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2018年10月20日

大麻山

数年来温めていたアイデアがありました。
「善通寺駅から大麻山へ登り、金刀比羅宮奥院から下って琴平駅に戻る」です。
というのも、インターネットで検索していてこのようなマップを見つけたからです。

大麻山グリーンラインハイキングコース/善通寺市HP
http://www.city.zentsuji.kagawa.jp/soshiki/50/greenline.html


数々の古墳や、龍王社に葵の滝、展望の開けた山頂。素敵ではないですか。
ただ、計画時に気づかなかったのは、この地図が昭和61年のものであること。
よもやあんな結果になるとは思いもしませんでした。

時候も好くなったことだしと、実行に移したのは先週末。
マップにあるグリーンラインを参考に登ることにしました。
善通寺駅から3kmほど歩くと、「大型案内板」のある登山口です。
立派な看板には平成24年、善通寺市教育委員会となっています。


山裾は民家をはじめ、柑橘類やキウイなどの畑もあるため、日常的に使われています。
歩くにはつまらないけれど、間違いはない、車の通れる道です。

最初の異変は、熊の巣古墳と寺田古墳の間を抜けようとした時でした。
獣よけの鉄柵と、イノシシの箱罠が行く先を塞いで、通れない。
草ぼうぼうを見透かしても、進めそうにありませんでした。
ましてや古墳も見られようがありません。

引き返し、西側の道を大石の方へ登ります。
まっすぐ登る道があるはずが、これも草ぼうぼうで登れそうもない。
熊の巣古墳の上へ迂回、道を辿ります。
思い返せば、この辺がいちばん歩いて楽しい山の道でした。
イノシシの掘り返し跡がそこらじゅうになければ。

山に人が入らなくなって、荒れてるな、というのがその時の印象でした。

人が里山歩きをすれば里山の踏み跡は維持される。
そのために、マップを配って、少し道の手入れをして、登る人を集める。
それが里山の維持に貢献する方法の一つと考えているからです。

椀貸塚の上で道が開け、3方向に道が分かれて、迷いました。
地図によればどちらへ行っても山頂へは登れるはずでした。
真ん中を選びました。

踏み跡とは不思議なものです。
ロープを張ったり印をつけたりしていなくても、先に人が踏んで歩いた跡は見える。
考えなくても、目が慣れればわかります。
本当は、木の幹に印をつけるとか、札を立てるとかしてほしい所ですが、
先の台風でか、倒れてしまった木がそのまま道を塞いでいたりします。
そのくらい手入れの疎かな山だから仕方ない、と思いながら、
先ほどの分岐から進むこと数十分。

踏み跡が消えました。

角度を変えて眺めても、目をすがめても、見えない。
工兵道まで、もう数十メートルのはずなのに!
疎らな幹や低木に遮られて工兵道は見えず、私は焦れて直登しました。
しかし湿った斜面、滑る落ち葉、掴んでも抜ける枯れ木に阻まれ、
時間だけが経ち、ふと振り返ると今まで来た踏み跡が見えない。
工兵道も見えない。

それまでの行きつ戻りつで時間を無駄にし、とっくに午後になっていました。
ここで諦めるのは悔しい、悔しいけれど、悔しいけれど、これは無理だ。

取りあえず下へ下りながら、自分の踏み跡を探します。
少し下にそれらしいのが見えても、下りると、ない。
焦ると、滑るのですね。
何度も滑って転んで、でも怪我をしたら取り返しがつかない。
落ち着け、ゆっくり、大丈夫と自分に言い聞かせました。

なんとか戻り、景色が開けたときの美しかったこと。


善通寺市には意見書を送りました。
看板とインターネットの情報を取り下げるか、定期的に手入れをするか。
どちらかにしないと、私みたいなのが大変な目に会いますから。

最近は、手入れされていない里山が増えたように感じます。
中でも地域に愛される山や、信仰のある山はとても歩きやすいです。
そうでない山は、草が茂り、蜘蛛の巣が張り、イノシシの跡だらけ。
今年、あとどの山を選ぶか悩みどころです。

それにしても、本当に惜しいところまで登っていました。
しかしあの道を思い出すと、とうぶん再挑戦はする気になりません。
  


Posted by nekoneko at 17:38Comments(0)歩く、登る

2018年10月15日

石鎚山

9月の連休を利用して、石鎚山を登ってきました。
石鎚山登山ももう何度目になるのか、でも初めてのことがたくさんありました。

連れがいるのをいいことに、アウトドア調理をしてみるとか。


これまで迂回してきた鎖場を2つクリアするとか。
下を覗いて、「命を張ったボルダリング」だと思いました。
自分がけっこうな鎖場好きだということにも気づきました。
重装備でなければ、三の鎖も挑戦したい。


