2021年02月01日
2021年1月の記録
電子書籍をBOOX Nova2で読むようになった。
Kindle本とhonto本、両方読める点が最大のメリットだが、デメリットも小さくはない。
まず端末の操作性がKindleに比べると良くない。
こちらのタップと端末作動の間合いが微妙にずれると思わぬ差動をして苛々する。
OSがandroidなので当然各アプリ及びシステムのアップデートがあり、面倒臭い。
アプリの操作性が一括操作しづらく、たくさん読む人間にやさしくない。
なにより物理的に重い点は、確実に手首の疲れとなって不満が蓄積する。
Kindleが神ガジェットなのだ。間違いなく。
Kindleでほかの電子書籍を読めるようにしてくれたら最強に快適なのに…。
<今月のデータ>
購入15冊、購入費用23,511円。
読了15冊。
積読本250冊(うちKindle本79冊、Honto本43冊)。

1月の読書メーター
読んだ本の数:15
いまこそ税と社会保障の話をしよう!の感想
小川淳也の応援演説での熱量の高さが印象的だったのだ。税金は「くらしの会費」。ちゃんと使って、運悪く落とし穴に落ちた人を助けるのではなく、落とし穴自体を塞ごうと、皆に優しい社会保障と税制の在りかたを語っている。やはり熱い。むしろ動画で観たい。今の社会の仕組みはとても複雑で、一つの法制上の決めごとが何を意味し、どのような変化を波及するのか、私にはわかりづらい。今回、国家財政や統計の数字を基にした、しかし個人感覚も決して忘れない講義で、たくさんのことに気づけた。まさに"いまこそ"の論。すっかりファンになった。
■勤労を義務と感じる意識は近代日本社会に摺り込まれたもので、それがその義務を果たさない他者への憎悪として伏流しているとする見立てが鮮烈だった。だから、私の中にも社会のセーフティーネットを過剰だと感じたり、生活保護を恥と思う考えがあっておかしくないと自覚したい。支援を受けることは恥ではなく権利。■一部の人を限定して受益者にするから疑心暗鬼を生む。皆が受益者になれて、現金ではなくサービスで受益するシステムが良いという考えに納得した。なるほど。自分ももらえるのなら、腹の底のケチの虫も起こさなくてすむのだから。
読了日:01月30日 著者:井手 英策
料理と利他 (MSLive!Books)の感想
土井先生と呼びたい。毎日の料理を多かれ少なかれ負担に感じる私には「一汁一菜」は救済だったから。この対談ではさらに言う。料理は人間の原初の行為。食べることが目的ではなく、つくって食べること、食べるまでのプロセスの中に人と人の関係性、豊かな時間があり、そのために自分の手を使う行為に意味がある。一汁一菜は、そのプロセスを大切にするために、量をそぎ落とす思想なのだ。料理をする行為そのものが利他的であるという考えは慰めにはなるけれども、それほど気を軽くしてくれるわけではない。全てが世界につながる考え方は好き。
良い素材に、できるだけ手をかけないで生かす。その実践も、レシピの指南どおり思考停止で盲従するのではなくて、自分の手で素材と触れて考えましょうというから、実は大変。味噌汁は出汁をとらなくてもよく、切り干し大根に油も出汁も要らず、それは好みもあるだろうからいいとして。和え物はあえて完全に混ぜない。塩は手にとってから入れる。しょう油はしょう油差しからではなくお玉にとってから入れる。全ては素材との対話のため。強い熱や道具は素材を傷つけるというから、とうとうブロッコリーに「湯加減どう?」って聞いてしまった。
読了日:01月29日 著者:土井善晴,中島岳志
猫の學校2 老猫専科 (ポプラ新書)の感想
南里さんは「猫のおくりびと」、老猫ケアのプロだ。我が家の猫も全員が老猫期に突入し、別れの覚悟もしなければならないと思うけれど、覚悟などできる訳がない。嗚咽しながら読み切った。南里さんは言う。死は当たり前のことで、猫自身は自然にそれを受け入れる。だから、獣医のつける病名やインターネットの情報ではなく、目の前にいる猫を信頼しましょうと。猫が「老いの坂」を下る過程を見守り、気を配り、猫の生きる意思に任せましょうと。『ありがとう、いってらっしゃい、ちょっとの間さようなら』。私は、まだ言える気がしない…。
