2021年08月07日
2021年7月の記録
四十九日を待たず、またひとり、愛する猫が旅立った。
17歳といえば、人間の子供がほとんど巣立つほどの年月を共にした。
残された私は本調子にはまだまだ程遠く、本を読んでも上の空。

<今月のデータ>
購入19冊、購入費用13,268円。
読了15冊。
積読本267冊(うちKindle本105冊、Honto本23冊)。

7月の読書メーター
読んだ本の数:15
藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかたの感想
このままでは日本やばいんじゃないか案件が山積みの中、各地各分野で地道な活動を積み重ねる"現智の人"と藻谷さんとの対話。商店街、限界集落、農業、医療、観光、鉄道、まちづくり。どれも興味深く、発見があったのでこうも陳腐にまとめるのは不本意なのだけど、現場を自分の目で視て、考え、解決策の試行を積み重ねる行為の大事さは無論、一つの点である優れた活動を、他の地域の変革にも活用し、いずれ潮流となって、国を変える動きにつなげていくことが要点だと知った。私は直接携われないとしても、暮らしをちゃんと営める生きかたを選ぼう。
読了日:07月28日 著者:藻谷 浩介
御社にそのシステムは不要です。 中小企業のための〝失敗しない〟IT戦略の感想
導入したいとイメージしているものがクラウドストレージとSaaSである点は判明したが、そちらの情報量は少なく、方法論がメインである。私自身がこの手のツールをいじり倒すのが好きな性質なので、戒めとしてメモしておく。現場の人間がやってよかったと思えれば、IT化は成功といえる。だから「この業務はIT化できるか」という視点で見るのではなく、課題を絞り込んでから導入ツールを検討しなければならない。使う側のハードルは低くメリットは大きく、情報共有できて、誰でも使えるシステムをつくることが目標となる。
読了日:07月27日 著者:四宮靖隆
荒野へ (集英社文庫)の感想
青年が独り、アラスカの荒野で餓死して発見された。世間は非常識、未熟者、自然をなめた愚かな行為と取り沙汰したが、彼の足跡を丹念に追った著者の見解は違う。青年期には誰でも理想を追う。彼は社会や他人との隔絶した生を求め、彼なりに準備し、無事生き延びおおせようとしていたと推測する。若者に特有の、潔癖。荒ぶる自然を目指す衝動。著者は帰還し、彼は帰還しなかった。帰還した者はなにかを得、折り合い、生きる。帰還しなかった者たちは、特別愚かだったのではなく、不慮、また偶発の過ち故の死であり、それもまた生の証だと私は思う。
読了日:07月25日 著者:ジョン・クラカワー
マンガでわかる 東洋医学の感想
漢方の本はたくさん読んだので、自分なりに深めていきたいと思っている。一方で、実際に漢方に携わる人との交流もしてみたくて、講座などに行ってみようと見つけたカルチャースクールの参考図書がこれであった。漢方、鍼灸の基本的な概念の説明と、とりあえず使ってみたい人向けの漢方薬の選び方。あれこれ読む中で薄々気づいたように、日本漢方の理論にはいくつか流派がある。傷寒論に基づく日本漢方(古法)、それより後世の理論に基づく日本漢方(後世法)、中国の中医学。優劣ではないだろうから、混乱しないように整理して取り込みたい。
読了日:07月22日 著者:根本幸夫
ドミトリーともきんすの感想
この本を売ってくれた古本市の店主が「よくわからない」と言っていた。でもよく聞くタイトルの本。ノーベル賞を取るような高名な科学者の、学生だった頃。彼らが身近にいたら、どんなだったかしらと著者は想像したのだろうなと、私は思った。普通の学生のように笑ったり悩んだりしながら、深ーい課題を考え続けた、そんな日々を支える暮らしって、憧れる、ような気はする。『ユカワ君の話は むずかしいけれども聞いていると心が平らになるわ』。自然科学の著作を紹介する趣向。青空文庫でも短い随筆が読めるので、拾ってみるのもいいですね。
読了日:07月22日 著者:高野 文子
こわいもの知らずの病理学講義の感想
頭が偏らないよう、信頼できる人の西洋医学モノということで、中野先生の一般向け病理学本を。しかし氏の笑かしをもってしても途中で気が遠くなる。読みたかったがんのとこだけはがんばって読む。がん細胞は複数種類の細胞の突然変異と、変異が蓄積して進化する。増殖能の増加、浸潤能の増加、転移能の獲得などの変異を積み重ねて、何年もかけてがんになる。だから、免疫監視機構の働きによって排除されるがん細胞は多数あっても、組織に育ってしまえば自然に寛解することはありえないのだと、がんを放置することの危険と無謀を強く指摘している。
読了日:07月21日 著者:仲野徹
日記帳の感想
あんたあほかー!と、ピュアな羞恥心などとっくに失くしている中年は思ってしまう。失恋することは怖い。そら怖いよ、だからって…。彼女のほうは、共通の認識があると思ってやっていることだから、手段としてはまだアリだけれど、何通も出してそれなりの反応が無い時点でやっぱりおかしいと勘づこうよ。そしてそのまま婚約してしまう女性の胸のうちを想像するとミステリでもあり、弟のやった行為のまるきり児戯っぽさが際立つ。そして王道の結末。
読了日:07月21日 著者:江戸川 乱歩
三頭の虎はひとつの山に棲めない 日中韓、英国人が旅して考えたの感想