これが目指す山頂を横から見た景色だとようやく気づくとか(笑)。


それから、なんといっても初めての天狗岳への挑戦。


あんな脚のすくむような体感は初めてでした。
岩質のおかげか、足をすべらせたりする心配はあまりないはずなのに、
とにかく左右の何もない空間が怖い。
ガスっていても怖いし、晴れたらもっと怖い。
山頂に居合わせた方に写真を撮ってもらったのですが、見事に固まってました。


石鎚山は、行く度に違う天気、違う季節、違う景色。
だからいつも違う写真になります。
ガスに悩まされた朝も、なかなかよい写真が撮れてました。

陰と

陽、みたいな。


いつもどおり、頂上山荘お泊りしました。
借りて寝床で読んだエッセイにあったとおり、山の夜から朝は特別な時間です。
夜がもっと晴れていたら、夜の写真も撮ってみたかったのだけれど、次回持越し。
  

Posted by nekoneko at 11:56Comments(0)歩く、登る

2018年10月01日

2018年9月の記録

『海の見える一箱古本市&せとうちのみの市』に参加することになりました。
もちろん、自分の読み終わった本からセレクトするのです。
そのため、今月いっぱいはリアル本を優先して、積読の消化にかかっています。
基本的には、もう読み返すことはないだろうと思っている本なのですが、
下心で、キャッチーなタイトルの本を選んでみたりしています。

幼児期、「本屋さんになりたい」と言っていたこともありましたし、
本好きが集まるイベントで、私の並べた本に興味を持ってくれた人と会話する。
なんて、想像しただけで楽しすぎて興奮してしまいます(笑)。

11月3日(土) 10:00〜15:00、北浜alleyにお越しくださいませ。



<今月のデータ>
購入29冊、購入費用21,980円。
読了16冊。
積読本122冊(うちKindle本39冊)。

ブック

9月の読書メーター
読んだ本の数:16

(002)絆 (百年文庫)(002)絆 (百年文庫)感想
海音寺潮五郎、ドイル、山周。意図して散らした選択と、贅沢に配置されたフォントがこの文庫集の魅力で、読む側はゆったり味わい、つい比べてみる。さて山周の「山椿」は鮮やかな短編だ。修羅場の後、はたと主馬の内心が描かれなくなる。あれこれ展開を測ってみるが、主人公の心情という鍵がなければ先を見通せない読み手を弄するように、思う方向へゆかず焦れったい。この頁数で大転換からの大団円は、いや見事。魂の存在を信じる人々の物語だった。結びの愛嬌がまた、梶井家の先の明るさを思わせて好い。こういう出会いがあると全巻集めたくなる。
読了日:09月30日 著者:海音寺潮五郎,コナン・ドイル,山本周五郎

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)感想
子供の頃、この物語が好きだった。今でもほとんど覚えているのだから、繰り返し読んだのだろう。今読んでも素敵な物語。どこが好きだったか子供だった自分に訊いてみたい。母を持たず、外界を知らない二人の子供が、徐々にイギリスの春の美しさを知り、何物にも代えがたい日々を送り、伸びやかになっていく様子は読んでいて気持ちが好い。子供心に憧憬した記憶はないけれど、ここにはやはり魔法がある。バーネットは61歳でこの物語を書き始めたという。アメリカの華やかな社交界も経験したバーネットも、自然と庭を愛したのだろうと想像した。
読了日:09月26日 著者:バーネット ファイル

日本の気配日本の気配感想
現政権やその周辺の人々のやることなすこと言うこと、舌鋒鋭く指摘していてすかっとする。もはや「曲芸」なんて表現が痛快で笑い転げた。こういう事を書き続けてくれる人がここにもいた。今の政治やメディアの様子が、異様だと感じながらも、毎日苛立ち、怒ることは疲れるし孤独だ。見ないふりをして忘れるほうが楽だ。だが著者はそれを怒り、繰り返し指摘し続ける事が重要なのだと何度も言う。『憤怒がないからこそ、この日本は空気や気配などという主体なきものにハンドルを握られてしまうのだ』。身近な話題になると、だいぶ面倒臭い人の感あり。
読了日:09月26日 著者:武田砂鉄

