2012年07月01日
6月の読書
忙しくて思うように本を読めない。そんな月もあるさ。

6月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2724ページ
ナイス数:55ナイス
本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)
アンチ速読としてのスローリーディング推奨である。本の溢れかえる現代で、量重視から質重視へ、網羅型から選択型へという意見には大賛成である。早さよりも、たくさんを読みたがる焦りが読書の質を劣化させる。 鴎外はこの文章で読者に間を与えて考えさせようと意図した、とある。鴎外はそんな上から目線で高瀬舟を書いたのだろうか。鴎外自身の意図はわからないとして、それはすなわち著者の書き方ではあるだろう、と思い至ったとき、やっぱり平野啓一郎という人は面倒臭い人だと思った。
読了日:06月25日 著者:平野 啓一郎
がんばりません (新潮文庫)
肩肘張らない著者等身大の、たくましく生命感溢れるエッセイ。このエネルギーをもってして「がんばらない」とは矛盾しているようだけれども、がんばらずとも生のエネルギーは身の内にあるもの、外へ表れるものなのね。そしてそのエネルギーがあるからこそ、人は他人の暮らしをちら見ガン見しながら、自分の怠惰を笑い飛ばして生きていける。個々の文章のテーマについてもがんばってはおられず、思いつくままの雑記のよう、著者の文章にしては圧倒感がない。しゃれのめして、とか、こまっしゃくれた、とか、容赦のない言葉選びが佐野洋子節。
読了日:06月24日 著者:佐野 洋子
動物たちの3.11
宮城で津波被災されたアニマルクラブ石巻代表が書かれたドキュメンタリー。文章は淡々としている。人間のために泣き、犬猫のために泣いている暇はない。そのくらい切迫した日々とうかがわせる。30年近い動物愛護の経験をお持ちであり、培った考えを交えて書かれる言葉は重い。「今だからこそ気づいた動物たちの痛みを胸に、社会の不備や矛盾を正して、不幸な動物たちを助けるための形をつくっていく好機である」もしも動物たちのためになっていきたいと思うなら、たくさんのヒントをくれる本。柔らかい装丁と裏腹に、芯の強いノンフィクション。
読了日:06月21日 著者:阿部智子
ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
私の関心事はひたすらリスベット。新居の描写が象徴的で、胸に切なかった。なんて人を放っておかせないキャラクターなの。読みながらキングの「ミザリー」を連想した。我らがリスベット、ヒロインは絶対に死んではいけないのだ。例えどんなにあり得ない展開でも!と頑迷につぶやきながら読んでいる自分に苦笑。私はアニーか。「リスベット・サランデルは、女を憎む男たちを憎む女だった」。という文章が印象的だけれど、一般的な捉え方をするとどこか彼女とかい離する。彼女を突き動かすのは個人的な感情、だからこそべらぼうに強い。
読了日:06月18日 著者:スティーグ・ラーソン
ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
1の説明を交えつつ、古い、または新しい人間関係から世界が広がる。またも背景にはスウェーデンの犯罪事情の色濃く絡む展開である。危うげなリスベットを見守らずにいられない読者の思い入れを逆手にとるように著者はこれでもかと彼女を窮地に追いやり、リスベットは姿を消す。歯噛みするほどあちこちで誤解が先行して、今まで信じていたはずの彼らまで揺らぐのか、と思いかけたところで反撃開始、下巻へ!
読了日:06月16日 著者:スティーグ・ラーソン
華氏451度 (ハヤカワ文庫 NV 106)
詩的なSF。著者の主張とか焦燥感とか、感じ取って読んだつもりだったけど、後ろの解説を読むともっと根っこは深いようだ。再挑戦のため、また本棚に戻す。換気孔の鉄格子の奥というずいぶん意味深な場所が強く印象として残りそうだ。そして「決して、衒学者になってはならん」
読了日:06月10日 著者:レイ・ブラッドベリ
痕跡本のすすめ
痕跡読書は、普通の読書とは違う。前の持ち主の痕跡を読むのだそうだ。確かに、他人が傍線を引いた文章は、文字から目がそれてしまって読みにくい。買った本を、読み終わったら新古書店に売ることになるかもしれないと前提して読むので、傍線を引いたり角を折ったりしない。自分の蔵書印を押すのも、おそらく新古書店を利用するようになった頃からやめた。しかし、この本に載っている傍線と書き込みだらけのぼろぼろの文庫を見るとひどく羨ましい気がした。やってみたいと思った。やるとすればたぶん、もう絶対売らないと決めた本を再読するときに。
読了日:06月08日 著者:古沢 和宏
図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)
冒頭、漫画のようなテンポの軽さに、数頁で読むのをやめようかと思った。 しかしその軽さと裏腹に、図書特殊部隊をはじめとする図書隊制度の歴史や仕組みは詰めて描かれている。恋愛とアクションが前面に出ているものの、政治的な仕組みや駆け引きの描写は多い。本が好き、が大前提なので、あれこれ潜むテーマに、読みながら頷く。冒頭には予想もできなかった引き込まれ方でした。パーソナルな描写がお上手。番外編は私には甘すぎる。
読了日:06月04日 著者:有川 浩
ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)
「星を継ぐもの」の続編。未確認飛行物体との遭遇、地球外生命体との邂逅という不変のテーマを胸躍る気持ちで読むことができる。SFというジャンルにおいてリアルという表現はおかしい、でも腑に落ちる感じ。なぜ地球は地球たりえたか。人間は宇宙から見ればどんな存在か。思いを泳がせるのはいかにも娯楽的で楽しい。前作で印象的な場面が木星との静かな対峙とすれば、今作は地球に降り立った目に映る色鮮やかさ、暴力的なまでの生命力。そして地球人の未来への希望。地球にはミネルヴァと違う未来があると、思っていいのか。信じていいのか。
読了日:06月01日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
2012年6月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター

