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2022年03月01日

2022年2月の記録

ウクライナがこんなことになって、テレビやSNSを見ては腹を立てたり涙ぐんだりしている。
「同志少女よ、敵を撃て」を読んで、二次大戦の独ソ戦のことを初めて知った矢先。
次いで「戦争は女の顔をしていない」を読んでいる。
民間人が女性も年寄りも火器を手に取り、国を守ろうと立ち上がる心性は日本人には無い。
ドイツと戦った記憶が、今度はウクライナ国民をロシアに立ち向かわせている。
どうか早く早く、戦争が終わりますように。

<今月のデータ>
購入16冊、購入費用9,564円。
読了12冊。
積読本309冊(うちKindle本140冊、Honto本14冊)。


ブック

2月の読書メーター
読んだ本の数:12

新装版 海も暮れきる (講談社文庫)新装版 海も暮れきる (講談社文庫)感想
私には難題だった。放哉をどう見ればよいのか。はっきり言えば、人としてどう「評価」していいかわからない、と思ってしまうのだ。托鉢僧でも乞食でも、米や金を喜捨すれば謙虚に振る舞う。それを放哉は貰って当たり前とうそぶき、罵倒で返すのだ。酒に溺れる自身を正当化し、開き直り、そのくせ自己憐憫がちで卑屈で、周りを不快にする。その放哉を許せないことは、私自身をも許されない対象になりうる危うさを自覚させるのだ。しかし放哉は、幾人もの他人に支えられ、木瓜を活けた庵の畳の上で往生する。意味を考えあぐねて途方に暮れる春が来る。
酒に関しては私もがめつい方で、行儀が良いとは言えない。若い頃は泥酔して同席者や店に迷惑をかけたことは数えきれない。そう、迷惑。この言葉は要注意だ。「迷惑をかけない」ことは、近代現代になって美徳と成ったのではなかったか。自分は他人に迷惑をかけないようにする。だから他人も私に迷惑をかけるな。その心根は言わずともにじみ出るもの。誰にも迷惑をかけず生きることなどできないと、私はいつか思い知るだろう。そのとき初めて、人は許すものではない、頼り、支え合い、共に生きるものとわかるだろう。
読了日:02月28日 著者:吉村 昭

絶対に挫折しない日本史 (新潮新書)絶対に挫折しない日本史 (新潮新書)感想
挫折しかけた。「サピエンス全史」に触発されて書きたいと思ったのだそうだ。歴史を通観する試みは、全体を掴む手法として良い。人々の常識や価値観はその時代の置かれた状況によって違うもので、絶えず変転してきたのだから。しかし彼自身が現代の常識や価値観に囚われていることが透けて見える書き方なので、読み手の方が詳しければ鼻白む箇所もあるだろう。また落合陽一や杉田水脈をディスったところで主張が浮き上がるものでもない。とはいえ、大量の文献を引っぱり出し、引用した内容を比較考察し、彼らしい所感をぶっ込んできた勇気に拍手。
読了日:02月25日 著者:古市 憲寿 ファイル

土になる土になる感想
うわあ、過剰な人。自分の関心事には時間の限り詰め込むのだから、それは消耗する。『僕たちは土から離されてい』たから心身の均衡を崩していた。土と向かい合うことで「自然」に合わせるられるようになったと繰り返し書いている。しかし「自分優先」なリズムは変わらないもののようだ。さて、ものづくりを新しく手にかけ、持続するためには何が必要なのだろう。好奇心だけではだめなのだ。下手な器用さはもっとだめだ。もっと、身の内側から湧くなにかを時期良く捉えないと、自分の一生ものにはならない。それがこの人は、とても上手いのだと思う。
読了日:02月24日 著者:坂口 恭平

老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))感想
やさしいSF。設定はガチだが、技術面は深く考えなくても、そんなに哲学的にならなくても、楽しんで読めるところがいい。「ギャルナフカの迷宮」と「漂った男」が気に入っている。どちらも人類向きではない、未知の地で、なんとか生き延びようとする男の話である。なんだけど、深刻に"生きる意味"など考え込ませない、圧迫感のなさが心地よい。他に生命体のいない惑星の海面に浮かんで、服を着るか捨てるか、清潔を保つよう心がけるかおざなりにするか問題とか。ますますお気に入りの作家さん、しかし《天冥の標》はさすがに長そうで手が出ない。
読了日:02月24日 著者:小川 一水 ファイル