有無を言わせず獣医に連れて行けば、命の重さを分担できたような安心感があるし、責任を果たしたような気にもなれるだろう。しかし、無理を強いたことをきっと後悔すると思う。我が家の猫の一匹に、外見上の明らかな異変があるのだけれど、本人は至って気にもせず、苦しがる様子もしない。ならば、獣医に連れて行かず、一つの過程として見守ればよいのか。後悔しないだろうかとまだ迷っている。できることなら後悔の無い日々を選びたい。『猫が自ら決めて逝こうとするとき、どんなに心が騒いでも、目をそらさずにそこにいることができるだろうか』
読了日:01月27日 著者:南里 秀子
はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか (文春文庫)の感想
初めて読む作家さん。女性作家と聞いて勝手に想定する繊細さはなく、展開の意外さ、筒井康隆の作品にあるようなドライなユーモアが好ましい。SFと呼んで差し支えないだろうか。全編にわたってぬるぬるしたものが登場し、ロボットですらぬちゃっとした感触が残るような気味悪さがあるが、最もぬるっと感じたのは「エデン」である。それは、言葉で言うなら女性のたくましさと生物の有機性なのだろう。笑いすら誘われる。先が気になってそわそわするところとか、適度に俗っぽいところとか、「オール讀物」掲載作だからだろうか。他の本も読んでみる。
読了日:01月27日 著者:篠田 節子
ラスト・チャンス! ~ぼくに家族ができた日~の感想
一頭の野良の仔犬が母犬と離れ、動物愛護センターを経て家庭に迎えられるストーリー。古い施設なのか、白黒の写真にセンターの濃色の金網が冷たい。対してセンターの職員さんは温かく接するも人に馴れないままの譲渡となり、読んでいるこちらがハラハラするが、飼い主となった老夫婦の気長な気遣いと愛情を受けて仔犬は立派な家庭犬に変われるのである。ああ、まっすぐに相手を見ている、好い笑顔! 老夫婦も素敵な笑顔をして、児玉さんの仕事ぶりが光る。2013年の著。あれから、保護犬という存在は一般的になったのだろうか。
読了日:01月24日 著者:児玉小枝
私でもスパイスカレー作れました! (サンクチュアリ出版)の感想
流行りなのかな。小麦粉や保存料を使わない、本場式のカレーっていうのがいいなと思って。しかも簡単と謳われるとその気になる。スパイスはクミン、ターメリック、コリアンダーのみ。やれる気がする。具はなんでもよいが、2種類までという。なぜかと言えば、ルーではなく具が主役なので、いくつも入れると味がボケるから。それを聞いて突然気づいた。私の味噌汁は具だくさんで推しているが、少々具を変えたところで「いつもの味噌汁」になってしまうのは、具の種類を入れすぎなのだ。スパイスカレーも味噌汁も、食材推しのほうが美味しいのだって。
読了日:01月24日 著者:こいしゆうか,印度カリー子
鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋の感想
『人は、他人を説得する方法で説得されやすい』。鴻上尚史といえば私には第三舞台で、波のように畳みかける台詞まわしを思い出すのだけれど、相談での鴻上さんは穏やかに、より相手に伝わるよう持って行き方を選んで言葉を綴っている。あるいは攻め方と呼びたいような、策略的な切り口もあって面白かった。一方では即座に心療内科受診を勧めるなど、相談の効力を知悉しているプロみたいだ。「無意識の優越感」が、思いがけず我が事として刺さる。自尊意識や肯定感とそれを、私は切り離せているだろうか。『対等な人間関係に自覚的になる』こと。
読了日:01月21日 著者:鴻上 尚史
ペスト (中公文庫)の感想
1720年、デフォー60歳、マルセイユでのペスト流行を知る。5歳のときにもロンドンでペストは流行しており、ペスト禍は再びロンドンにも訪れるという危機意識は大いにあっただろう。一方「ロビンソン・クルーソー」がそうであったように、特異状況に置かれた人をモチーフに人間と信仰を書き出すのはデフォー作品の特色らしい。キリスト教徒でもない現代人の私にはわかりづらいが、疫病の因果が見通せないからこそ答えを自らの信仰の中に求めたのだし、それはいつ収束するともしれないこのコロナ禍にあってもそう変わらないのかもしれない。