猫にGPSをつけてみた 夜の森 半径二キロの大冒険猫にGPSをつけてみた 夜の森 半径二キロの大冒険感想
市の中心まで車で10分なのに隣家は300m離れている。そんな夢のような立地が存在するのか。家の外を自由に遊び回る飼い猫の姿は今や幻。近所への迷惑や車の事故、心無い人の虐待など、現代の日本では夢だと思っていた。さて、GPS装着のくだりはほんの一部だ。一般に、市街地での猫の行動範囲はせいぜい半径数百mと言われるが、民家が疎らな土地では半径1kmを超えるようだ。猫も生態系の一部。環境に合わせるのだな。『我が家は猫を飼っているんじゃなく、人間と猫との生活圏が、一部分重なっているだけなのかもしれない』が素敵すぎ。
読了日:09月24日 著者:高橋のら

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学感想
著者待望の子供は興味津々の研究対象でもある。4歳になるまでの毎月、娘の様子を題材に書かれた連載だ。脳の神経細胞の数は、産まれてから3歳になるまでに約7割が排除されるという。「三つ子の魂百まで」は本当だ。だからやれ早期教育に邁進すべきかというと全くそうでない。子供にどのように何を教えるべきか、自らの方針を元に著者は娘に接する。最後に娘で実験(!)するのだが、その結果に感動してしまった。こういうことが理解できたら子育てがもっと面白いだろうと思う。折よく姪っ子が生後2か月なので、この本は妹夫婦に遣ることにする。
『一般に、記憶力のいい人ほど、想像力がない傾向があります』。記憶力が優れた人は、隅々までをよく思い出せるから、覚えていない部分を想像力で埋める必要がないからという論理だ。なんだか、自分の記憶力の悪さに感謝したくなった。常に想像力が鍛えられているってことだものね! 記憶力が破格に良い友人のことも思い出し、納得、さらに同情までしてしまったのはかなり不遜(笑)。ただし、記憶を定着させるにはいわゆるアウトプットが大事な点は変わりない。他人に自分の体験や知識を説明しようとすると、いつもしどろもどろなんだよね…。
読了日:09月23日 著者:池谷 裕二

猫のための家庭の医学 一家に一冊ネコの健康本 愛猫の健康寿命が延びる猫のための家庭の医学 一家に一冊ネコの健康本 愛猫の健康寿命が延びる感想
『猫に不愉快な思いをさせてはいけません』。著者は東京下町の獣医師で、情報は信頼できる。家庭の医学と表題されているものの、猫の性質、生活、成長、病気まで、暮らしに必要なことは網羅されている。概して飼い主に手厳しい。猫への振る舞いが人間都合でないか、配慮が足りているか、はたまた手を抜かなかったかと、反省しきりだ。異状が発生したときに読むより、普段から時折読み返したい本。「ねこ先生のお悩み相談室」などユーモアが秀逸な点も良く、猫飼いさんには全力でお勧めしたい。『人間側からの決めつけはだいたいムダに終わります』。
読了日:09月20日 著者:野澤 延行

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)感想
辺境ノンフィクションといえば高野秀行だが、角幡氏も冒険遺伝子を持つ探検家の一人だ。中国、チベットの奥地にある峡谷ツアンポーの完全踏破を目指す旅。過去の探検家たちの足跡を知的にまとめる一方、斜面を転げ落ちたり、食物が底を突いて飢えたり、帰還してこれを書いているのだから死んでないのだろう、と信じながら読んだ。私自身、先日の山登りで、一歩違えば死ぬような岩場を経て頂に辿り着けてしまった。あれが行けたのだから、とさらに危なっかしい岩場に挑もうとするのが、冒険ということなんだろうか。人間の冒険心って凄まじい。
読了日:09月19日 著者:角幡 唯介

この残酷な世界でどう生きようか (幻冬舎plus+)この残酷な世界でどう生きようか (幻冬舎plus+)感想
2017年1月の新春対談。世界の動きとメディアの役割、ジャーナリズムについて。日曜朝のテレビ番組の、力強い目つきと語り口が印象深い安田氏が、津田氏とのこの対話の中では迷い、憤り、笑う様子が新鮮だ。二人とも様々な話題の現地を訪れており、それぞれ披露する体感としての情報には驚くものが多い。それにしても日本国内も世界も、どんどん情報は多く深くなっていて、全ての案件を正しく把握し追うことはもはや難しい。どうアンテナを張っていいか、最近は悩んでいる。津田氏『「この世界はクソだ」と認識することからスタートしないと』。
読了日:09月19日 著者:津田大介,安田菜津紀 ファイル