バーバ・ヤガーバーバ・ヤガー感想
読み友さんの感想から、不思議な雰囲気に惹かれて手に取る。ほんまや、足はえとる…。しかもなかなか破壊力のある家である。台風にも洪水にも負けそうにない。そしてバーバ・ヤガーの乗り物は、臼なのである。いろいろと想像をぶっ超えてくるのは、文化の違い故なのか、作者の想像力の賜物なのか判然としないのだけれど、楽しい。絵は、版画だろうか。木々や部屋のニュアンスが、異国文化の情調と相まってうっとり眺めてしまう。文字多めの絵本。
読了日:02月23日 著者:アーネスト スモール

室町は今日もハードボイルド: 日本中世のアナーキーな世界室町は今日もハードボイルド: 日本中世のアナーキーな世界感想
たくましいな室町日本人。「くらしのアナキズム」でひとしきり考えた後に読むと、権力者によって一元的に支配されるのではなく、むしろ自分たちで決めたローカルルールでうまいことやっていた感じがわかる。国家使節団になりすまして朝鮮王朝に再々乗り込むとか、夫が浮気したら浮気相手の家を集団で襲撃するとか、自分勝手に改元した年号を使うとか、耳を疑うようなことも、詳しく聞くとなるほどなあ、と納得する論理がある。『虹の立つところに市を立てる』習俗が素敵だ。物の売買が日常的でなかったころ、同じくレアな虹に結び付けた純粋さよ。
読了日:02月20日 著者:清水 克行 ファイル

サマルカンドへ 〔ロング・マルシュ 長く歩く 2〕サマルカンドへ 〔ロング・マルシュ 長く歩く 2〕感想
シルクロードを歩く旅は続く。今回はトルコからイラン、トルクメニスタン、ウズベキスタンまで。イランは豊かな地だ。人々は寛容で親切で、陽気に熱心に旅人をお茶に誘う。泊める。国際社会から嫌われている権力者たちは国民にも嫌われている。大いなる自然、それにペルシャ建築の美しい遺構。著者は苦労して、その美しさを味わう権利を手に入れる。サマルカンドの市場は、民族も香りも品物も色彩も言語もごったに溢れて、圧巻のクライマックスだ。次巻はまだ日本語で出版されていない。ぜひ訳して出版してほしいと、これから出版社に葉書を出す。
トルコ、イラン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、中国と、シルクロードの通る地が今はどれも独裁的な国家だと気づいた。素人の想像では、西へ東への交流が多かったことによって他民族が混在し、それを統制するために、より強権的、独裁的な国家が生まれやすいという考え方は的外れだろうか? 人々の新しもの好きや寛容さもまた、同じくシルクロード商人の遺伝子の発露と考えれば、いずれの国でもこの2点は両立しうるのだ。
読了日:02月17日 著者:ベルナール・オリヴィエ

くらしのアナキズムくらしのアナキズム感想
「できるだけ国に頼らず生きる」方法を最近よく考える。私は無政府主義者になりつつあるのだろうか。それは、日々感じる、国や社会の仕組みの不全によるものとは気づいていたが、こう考えればよかったのか、と納得することしきりの読書だった。自分たちの自由や平等を損なうものの正体は、資本主義であり、行政や専門家に全て丸投げする社会の仕組みであり、古来の高度なスキルとすり替わった合理性偏重の思考である。私の感覚はその流れに呼応したものであり、諸事いろいろに繋がっていると知る。身の回り、小さなことからアナキズムを実践しよう。
アナキズムは国家の有無と関係ないと考えてみることは新鮮だった。民主主義国家であれ独裁国家であれ、諸大国は新型コロナを抑え込めなかった。集団が大きくなって解決できることもあるけれど、まとめるために漏れてしまうものも無視できないくらい多くなってしまっている。アナキズムこそは人類にとってのデフォルト。だから他者と共に生きるための高度なスキルが民族ごと、日本人の間にも古来育まれてきたことは、民俗学や人類学の文献にも明らかだ。さて、では時間や空間を自分のためだけに使う自由を、私たちは手放すことができるのだろうか?
読了日:02月16日 著者:松村圭一郎 ファイル

