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2021年04月02日

2021年3月の記録

久しぶりに、小説の世界に耽溺した。
深く入り込めるものと、表面を辿るだけのものと、それは読んでみないとわからない。
読むときの自分の精神の熟成の度合いや心境は測ることができないから、
その物語が自分にぴったり合うかどうかは、前もって選べないものなのだ。
意志の力で潜り込もうとしたって、どうにかできるものでもないのだ。
先を読みたくてうずうずする。
邪魔されると小さな苛立ちが先行する。
いかんいかん、せっかくの楽しみ、ぼちぼちいこう。

<今月のデータ>
購入9冊、購入費用7,668円。
読了15冊。
積読本254冊(うちKindle本81冊、Honto本29冊)。


ブック

3月の読書メーター
読んだ本の数:15

いちばんわかる!  トクする!  社会保険の教科書いちばんわかる! トクする! 社会保険の教科書感想
払うものは必要なだけ払って、しっかり給付を受けようという主旨。対話形式で読みやすい。しかし各制度の骨組みを整理したい向きには、まとめづらい感もある。実務をかじっているから理解できるけど、それこそ事務に任せきりの社長さんには、ハック的な部分しか頭に入ってこないのではないかと思われる。保険料や給付に細かいので、給付を受けたい人のお得感を狙っているようでもあり、実務担当者に情報をまとめているようでもあり、そう、信頼のおけるまとめサイトを読んでいる感覚だった。この手の情報は溢れているだけに、ソースの信用は大事。
読了日:03月31日 著者:キャッスルロック・パートナーズ ファイル

怒り(下) (中公文庫)怒り(下) (中公文庫)感想
私の中には大きな怒りがあると言われたことがある。そして哀しみと怒りは表裏だと私は思っている。この物語は哀しみでいっぱいだ。人は基本的に、他人を信頼しなければ生きていけない動物だ。だけど、相手に近づきたい、為になりたいと思ったとき、信頼の隙間に疑念が染みてくるのではないだろうか。相手を信じきれなかったための哀しみ、慟哭。それは弱さと責めたいとは思わない。一方、過去を伏せる生き方を想像してみる。伏せるには理由がある。それを力でねじ込まれたとき、彼らは裏切りと思っただろうか。諦めきれない思いは切りも繋ぎもする。
結局、「怒」はなんだったのだろう。犯人の中に、苛立ちや嘲りはあっても怒りは見えない。怒りは、何かに本気で向き合って初めて生まれる強い感情だ。例えば辰哉の父のように。だから犯人みたいなサイコパスには、無理なんじゃないかと。他の人々の中に見えた怒りも、哀しみに呑まれていくように私には見えた。
読了日:03月28日 著者:吉田 修一

怒り(上) (中公文庫)怒り(上) (中公文庫)感想
残酷な殺人があったことを、読者は冒頭で教えられて知っている。千葉と東京と沖縄で、決して十全でない毎日を生きる人々の間に現れた、過去不明の3人の男。市井の人間の感覚で不穏さを嗅ぎ取ったとしても、知らなければ決定打にはならない。ならば誰が犯人かと目を配るが、皆それかもしれないと思わせる特徴を匂わせながら、どの男も違う気がしてくるのだ。なぜなら、迷い、驚き、優しい気遣いを見せる、一人の若者だからだ。この人の書く物語は、色気はあっても生臭さがないので入りこまずに読める。下巻、クライマックスはさあどうかな。
読了日:03月28日 著者:吉田 修一

同伴避難同伴避難感想
3.11、原発事故で避難を余儀なくされた人のうち、児玉さんはペットと一緒に避難所に入れた人たちに焦点を当て、声と写真を集めた。一方では悲惨な写真もたくさん公開された時期だったことを思い返せば、児玉さんの意図はわかりやすい。緊急避難を呼びかけたとき行政は、避難所ではペット禁止だから、また集団避難のバスに動物は乗せられないから、放してこいと指示し、住民もまたすぐに戻れると思っていたためにたくさんのペットが餓死や衰弱死した。災害の際は、なにがあっても一緒に猫たちと行動しようと固く決意したことを改めて思い出した。
「同行避難」:災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難する行動。「同伴避難」:被災者が避難所でペットを飼養管理する状態。飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない。(環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」)
読了日:03月26日 著者:児玉小枝

