< 2025年06月 >
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
オーナーへメッセージ

2022年08月01日

2022年7月の記録

宮田珠己氏が「めちゃめちゃ好みだ、どストライクだという本と、これはなかなか面白そうだという本と、これは読んでおかないという本がある場合、まず読んでおかないと本から読んでしまう癖をやめたい。どストライク本までなかなかたどり着かない。」とつぶやいておられて、まったく同意する。
読んでくれる人も稀であろうこのブログの意義といって、月に一度自分の読んだ本を眺め渡すことにもある。
これといって重みのある本は読んでいないな、また特に響く本は無かったな、と思うけれど、なんらかの糧にはなっているのだ。
特に社会を見る目がまた転換期にあると思う。

<今月のデータ>
購入21冊、購入費用14,994円。
読了12冊。
積読本320冊(うちKindle本156冊、Honto本9冊)。


ブック

7月の読書メーター
読んだ本の数:12

吉田茂 ポピュリズムに背を向けて<下> (講談社文庫)吉田茂 ポピュリズムに背を向けて<下> (講談社文庫)感想
吉田茂の大舞台。サンフランシスコでの講和へ向かう場面はとかく目が潤んでしまって、未来の日本を想う先人たちの気持ちに感じ入った。政治家の在るべき姿について考えた。しかし一転、あとがきで感傷は吹っ飛ぶ。国民は政治を見る目を養えと著者は言う。政治家の本当の仕事は、一般人には見えない事の方が多いのだろう。そして政治の様相は、当時と今と違わない点も多い。それにしたって、小手先の人気取りだったり、粗忽な政策を議論を拒んで拙速に通したり、そんな教養も矜持も目減りが明らかな政治家がのさばる今の政治をどう信頼しろと。
読了日:07月28日 著者:北 康利 ファイル

美貌のひと 歴史に名を刻んだ顔 (PHP新書)美貌のひと 歴史に名を刻んだ顔 (PHP新書)感想
中野さんの本を読むのは好きだ。しかし絵を眺める時間は、3回くらい見返したとしてもそう長くない。きれいだなぁ、とか気味悪いなぁ、とか思うくらいで、どこがすごいのか探る気がさっぱり無い。私にとって中野さんの本は、ミニミステリだ。絵の裏に隠れた物語、壮大な、あるいは謎に満ちた、絵はその手がかり。もっと面白い話を聞きたくてずるずる読んでしまう。ユトリロにせよトルストイにせよ、ほう!と感嘆したことばかり印象に残って、絵も画家の名も覚えちゃいないのだ。でもアルテミジアは覚えておきたいな。かっこいいから。
読了日:07月23日 著者:中野 京子

無敵の読解力 (文春新書 1341)無敵の読解力 (文春新書 1341)感想
素地の全く違う二人の対談本も早や何冊目か。しかし慣れ合うのではなく、敢えて異なる見方を相手の見解の横に並べてみせるところが面白い。相手を驚かせるための隠し玉を事前に仕込んだりしていそうだ。さて、政治家の教養について。為政者を志すなら、質と量ともに一般人のそれでは足りない。頼るべきは先人の知恵たる古典で、その道を進むなら読んでおくべき類のものが底力となる。若い頃に重厚なものを読む力をつけてそこまで辿り着くには、天賦の嗅覚か、身近な者の誘導が必要だろう。あるいは素養が足りないと自覚して誰か教師役を捕まえるか。
しかし「きちんとした読書の基盤がある政治家」は与野党共に減っているという。松岡正剛氏のエピソードが興味深い。ある政治家に本の読み方を教えてやってほしいと請われ、試みたが全くうまくいかなかったという。そもそも読む必要が理解できない者には、馬を水辺に連れて行くことはできても、である。テレビでは政権に対する忖度とも取れる発言に留める池上さんだが、本書では日本の元首相や政治家に対して、佐藤氏と毒舌の応酬である。ということは、局側からNGがかかっているのだろう。知識と毒舌がぽんぽん飛び出す池上さんは格好好いぞ。
佐藤氏:古代ローマの詩人ホラティウスの頌歌を引いた一節です。「祖父母に劣れる父母/さらに劣れるわれらを生めり、/われら遠からずして/より劣悪なる子孫を儲けん」。
読了日:07月22日 著者:池上 彰,佐藤 優 ファイル

