2021年03月01日
2021年2月の記録
毎月のように本を買ってしまった言い訳をしている。
今月は、市の施策でPaypay25%還元キャンペーンがあったのである。
市内の書店4社が、購入額の25%還元に参加したとあっては奮起する。
本を買う行為に淫するにも、さすがに飽きた。というくらい買った。
この膨満感も、しばらく経てば消えてしまうのだが。
当然ながら、積読本の棚がとんでもない状態になってしまった。

<今月のデータ>
購入26冊、購入費用26,163円。
読了12冊。
積読本265冊(うちKindle本81冊、Honto本38冊)。

2月の読書メーター
読んだ本の数:12
あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)の感想
評判に反し、はまれなかった。たぶん論理や数式、科学技術に、私はもう夢を見ることができないのだろう。いちばん楽しめたのは冒頭の「バビロンの塔」。人間の感覚描写がリアルで、最も論理や科学技術から離れた言葉で書かれていると感じたのがその理由の一つだが、著者はこの物語を神ではなく、工学や力学用語で理解しうると言う。理系の経歴と、宗教的背景の解説に納得する。移民2世だが東洋の匂いもない。大雑把に言うなら、宗教も科学も個人的主観にとっては同じレベルの話だと思ったな。曰く『公正ではない。優しくない。慈悲深くない』。
読了日:02月28日 著者:テッド・チャン
今すぐできる!肝機能を上げる40のルール (健康図解シリーズ)の感想
肝機能の低下が疑われるのはうちの猫である。食欲不振で、体重が半年トータルで14%落ちた。同じ哺乳類なら臓器の機能は似ているだろうから、理解の参考になると思った。ALT値が異常に高いことから肝臓辺りの障害が疑われる。しかしその他の値がいま一つ当てはまらない。エコーも特に。なので胆のう、すい臓も含めて、消化器系(いわゆる沈黙の臓器!)の、特に消化液分泌機能を先生が疑っている理由が理解できた。脂質の消化吸収を担う胆汁の分泌を良くするため、ウルソが処方された。これも人間と同じ。病気の説明、療法などわかりやすい。
投薬と並行して食餌も、消化に負担をかけない方向で工夫したいが、さすがに雑食と肉食をごっちゃにするのはまずいだろう。牛肉よりは鶏か魚、魚でも青魚は脂っこいのでだめかと思いきや、不飽和脂肪酸が良いのだそうだ。しかし嗜好で選ぶならカツオか。カツオの生節を与えるとがつがつ食べる。これはチュールより良い。食物繊維を含む野菜が便秘対策に良い、またキャベツのビタミンUが肝機能を高めるとある。彼が白菜、キャベツをもともと好むため、これは助けになるのだろう。貧血もあるので、カツオの血合いとキャベツのスープ仕立てで勝負する。
読了日:02月28日 著者:
RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になるの感想
「その道ひと筋」や、早くて深い知識の習得が良しとされがちな社会において、ビジネスのみならず人生の、個人のみならずホモ・サピエンスの、多面的な「幅」の重要性を説く。いや、可能性と呼ぼう。ここに出てくる人々は突拍子もない分野に頭を突っ込んだり、多くの専門家と関係を築いたりと、他人から「自由だね」と揶揄されそうな方向を、他者の忠告に逆らってでも選ぶ。得られるものはでかい。人の志向にはなべて意味があるのだろう。20世紀のロシアにおける心理学研究、18世紀のピエタの話など、話題も幅広く、興味の尽きない内容だった。
ルリヤの研究:1930年代、ソ連での自然実験。伝統的な生活をしてきた住民と、近代的な教育を受けた住民では、思考に根本的な相違が現れる。すなわち、教育により人は抽象的な概念を理解し、論理展開をし、実際に見たことのない膨大な情報を使って考えることができるようになった。半面、錯視を起こしたり、古来の感性豊かな物の見方はできなくなる。教育によって科学が進歩し、今があるのは間違いないが、優劣の話ではないと思えて、考え込んでしまう。『近代化以前の人たちは木を見て森を見ず、現代の人々は森を見て木を見ていない』。