『東アジアの国々はなぜ良好な関係を築けないのだろうか』。マイケル・ブースはほんとうに人が変わってしまったのだろうか。日本、韓国、中国、台湾を巡る真面目なルポである。いつのまに東アジアの歴史や政情の機微に詳しくなったのか。食べ物のことはちょっぴりだ。ただいつもの蓋のできない口が、極右の作家や歴史修正主義者のYoutuberにも遠慮なく質問攻めにし、見えてくる本音は、直感に正直な著者の第三者的意見として受け取りたい。特に中国と韓国の意固地な態度の裏事情が、少し理解できた。まあ、戦争さえしなければそれで上出来。
読了日:07月19日 著者:マイケル・ブース
地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険の感想
スマートスピーカー機能付きロボット掃除機…。いや無理があるやろ。と誰しもが思う設定で著者は押し切る。その制限の強さは、いくらミステリには制限が付きものといえど、もはやマゾヒスティックなレベルだ。だからこそ、物語の行き先が気になり、傷の具合を心配し、よくやりきったと快哉を送りたくなるのだとも言える。満身創痍、完全燃焼の"彼"に敬礼。あとがきに、アガサ・クリスティー賞選考委員北上次郎氏も『しかし、思うかね、そんなこと。お前、掃除機だよ。』とぼやいていて、それもまた痛快な笑いを誘われた。みんなしてやられたね。
読了日:07月17日 著者:そえだ 信
図解「財務3表のつながり」でわかる会計の基本の感想
「悩めるマネジャーのための~」の著者本。財務分析において、複式簿記を理解しない者が決算書の『全体像とその本質を把握する』ことを目的にしている。我が社の経営者の卵に紹介できるかと思い読んだら、初心者に解りやすいかはさておき、私自身が面白かった。B/S、P/L、C/Sの視覚化を自社の決算書でやってみたところ、確かに特徴がつかみやすく、グーグルの決算書に形が似ている(!)というのは興味深い発見だった。自己株式の取得など投資絡みのトピックも勉強になる。それにしてもなぜグラッパのインターネット販売だったのだろう…。
読了日:07月17日 著者:國貞 克則
シャーロック・ホームズの冒険 【新訳版】 シャーロック・ホームズ・シリーズ (創元推理文庫)の感想
ワトソンが収集したホームズの事件解決簿。怪奇な事件はホームズの大好物だ。以前に一度ならず読んだ真相をおぼろげに思い出しながらぼちぼちと読んだ。本格ミステリと違って、安心して読めるのだ。そもそも全ての手がかりが示されていないので、真相を当てようと頭をひねりながら読まなくていいというのは気楽で、奇想天外な結末ほど楽しめる。若い頃は物語展開に集中していたから気づかなかったけれど、イギリスや地方の風物もまあまあ描かれていたんだなあ。しかし、人の心の機微には乏しく、今読むなら、クリスティみたいな方が私は好きだな。
読了日:07月14日 著者:アーサー・コナン・ドイル
あるノルウェーの大工の日記の感想
ノルウェーの現役大工さんの日記風ノンフィクション。積み上げるように着実な文体が好ましい。「ある日本の電工の日記」なる本があると想像してみるに、こんな文章を書けるとしたら、その人は職人の腕と文才を併せ持つ異才の人といえよう。設計士や施主に職人風情と見下されるのは地球の裏側でも変わらないらしい。しかし実は頭脳と肉体での高次複合的な思考が求められる職業であることを私は知っている。著者は電気屋のことを、片付けを教わらないのに違いないと愚痴を言っていて笑ってしまう。確かに散らかしがちやけど、それはその人の性格よ。
読了日:07月07日 著者:オーレ・トシュテンセン
狼森と笊森、盗森の感想
五感や心を働かせて読む読書の訓練。最近は情報をさらえるような読み方ばかりしていたのでリハビリです。"水のようにつめたいすきとおる風が、柏の枯れ葉をさらさら鳴ら"す原野を、時間をかけて想像する。そして人間たちがやって来て、物語が動き始める。人間は暮らしを築き、災いに立ち向かい、捧げものをし、友だちになる。語り合うことができる。岩手山のふもと、気候は清々しくも、厳しいものだろう。だからこその語り合い、捧げものなのだ。毎年粟餅を届けに行くのは狼の塚を祀る風習からきている。既に粟餅が小さくなり始めていたのだなあ。
読了日:07月06日 著者:宮沢 賢治
英国一家、インドで危機一髪の感想
まー相変わらず自分勝手な人で、言いたい放題したい放題、文句ばかりで始末に負えない。インドで目いっぱい無秩序にもまれろと思いきや、こんな結末になるとは。飲んで喰ってばかりの旅とは真逆の、つまりは著者が囚われている自身の精神的贅肉をそぎ落とす旅となったのだ。しかも帰国してからも習慣は続いているという。人が変わったみたいだ。食文化や民俗についての描写も的を射て面白いが、ヨガやヒンドゥーについての師との対話はインドの具える叡智の示唆に富んでいる。なお、危機一髪だったのは夫婦関係。リスンは肚が据わっていて格好いい。
読了日:07月06日 著者:マイケル・ブース
悩めるマネジャーのためのマネジメント・バイブルの感想
MBAを取得した経営コンサルと聞いたら、それだけで眉に唾を塗る私がこの本を買っていたのは、サイボウズの誰かの紹介だったか。独立の際に相当ご苦労をされたようで、その経験、学んだ知識、たくさんの経営者との出会いによって育まれただろう、良心と人間味が感じ取れる。『複雑な人間に対してどうやって対応していくか。これを学ぶのは決してマネジメント理論などからではない』。MBAのビジネス教育も分析的・論理的思考も必要、しかし限界があるとし、展開する人本位の経営論は真っ当で沁みる。またゆっくり読み返したいビジネス書だ。
読了日:07月01日 著者:國貞 克則
注:
は電子書籍で読んだ本。
17歳といえば、人間の子供がほとんど巣立つほどの年月を共にした。
残された私は本調子にはまだまだ程遠く、本を読んでも上の空。