吉田茂 ポピュリズムに背を向けて<上> (講談社文庫)吉田茂 ポピュリズムに背を向けて<上> (講談社文庫)感想
日本が敗戦に向かって転げ落ちている時分、政府や官僚は何をしていたのかと以前の私は鼻白んだものだったが、今よりも胆力があって優秀な政治家や外務省官僚でも止めることができないほど、陸軍や親独派政治家の勢いが急速についてしまっていた。なんとか戦争回避、早期終結に奮闘していたのが、あの首相の入替りの激しさ、内閣の短命に表れていたと知る。水面下で流れた組閣も多かった由。結局、戦争に積極的な態度を取った首相は東条だけだったようだ。吉田茂も切歯扼腕、陰で奔走していた一人。憲兵隊コード"ヨハンセン"とは「吉田反戦」の意。
降伏文書に誤りがあり、アメリカの担当者がそのままにしようとしたことに日本側は抗議、訂正を求める。『この期に及んでささやかな抵抗を試みた彼らのことを滑稽だと感じる人は、感情の襞のいささか少ない人だと言わざるを得ない。この時の彼らの立場に自らを置いてみる努力を、今の日本人はすべきであろう。戦いに敗れてなお、彼らのような矜持ある日本人が残っていたからこそ、この国は奇跡の回復をなしえたのである』。上巻の終りに近い箇所のエピソードだが、ずっと読み進めた後のこれは、じんときた。
読了日:07月19日 著者:北 康利 ファイル

鷗外の怪談鷗外の怪談感想
戯曲は面白いなあ。心に秘めたものまでが、台詞にほとんど詰め込まれている。主張も迷いも絶望も吐露され、揺れる。この永井荷風が私は大好きだ。身をもって、信念にかけて守ろうとするものが、日本という国家に阻まれ守ることができなかった、落胆、悲嘆。それは現代の私たちがあからさまな政治の逸脱を糾弾することができなかった、改憲勢力の増長を選挙で止めることができなかった、悪政を通した元首相を国葬にするなどという茶番を止めることができない予感、そのたびに味わう挫折感に似ているだろうか。これらは確実に、人の心をくじいてゆく。
読了日:07月14日 著者:永井 愛

木綿リサイクルの衰退と復活 ―大阪八尾を中心とする木綿の経済史―〈発行:ブックウェイ〉木綿リサイクルの衰退と復活 ―大阪八尾を中心とする木綿の経済史―〈発行:ブックウェイ〉感想
木綿は温暖な地で江戸時代に栽培が盛んになった。しかし開国と共に輸入品に押される。明治16年、渋沢栄一が紡績会社設立。国産の綿でも試行錯誤したが、輸入品の綿糸のほうが良質だったため、明治19年以降中国産、インド産で操業。大正5年には河内の木綿栽培は壊滅した由。合成繊維が現れるまでもなかったようだ。なお、私の興味を引いた「リサイクル」とは、以前においては布地をボロボロになるまで使い倒した後、肥やしとして畑に鋤き込むことであり、現代においては"自然に優しい"に同義と扱われているあたり、不満と言わざるを得ない。
読了日:07月13日 著者:前田啓一

壊れた脳 生存する知壊れた脳 生存する知感想
「奇跡の脳」の脳神経科学者ジル・ボルト・テイラーや、「脳はすごい」の人工知能研究者クラーク・エリオットなど、脳の専門家本人による脳損傷、負った高次脳機能障害とその回復の記録は、人知を超えたような、畏敬の念を読み手に与えてくれたものだったが、我が香川県にも脳損傷からの回復の経緯を記した医師があったのだ。脳の損傷によって起きる行動の変異。障害による消耗も激しいが、周囲の、特に医療従事者の無理解がずいぶんダメージになる。熱心に回復に取り組むほど、脳の自ら機能を再生する力も強まる。脳も凄いが、人間って凄いな。
読了日:07月12日 著者:山田 規畝子