ペストは致死率が高いので、その猛威と恐怖感は新型コロナと比較にならないが、人間の反応は驚くほど変わらない。外出規制と隔離、突然死。でもいずれ危険意識は鈍化し、ステイホームの鬱屈に負けてやっぱり家から出ちゃうのですね。エッセンシャルワーカーや使用人(労働者)も家を出ざるを得ないし、無症状者からの感染もあったようで。片や、行政面もエッセンシャルワーカーである医者、聖職者、役人の犠牲であったり、困窮者への救済金を出し惜しむ所まで同じだとは。科学で早々に(?)終息できるなんて現代人の考えは慢心の気がしてきた。
読了日:01月19日 著者:ダニエル・デフォー
季刊環境ビジネス2021年冬号の感想
ビジネスとしては発電した電気を蓄電する技術の進捗を確認した程度。日本もようやく再エネに舵を切ったはいいが、政財界の鼻息が荒すぎて今度は環境破壊が進まないかと懸念する。巨大な太陽光発電所設置計画に小泉環境相が物申した報道は好ましく感じた。無責任な事業者に蹂躙される前に規制したい。「人新世の「資本論」」を読んだためもあって、どうもグリーンリカバリーは前進ではなく新たな破壊のように感じる。資源や電気の物理的運搬や設備新設/廃棄もまた新たなエネルギーの消費であることを、見ないふりをしているようで憂鬱な気分になる。
読了日:01月18日 著者:
こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)の感想
私は「障害を持って生きている人」との遭遇が苦手だと感じている。しかしそれは健常者であろうと外国人であろうと程度の差でしかなく、当たり前の始まりだと納得する。最っ初に持てる先入観で画一的に相手を位置づけたとしても、会う都度、現実の相手を知り、意思疎通を重ねて、対等の関係に成れるのだ。そして「そうするべき、そうあるべき」で動くことには無理があって、経緯はどうであれ、本人が「もうしょうがねえ」という状況に追い込まれてのち、「共に生きる」関係性ができる、それは振り返れば自分では選べない運命みたいなものなのだろう。
なにしろ私は「共に生きる」意識が希薄だから、と読みながら何度も思った。そう思う理由の一つは、祖母の晩年、息子たちや孫に代わる代わる下す要求を邪険にしたり苛立ったりした記憶であると、ボランティアが鹿野氏に苛立つ場面を読んで思い当たる。でも、クールに接していても後年強烈な思いを残したり、熱く介助していても後年それほどの情感を持たなかったりとこの本の登場人物は人それぞれで、巻き込まれるときは巻き込まれるんだから、あんまり自分を薄情だ人でなしだと脅迫しなくてもいいのかなと思った。自分の話ばかりですみません。
読了日:01月16日 著者:渡辺 一史
BRUTUS(ブルータス) 2021年 1月15日号 No.930 [世の中が変わるときに読む本] [雑誌]の感想
特集「世の中が変わるときに読む本」を読むために。斎藤幸平、多和田葉子から始まって数十人もの案内人がジャンルも時代もそれぞれに、読み応えのある本を紹介している。時代への感度やバランスも良くて、BRUTUSの人選や企画力に感心した。備忘メモは恐ろしいほど膨れ上がった。下手なジャンル専門誌よりそそられるし、間口が限定されないのが好い。年間ランキングや賞レースで選ぶより、こちらを勧めますよ。
読了日:01月11日 著者:
あるものでまかなう生活の感想
「賞味期限のウソ」に共通の食品の話題に加え、生活用品や暮らしのまかない方にも触れている。しかし訴求力があるのは、やはり食品の章だ。新型コロナで一斉休校になった直後、給食パンは全て廃棄された。法律で規制があるからだ。そのような事実が明るみに出る度、適宜改正してほしい。フランスやイタリアの食料廃棄規制法は効果を生みそうだ。売れ残り食品の廃棄を禁止し、寄付か飼料・肥料化させる。税制優遇または違反者への罰金賦課があるという。個々人の精神論ではなく、社会のシステムを改善することが俯瞰的に「減らす」一番の方策と見る。
読了日:01月06日 著者:井出 留美