6月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2724ページ
ナイス数:55ナイス

アンチ速読としてのスローリーディング推奨である。本の溢れかえる現代で、量重視から質重視へ、網羅型から選択型へという意見には大賛成である。早さよりも、たくさんを読みたがる焦りが読書の質を劣化させる。 鴎外はこの文章で読者に間を与えて考えさせようと意図した、とある。鴎外はそんな上から目線で高瀬舟を書いたのだろうか。鴎外自身の意図はわからないとして、それはすなわち著者の書き方ではあるだろう、と思い至ったとき、やっぱり平野啓一郎という人は面倒臭い人だと思った。
読了日:06月25日 著者:平野 啓一郎

肩肘張らない著者等身大の、たくましく生命感溢れるエッセイ。このエネルギーをもってして「がんばらない」とは矛盾しているようだけれども、がんばらずとも生のエネルギーは身の内にあるもの、外へ表れるものなのね。そしてそのエネルギーがあるからこそ、人は他人の暮らしをちら見ガン見しながら、自分の怠惰を笑い飛ばして生きていける。個々の文章のテーマについてもがんばってはおられず、思いつくままの雑記のよう、著者の文章にしては圧倒感がない。しゃれのめして、とか、こまっしゃくれた、とか、容赦のない言葉選びが佐野洋子節。
読了日:06月24日 著者:佐野 洋子

宮城で津波被災されたアニマルクラブ石巻代表が書かれたドキュメンタリー。文章は淡々としている。人間のために泣き、犬猫のために泣いている暇はない。そのくらい切迫した日々とうかがわせる。30年近い動物愛護の経験をお持ちであり、培った考えを交えて書かれる言葉は重い。「今だからこそ気づいた動物たちの痛みを胸に、社会の不備や矛盾を正して、不幸な動物たちを助けるための形をつくっていく好機である」もしも動物たちのためになっていきたいと思うなら、たくさんのヒントをくれる本。柔らかい装丁と裏腹に、芯の強いノンフィクション。
読了日:06月21日 著者:阿部智子

私の関心事はひたすらリスベット。新居の描写が象徴的で、胸に切なかった。なんて人を放っておかせないキャラクターなの。読みながらキングの「ミザリー」を連想した。我らがリスベット、ヒロインは絶対に死んではいけないのだ。例えどんなにあり得ない展開でも!と頑迷につぶやきながら読んでいる自分に苦笑。私はアニーか。「リスベット・サランデルは、女を憎む男たちを憎む女だった」。という文章が印象的だけれど、一般的な捉え方をするとどこか彼女とかい離する。彼女を突き動かすのは個人的な感情、だからこそべらぼうに強い。
読了日:06月18日 著者:スティーグ・ラーソン

1の説明を交えつつ、古い、または新しい人間関係から世界が広がる。またも背景にはスウェーデンの犯罪事情の色濃く絡む展開である。危うげなリスベットを見守らずにいられない読者の思い入れを逆手にとるように著者はこれでもかと彼女を窮地に追いやり、リスベットは姿を消す。歯噛みするほどあちこちで誤解が先行して、今まで信じていたはずの彼らまで揺らぐのか、と思いかけたところで反撃開始、下巻へ!
読了日:06月16日 著者:スティーグ・ラーソン

詩的なSF。著者の主張とか焦燥感とか、感じ取って読んだつもりだったけど、後ろの解説を読むともっと根っこは深いようだ。再挑戦のため、また本棚に戻す。換気孔の鉄格子の奥というずいぶん意味深な場所が強く印象として残りそうだ。そして「決して、衒学者になってはならん」
読了日:06月10日 著者:レイ・ブラッドベリ

痕跡読書は、普通の読書とは違う。前の持ち主の痕跡を読むのだそうだ。確かに、他人が傍線を引いた文章は、文字から目がそれてしまって読みにくい。買った本を、読み終わったら新古書店に売ることになるかもしれないと前提して読むので、傍線を引いたり角を折ったりしない。自分の蔵書印を押すのも、おそらく新古書店を利用するようになった頃からやめた。しかし、この本に載っている傍線と書き込みだらけのぼろぼろの文庫を見るとひどく羨ましい気がした。やってみたいと思った。やるとすればたぶん、もう絶対売らないと決めた本を再読するときに。
読了日:06月08日 著者:古沢 和宏

冒頭、漫画のようなテンポの軽さに、数頁で読むのをやめようかと思った。 しかしその軽さと裏腹に、図書特殊部隊をはじめとする図書隊制度の歴史や仕組みは詰めて描かれている。恋愛とアクションが前面に出ているものの、政治的な仕組みや駆け引きの描写は多い。本が好き、が大前提なので、あれこれ潜むテーマに、読みながら頷く。冒頭には予想もできなかった引き込まれ方でした。パーソナルな描写がお上手。番外編は私には甘すぎる。
読了日:06月04日 著者:有川 浩

「星を継ぐもの」の続編。未確認飛行物体との遭遇、地球外生命体との邂逅という不変のテーマを胸躍る気持ちで読むことができる。SFというジャンルにおいてリアルという表現はおかしい、でも腑に落ちる感じ。なぜ地球は地球たりえたか。人間は宇宙から見ればどんな存在か。思いを泳がせるのはいかにも娯楽的で楽しい。前作で印象的な場面が木星との静かな対峙とすれば、今作は地球に降り立った目に映る色鮮やかさ、暴力的なまでの生命力。そして地球人の未来への希望。地球にはミネルヴァと違う未来があると、思っていいのか。信じていいのか。
読了日:06月01日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
2012年6月の読書メーターまとめ詳細
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Posted by nekoneko at 19:07│Comments(0)
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