<今月のデータ>
購入19冊、購入費用13,268円。
読了15冊。
積読本267冊(うちKindle本105冊、Honto本23冊)。

7月の読書メーター
読んだ本の数:15

このままでは日本やばいんじゃないか案件が山積みの中、各地各分野で地道な活動を積み重ねる"現智の人"と藻谷さんとの対話。商店街、限界集落、農業、医療、観光、鉄道、まちづくり。どれも興味深く、発見があったのでこうも陳腐にまとめるのは不本意なのだけど、現場を自分の目で視て、考え、解決策の試行を積み重ねる行為の大事さは無論、一つの点である優れた活動を、他の地域の変革にも活用し、いずれ潮流となって、国を変える動きにつなげていくことが要点だと知った。私は直接携われないとしても、暮らしをちゃんと営める生きかたを選ぼう。
読了日:07月28日 著者:藻谷 浩介

導入したいとイメージしているものがクラウドストレージとSaaSである点は判明したが、そちらの情報量は少なく、方法論がメインである。私自身がこの手のツールをいじり倒すのが好きな性質なので、戒めとしてメモしておく。現場の人間がやってよかったと思えれば、IT化は成功といえる。だから「この業務はIT化できるか」という視点で見るのではなく、課題を絞り込んでから導入ツールを検討しなければならない。使う側のハードルは低くメリットは大きく、情報共有できて、誰でも使えるシステムをつくることが目標となる。
読了日:07月27日 著者:四宮靖隆