読了日:02月26日 著者:デイビッド・エプスタイン
脳から見るミュージアム アートは人を耕す (講談社現代新書)の感想
ミュージアムとは『コレクションを収集・保管・調査研究し、展示公開に供する施設』。ミュージアムに関するあれこれについての対談である。中野さんがこのテーマに関心を持ったきっかけは、脳とミュージアムの機能が似ているからとある。整理すると、情報や知識の蓄積装置としての機能、表に出ない部分が肝心な機能を担っている点、インプットが即役立つとは限らず、何年も後になって活きることがある点だろう。興味のある分野が増えることはその人にとって幸せなこと、新たな可能性を拓くことである。学べる刺激が多くある点だけは都会が羨ましい。
読了日:02月21日 著者:中野 信子,熊澤 弘
竹垣づくりのテクニック: 竹の見方、割り方から組み方まで、竹垣のつくり方がよくわかる決定版の感想
一軒家を建てる予定もないのに、ブロック塀より竹垣の方が風流かつ心安かろう、竹垣づくりなんてスキルがあったら格好良いではないかなどという気になって読んでみる。当然ながら、本を眺めただけで身につくようなスキルではなく、想像以上に複雑なひと通りの手順を見た後は、その組み方の妙を感嘆しながら愛でるばかりだった。強度増強と目隠しを兼ねた押縁や、節や染縄の結び目すら美しく見せるための技は長い年月をかけて日本で育まれたもので、中国の編み垣とは由来が違いそうだ。寺社仏閣などあちこちの竹垣を見て歩きたくなった。
読了日:02月17日 著者:
チョコレートの真実 [DIPシリーズ]の感想
この時期、家の中にチョコレートがつい増える。それを食べながら読むのは自虐行為である。南アメリカ大陸でカカオが発見されて以来、植民地における奴隷労役や、児童人身売買による強制労働の上にチョコレート産業は繁栄し続けてきた。苛烈な搾取構造が現代になって変わったかというと、多国籍チョコレート企業と国家がグルになり、より狡猾になったという告発だ。規制は踏み倒し、内戦、虐殺、拷問、暗殺と枚挙にいとまがない。フェアトレード制度は機能しているものの、微々たるものである。目の前のチョコレートの来し方、推して知るべし。苦い。
読了日:02月15日 著者:キャロル・オフ
土井善晴の素材のレシピの感想
「料理と利他」の対話に出てきたので、中を確認せず買ってしまう。余裕がないときは一汁一菜、余裕があるときのちょい足しの一品レシピ集、というコンセプト。主菜に沿えるちょい足しの一品は、いつも悩むところなので重宝しそう。なんだけど、ちょっと変わった献立が多いような。手間のかかる献立代表の揚げ物も多いような。と思ったら、テレビ番組「おかずのクッキング」で扱ったレシピの再録である由。だから素朴な定番物は少ないのですね。変わり種で、でも特別な調味料や調理の手間の要らない、発想勝負な献立だけ、メモさせていただこうかな。
読了日:02月14日 著者:土井 善晴
逆転の大中国史 ユーラシアの視点からの感想
パラダイム転換が痛快だ。中国共産党に作為があるだけでなく、「中国」という国の枠組みにも違和感を感じていた。「中国」は「漢族、蒙古族(モンゴル)、満州族(マンジュ)、回族(ウィグル)、蔵族(チベット)」と多民族で成り立っている。「中国の歴史」は異民族による覇権の積み重ねで、各王朝は継承していない。万里の長城の北側にあるオルドス出身の著者が見る「中国」は、日本人が授業で習う中国より腑に落ちる。ユーラシア大陸の中心にあって、遊牧民が持つ英知と力。それでこそ、かの国の持つ底知れぬパワーが理解できようというものだ。
