鈍い日本で、いかに中期的目的意識に基づいた柔軟な行動を取れるかが、激変の時代を乗り切る切り札となるだろう。それから、『無形の資産』を育てる習慣はいずれ持ちたい。新しいことを始めたくなった。
著者たちが当たり前に語っている、イノベーションや高スキルを求める性質は、人間の本能なのだろうか。いや、世界の先進国と呼ばれる国に住む人のうち、何割が著者たちの語る人生の範疇にあてはまるのだろうか。読んでいてしっくりこないのものを感じるのだが、私の想像力が足りないというよりは、この米国式の思考に対して、なにかが見落とされている気がするからだろう。いずれにせよ、だからといって流すのではなく、違和感は違和感で気に留めつつ、日本の少なくとも一定の範囲では常識になるものと想定しておこう。
ビジネスとして。従来のように、会社の取り決めた決め事に社員を当て嵌めるのではなく、できればサイボウズ型で、社員の望む働き方と会社の決め事をすり合わせる作業を繰り返すことで、これからの激変する時代に適応できる中小企業になれるのではないかと思う。それには社員同士の平等をも考える必要があるので、綱渡りのようなバランス感覚を要するだろう。また、定年制を始め、年齢を基準にした規制を取っ払うのに伴い、採用時の履歴書も、転職の多寡や無職期間の長さではなく、本人のポリシーの一貫性に照準を合わせて判断することになるだろう。
今後大きく社会が変革してゆくのは間違いない。それに対して、可能ならば、個人として、また経営者として先手を打っておきたいという意識が、この本が良く売れた理由だろう。日本の財界人や政治家でも、この本の趣旨を踏まえたと思われる発言を見かける。これらは時代の流れであり、ありうる未来へのコンセンサスのすり合わせでもある。ベーシックインカムについて直接触れてはいないが、人生の多様化に対応するための特効薬になる可能性を感じた。玉木さんのベーシックインカム論に注目したい。
読了日:07月31日 著者:リンダ グラットン,アンドリュー スコット


つしまさんのテリトリーはどんな町なのだろう。つしまさんたちは元野良で、調子が悪いと"びょんいん"に連れて行かれるが、屋外に出入り自由で、他所の家でもごはんをもらって、明らかに肥満だし、不妊去勢手術をしていない猫もいて、「おそらのした」を満喫している。動物愛護的に「正しく」ない。そこにはTNR活動をしている人も現れ、仲間のテルオは連れていかれてしまった。そういう日常を、つしまさんの視線で描いている。良いとか悪いとか、私はわからなくなってきた。おぷうのきょうだいさんがどう思っているのか想像してどうする、自分。
読了日:07月26日 著者:おぷうの きょうだい

『何かのためではない』。Something for Nothing。平川さんは『実感のある小文字の小さな世界』、つまり個人レベルの話から論を展開していく。逆に大文字の世界とは、国の政治や経済レベルの事。小文字の出来事は、大文字の事につなげて考えなければ、それだけの出来事でしかない。逆に、机上で学んだ大文字の事は、個人レベルの経験や他の事物とのつなげ方を知らなければ、ただの暗記項目でしかないということだ。それらを自分の中で切り離すことのできない習慣をつけるのが教養であり、大学の意義だったと今頃理解するとは。
『「考える」という営みは既存の社会が認める価値の前提や枠組み自体を疑うという点において、本質的に反時代的・反社会的な行為』。まあ私の場合、疑うも何も、社会のことなどほとんど知らないまま4年間を過ごしてしまったから、社会に出た時のフリクションは凄まじかったな。でも、二十歳そこらって、そんなもんじゃないのかな?
読了日:07月23日 著者:平川克美