マンション管理員オロオロ日記――当年72歳、夫婦で住み込み、24時間苦情承りますマンション管理員オロオロ日記――当年72歳、夫婦で住み込み、24時間苦情承ります感想
分譲マンションの管理業務13年の管理員による事件簿といったところ。著者はもと広告業界の事業主という。マンションによって環境も人間関係も違っていて、マンションの築年数に係わらず、住人をはじめ管理会社や組合とがうまくやっていけるかによってマンションの価値が変わるというのは納得できる話だ。うちは賃貸だけど、良くお世話していただいているから、古くても長く住みたいもの。金を出して買った者の特権みたいに、管理員を下に見る人間が頻出するのは分譲には多そう。人間の尊卑ではないのにね。確かに若者には務まらない。奥様が素敵。
読了日:03月24日 著者:南野 苑生 ファイル

まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り (いちばん役立つペットシリーズ)まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り (いちばん役立つペットシリーズ)感想
書店でなにげなく手に取った本。帯に町田康さんの「お願い」が書かれているのに気づき、読まなければと思った。このところ悶々と考えていたけれど、猫を看取る覚悟なんていつまで経ってもできるわけがない。でも、どんな状況が起きうるか、どんな選択肢があるか、補助アイテムや緩和ケアのことも先に知ることはできる。これが後日の私を助けてくれるようにと願う。私が怖いのは、猫が旅立つことではない。自分がなにかしら間違えて、猫を苦しめる事態に陥るのが怖いのだと気付いた。頭の中だけで考えたことよりも愛猫から感じることを優先すること。
読了日:03月22日 著者:猫びより編集部,粟田 佳織

パンデミックの文明論 (文春新書)パンデミックの文明論 (文春新書)感想
この二人の対談が面白くない訳がないので読む。小中学校では治外法権扱い、テレビでは珍獣枠など、致し方なくはみ出してしまう二人に勝手に親近感を持つ。海外へ出て生活したことが、日本人の「空気」による抑圧を外して、好い方向へ背中を押した印象を受けた。感性と知識のガチンコ勝負、というよりは気軽なおしゃべりに近いのだが、各々の持っている教養の素地がでかいために、話の展開が止め処ない。結論があるわけではないので、読んでいるこちらも、へええ、面白い!で終わっていい。好奇心も教養も、拡げたら拡げただけ、無駄にはならないね。
読了日:03月21日 著者:ヤマザキ マリ,中野 信子 ファイル

極夜行極夜行感想
『極夜で冬至で新月という地球最悪の暗黒状態』の中、グリーンランド・シオラパルクを起点に北極海へ向かう"探検"の旅を角幡氏は思い立つ。例によって、真面目なんだか真面目でないんだかわからない調子で、胸の底の打算や欺瞞まで吐露してしまって、あんのじょう闇の憂鬱に呑まれる。だからこそ絶対的存在である太陽との邂逅が本質になるとはいえ、何を好き好んで…。ウヤミリックという伴侶の考察も読ませる。極夜の闇は一度きりの体験であると言いながら、彼はこのコロナ禍に、今また氷の大地にいるらしい。今度は何を思いついたのだろう。
3年前放映のNHK番組の録画を、読み終えた後にようやく観た。太陽が地表に現れない、極夜の世界。実際の体感とはかけ離れていると理解したうえでも、思っていたより氷河は高さがあり、橇は硬い音を立て、何とは言わないが臭そうだった。旅の序盤では生きて戻らせると断言したウヤミリックが、デポ襲撃が判明して以降、緊急食糧としての意味を持ち始めるところは、この本の読みどころの一つだが、そのことを訊かれた角幡氏は言葉に詰まる。結論を言葉にしづらいのか、あるいは、体で理解してなお相克する思いが彼を混乱させたのかもしれない。
読了日:03月20日 著者:角幡 唯介