漢文はそのものが文法ではないので、共通の言語ではない。しかし各々の漢字が持つ意味で、他民族であっても意思疎通ができる。その大きな漢字文化圏が、東アジアに利した。一方では、わざわざ違う漢字の用法をつくって別の言語にした王朝の歴史が散見される。漢民族と同化してしまわないようにとの意図であったという。女真文字が図で示されているが、これは漢字の字自体が今中国で使われているものとも日本で使われているものとも違って、漢字であると認識できるのにまったく理解できない。漢字を国字にはしないなど、様々工夫が凝らされている。
「神なるオオカミ」を読んだことがこの本を読むきっかけになった。そしてこの本を読んだことが、私の視野を中国からユーラシア大陸に広げた。だから、「神なるオオカミ」を紹介してくれた読み友さんには心から感謝したい。大草原は、「神なるオオカミ」にもあったとおり、漢民族が農耕や文化を強いたために失われてしまったかもしれない。しかし万里の長城の向こう、中央ユーラシアの地には、石人や仏塔など、豊かな文化の痕跡が数々残っているという。それを見に行きたい。遊牧の民に力を与えた自然を肌で感じてみたい。
読了日:02月13日 著者:楊 海英
受難 (文春文庫)の感想
布団の中で読む本ではなかったかもしれないが、ゲラゲラ笑いながら咳き込みながら楽しんだ。「リアル・シンデレラ」を思い出させる主人公が、今回はハッピーエンドで良かった。そんな大転換もあっていい。犬吠埼でそんなものが買えるのかと思ったら、イソギンチャクとカズノコがそんなに活躍するとは、スピード飴以上ではないか。これはファンタジーとか寓話とか定型づけることなく、ただ楽しむのが正解だと思う。
読了日:02月07日 著者:姫野 カオルコ
あやしい探検隊 焚火発見伝(小学館文庫)の感想
よく見るとリンさんとの共著。リンさんの発案で、野外料理ありきの焚き火キャンプ企画だったようだ。タヌキ、アンコウ、ヒツジ、ジャガイモ、タケノコ、油揚げ、イノシシ、豆腐、バカ貝。リンさんの腕前あって、いつもの面々はメニューが何であろうと健啖に食い、機嫌良く喋る。風邪をこじらせて布団の中の身としては、食欲はなくとも元気をもらえる。美味しいお豆腐なら食べられる気がする。おろし生姜と、醤油で。地元に頑張っている豆腐屋さんがあるのは、大事なことだなぁ。美味しい豚肉も食べたい。まだ無理か。ネズミの油揚げの話が興味深い。
読了日:02月07日 著者:椎名 誠,林 政明
彼岸の図書館: ぼくたちの「移住」のかたちの感想
都市部から地縁の無い田舎に移住、という話は最近よく聞くようになった。身体と心が耐えられなくなったという理由から奈良県は東吉野村に移住した青木さん夫婦は、家を図書館として他者に開放する。この本は別の理由で移住&活動している、あるいは近辺で関係を持つ人たちとの対談の形をとっている。内田樹門下生ということで、まるで内田先生みたいなことを言うなあ、と思ったら本当に内田先生が対談相手として登場していた。そうでなくとも、内田先生の論理は確実に彼らの中に根付いていて、こういうふうに知は次世代に受け継がれるのだと知った。
読了日:02月05日 著者:青木 真兵,青木 海青子
真面目にマリファナの話をしようの感想
アメリカにおけるマリファナ合法化に至る経緯のルポ。マリファナを論じるには、植物として持つ効能を公的に検証し認める医療用の面と、アングラから解禁されたことによる嗜好品としての"マリファナ・バブル"の面がある。そこに加わる国vs州、人種差別がアメリカ特有の要素。一方日本では井上陽水逮捕以降、「ダメ、絶対」のキャッチフレーズと共に更に一律厳格化され、現在に至るもマリファナ=「悪」一点張りな点がいかにも日本的と言えよう。欧米ではほぼ医療用として認められ使用されているのは事実で、日本にも公正な検証を求めたい。
読了日:02月01日 著者:佐久間 裕美子
注:
は電子書籍で読んだ本。
今月は、市の施策でPaypay25%還元キャンペーンがあったのである。
市内の書店4社が、購入額の25%還元に参加したとあっては奮起する。
本を買う行為に淫するにも、さすがに飽きた。というくらい買った。
この膨満感も、しばらく経てば消えてしまうのだが。
当然ながら、積読本の棚がとんでもない状態になってしまった。

