2016年11月01日
2016年10月の記録
旅行に出る。となるともう大変。
道中読む本が要る。
夜、寝しなに手持無沙汰になってもいけない。
旅先の愉しみを増すようなエッセイも読んでおきたい…。
大騒ぎしています。
積読本92冊(うちKindle本20冊)。

2016年10月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
マウントドレイゴ卿/パーティの前に (光文社古典新訳文庫)の感想
叙情的でもないが、四角張ってもいない、簡潔な文章による物語の展開。文脈に置いた言葉の持つ含みを最大限に利用した短編小説群の面白味を、学生の私は理解できなかったらしい。モームは世界を旅した作家だった。グローバルとは、土地の性質の違い、人の習慣の違いを自身で感じ取り、自らの属する世界の矛盾、例えばキリスト教の難儀さを見つけることなのだろう。『運命の女神が、「完璧を求めるところが完璧な馬鹿」と言いつつ、いかにも女らしいわがまま、その完璧を膝の上にぽんと投げてよこす』。訳も良かった。紙の本で手触りを感じたい小説。
読了日:10月31日 著者:ウィリアム・サマセットモーム
スペインの歴史がわかる本/聞き流しながら楽しく歴史が頭に入る本の感想
歴史概説のパンフレットのようなもの。いや、私的なメモかブログか、関係のない小ネタが多すぎる。どのように人種が入り交じったか、またどのように支配勢力が変遷したか、モザイク程度には把握できたかと。イスラム支配、その後のレコンキスタによるカトリック支配の共存した時代、このあたりにスペインの文化の豊饒さの基盤があるように感じられた。大航海時代、没落、内戦を経ての近代。確かに、諍いが多い割に、大規模に国土を損なうような戦乱や文化の損壊は少ない印象。「女王ファナ」は観てみよう。
読了日:10月28日 著者:池田かおり
名もなき山への感想
『静かな山登りを愛する人は、非流行の山へ行くことだ』。私は何故自分が富士やアルプスに行きたがらないのか、腑に落ちた。出来るだけ人に会わない静かな山を満喫したいのだ。有名な山は大抵、誰でも行けるよう利便よく開発されて、休日には行列ができる。御免だ。幸い、四国には山がたくさんある。初心者らしく季節を選んで、不便を厭わず行くことなのですね。「日本百名山」に代表される、山歩きにまつわるエッセイだけでなく、故郷金沢の美しさや冒険の考察など、予想していたより幅広い話題を楽しめた。金沢は美しいところだ。また行きたい。
読了日:10月23日 著者:深田久弥
完全なるチェス―天才ボビー・フィッシャーの生涯の感想
フィッシャーと真実への真摯を前置きしたノンフィクション。噂や誹謗中傷の類を注意深く除いても、フィッシャーは金にがめつく傲慢で気分屋、サヴァンの誤解さもありなんと思わせる。しかし著者の『身体的脅威に対する反応は、チェス盤上での脅威に対する反応に通じるもの』に注目すれば、チェス盤上のごとく身の回りの不安定要素を愚直に排除しようとした生き方も見える。冷戦の時代、チェスはソ連とアメリカのプライドや政治対立に利用され、共産主義やユーゴ紛争など世界の事情に絶えずもまれたフィッシャーを、愛し助けた人もいたのだ。
読了日:10月22日 著者:フランクブレイディー
ネコヅメのよるの感想
猫好きには味わい深い絵本。表紙のポーズだって飼っていないと知らないよね。ネコヅメという発想、家のあらゆる場所に落ちていると思えるおもちゃ、ささやかな爪とぎの跡。京極さんの絵本もそうだったけど、絵に描かれる全てに存在感があって愛おしい。たくさんの猫たち、猫の仕草のコミカルさも表れて、楽しい。モデルは町田家の猫さん、保護猫だそうだ。あとがきのメッセージといい、やっぱり大人向けかな?
読了日:10月21日 著者:町田尚子
おいしくたべよう。-素材をいかすレシピ133の感想
『日本の四季の素材をもう一度思い出して旬に敏感でいると、食卓がもっと豊かになるはずです』。なるほど、日本の家庭料理以上の特別な食材や調味料はほとんど使わず、なんとも豊かで美味しそうなレシピが紹介されている。近くつくってみようと思うレシピをザッピングしながら、各頁に添えられた栗原家のエピソードを読む。レシピに思い出はつきもの。時短より思い出。私のレシピにも思い出が増えてゆくことを想像させるあたり、うまいなぁ。味は濃い目らしいので、調節のこと。
読了日:10月17日 著者:栗原はるみ
わたしのマトカ (幻冬舎文庫)の感想
「かもめ食堂」撮影のために1か月滞在したフィンランドにまつわるエッセイ。はいりさんの、私の予想に違わぬユーモアと度胸に加え、感覚の繊細さ、好奇心が立体的なエピソードを呼び、じゅうぶんに楽しめた。いいな、フィンランド。絶対にすてきなところだよ。まず「かもめ食堂」観よう。
読了日:10月13日 著者:片桐はいり
子育ては心理学でラクになるの感想
子供はいないが、同様に子供を持たないDaiGoが提示するものに興味がある。DaiGoが語るのだから、テーマが子育てであろうとポイントは「自分や家族、子供をうまく誘導する方法」である。相変わらずの多読ぶりが窺える知識をかいつまみつつ、テレビで顔の売れているDaiGoだから狙える路線を考えている辺り、素直に感心する。易しい言葉で伝えられる本当のことは陳腐になりがちだ。しかし、DaiGoの着想を盛り込んだ面白い内容なので、悩んでいるお母さんのヒントになることはあると思う。『子供の心は親次第』。未来もね。
読了日:10月11日 著者:DAIGO
最後の冒険家 (集英社文庫)の感想
命の危機を共に乗り越えた同志、にしては著者の情熱がなんとも伝わってこないノンフィクション。思い込んだら止まらない神田氏の冒険の記録からは、共感も尊敬もたいして伝わらない。同調はできないながらも周りから愛された神田氏の最後の出立を見届けて掻き立てられた感情と、その後の奇遇がこれを書かせたのかと、読み終えて閉じた表紙の写真を眺めながら思案した。冒険も、まだ誰もやっていないからという動機は、不純に思えるのだが、ほんとうのところ何故気球で飛び立つのか、著者は本人に訊ねたことがあったのだろうか。
読了日:10月10日 著者:石川直樹
スタープレイヤー (単行本)の感想
白い地図に、主人公が行動したぶんだけの範囲が書き込まれていく感覚は、RPGのプレイ感覚そのものだ。この小説の世界の広さは、主人公同様、読んでいる私たちにもわからない。巨大な白地図を恒川さんは勢い込んで広げたのだ。恒川さんがこれまで描いてきたのは、現実にありそうな世界からほんの一歩外れた異世界だった。今回は、自分が踏み込むとは到底思えない異世界だ。それだけに、読者を世界に引き込むには手腕が問われる。主人公の趣味のえげつなさと、命が簡単に蘇生されるご都合主義が気になって、私はどうにも苦手だ。これも伏線なのか?
読了日:10月7日 著者:恒川光太郎
天狗芸術論・猫の妙術 全訳注 (講談社学術文庫)の感想
論を読むには未熟の身だが、なにか気づきにつながれば良しと思って読んでみた。天狗と猫が武芸と心術を懇切丁寧に説く。『理は上より説き下し、修行は下より尋ね上ること物の常なり』とあり、どうやら私みたいな初心者も読むようだ。『気は心を載せて一身の用をなす者なり。自身に試みてしるべし。只書を読み人の言を聞きたるのみにして自身にこころみざれば、道理のうはさになりて身の用をなさず。是をうはさ学問といふ。学術芸術一切の事其理を聞いて、みな自身に試み心に証する時は、其事の邪正難易たしかにしらるるものなり。是を修行といふ』。
読了日:10月7日 著者:佚斎樗山
注:
はKindleで読んだ本。
道中読む本が要る。
夜、寝しなに手持無沙汰になってもいけない。
旅先の愉しみを増すようなエッセイも読んでおきたい…。
大騒ぎしています。
積読本92冊(うちKindle本20冊)。