光降る丘 (角川文庫)光降る丘 (角川文庫)感想
命からがら戦争を生き延びた男たちは日本に帰還し、自らの食い扶持を稼ぐために山間の原生林を開拓する。時を経てその地は直下地震に見舞われた…。恥ずかしながら、この物語が2008年の地震等事実に基づいて書かれていることに、読み終えるまで思い至らなかった。物語の中で開拓民となった男たちは、全力で挑まねば太刀打ちできない状況の中で陽気だ。冗談を言い合い、知恵を捻り、酒を呑んで明日に立ち向かう。自らの力でつくりあげた故郷を、そこで生きていきたいと子や孫に言ってもらえる幸せは、身に沁みて溢れるようなものと想像しました。
戦後、増える国民を養うために、山間地の開拓は国策事業だった。しかし、ブナがみっしりと根を張った原生林を切り開いてつくった土地は、その保持能力を弱めてはいなかったか。そこに人間は住んで良かったのか。避難した住民たちは帰ることができるのだろうか。物語の中であれば無責任に思い巡らせたことも、事実と知れば喉が詰まる。岩手・宮城内陸地震。ググれば土石流に巻き込まれた温泉、崩落した橋、住民の声も顔も現実と迫り、災害と無縁に安穏としているお前になにがわかるかと、真っ当な指摘を突きつける。今も住み続ける強さこそ思うべき。
読了日:03月14日 著者:熊谷 達也 ファイル

招かれざる客 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)招かれざる客 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
戯曲仕立てのミステリ。音響効果まで書き込まれて雰囲気満点で、舞台で観ているみたい。誰もが誰かをかばおうと、こんがらがった糸を切り離してゆくように解かれる謎。「Yの悲劇」の方向にすっかり誘導されてしまった。スタークウェッダーなんてけったいな名前にも裏があるわけで、そうすると三角関係が刻々と変化してゆく流れも実は重要だったり。原題は"The Unexpected Guest"。ウォリック夫人も彼を信頼したくらいで、悪い人ではないだろうに、逃げおおせてどうするのだろう。結末の先を慮ってしまい不思議な余韻が残る。
読了日:03月08日 著者:アガサ・クリスティ ファイル

ザ・ソウル・オブくず屋: SDGsを実現する仕事ザ・ソウル・オブくず屋: SDGsを実現する仕事感想
札幌市資源リサイクル事業協同組合の理事長を務めた方で、資源リサイクル業を長年手掛けていただけではない、障害者雇用、農産物廃棄、原発問題などの社会活動も多岐に携わり、ここまで長く幅広く自分の言葉で語れる人に私は出会ったことがない。"くず屋"だから見える重たい様々も、説明する口調は優しいのだ。豆腐屋さんで買った豆腐を腐らせたとき、申し訳ないと思う。スーパーで買った豆腐を腐らせたとき、損したと思う。なぜだろうね、と。知りたかった廃棄やリサイクルの実際と共に、思いがけず「なつかしい未来」への魂も受け取りました。
飲料容器のリサイクルに関して。リサイクル回収率が高いアルミ缶ですら、決して環境にやさしくなどない。アルミの生成に必要な電力が莫大なこと、アルミ缶のボディはリサイクルアルミでできても底と蓋は新しいアルミが必要になることは、なかなか触れられない点だろう。最強(つまり環境負荷が最低)なのは断トツマイボトルで次がガラス瓶のリユース、次いで紙パック容器であることを覚えておく。最近は急須を知らない日本人の子供がいるって地味に衝撃的。
2011年から18年にかけてのフクシマのリポートも貴重である。著者は毎年のように訪れ、知人の除染作業を手伝ったり子供たちに野菜を送ったりしている。ここからも新しく知る/気づくことが多かった。地中に浸み込んだ放射能は木々が吸い上げ、葉には放射能が溜まり、落ち葉となる。洗っても燃やしても放射能はどこかに移動するだけで残り、消えない。10年経ったって、遍在しているだろう。どうやっても安全に無くすることができないのが放射性廃棄物なのだ。柿の実にも放射能はたまり、干し柿にして濃くなる。そのひとつひとつの事実が辛い。
読了日:03月06日 著者:東 龍夫