先祖返りの国へ 日本の身体‐文化を読み解くの感想
全身で遊ぶことを知る日本人と、日本文化に通じたアメリカ人が「和の身体感覚」を主題に語り合う。身体の部位ごとに展開する話題の間口は広く感度は深く、この頃漠然と疑問に思っていたことが数珠つながりに繋がって大興奮した。例えば重量のある頭部を支える筋肉を、二人は板状筋で意見一致する。僧帽筋は戦力として活躍させるため、解放しておくべき筋肉だからだ。中国武術では含胸抜背を良しとする。僧帽筋の下面にある板状筋を意識してみるとすっと抜ける感覚があるではないか。日頃悩んでいる身には得るものが多いも、男子トークも多し。
ふんどしの似合う引き締まった尻は中臀筋がしっかりついているのが条件で、そのためには日本古来の歩き方であるフォアフット寄りの着地と和の履物の組合せは最適だった。女性もしかりで、着物の裾から覗く細い足首は普段履きの下駄の賜物だった。そして生命力の象徴であるウエストについて、へそ周りはコアマッスルが発達して張っているのが東西を問わず本来のあるべき姿であり、すると和装が似合う。若い頃に和装の着付けでたいがいタオルを入れられたが、へそ周りが細いことは未熟な証拠。とはいえ、私でもつい、細いウエスト信仰を抜けがたい。
また筋トレと言えば腹筋を思い浮かべるが、腹筋が存在を主張すると腹式呼吸をしにくくなり、また体幹を構成する他の筋肉が動きにくくなる。そもそも部分的な筋トレは他の部位と連動しない筋肉を増大させる行為で、基礎代謝が高いとはつまり燃費が悪く、均衡を欠いた壊れやすい体になる。筋肉は日常の動作の結果として総合的に身につくもので、目的化してつけてはむしろ有害ということ。つまり世間一般の喧伝するメソッドはなべて間違っている可能性があり、かといってこの本が正しいとは限らない。何を正しいと信じ実行するかは自分の体に問うべき。
読了日:01月05日 著者:エバレット ブラウン,エンゾ早川
薬いらずのはちみつ生活 (青春文庫)の感想
はちみつは舐めて、塗って、もうなんでもアリですね。この本でのお勧めは「混ぜる」。外用では化粧水や石けん、シャンプーにも混ぜる。内用では、飲み物やドレッシングに混ぜるレシピが紹介されています。ポイントは、純粋なはちみつを選ぶことと、効能をフル活用するために加熱しすぎないこと。最近はスーパーにすら多種多様のはちみつが棚に置かれ、ギフトにも扱われる。そのうちどれだけが自然に近い本当の純粋はちみつか見分けるのは相変わらず難しい。ミツバチが減っている昨今、そんなに「はちみつ」が溢れているのは異様でもある。
読了日:01月03日 著者:清水 美智子
感染症の日本史 (文春新書)の感想
歴史学の観点から感染症を見る。人が集まって暮らし、異種の動物を飼うことが、感染症の発生と流行の原因だと現代の私たちは知った。しかし1700年前の崇神天皇の頃に疫病の記録が残っているとは。以来、為政者の賢愚は民の生死に直結する。江戸時代には感染症の知見が生まれ、大正時代のスペイン風邪では今と変わらない衛生観念があった。ワクチンがなかったとはいえ、スペイン風邪での日本本土の死者数は推定45万人。それと今回の新型コロナは違った結果であるべきという、私の漠然とした考えに根拠はない。むしろ今の国政下で、どうか。
読了日:01月02日 著者:磯田 道史
注:
は電子書籍で読んだ本。
Kindle本とhonto本、両方読める点が最大のメリットだが、デメリットも小さくはない。
まず端末の操作性がKindleに比べると良くない。
こちらのタップと端末作動の間合いが微妙にずれると思わぬ差動をして苛々する。
OSがandroidなので当然各アプリ及びシステムのアップデートがあり、面倒臭い。
アプリの操作性が一括操作しづらく、たくさん読む人間にやさしくない。
なにより物理的に重い点は、確実に手首の疲れとなって不満が蓄積する。
Kindleが神ガジェットなのだ。間違いなく。
Kindleでほかの電子書籍を読めるようにしてくれたら最強に快適なのに…。
<今月のデータ>
購入15冊、購入費用23,511円。
読了15冊。
積読本250冊(うちKindle本79冊、Honto本43冊)。