神への長い道 (角川文庫)神への長い道 (角川文庫)感想
同じ時代のせいか、短くなるほど星新一と区別がつかなくなる。さて表題作、主人公は退屈している。人間の脳が"肉体の分際にすぎた”と感じ、一人の人間が体験できることはみな体験し、生きる意欲を起こさせる対象が何もないと思って絶望している。それに対し終盤、宇宙の成長に人類の子孫の脳みそが寄与するという確証を得て、生きる意欲を俄然取り戻した主人公の様子は対照的だ。精神の力はまだまだ限界ではない。それは人類の精神、脳への期待の裏返しと言える。最近特に、精神の力こそ限界だと感じているので、この物語に昭和を感じるのだろう。
読了日:09月19日 著者:小松 左京 ファイル

山小屋で、会いましょう! 楽しみ広がる「お泊まり登山」山小屋で、会いましょう! 楽しみ広がる「お泊まり登山」感想
石鎚山頂上山荘にて、消灯前に布団の中で。日帰り登山客の下りて行った後の、静かな時間。美しい時間。山登りで疲れていても、目一杯楽しみたいから眠くない。天気が良かったとか悪かったとか、カメラを抱えて一喜一憂したり、知らない人と話に花を咲かせたりは本当に貴重だ。そういう楽しさをもっと知っている人のエッセイは面白かった。私は石鎚しか泊まったことがないが、もっと他の、特に人がごった返していそうで敬遠している日本アルプス系の小屋(と縦走)も楽しそうで泊まってみたくなった。目標80歳まで、細く長くつきあっていきたいな。
風が強く、9月でも寒い夜だったので、夕飯をいただいてから消灯までの時間を仕方なく屋内で過ごす。廊下の本棚には山関連の月刊誌数種からエッセイ、漫画までよくもこれだけという冊数が並べられている。こんな日には重宝するなぁ。
読了日:09月16日 著者:鈴木 みき

我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)感想
アフリカに起源した人類がアジアへ到達する中には、ホモ・サピエンスの祖先とは違う進化をした者がいたという。この本は彼らに関する化石発掘と検証、仮説を追う内容だ。私が興味を持ったのは、ホモ・サピエンスが彼らに比べて短期間に世界分布した件だ。道具の創出で気候に対応し、海を渡ることができた。でもそれは世界のホモ・サピエンスが種として均質になる要因となり、今も続いている。海部陽介氏の「移動と交流と共有と均質化という大きな歴史の流れは、もう止められない」という言葉が印象に残る。人類も動植物も。均質化って嫌な響きだ。
読了日:09月12日 著者:川端 裕人 ファイル

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだアフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ感想
詩的な表題。イランの映画監督が東隣の国アフガニスタンの悲惨を慨嘆したレポートの言葉だ。『仏像は、恥辱のために崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人びとに対し世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないと知って砕けたのだ』。ソ連の侵攻、内戦により荒れた国土に、隣国パキスタンで教育されたタリバンが台頭した。部族意識の高い遊牧民の国には国家の認識がないと著者は言う。戦争と武器売買、麻薬精製以外の産業がない国。レポートが書かれたのは9.11前夜だった。今はどうなっているだろう。
今も何も、正直に言って、イメージもなければ知識もない遠いアフガニスタンを想像することは終始できなかったのだ。餓死した人々の遺体で埋め尽くされた道など、現実とかけ離れすぎて、真実だということすら、私は本当には信じることができていないのではないだろうか。このレポートに書かれた風習や歴史をぼんやり頭に留めることしか、結局はできないのだろうと、読み終えたばかりの今の時点で既に思う。
読了日:09月11日 著者:モフセン マフマルバフ

なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか (講談社現代新書)なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか (講談社現代新書)感想
ドキュメンタリー番組は、私が出会っていない世界を見られるから、視野が広がった気になる。義憤や公憤を覚える。しかしそれが新書書籍化されると、文章を読み慣れた身には違和感が生じる。その原因が今回解った。映像は様々なテクニックを使って作り手の意図を潜ませる。客観的事実を読んでいるはずなのに、例えば感情を喚起する表現が文章に顕在化すると、つまらないどころか不快なのだ。番組もまた客観的真実ではない。それに相反する形態で撮られる著者の「観察映画」はどのような感覚がするか、見てみたい。『「観察」の対義語は「無関心」』
読了日:09月09日 著者:想田 和弘