2016年10月の読書メーター
読んだ本の数:11冊

叙情的でもないが、四角張ってもいない、簡潔な文章による物語の展開。文脈に置いた言葉の持つ含みを最大限に利用した短編小説群の面白味を、学生の私は理解できなかったらしい。モームは世界を旅した作家だった。グローバルとは、土地の性質の違い、人の習慣の違いを自身で感じ取り、自らの属する世界の矛盾、例えばキリスト教の難儀さを見つけることなのだろう。『運命の女神が、「完璧を求めるところが完璧な馬鹿」と言いつつ、いかにも女らしいわがまま、その完璧を膝の上にぽんと投げてよこす』。訳も良かった。紙の本で手触りを感じたい小説。
読了日:10月31日 著者:ウィリアム・サマセットモーム


歴史概説のパンフレットのようなもの。いや、私的なメモかブログか、関係のない小ネタが多すぎる。どのように人種が入り交じったか、またどのように支配勢力が変遷したか、モザイク程度には把握できたかと。イスラム支配、その後のレコンキスタによるカトリック支配の共存した時代、このあたりにスペインの文化の豊饒さの基盤があるように感じられた。大航海時代、没落、内戦を経ての近代。確かに、諍いが多い割に、大規模に国土を損なうような戦乱や文化の損壊は少ない印象。「女王ファナ」は観てみよう。
読了日:10月28日 著者:池田かおり


『静かな山登りを愛する人は、非流行の山へ行くことだ』。私は何故自分が富士やアルプスに行きたがらないのか、腑に落ちた。出来るだけ人に会わない静かな山を満喫したいのだ。有名な山は大抵、誰でも行けるよう利便よく開発されて、休日には行列ができる。御免だ。幸い、四国には山がたくさんある。初心者らしく季節を選んで、不便を厭わず行くことなのですね。「日本百名山」に代表される、山歩きにまつわるエッセイだけでなく、故郷金沢の美しさや冒険の考察など、予想していたより幅広い話題を楽しめた。金沢は美しいところだ。また行きたい。
読了日:10月23日 著者:深田久弥