1月の読書メーター
読んだ本の数:15

小川淳也の応援演説での熱量の高さが印象的だったのだ。税金は「くらしの会費」。ちゃんと使って、運悪く落とし穴に落ちた人を助けるのではなく、落とし穴自体を塞ごうと、皆に優しい社会保障と税制の在りかたを語っている。やはり熱い。むしろ動画で観たい。今の社会の仕組みはとても複雑で、一つの法制上の決めごとが何を意味し、どのような変化を波及するのか、私にはわかりづらい。今回、国家財政や統計の数字を基にした、しかし個人感覚も決して忘れない講義で、たくさんのことに気づけた。まさに"いまこそ"の論。すっかりファンになった。
■勤労を義務と感じる意識は近代日本社会に摺り込まれたもので、それがその義務を果たさない他者への憎悪として伏流しているとする見立てが鮮烈だった。だから、私の中にも社会のセーフティーネットを過剰だと感じたり、生活保護を恥と思う考えがあっておかしくないと自覚したい。支援を受けることは恥ではなく権利。■一部の人を限定して受益者にするから疑心暗鬼を生む。皆が受益者になれて、現金ではなくサービスで受益するシステムが良いという考えに納得した。なるほど。自分ももらえるのなら、腹の底のケチの虫も起こさなくてすむのだから。
読了日:01月30日 著者:井手 英策


土井先生と呼びたい。毎日の料理を多かれ少なかれ負担に感じる私には「一汁一菜」は救済だったから。この対談ではさらに言う。料理は人間の原初の行為。食べることが目的ではなく、つくって食べること、食べるまでのプロセスの中に人と人の関係性、豊かな時間があり、そのために自分の手を使う行為に意味がある。一汁一菜は、そのプロセスを大切にするために、量をそぎ落とす思想なのだ。料理をする行為そのものが利他的であるという考えは慰めにはなるけれども、それほど気を軽くしてくれるわけではない。全てが世界につながる考え方は好き。
良い素材に、できるだけ手をかけないで生かす。その実践も、レシピの指南どおり思考停止で盲従するのではなくて、自分の手で素材と触れて考えましょうというから、実は大変。味噌汁は出汁をとらなくてもよく、切り干し大根に油も出汁も要らず、それは好みもあるだろうからいいとして。和え物はあえて完全に混ぜない。塩は手にとってから入れる。しょう油はしょう油差しからではなくお玉にとってから入れる。全ては素材との対話のため。強い熱や道具は素材を傷つけるというから、とうとうブロッコリーに「湯加減どう?」って聞いてしまった。
読了日:01月29日 著者:土井善晴,中島岳志