青年が独り、アラスカの荒野で餓死して発見された。世間は非常識、未熟者、自然をなめた愚かな行為と取り沙汰したが、彼の足跡を丹念に追った著者の見解は違う。青年期には誰でも理想を追う。彼は社会や他人との隔絶した生を求め、彼なりに準備し、無事生き延びおおせようとしていたと推測する。若者に特有の、潔癖。荒ぶる自然を目指す衝動。著者は帰還し、彼は帰還しなかった。帰還した者はなにかを得、折り合い、生きる。帰還しなかった者たちは、特別愚かだったのではなく、不慮、また偶発の過ち故の死であり、それもまた生の証だと私は思う。
読了日:07月25日 著者:ジョン・クラカワー

漢方の本はたくさん読んだので、自分なりに深めていきたいと思っている。一方で、実際に漢方に携わる人との交流もしてみたくて、講座などに行ってみようと見つけたカルチャースクールの参考図書がこれであった。漢方、鍼灸の基本的な概念の説明と、とりあえず使ってみたい人向けの漢方薬の選び方。あれこれ読む中で薄々気づいたように、日本漢方の理論にはいくつか流派がある。傷寒論に基づく日本漢方(古法)、それより後世の理論に基づく日本漢方(後世法)、中国の中医学。優劣ではないだろうから、混乱しないように整理して取り込みたい。
読了日:07月22日 著者:根本幸夫

この本を売ってくれた古本市の店主が「よくわからない」と言っていた。でもよく聞くタイトルの本。ノーベル賞を取るような高名な科学者の、学生だった頃。彼らが身近にいたら、どんなだったかしらと著者は想像したのだろうなと、私は思った。普通の学生のように笑ったり悩んだりしながら、深ーい課題を考え続けた、そんな日々を支える暮らしって、憧れる、ような気はする。『ユカワ君の話は むずかしいけれども聞いていると心が平らになるわ』。自然科学の著作を紹介する趣向。青空文庫でも短い随筆が読めるので、拾ってみるのもいいですね。
読了日:07月22日 著者:高野 文子

頭が偏らないよう、信頼できる人の西洋医学モノということで、中野先生の一般向け病理学本を。しかし氏の笑かしをもってしても途中で気が遠くなる。読みたかったがんのとこだけはがんばって読む。がん細胞は複数種類の細胞の突然変異と、変異が蓄積して進化する。増殖能の増加、浸潤能の増加、転移能の獲得などの変異を積み重ねて、何年もかけてがんになる。だから、免疫監視機構の働きによって排除されるがん細胞は多数あっても、組織に育ってしまえば自然に寛解することはありえないのだと、がんを放置することの危険と無謀を強く指摘している。
読了日:07月21日 著者:仲野徹


あんたあほかー!と、ピュアな羞恥心などとっくに失くしている中年は思ってしまう。失恋することは怖い。そら怖いよ、だからって…。彼女のほうは、共通の認識があると思ってやっていることだから、手段としてはまだアリだけれど、何通も出してそれなりの反応が無い時点でやっぱりおかしいと勘づこうよ。そしてそのまま婚約してしまう女性の胸のうちを想像するとミステリでもあり、弟のやった行為のまるきり児戯っぽさが際立つ。そして王道の結末。
読了日:07月21日 著者:江戸川 乱歩


『東アジアの国々はなぜ良好な関係を築けないのだろうか』。マイケル・ブースはほんとうに人が変わってしまったのだろうか。日本、韓国、中国、台湾を巡る真面目なルポである。いつのまに東アジアの歴史や政情の機微に詳しくなったのか。食べ物のことはちょっぴりだ。ただいつもの蓋のできない口が、極右の作家や歴史修正主義者のYoutuberにも遠慮なく質問攻めにし、見えてくる本音は、直感に正直な著者の第三者的意見として受け取りたい。特に中国と韓国の意固地な態度の裏事情が、少し理解できた。まあ、戦争さえしなければそれで上出来。
読了日:07月19日 著者:マイケル・ブース


スマートスピーカー機能付きロボット掃除機…。いや無理があるやろ。と誰しもが思う設定で著者は押し切る。その制限の強さは、いくらミステリには制限が付きものといえど、もはやマゾヒスティックなレベルだ。だからこそ、物語の行き先が気になり、傷の具合を心配し、よくやりきったと快哉を送りたくなるのだとも言える。満身創痍、完全燃焼の"彼"に敬礼。あとがきに、アガサ・クリスティー賞選考委員北上次郎氏も『しかし、思うかね、そんなこと。お前、掃除機だよ。』とぼやいていて、それもまた痛快な笑いを誘われた。みんなしてやられたね。
読了日:07月17日 著者:そえだ 信