想像ラジオ (河出文庫)想像ラジオ (河出文庫)感想
あまたの死者からの声。私には当時も聴こえなかったし、10年経った今も聴こえない。だから、さぞ辛かったろう、冷たかったろう、わけがわからなかったろうと想像した。その欺瞞や甘さもわかっているから、著者は序盤に釘を刺すのだ。帰京する車の中で主人公たちに議論させる。ほんとうにわからない奴らがわかったような顔をするな。当事者はそう思ったとて仕方ないが、どうあったって当事者にはなれない者たちは想像するしかないじゃないか。むしろ想像することが鎮魂だと思う。そうして生きるうちに、同胞として同じ痛みを知る時が来るのだろう。
読了日:03月05日 著者:いとう せいこう ファイル

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)感想
『歴史好きのための特別講座』と位置付けた講義。政治、経済、安全保障も含め、日清戦争以降、第二次世界大戦敗戦までの日本を、通じて俯瞰する。特に収穫だったのは、侵略/被侵略でない軸で見ることによって新しく見える世界があるということだ。日本と中国を、侵略/被侵略だけでなく、諸分野における競い合いの観点で見る。また、それぞれの戦争の経緯や意思決定、国内外の変化について、「なぜ」の部分を理解する。実在の要人の日記や発言などの記録を引いて、ありありとその心根すら想像させる講義は、難しくも人間的で興味深かった。
1930年頃、経済上も国防上も満蒙は日本の生命線であると、最低限度の権利であると日本は主張し始める。自らねじまげた事実を自ら信じ、煽動する。それが大過であると私はやはり思う。しかし、戦争はいかん。侵略は絶対いかん。で以前の私は思考停止していた。本当の歴史はダイナミックで、理由があったり時のいたずらだったりを重ねながら形づくられてきた。今度はまた違った視点で世界と日本を見てみようと思う。
煽り本やヘイト本では、心の底から湧き上がる「なぜ」に対する答えが結局は満たされず、さまようことになる。若い人には時間とお金の無駄遣いだと著者は言い切る。その前に、ひと通りの客観的な理解をするべきで、そのために、私はこの本は良いと思う。義務教育の頃に理解するには奥行きがありすぎ、では人生のいつの時期にならこうした内容を受け止められるかと問われると人それぞれとしか言いようがないのが難しいところだけれど。お勧めです。
読了日:03月03日 著者:加藤 陽子 ファイル

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」感想
噂のタルマーリー。何年か前に、ルヌガンガでトークイベントがあったのに行きそびれて以来、気になっている店。2013年、この時世ですでに、マルクス、腐敗と発酵、自然栽培と天然菌、地方移住で小商いなのである。近年のキーワード目白押しで話題にならないわけがない。一般的パン職人の職業病が手荒れや鼻炎だと話すくだりが忘れられない。輸入小麦に残留するポストハーベスト農薬にやられている可能性を著者は指摘している。長い時間触れるほど人体に害なすものを私たちは食べているのか。せめて国産小麦か。うどんはどうなんだろう。
読了日:03月02日 著者:渡邉 格 ファイル

図解決定版 すい臓の病気と最新治療&予防法図解決定版 すい臓の病気と最新治療&予防法感想
片手落ちにならないよう、すい臓の病気も調べる。消化液となるすい液を分泌する臓器で、胆管と位置関係も機能も近い。急性/慢性膵炎とも症状に思い当たるふしがあって疑わしいが、下痢や糖尿、黄疸の症状まではない。人間でもわかりにくい病気だが猫はよりわかりにくく、高齢猫に多い病気だが症状でしか判断しづらいと猫の病理本にある。痛みを我慢し、自覚症状を言語化できない猫ゆえ、もどかしい。図解やコラムも豊富で、情報量が多いわりにわかりやすい。再発や重症化の末の癌化まで解説されているので、本人や家族にとって重い内容なのも確か。
読了日:03月01日 著者: ファイル


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。


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