南里さんは「猫のおくりびと」、老猫ケアのプロだ。我が家の猫も全員が老猫期に突入し、別れの覚悟もしなければならないと思うけれど、覚悟などできる訳がない。嗚咽しながら読み切った。南里さんは言う。死は当たり前のことで、猫自身は自然にそれを受け入れる。だから、獣医のつける病名やインターネットの情報ではなく、目の前にいる猫を信頼しましょうと。猫が「老いの坂」を下る過程を見守り、気を配り、猫の生きる意思に任せましょうと。『ありがとう、いってらっしゃい、ちょっとの間さようなら』。私は、まだ言える気がしない…。
有無を言わせず獣医に連れて行けば、命の重さを分担できたような安心感があるし、責任を果たしたような気にもなれるだろう。しかし、無理を強いたことをきっと後悔すると思う。我が家の猫の一匹に、外見上の明らかな異変があるのだけれど、本人は至って気にもせず、苦しがる様子もしない。ならば、獣医に連れて行かず、一つの過程として見守ればよいのか。後悔しないだろうかとまだ迷っている。できることなら後悔の無い日々を選びたい。『猫が自ら決めて逝こうとするとき、どんなに心が騒いでも、目をそらさずにそこにいることができるだろうか』
読了日:01月27日 著者:南里 秀子


初めて読む作家さん。女性作家と聞いて勝手に想定する繊細さはなく、展開の意外さ、筒井康隆の作品にあるようなドライなユーモアが好ましい。SFと呼んで差し支えないだろうか。全編にわたってぬるぬるしたものが登場し、ロボットですらぬちゃっとした感触が残るような気味悪さがあるが、最もぬるっと感じたのは「エデン」である。それは、言葉で言うなら女性のたくましさと生物の有機性なのだろう。笑いすら誘われる。先が気になってそわそわするところとか、適度に俗っぽいところとか、「オール讀物」掲載作だからだろうか。他の本も読んでみる。
読了日:01月27日 著者:篠田 節子


一頭の野良の仔犬が母犬と離れ、動物愛護センターを経て家庭に迎えられるストーリー。古い施設なのか、白黒の写真にセンターの濃色の金網が冷たい。対してセンターの職員さんは温かく接するも人に馴れないままの譲渡となり、読んでいるこちらがハラハラするが、飼い主となった老夫婦の気長な気遣いと愛情を受けて仔犬は立派な家庭犬に変われるのである。ああ、まっすぐに相手を見ている、好い笑顔! 老夫婦も素敵な笑顔をして、児玉さんの仕事ぶりが光る。2013年の著。あれから、保護犬という存在は一般的になったのだろうか。
読了日:01月24日 著者:児玉小枝

流行りなのかな。小麦粉や保存料を使わない、本場式のカレーっていうのがいいなと思って。しかも簡単と謳われるとその気になる。スパイスはクミン、ターメリック、コリアンダーのみ。やれる気がする。具はなんでもよいが、2種類までという。なぜかと言えば、ルーではなく具が主役なので、いくつも入れると味がボケるから。それを聞いて突然気づいた。私の味噌汁は具だくさんで推しているが、少々具を変えたところで「いつもの味噌汁」になってしまうのは、具の種類を入れすぎなのだ。スパイスカレーも味噌汁も、食材推しのほうが美味しいのだって。
読了日:01月24日 著者:こいしゆうか,印度カリー子

『人は、他人を説得する方法で説得されやすい』。鴻上尚史といえば私には第三舞台で、波のように畳みかける台詞まわしを思い出すのだけれど、相談での鴻上さんは穏やかに、より相手に伝わるよう持って行き方を選んで言葉を綴っている。あるいは攻め方と呼びたいような、策略的な切り口もあって面白かった。一方では即座に心療内科受診を勧めるなど、相談の効力を知悉しているプロみたいだ。「無意識の優越感」が、思いがけず我が事として刺さる。自尊意識や肯定感とそれを、私は切り離せているだろうか。『対等な人間関係に自覚的になる』こと。
読了日:01月21日 著者:鴻上 尚史