<今月のデータ>
購入26冊、購入費用26,163円。
読了12冊。
積読本265冊(うちKindle本81冊、Honto本38冊)。

2月の読書メーター
読んだ本の数:12

評判に反し、はまれなかった。たぶん論理や数式、科学技術に、私はもう夢を見ることができないのだろう。いちばん楽しめたのは冒頭の「バビロンの塔」。人間の感覚描写がリアルで、最も論理や科学技術から離れた言葉で書かれていると感じたのがその理由の一つだが、著者はこの物語を神ではなく、工学や力学用語で理解しうると言う。理系の経歴と、宗教的背景の解説に納得する。移民2世だが東洋の匂いもない。大雑把に言うなら、宗教も科学も個人的主観にとっては同じレベルの話だと思ったな。曰く『公正ではない。優しくない。慈悲深くない』。
読了日:02月28日 著者:テッド・チャン

肝機能の低下が疑われるのはうちの猫である。食欲不振で、体重が半年トータルで14%落ちた。同じ哺乳類なら臓器の機能は似ているだろうから、理解の参考になると思った。ALT値が異常に高いことから肝臓辺りの障害が疑われる。しかしその他の値がいま一つ当てはまらない。エコーも特に。なので胆のう、すい臓も含めて、消化器系(いわゆる沈黙の臓器!)の、特に消化液分泌機能を先生が疑っている理由が理解できた。脂質の消化吸収を担う胆汁の分泌を良くするため、ウルソが処方された。これも人間と同じ。病気の説明、療法などわかりやすい。
投薬と並行して食餌も、消化に負担をかけない方向で工夫したいが、さすがに雑食と肉食をごっちゃにするのはまずいだろう。牛肉よりは鶏か魚、魚でも青魚は脂っこいのでだめかと思いきや、不飽和脂肪酸が良いのだそうだ。しかし嗜好で選ぶならカツオか。カツオの生節を与えるとがつがつ食べる。これはチュールより良い。食物繊維を含む野菜が便秘対策に良い、またキャベツのビタミンUが肝機能を高めるとある。彼が白菜、キャベツをもともと好むため、これは助けになるのだろう。貧血もあるので、カツオの血合いとキャベツのスープ仕立てで勝負する。
読了日:02月28日 著者:

「その道ひと筋」や、早くて深い知識の習得が良しとされがちな社会において、ビジネスのみならず人生の、個人のみならずホモ・サピエンスの、多面的な「幅」の重要性を説く。いや、可能性と呼ぼう。ここに出てくる人々は突拍子もない分野に頭を突っ込んだり、多くの専門家と関係を築いたりと、他人から「自由だね」と揶揄されそうな方向を、他者の忠告に逆らってでも選ぶ。得られるものはでかい。人の志向にはなべて意味があるのだろう。20世紀のロシアにおける心理学研究、18世紀のピエタの話など、話題も幅広く、興味の尽きない内容だった。
ルリヤの研究:1930年代、ソ連での自然実験。伝統的な生活をしてきた住民と、近代的な教育を受けた住民では、思考に根本的な相違が現れる。すなわち、教育により人は抽象的な概念を理解し、論理展開をし、実際に見たことのない膨大な情報を使って考えることができるようになった。半面、錯視を起こしたり、古来の感性豊かな物の見方はできなくなる。教育によって科学が進歩し、今があるのは間違いないが、優劣の話ではないと思えて、考え込んでしまう。『近代化以前の人たちは木を見て森を見ず、現代の人々は森を見て木を見ていない』。
読了日:02月26日 著者:デイビッド・エプスタイン