フィッシャーと真実への真摯を前置きしたノンフィクション。噂や誹謗中傷の類を注意深く除いても、フィッシャーは金にがめつく傲慢で気分屋、サヴァンの誤解さもありなんと思わせる。しかし著者の『身体的脅威に対する反応は、チェス盤上での脅威に対する反応に通じるもの』に注目すれば、チェス盤上のごとく身の回りの不安定要素を愚直に排除しようとした生き方も見える。冷戦の時代、チェスはソ連とアメリカのプライドや政治対立に利用され、共産主義やユーゴ紛争など世界の事情に絶えずもまれたフィッシャーを、愛し助けた人もいたのだ。
読了日:10月22日 著者:フランクブレイディー


猫好きには味わい深い絵本。表紙のポーズだって飼っていないと知らないよね。ネコヅメという発想、家のあらゆる場所に落ちていると思えるおもちゃ、ささやかな爪とぎの跡。京極さんの絵本もそうだったけど、絵に描かれる全てに存在感があって愛おしい。たくさんの猫たち、猫の仕草のコミカルさも表れて、楽しい。モデルは町田家の猫さん、保護猫だそうだ。あとがきのメッセージといい、やっぱり大人向けかな?
読了日:10月21日 著者:町田尚子

『日本の四季の素材をもう一度思い出して旬に敏感でいると、食卓がもっと豊かになるはずです』。なるほど、日本の家庭料理以上の特別な食材や調味料はほとんど使わず、なんとも豊かで美味しそうなレシピが紹介されている。近くつくってみようと思うレシピをザッピングしながら、各頁に添えられた栗原家のエピソードを読む。レシピに思い出はつきもの。時短より思い出。私のレシピにも思い出が増えてゆくことを想像させるあたり、うまいなぁ。味は濃い目らしいので、調節のこと。
読了日:10月17日 著者:栗原はるみ


「かもめ食堂」撮影のために1か月滞在したフィンランドにまつわるエッセイ。はいりさんの、私の予想に違わぬユーモアと度胸に加え、感覚の繊細さ、好奇心が立体的なエピソードを呼び、じゅうぶんに楽しめた。いいな、フィンランド。絶対にすてきなところだよ。まず「かもめ食堂」観よう。
読了日:10月13日 著者:片桐はいり


子供はいないが、同様に子供を持たないDaiGoが提示するものに興味がある。DaiGoが語るのだから、テーマが子育てであろうとポイントは「自分や家族、子供をうまく誘導する方法」である。相変わらずの多読ぶりが窺える知識をかいつまみつつ、テレビで顔の売れているDaiGoだから狙える路線を考えている辺り、素直に感心する。易しい言葉で伝えられる本当のことは陳腐になりがちだ。しかし、DaiGoの着想を盛り込んだ面白い内容なので、悩んでいるお母さんのヒントになることはあると思う。『子供の心は親次第』。未来もね。
読了日:10月11日 著者:DAIGO


命の危機を共に乗り越えた同志、にしては著者の情熱がなんとも伝わってこないノンフィクション。思い込んだら止まらない神田氏の冒険の記録からは、共感も尊敬もたいして伝わらない。同調はできないながらも周りから愛された神田氏の最後の出立を見届けて掻き立てられた感情と、その後の奇遇がこれを書かせたのかと、読み終えて閉じた表紙の写真を眺めながら思案した。冒険も、まだ誰もやっていないからという動機は、不純に思えるのだが、ほんとうのところ何故気球で飛び立つのか、著者は本人に訊ねたことがあったのだろうか。
読了日:10月10日 著者:石川直樹

白い地図に、主人公が行動したぶんだけの範囲が書き込まれていく感覚は、RPGのプレイ感覚そのものだ。この小説の世界の広さは、主人公同様、読んでいる私たちにもわからない。巨大な白地図を恒川さんは勢い込んで広げたのだ。恒川さんがこれまで描いてきたのは、現実にありそうな世界からほんの一歩外れた異世界だった。今回は、自分が踏み込むとは到底思えない異世界だ。それだけに、読者を世界に引き込むには手腕が問われる。主人公の趣味のえげつなさと、命が簡単に蘇生されるご都合主義が気になって、私はどうにも苦手だ。これも伏線なのか?
読了日:10月7日 著者:恒川光太郎

論を読むには未熟の身だが、なにか気づきにつながれば良しと思って読んでみた。天狗と猫が武芸と心術を懇切丁寧に説く。『理は上より説き下し、修行は下より尋ね上ること物の常なり』とあり、どうやら私みたいな初心者も読むようだ。『気は心を載せて一身の用をなす者なり。自身に試みてしるべし。只書を読み人の言を聞きたるのみにして自身にこころみざれば、道理のうはさになりて身の用をなさず。是をうはさ学問といふ。学術芸術一切の事其理を聞いて、みな自身に試み心に証する時は、其事の邪正難易たしかにしらるるものなり。是を修行といふ』。
読了日:10月7日 著者:佚斎樗山

注:

Posted by nekoneko at 11:18│Comments(0)
│読書