1720年、デフォー60歳、マルセイユでのペスト流行を知る。5歳のときにもロンドンでペストは流行しており、ペスト禍は再びロンドンにも訪れるという危機意識は大いにあっただろう。一方「ロビンソン・クルーソー」がそうであったように、特異状況に置かれた人をモチーフに人間と信仰を書き出すのはデフォー作品の特色らしい。キリスト教徒でもない現代人の私にはわかりづらいが、疫病の因果が見通せないからこそ答えを自らの信仰の中に求めたのだし、それはいつ収束するともしれないこのコロナ禍にあってもそう変わらないのかもしれない。
ペストは致死率が高いので、その猛威と恐怖感は新型コロナと比較にならないが、人間の反応は驚くほど変わらない。外出規制と隔離、突然死。でもいずれ危険意識は鈍化し、ステイホームの鬱屈に負けてやっぱり家から出ちゃうのですね。エッセンシャルワーカーや使用人(労働者)も家を出ざるを得ないし、無症状者からの感染もあったようで。片や、行政面もエッセンシャルワーカーである医者、聖職者、役人の犠牲であったり、困窮者への救済金を出し惜しむ所まで同じだとは。科学で早々に(?)終息できるなんて現代人の考えは慢心の気がしてきた。
読了日:01月19日 著者:ダニエル・デフォー

ビジネスとしては発電した電気を蓄電する技術の進捗を確認した程度。日本もようやく再エネに舵を切ったはいいが、政財界の鼻息が荒すぎて今度は環境破壊が進まないかと懸念する。巨大な太陽光発電所設置計画に小泉環境相が物申した報道は好ましく感じた。無責任な事業者に蹂躙される前に規制したい。「人新世の「資本論」」を読んだためもあって、どうもグリーンリカバリーは前進ではなく新たな破壊のように感じる。資源や電気の物理的運搬や設備新設/廃棄もまた新たなエネルギーの消費であることを、見ないふりをしているようで憂鬱な気分になる。
読了日:01月18日 著者:

私は「障害を持って生きている人」との遭遇が苦手だと感じている。しかしそれは健常者であろうと外国人であろうと程度の差でしかなく、当たり前の始まりだと納得する。最っ初に持てる先入観で画一的に相手を位置づけたとしても、会う都度、現実の相手を知り、意思疎通を重ねて、対等の関係に成れるのだ。そして「そうするべき、そうあるべき」で動くことには無理があって、経緯はどうであれ、本人が「もうしょうがねえ」という状況に追い込まれてのち、「共に生きる」関係性ができる、それは振り返れば自分では選べない運命みたいなものなのだろう。
なにしろ私は「共に生きる」意識が希薄だから、と読みながら何度も思った。そう思う理由の一つは、祖母の晩年、息子たちや孫に代わる代わる下す要求を邪険にしたり苛立ったりした記憶であると、ボランティアが鹿野氏に苛立つ場面を読んで思い当たる。でも、クールに接していても後年強烈な思いを残したり、熱く介助していても後年それほどの情感を持たなかったりとこの本の登場人物は人それぞれで、巻き込まれるときは巻き込まれるんだから、あんまり自分を薄情だ人でなしだと脅迫しなくてもいいのかなと思った。自分の話ばかりですみません。
読了日:01月16日 著者:渡辺 一史

![BRUTUS(ブルータス) 2021年 1月15日号 No.930 [世の中が変わるときに読む本] [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51urwMGgE0L._SL120_.jpg)
特集「世の中が変わるときに読む本」を読むために。斎藤幸平、多和田葉子から始まって数十人もの案内人がジャンルも時代もそれぞれに、読み応えのある本を紹介している。時代への感度やバランスも良くて、BRUTUSの人選や企画力に感心した。備忘メモは恐ろしいほど膨れ上がった。下手なジャンル専門誌よりそそられるし、間口が限定されないのが好い。年間ランキングや賞レースで選ぶより、こちらを勧めますよ。
読了日:01月11日 著者:

