2014年10月01日
2014年9月の読書
楽しみのために読む本と、知的好奇心を先へと誘うための本。
選ぶ本のその重心を後者寄りへ移したいと常々思いながら、
結局は、ひと月にほんの数冊ばかり。
私にとってちょうどよいバランスなのかもしれないけれど。
積読本104冊。気になっている本415冊。

2014年9月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
フランス白粉の秘密 (角川文庫)の感想
表紙に左右されず、エラリーの年の頃をいろいろ推測してみるのだけど、クイーン警部の髪の密集度などについての描写はあっても、エラリーはそれほど容姿を限定する描写がないように見える。今回は友人であるウェスの存在があることによって、エラリーがずいぶん青年らしい印象だ。幕切れは突然。彼女の行方や、なぜ「おしろい」なのかは謎のまま。待てよ、French Powder Mystery、ならば…いや、気に食わないね。
読了日:9月30日 著者:エラリー・クイーン
疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)の感想
私が日々悩み惑わされる事共は、時間的・空間的に俯瞰して見れば、実態にそれ程の価値のないことがよくある。古い慣習の形骸であり、数十年前に偶発しただけの「義務」であり、形ばかり外国の模倣であり。人生に紛れ込むそれらにどの程度価値を持たせ、どの程度迎合するかは自分次第、知れば選べる。大局を見ること。ちゃんと見えているつもりでも、指摘されればがらりと風景を変えることが社会にはまだまだたくさんあるのだと胸に刻む。『欲望の充足を生態系の安定より優先的に配慮する生物』が人間。思考を鍛える為にもう何冊か読んでみる。
読了日:9月24日 著者:内田樹
牡丹酒 深川黄表紙掛取り帖(二) (講談社文庫)の感想
高知へ旅に出る前にと読み始めたが、これがなかなか進まない。井戸で朝から冷やした司牡丹に、鰹の塩辛、鰹の塩タタキ、鰹の煮付…あまりの旨そうな描写につい手持ちの土佐酒に手が伸び、酔って寝てしまう。ならばと我慢すれば背筋を悪寒が走る始末。味覚だけではない。土佐において酒は人と人とをつなぐ重要な役割を担う。土佐の日差しも、人柄も、つい先日の見聞と重なって肌に感じるようだ。高知への愛に溢れる小説。のびやかな空気の中で若者たちは生き生きと活躍している。シリーズとしてのキャラ立ちも良し。
読了日:9月18日 著者:山本一力
ジョーカー・ゲーム (角川文庫)の感想
佐藤優氏がずいぶん熱の入ったあとがきを書いている。インテリジェンスを扱った小説、確かに日本のものは見たことがない。一味変わったミステリテイスト。
読了日:9月16日 著者:柳広司
グーグーだって猫である (6) (角川文庫)の感想
大島さんの猫Daysは目まぐるしい。特に野良が仔を産む季節は。猫好きの人が猫に良かれと思うやり方は人それぞれだ。なぜ親猫を不妊手術しないのか。大島さんには大島さんの主義があり、傍から押し付けることはきっと良い結果を生まない。エンドレスに続くかと思われる猫日記は突然終わる。最終話は最愛のグーグーの死である。目まぐるしさの裏で、グーグーは確実に年老いていた。『これは臨終だ』。それまでにあったはずのあれこれは描かれず、わずか数頁。人目に晒せない衝撃があっただろうと、行間ならぬコマ間に思いを泳がせるばかりだ。
読了日:9月11日 著者:大島弓子
マスカレード・ホテル (集英社文庫)の感想
読ませる。東野氏のミステリは、タイトルのセンスが好きだ。マスカレード・ホテル。聞くからにきらびやかな語感。仮面舞踏会の、皆が仮面をつけそれぞれの思惑で行き交う様子、そしてその仮面は尊重されなければならないというホテルマンの心意気が、道具立てとしてよく効いている。トリックと動機は強引にひねり上げたような、今一つこなれ感が足りない印象。
読了日:9月11日 著者:東野圭吾
知っておきたい建設業の労務知識Q&Aの感想
Q&A形式で、気になるところだけ読めるようになっている。しかしこれで網羅と呼べるかは疑問であり、業種はともかく企業形態としてゼネコンと下請けが念頭に置かれているようで、当社に該当する部分は半分もなかった。タイトルだけで注文した失敗本。
読了日:9月10日 著者:村木宏吉
シェリの最後 (岩波文庫)の感想
シェリは無為に日を潰す。戦後変貌した世界についていけない穀潰しである。いい面構えはしていないだろうが、美しい、らしい。一方、レア。読むこちらも時の流れに逆らうような魅惑的なレアの姿を見たい気持ちで一杯だが、おっと、目を覆いたい惨状である。前作の最後でシェリから受けた打撃が彼女のなにかを打ち砕いたことは間違いなく、彼女を変えたのは戦争でなくシェリだろう。ただ、戦争により世界は自由になり、彼女もその波に乗って、自らを解放したのだ。失ったものへの忸怩は潰えないが、今を生きるレアを、私は彼女のあるべき姿だと思う。
読了日:9月8日 著者:コレット
皮膚感覚と人間のこころ (新潮選書)の感想
思ったより理系寄りで斜め読みに。皮膚の最も表面、角層を構成するケラチノサイト。外界へのバリア機能は無論として、圧、温度、光、音などの刺激を取得、信号を脳へ発信するという研究結果が続々出ている。神経ではなく細胞そのものが、である。人間が進化のどこかで体毛を失ったことによりこれら能力を得たと考えると、きっと意味があるに違いない。『環境に接する境界に情報やエネルギーの流れを制御する機能がある』が興味深い。他者や他生物と肌を触れ合うことが様々な心身の不調を軽減、治癒することに注目が集まっている今、押えておきたい。
読了日:9月7日 著者:傳田光洋
サクリファイス (新潮文庫)の感想
面白い。自転車レースの疾走感と主人公内心の目まぐるしい変転が私の手を止めさせない。自転車レースの美学や駆け引きの定石が新鮮で興味深かった。他の選手たちも存在感あって魅力的。それにしても、あんな真相がアリなんだとすると、空間の解放感と相反して、相当に鬱屈した世界だな。
読了日:9月5日 著者:近藤史恵
イスタンブールでなまず釣り。 (文春文庫)の感想
シーナさんにかかると、日々どこでもなんでも冒険になる。これを書かれたのは30代終わり頃、ご本人は「若いし、好奇心のカタマリみたいな日々をおくっていた」と振り返っている。10代の終わり頃でもなければ20代の終わり頃でもないのだよ? それで良し、否定することはないのだ、と思えた。日本の、鎖でつながれている犬たち、がんじがらめの子供たちのことを憂えている。ばかな大人たちのせいで、その本来の姿を失っていると。大人が元気でないと元気な子供は育たんし、日本も元気にはならんわな。
読了日:9月4日 著者:椎名誠
注:
はKindleで読んだ本。
選ぶ本のその重心を後者寄りへ移したいと常々思いながら、
結局は、ひと月にほんの数冊ばかり。
私にとってちょうどよいバランスなのかもしれないけれど。
積読本104冊。気になっている本415冊。