ミュージアムとは『コレクションを収集・保管・調査研究し、展示公開に供する施設』。ミュージアムに関するあれこれについての対談である。中野さんがこのテーマに関心を持ったきっかけは、脳とミュージアムの機能が似ているからとある。整理すると、情報や知識の蓄積装置としての機能、表に出ない部分が肝心な機能を担っている点、インプットが即役立つとは限らず、何年も後になって活きることがある点だろう。興味のある分野が増えることはその人にとって幸せなこと、新たな可能性を拓くことである。学べる刺激が多くある点だけは都会が羨ましい。
読了日:02月21日 著者:中野 信子,熊澤 弘


一軒家を建てる予定もないのに、ブロック塀より竹垣の方が風流かつ心安かろう、竹垣づくりなんてスキルがあったら格好良いではないかなどという気になって読んでみる。当然ながら、本を眺めただけで身につくようなスキルではなく、想像以上に複雑なひと通りの手順を見た後は、その組み方の妙を感嘆しながら愛でるばかりだった。強度増強と目隠しを兼ねた押縁や、節や染縄の結び目すら美しく見せるための技は長い年月をかけて日本で育まれたもので、中国の編み垣とは由来が違いそうだ。寺社仏閣などあちこちの竹垣を見て歩きたくなった。
読了日:02月17日 著者:

![チョコレートの真実 [DIPシリーズ]](https://m.media-amazon.com/images/I/51R+F9B6AFL._SL120_.jpg)
この時期、家の中にチョコレートがつい増える。それを食べながら読むのは自虐行為である。南アメリカ大陸でカカオが発見されて以来、植民地における奴隷労役や、児童人身売買による強制労働の上にチョコレート産業は繁栄し続けてきた。苛烈な搾取構造が現代になって変わったかというと、多国籍チョコレート企業と国家がグルになり、より狡猾になったという告発だ。規制は踏み倒し、内戦、虐殺、拷問、暗殺と枚挙にいとまがない。フェアトレード制度は機能しているものの、微々たるものである。目の前のチョコレートの来し方、推して知るべし。苦い。
読了日:02月15日 著者:キャロル・オフ

「料理と利他」の対話に出てきたので、中を確認せず買ってしまう。余裕がないときは一汁一菜、余裕があるときのちょい足しの一品レシピ集、というコンセプト。主菜に沿えるちょい足しの一品は、いつも悩むところなので重宝しそう。なんだけど、ちょっと変わった献立が多いような。手間のかかる献立代表の揚げ物も多いような。と思ったら、テレビ番組「おかずのクッキング」で扱ったレシピの再録である由。だから素朴な定番物は少ないのですね。変わり種で、でも特別な調味料や調理の手間の要らない、発想勝負な献立だけ、メモさせていただこうかな。
読了日:02月14日 著者:土井 善晴