「賞味期限のウソ」に共通の食品の話題に加え、生活用品や暮らしのまかない方にも触れている。しかし訴求力があるのは、やはり食品の章だ。新型コロナで一斉休校になった直後、給食パンは全て廃棄された。法律で規制があるからだ。そのような事実が明るみに出る度、適宜改正してほしい。フランスやイタリアの食料廃棄規制法は効果を生みそうだ。売れ残り食品の廃棄を禁止し、寄付か飼料・肥料化させる。税制優遇または違反者への罰金賦課があるという。個々人の精神論ではなく、社会のシステムを改善することが俯瞰的に「減らす」一番の方策と見る。
読了日:01月06日 著者:井出 留美


全身で遊ぶことを知る日本人と、日本文化に通じたアメリカ人が「和の身体感覚」を主題に語り合う。身体の部位ごとに展開する話題の間口は広く感度は深く、この頃漠然と疑問に思っていたことが数珠つながりに繋がって大興奮した。例えば重量のある頭部を支える筋肉を、二人は板状筋で意見一致する。僧帽筋は戦力として活躍させるため、解放しておくべき筋肉だからだ。中国武術では含胸抜背を良しとする。僧帽筋の下面にある板状筋を意識してみるとすっと抜ける感覚があるではないか。日頃悩んでいる身には得るものが多いも、男子トークも多し。
ふんどしの似合う引き締まった尻は中臀筋がしっかりついているのが条件で、そのためには日本古来の歩き方であるフォアフット寄りの着地と和の履物の組合せは最適だった。女性もしかりで、着物の裾から覗く細い足首は普段履きの下駄の賜物だった。そして生命力の象徴であるウエストについて、へそ周りはコアマッスルが発達して張っているのが東西を問わず本来のあるべき姿であり、すると和装が似合う。若い頃に和装の着付けでたいがいタオルを入れられたが、へそ周りが細いことは未熟な証拠。とはいえ、私でもつい、細いウエスト信仰を抜けがたい。
また筋トレと言えば腹筋を思い浮かべるが、腹筋が存在を主張すると腹式呼吸をしにくくなり、また体幹を構成する他の筋肉が動きにくくなる。そもそも部分的な筋トレは他の部位と連動しない筋肉を増大させる行為で、基礎代謝が高いとはつまり燃費が悪く、均衡を欠いた壊れやすい体になる。筋肉は日常の動作の結果として総合的に身につくもので、目的化してつけてはむしろ有害ということ。つまり世間一般の喧伝するメソッドはなべて間違っている可能性があり、かといってこの本が正しいとは限らない。何を正しいと信じ実行するかは自分の体に問うべき。
読了日:01月05日 著者:エバレット ブラウン,エンゾ早川

はちみつは舐めて、塗って、もうなんでもアリですね。この本でのお勧めは「混ぜる」。外用では化粧水や石けん、シャンプーにも混ぜる。内用では、飲み物やドレッシングに混ぜるレシピが紹介されています。ポイントは、純粋なはちみつを選ぶことと、効能をフル活用するために加熱しすぎないこと。最近はスーパーにすら多種多様のはちみつが棚に置かれ、ギフトにも扱われる。そのうちどれだけが自然に近い本当の純粋はちみつか見分けるのは相変わらず難しい。ミツバチが減っている昨今、そんなに「はちみつ」が溢れているのは異様でもある。
読了日:01月03日 著者:清水 美智子

歴史学の観点から感染症を見る。人が集まって暮らし、異種の動物を飼うことが、感染症の発生と流行の原因だと現代の私たちは知った。しかし1700年前の崇神天皇の頃に疫病の記録が残っているとは。以来、為政者の賢愚は民の生死に直結する。江戸時代には感染症の知見が生まれ、大正時代のスペイン風邪では今と変わらない衛生観念があった。ワクチンがなかったとはいえ、スペイン風邪での日本本土の死者数は推定45万人。それと今回の新型コロナは違った結果であるべきという、私の漠然とした考えに根拠はない。むしろ今の国政下で、どうか。
読了日:01月02日 著者:磯田 道史
注:

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