余興余興感想
鴎外を耳で聴くのも予想どおり難しかった。読み直すと、耳を素通りしていた熟語が多々あった。しかし面白い。同郷人の集まりでの一幕。宴席で若い芸者を前に、猪口を反射的に引っこめ、思い直して差し出す、一瞬の葛藤がたまらなく好い。賑やかに酌み交わす場の片隅で、自分だけが間隙にはまったようにもがき、フル回転で気持ちの整理をしている、その静寂。親近感を覚えてにやにやしてしまう。きすさんはいい人だ。彼の内心を読めるような人ではない。彼が自分を軽く見ているのに気づいていて、なお優しい。そこにも気づくか、悩むか、悩まないか。
読了日:02月08日 著者:森 鴎外 ファイル

都市で進化する生物たち: ❝ダーウィン❞が街にやってくる都市で進化する生物たち: ❝ダーウィン❞が街にやってくる感想
「人間vs.自然」ではなく、自然の一部であるところの人間が殖えすぎただけ。まあ、そうなのだろう。しかし人間が余りに早く大規模に環境を改変してしまった事実への私の青臭い罪悪感は拭えない。多数の種は適応できずに絶滅するのであり、他方、一部の種はその改変速度と競うように遺伝子を変化させて生存の道を探る。私にそのダイナミクス全体が捉えきれていないのは確かだ。仰天したのは、タバコの吸い殻を持ち帰って巣のダニ除けにする鳥。そしてPCBに汚染された湾で生き抜く生物。目を皿にして会社の周りを毎朝掃除する私は何なのだろう。
環境に関して、良くない話ばかりなので、明るい気分になりたくてこの本を選んだけれど、失敗かな。「人為性の急変的進化」は、人間側から言って「自然のたくましさ」と呼ぶことができるだろう。たくましいとは思うけれど、人間がコンクリートの床より木の床に触れて安心するように、鳥だってワイヤーハンガーの巣より木枝の巣の方が、ラップがへばりついた残飯より柿の実の方が、健やかに生きられるんじゃないかと思う。
都市の庭は、多くの種の微小生息地として、それぞれは小さくとも生態系は豊かだという。しかも建物や道路によって生息域が分断されることにより、庭によって動植物相は完全に異なる。そう考えることは、星の数ほどの生態系が身近にあるようで嬉しくなる。先日、亡き祖母の庭を潰す作業をした。祖母が長年にわたって生ごみをぽいぽい投げ捨てていた庭の土は肥料知らずながら豊かで、土と植物の断片からはふくよかな良い匂いがした。小宇宙をひとつ壊したような切なさを、仕方ないものとしてぐっと抑え込んだ。
読了日:02月07日 著者:メノ スヒルトハウゼン ファイル

老虎残夢老虎残夢感想
江戸川乱歩受賞作。特殊設定下の本格には違いない。中国武術の修練の末に得た、凡人には不可能なスキルが、犯人を絞り込む手掛かりになるあたり、中国武術を習う者の端くれとしても面白い。内功が剣に流れ込むイメージは練習に使えそうな気がするな、うん。しかし、、、露骨な百合が私には邪魔。人物を置いていったら、そういう関係が必要になってしまったかもしれないけれど、もう少し秘めた感じでもよかったんじゃないかなあ。それと、泰隆のイメージが十二国記の尚隆に重なってしまったんだが、なんか似すぎてやいないかと勘繰るのは穿ちすぎか。
読了日:02月04日 著者:桃野 雑派

芥川龍之介『藪の中』を読む(文芸漫談コレクション) (集英社ebookオリジナル)芥川龍之介『藪の中』を読む(文芸漫談コレクション) (集英社ebookオリジナル)感想
「藪の中」が好きな身には不興な対談。何故だ面白いのに。いとう氏と奥泉氏が評価しない理由は、原典とされる『今昔物語集』に対して、平面的で人間の掘り下げが無いただのストーリーだからだそうだ。そうだろうか? 若い頃から芥川を読んで悶々としていた私には、「藪の中」の三人の証言に見え隠れする人間の業が、今回改めて聴いた青空朗読の声の裏に凝るようでやはり面白かった。私は三人とも嘘をついていると解釈している。他者に対して嘘をつかせるもの、三者それぞれに理由がある。一人称だから書ける。このシリーズは私に合いそうにないな。
読了日:02月02日 著者:奥泉光,いとうせいこう ファイル


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。



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