2014年9月の読書メーター
読んだ本の数:11冊

表紙に左右されず、エラリーの年の頃をいろいろ推測してみるのだけど、クイーン警部の髪の密集度などについての描写はあっても、エラリーはそれほど容姿を限定する描写がないように見える。今回は友人であるウェスの存在があることによって、エラリーがずいぶん青年らしい印象だ。幕切れは突然。彼女の行方や、なぜ「おしろい」なのかは謎のまま。待てよ、French Powder Mystery、ならば…いや、気に食わないね。
読了日:9月30日 著者:エラリー・クイーン


私が日々悩み惑わされる事共は、時間的・空間的に俯瞰して見れば、実態にそれ程の価値のないことがよくある。古い慣習の形骸であり、数十年前に偶発しただけの「義務」であり、形ばかり外国の模倣であり。人生に紛れ込むそれらにどの程度価値を持たせ、どの程度迎合するかは自分次第、知れば選べる。大局を見ること。ちゃんと見えているつもりでも、指摘されればがらりと風景を変えることが社会にはまだまだたくさんあるのだと胸に刻む。『欲望の充足を生態系の安定より優先的に配慮する生物』が人間。思考を鍛える為にもう何冊か読んでみる。
読了日:9月24日 著者:内田樹


高知へ旅に出る前にと読み始めたが、これがなかなか進まない。井戸で朝から冷やした司牡丹に、鰹の塩辛、鰹の塩タタキ、鰹の煮付…あまりの旨そうな描写につい手持ちの土佐酒に手が伸び、酔って寝てしまう。ならばと我慢すれば背筋を悪寒が走る始末。味覚だけではない。土佐において酒は人と人とをつなぐ重要な役割を担う。土佐の日差しも、人柄も、つい先日の見聞と重なって肌に感じるようだ。高知への愛に溢れる小説。のびやかな空気の中で若者たちは生き生きと活躍している。シリーズとしてのキャラ立ちも良し。
読了日:9月18日 著者:山本一力