「悩めるマネジャーのための~」の著者本。財務分析において、複式簿記を理解しない者が決算書の『全体像とその本質を把握する』ことを目的にしている。我が社の経営者の卵に紹介できるかと思い読んだら、初心者に解りやすいかはさておき、私自身が面白かった。B/S、P/L、C/Sの視覚化を自社の決算書でやってみたところ、確かに特徴がつかみやすく、グーグルの決算書に形が似ている(!)というのは興味深い発見だった。自己株式の取得など投資絡みのトピックも勉強になる。それにしてもなぜグラッパのインターネット販売だったのだろう…。
読了日:07月17日 著者:國貞 克則

ワトソンが収集したホームズの事件解決簿。怪奇な事件はホームズの大好物だ。以前に一度ならず読んだ真相をおぼろげに思い出しながらぼちぼちと読んだ。本格ミステリと違って、安心して読めるのだ。そもそも全ての手がかりが示されていないので、真相を当てようと頭をひねりながら読まなくていいというのは気楽で、奇想天外な結末ほど楽しめる。若い頃は物語展開に集中していたから気づかなかったけれど、イギリスや地方の風物もまあまあ描かれていたんだなあ。しかし、人の心の機微には乏しく、今読むなら、クリスティみたいな方が私は好きだな。
読了日:07月14日 著者:アーサー・コナン・ドイル


ノルウェーの現役大工さんの日記風ノンフィクション。積み上げるように着実な文体が好ましい。「ある日本の電工の日記」なる本があると想像してみるに、こんな文章を書けるとしたら、その人は職人の腕と文才を併せ持つ異才の人といえよう。設計士や施主に職人風情と見下されるのは地球の裏側でも変わらないらしい。しかし実は頭脳と肉体での高次複合的な思考が求められる職業であることを私は知っている。著者は電気屋のことを、片付けを教わらないのに違いないと愚痴を言っていて笑ってしまう。確かに散らかしがちやけど、それはその人の性格よ。
読了日:07月07日 著者:オーレ・トシュテンセン

五感や心を働かせて読む読書の訓練。最近は情報をさらえるような読み方ばかりしていたのでリハビリです。"水のようにつめたいすきとおる風が、柏の枯れ葉をさらさら鳴ら"す原野を、時間をかけて想像する。そして人間たちがやって来て、物語が動き始める。人間は暮らしを築き、災いに立ち向かい、捧げものをし、友だちになる。語り合うことができる。岩手山のふもと、気候は清々しくも、厳しいものだろう。だからこその語り合い、捧げものなのだ。毎年粟餅を届けに行くのは狼の塚を祀る風習からきている。既に粟餅が小さくなり始めていたのだなあ。
読了日:07月06日 著者:宮沢 賢治


まー相変わらず自分勝手な人で、言いたい放題したい放題、文句ばかりで始末に負えない。インドで目いっぱい無秩序にもまれろと思いきや、こんな結末になるとは。飲んで喰ってばかりの旅とは真逆の、つまりは著者が囚われている自身の精神的贅肉をそぎ落とす旅となったのだ。しかも帰国してからも習慣は続いているという。人が変わったみたいだ。食文化や民俗についての描写も的を射て面白いが、ヨガやヒンドゥーについての師との対話はインドの具える叡智の示唆に富んでいる。なお、危機一髪だったのは夫婦関係。リスンは肚が据わっていて格好いい。
読了日:07月06日 著者:マイケル・ブース


MBAを取得した経営コンサルと聞いたら、それだけで眉に唾を塗る私がこの本を買っていたのは、サイボウズの誰かの紹介だったか。独立の際に相当ご苦労をされたようで、その経験、学んだ知識、たくさんの経営者との出会いによって育まれただろう、良心と人間味が感じ取れる。『複雑な人間に対してどうやって対応していくか。これを学ぶのは決してマネジメント理論などからではない』。MBAのビジネス教育も分析的・論理的思考も必要、しかし限界があるとし、展開する人本位の経営論は真っ当で沁みる。またゆっくり読み返したいビジネス書だ。
読了日:07月01日 著者:國貞 克則

注:

Posted by nekoneko at 09:59│Comments(0)
│読書