住宅営業マンぺこぺこ日記――「今月2件5000万! 」死にもの狂いでノルマこなします住宅営業マンぺこぺこ日記――「今月2件5000万! 」死にもの狂いでノルマこなします感想
フィリピンパブ接待だノルマだ気合だって、昭和なのはタマ…ホームだけだろうか。ローコスト住宅メーカーの内部事情。営業の悲哀はともかく、売り物が住まいである今作は買う側の悲哀が強い。手付金に100万円はおろか、10万円さえ払えず、それを営業担当が自腹で無利子で貸すのである。家賃並みの支払額で買えるとの宣伝を真に受け、月々1万5千円のローンを組めると考えるのである。安くても隣と見た目同じはイヤなのである。安住できるマイホームへの信仰は、建ち続ける戸建て住宅を見れば明らかなとおり、令和の時代も現役だ。私も含め。
読了日:07月12日 著者:屋敷康蔵 ファイル

焔感想
末世の百物語。ディストピア、そして人ならぬものへの変転が語られる。人間が減ってゆく。それぞれの短編は独立しているのでそれぞれに楽しめ、人間バンクとか、星野智幸らしい視点と展開で興味深い。どう結末するのかと期待したのに、なぜこうなったのでしょうか。最後の角力に喰われ、私の中に想像された均衡はだだ崩れ、こうなっては書き溜めた短編を単行本らしく整えるためにひねり出した趣向みたいな…いや、違うんだろうけども。希望が私には場違いに感じられて仕方ないからだな。単行本の表紙も好いが文庫本のも好い。
読了日:07月11日 著者:星野 智幸

トマト缶の黒い真実 (ヒストリカル・スタディーズ)トマト缶の黒い真実 (ヒストリカル・スタディーズ)感想
トマト缶は便利だ。手元のトマト缶には、イタリア国内の産地、品種、有機栽培であるとも書かれている。この本を読んで、抜け穴がそこら中にあることを知った後では全てが疑わしい。さすがにブラックインクとは思わないが、ウイグルの強制労働で収穫された戦闘用トマトでないと誰が保証できるだろう。クエン酸不使用、では他の添加物は? 品質保証マークにどれだけの信頼性が? 加工製品はもっとだし、トマトだけじゃない。ネオリベやグローバリズムの成れの果てに、知らずに騙されていたほうが幸せみたいな世界になっている証拠を突きつけられる。
読了日:07月10日 著者:ジャン=バティスト・マレ ファイル

ドリトル先生航海記 (新潮文庫)ドリトル先生航海記 (新潮文庫)感想
これも幼い頃に出会っておきたかった物語。感受性が強い年頃に読んで、どこが心に響くかはその子次第で分かれそうだ。ドリトル先生やスタビンズ君の魅力はさておいても、自然の学問の幅広いワンダーが散りばめられている。今の私には、初めて航海に出たときの心踊る感覚、ロング・アローが集めた標本の不思議、海カタツムリの殻を通して見た世界の美しさ、バンポ王子のキュートさが胸に残る。さらに訳した福岡先生の思い入れで、物語の力は2割増しじゃないかしら。Do a little,think a lot.の言葉遊びが素敵。
読了日:07月07日 著者:ヒュー ロフティング

いのちをもてなす―環境と医療の現場からいのちをもてなす―環境と医療の現場から感想
環境問題から終末期医療まで語れる珍しい経歴をお持ちの医師の著述集である。医師である人に「ペンタゴン・レポートが」なんて言われると面食らってしまった。しかし当然ながら、環境と人体は無関係ではない。流入流域の灌漑工事によるアラル海の縮小や日本の公害などは、人間による環境破壊と周辺住民の健康被害が関連する問題であり、医師の知見の生きる社会医学という分野なのだと知った。限られた資源を収奪する技術が進歩するほど、人間のこころの未熟さは強調されるとの指摘が鋭い。まさに歴史の全ては我れが我れがの帰結である。
読了日:07月04日 著者:大井 玄 ファイル


注:ファイルは電子書籍で読んだ本。



同じカテゴリー(読書)の記事画像
2025年5月の記録
2024年の総括
2024年8月の記録
2024年2月の記録
2023年の総括
2023年6月の記録
同じカテゴリー(読書)の記事
 2025年5月の記録 (2025-06-03 13:17)
 2025年4月の記録 (2025-05-02 15:51)
 2025年3月の記録 (2025-04-05 14:09)
 2025年2月の記録 (2025-03-01 10:54)
 2025年1月の記録 (2025-02-01 17:00)
 2024年の総括 (2025-01-07 16:59)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
2022年7月の記録
    コメント(0)