佐藤優氏がずいぶん熱の入ったあとがきを書いている。インテリジェンスを扱った小説、確かに日本のものは見たことがない。一味変わったミステリテイスト。
読了日:9月16日 著者:柳広司

大島さんの猫Daysは目まぐるしい。特に野良が仔を産む季節は。猫好きの人が猫に良かれと思うやり方は人それぞれだ。なぜ親猫を不妊手術しないのか。大島さんには大島さんの主義があり、傍から押し付けることはきっと良い結果を生まない。エンドレスに続くかと思われる猫日記は突然終わる。最終話は最愛のグーグーの死である。目まぐるしさの裏で、グーグーは確実に年老いていた。『これは臨終だ』。それまでにあったはずのあれこれは描かれず、わずか数頁。人目に晒せない衝撃があっただろうと、行間ならぬコマ間に思いを泳がせるばかりだ。
読了日:9月11日 著者:大島弓子

読ませる。東野氏のミステリは、タイトルのセンスが好きだ。マスカレード・ホテル。聞くからにきらびやかな語感。仮面舞踏会の、皆が仮面をつけそれぞれの思惑で行き交う様子、そしてその仮面は尊重されなければならないというホテルマンの心意気が、道具立てとしてよく効いている。トリックと動機は強引にひねり上げたような、今一つこなれ感が足りない印象。
読了日:9月11日 著者:東野圭吾

Q&A形式で、気になるところだけ読めるようになっている。しかしこれで網羅と呼べるかは疑問であり、業種はともかく企業形態としてゼネコンと下請けが念頭に置かれているようで、当社に該当する部分は半分もなかった。タイトルだけで注文した失敗本。
読了日:9月10日 著者:村木宏吉

シェリは無為に日を潰す。戦後変貌した世界についていけない穀潰しである。いい面構えはしていないだろうが、美しい、らしい。一方、レア。読むこちらも時の流れに逆らうような魅惑的なレアの姿を見たい気持ちで一杯だが、おっと、目を覆いたい惨状である。前作の最後でシェリから受けた打撃が彼女のなにかを打ち砕いたことは間違いなく、彼女を変えたのは戦争でなくシェリだろう。ただ、戦争により世界は自由になり、彼女もその波に乗って、自らを解放したのだ。失ったものへの忸怩は潰えないが、今を生きるレアを、私は彼女のあるべき姿だと思う。
読了日:9月8日 著者:コレット

思ったより理系寄りで斜め読みに。皮膚の最も表面、角層を構成するケラチノサイト。外界へのバリア機能は無論として、圧、温度、光、音などの刺激を取得、信号を脳へ発信するという研究結果が続々出ている。神経ではなく細胞そのものが、である。人間が進化のどこかで体毛を失ったことによりこれら能力を得たと考えると、きっと意味があるに違いない。『環境に接する境界に情報やエネルギーの流れを制御する機能がある』が興味深い。他者や他生物と肌を触れ合うことが様々な心身の不調を軽減、治癒することに注目が集まっている今、押えておきたい。
読了日:9月7日 著者:傳田光洋

面白い。自転車レースの疾走感と主人公内心の目まぐるしい変転が私の手を止めさせない。自転車レースの美学や駆け引きの定石が新鮮で興味深かった。他の選手たちも存在感あって魅力的。それにしても、あんな真相がアリなんだとすると、空間の解放感と相反して、相当に鬱屈した世界だな。
読了日:9月5日 著者:近藤史恵


シーナさんにかかると、日々どこでもなんでも冒険になる。これを書かれたのは30代終わり頃、ご本人は「若いし、好奇心のカタマリみたいな日々をおくっていた」と振り返っている。10代の終わり頃でもなければ20代の終わり頃でもないのだよ? それで良し、否定することはないのだ、と思えた。日本の、鎖でつながれている犬たち、がんじがらめの子供たちのことを憂えている。ばかな大人たちのせいで、その本来の姿を失っていると。大人が元気でないと元気な子供は育たんし、日本も元気にはならんわな。
読了日:9月4日 著者:椎名誠

注:

Posted by nekoneko at 17:23│Comments(0)
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