前作を読んだとき、壇蜜の自虐的な文調は生来の性格に因るものと思った。しかし彼女に投げつけられる誹謗中傷は、彼女の価値が見目に集約され易いために尚更、想像を超えて酷いものであっただろう。下品短足、勘違いババア、消えろ、勘違いすんな、不祥事起こしていなくなれ。死んで。大量の言葉の刃をあの手この手で逸らすが、この時期、特に辛そうだ。魚や猫を愛で、ひたすら眠る。自分が浮上するために彼女を貶める女らを私が代わりに呪ってやりたいところだが、彼女は言うのだろう。『やめとけやめとけ神様怒るよきっと』。彼女に幸あれ。
読了日:07月21日 著者:壇 蜜


Twitterで拝見していて、おぷうのきょうだいさんは至って常識人である。一方で、猫の擬人化描写は猫好きよがりになりがちな中でも匙加減が絶妙で、他の猫漫画とどう違うか上手く言えないが、なんとも好い。うちの高齢猫が突然、咳と呼ぶのか喘鳴と呼ぶのか、呼吸に異常が出た。苦しそうでこのまま逝くのかと見守りながら、姐さんの最期まで読み終わってしまったから、もう涙が止まらない。愛猫が自分の腕の中で、笑顔のまま息を引き取る。こんな飼い主冥利なことがあるだろうか。おぷうのきょうだいさんは、それに足る飼い主であるのだなあ。
読了日:07月19日 著者:おぷうの きょうだい

江戸城の正門は半蔵門、京都が1000年以上日本の都であった理由など、聞いたことも思いついたこともない発見ばかりだ。著者は土木系の元官僚である。文系の専門家でないからこそ、地形、気象、インフラの下部構造の側面から、歴史の真実に自由にアプローチできる。歌川広重の浮世絵や古地図を眺めているときに、歴史の新しい可能性をひらめいたりするのである。世界はなんて面白い発見に満ちているのだろう! 教養の意義を思う。世界の様々なものに関心を覚えることによって、自ら謎に気づき、解き明かす愉しみを得る。そういう人生は豊かだ。
読了日:07月16日 著者:竹村 公太郎


山田氏サイドから見たサイボウズ。『組織図はピラミッド型からキャンプファイヤー型へ』が印象的だ。知識や経験の多寡はあれ、役職はもはや役割でしかない。今まで伏せていた情報を社員に公開するとき、私は胃がずんと重くなる。つい後回しにしたくなる。隠すよりも公開するほうが覚悟は要る。しかし会社を透明にし、"未来の可能性"を拓く為と勇気を貰った。情報は『メンバーにすべてを伝える必要も、自分が理解する必要もありません。情報にアクセスできるようにしておくだけ』でいい。社員が知りたくなったら知られるよう整える作業を続ける。
『制度がイコールである必要はなく、結果がフェアであればいい』の意味を考える。すべての社員に平等でありたいが、そうはできない場合は多々ある。なぜなら、携帯電話の支給にしても備品の購入にしても、全ての社員がそれを望むとは限らないからだ。むしろ一緒である訳がない。しかし"平等"にならないのであれば、その案は没、あるいはうやむやにしてきたと思う。『制度がイコールである必要はなく、結果がフェアであればいい』と考えれば、結果は違う。次に案件が浮上したときには、この言葉を思い出してみよう。
読了日:07月14日 著者:山田理


ああ、面白かった。杉原千畝のビザ発給から始まって、先物取引やら競走馬やら話題は多岐に渡り、視点は世界を駆け回る。とにかく広く、インテリジェンスネタが細かい上にややこしい物語を、ひがし茶屋街という日本文化の粋を差し色に締めている。事実と虚構の境は余程知識がないと指摘できないのではないか。第二次世界大戦の戦前戦中戦後と、生命のぎりぎりの状況にあった人達は、情報や人脈、物事を見抜く能力を最大限発揮して生き延びる術を手繰り続けなければ生き抜けなかった。これは彼らへのオマージュだ。しかし、まさかミレディーとはね。
読了日:07月12日 著者:手嶋 龍一
注:

Posted by nekoneko at 11:15│Comments(0)
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