パラダイム転換が痛快だ。中国共産党に作為があるだけでなく、「中国」という国の枠組みにも違和感を感じていた。「中国」は「漢族、蒙古族(モンゴル)、満州族(マンジュ)、回族(ウィグル)、蔵族(チベット)」と多民族で成り立っている。「中国の歴史」は異民族による覇権の積み重ねで、各王朝は継承していない。万里の長城の北側にあるオルドス出身の著者が見る「中国」は、日本人が授業で習う中国より腑に落ちる。ユーラシア大陸の中心にあって、遊牧民が持つ英知と力。それでこそ、かの国の持つ底知れぬパワーが理解できようというものだ。
漢文はそのものが文法ではないので、共通の言語ではない。しかし各々の漢字が持つ意味で、他民族であっても意思疎通ができる。その大きな漢字文化圏が、東アジアに利した。一方では、わざわざ違う漢字の用法をつくって別の言語にした王朝の歴史が散見される。漢民族と同化してしまわないようにとの意図であったという。女真文字が図で示されているが、これは漢字の字自体が今中国で使われているものとも日本で使われているものとも違って、漢字であると認識できるのにまったく理解できない。漢字を国字にはしないなど、様々工夫が凝らされている。
「神なるオオカミ」を読んだことがこの本を読むきっかけになった。そしてこの本を読んだことが、私の視野を中国からユーラシア大陸に広げた。だから、「神なるオオカミ」を紹介してくれた読み友さんには心から感謝したい。大草原は、「神なるオオカミ」にもあったとおり、漢民族が農耕や文化を強いたために失われてしまったかもしれない。しかし万里の長城の向こう、中央ユーラシアの地には、石人や仏塔など、豊かな文化の痕跡が数々残っているという。それを見に行きたい。遊牧の民に力を与えた自然を肌で感じてみたい。
読了日:02月13日 著者:楊 海英


布団の中で読む本ではなかったかもしれないが、ゲラゲラ笑いながら咳き込みながら楽しんだ。「リアル・シンデレラ」を思い出させる主人公が、今回はハッピーエンドで良かった。そんな大転換もあっていい。犬吠埼でそんなものが買えるのかと思ったら、イソギンチャクとカズノコがそんなに活躍するとは、スピード飴以上ではないか。これはファンタジーとか寓話とか定型づけることなく、ただ楽しむのが正解だと思う。
読了日:02月07日 著者:姫野 カオルコ


よく見るとリンさんとの共著。リンさんの発案で、野外料理ありきの焚き火キャンプ企画だったようだ。タヌキ、アンコウ、ヒツジ、ジャガイモ、タケノコ、油揚げ、イノシシ、豆腐、バカ貝。リンさんの腕前あって、いつもの面々はメニューが何であろうと健啖に食い、機嫌良く喋る。風邪をこじらせて布団の中の身としては、食欲はなくとも元気をもらえる。美味しいお豆腐なら食べられる気がする。おろし生姜と、醤油で。地元に頑張っている豆腐屋さんがあるのは、大事なことだなぁ。美味しい豚肉も食べたい。まだ無理か。ネズミの油揚げの話が興味深い。
読了日:02月07日 著者:椎名 誠,林 政明


都市部から地縁の無い田舎に移住、という話は最近よく聞くようになった。身体と心が耐えられなくなったという理由から奈良県は東吉野村に移住した青木さん夫婦は、家を図書館として他者に開放する。この本は別の理由で移住&活動している、あるいは近辺で関係を持つ人たちとの対談の形をとっている。内田樹門下生ということで、まるで内田先生みたいなことを言うなあ、と思ったら本当に内田先生が対談相手として登場していた。そうでなくとも、内田先生の論理は確実に彼らの中に根付いていて、こういうふうに知は次世代に受け継がれるのだと知った。
読了日:02月05日 著者:青木 真兵,青木 海青子

アメリカにおけるマリファナ合法化に至る経緯のルポ。マリファナを論じるには、植物として持つ効能を公的に検証し認める医療用の面と、アングラから解禁されたことによる嗜好品としての"マリファナ・バブル"の面がある。そこに加わる国vs州、人種差別がアメリカ特有の要素。一方日本では井上陽水逮捕以降、「ダメ、絶対」のキャッチフレーズと共に更に一律厳格化され、現在に至るもマリファナ=「悪」一点張りな点がいかにも日本的と言えよう。欧米ではほぼ医療用として認められ使用されているのは事実で、日本にも公正な検証を求めたい。
読了日:02月01日 著者:佐久間 裕美子

注:

Posted by nekoneko at 13:11│Comments(0)
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