[図解]トヨタの片づけ[図解]トヨタの片づけ感想
「トヨタの片づけ」の図解版。章立てもそのままで、多色刷りの図を多用することによって視覚で内容を捉えられるようになっている。補足の文章にもフォントの大きさと色を効果的に使用しており、見やすい。見開きB4の大きめサイズなので、Kindle自炊の要領で背を切り落し、社内掲示に使うつもりだ。とにかく文章を読むのが苦痛な、かつ片づけの出来ない社員のアイキャッチとなることを期待する。もっと詳しく知りたいと申し出る社員…はいないとは思うが、彼には本のほうを貸し出せるよう、会社の本棚に備えつけた。
読了日:09月07日 著者:OJTソリューションズ

外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD感想
この論旨は間違っている。外来種侵入の是非を語る際に貢献の度合いや経済効果、結果の可否で測るべきではないし、生物多様性の足し算引き算など認識錯誤にも程がある。自然に変化はつきもの。自然はその時々の動的平衡点を見つける。だからと言って人間が故意に、水質浄化や緑化などの「目的」のために自然を操作しようと持ち込む行為は容認できない。なぜなら人間都合ばかりで、自然への敬意を欠くからだ。外来種を駆除殲滅する行為と大差ない。人間は大昔から自然に手を加えたが自然は復元したと言うが、だとしても、今は人間の活動規模が違う。
確かに在来種保護の動きは動物愛護に似て過激になりがちで、それはどちらも動植物の生命がかかっているからだ。タイムリミットがあるからだ。結果をもってすれば外来種排斥運動が労力や資金を空費することもあるだろう。でもそれは地球温暖化対策と同じではないか。人間は自然を理解しきれていないのだから。極端な外来種排斥はもはや意味がない。だとしても、在来種の保護がまるきり必要ないとは、私は思わない。例えばレッドリストにある膨大な在来哺乳動物に匹敵するだけの新哺乳動物が、今地球上に生まれているだろうか? 人間に責任は、ある。
手こずった。これまでの自然保護、特に外来種排斥の歴史を概観し、近年の変化しつつある自然への認識を問題提起することに意義はある。しかし問題なのは、データの利用がでたらめだと、環境保護主義者を丸ごとひっくるめて揶揄かつ非難していることだ。では、著者が引用している膨大な研究および調査結果のどこまでが信頼性に足るデータか、著者自身精査しただろうか? 自分の主張をもっともらしく見せるために論旨をすり替え捻じ曲げ、またデータを捏造する人間がいるのは、どの立場でも同じだ。参考にはするが、私は鵜呑みにはしないことにする。
読了日:09月06日 著者:フレッド・ピアス

反省させると犯罪者になります (新潮新書)反省させると犯罪者になります (新潮新書)感想
タイトルは過激だが、拙速に反省させようとするとかえってその人の態度のみならず人生を悪くするという真面目な主旨だ。ミスを重ねる社員に反省文を書かせる対応に疑問を感じて手に取った。悪いことをしてバレたときの人間の心理は反省でなく後悔、これは納得だ。『悪いことをしたら謝ればいい』『ただまじめに過ごせばいい』と思っているうちは事態は良くならない。話題が感情の抑圧へ向いたあたりから他人より我が身のことを考え始めた。反省は抑圧を生む。抑圧と怒り、寂しさと怒りは、実は近い。今更だが、自分の性質を知っておいていいと思う。
読了日:09月04日 著者:岡本 茂樹 ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 10:43Comments(0)読書

2018年09月01日

2018年8月の記録

手に入る限りは、本は新品を買って読む。
これは自分の収入で生活できている大人の責務だと思っている。
だから、図書館や新古書店へは行かない主義だ。
しかし1か月の書籍代が2万を超えた、これはやりすぎ。



<今月のデータ>
購入28冊、購入費用22,592円。
読了24冊。
積読本113冊(うちKindle本25冊)。

ブック

8月の読書メーター
読んだ本の数:24

土の学校 (幻冬舎文庫)土の学校 (幻冬舎文庫)感想
無農薬のリンゴづくりに成功した木村さんの講義。旧来の農家の常識を、自らの体験で覆していくことの繰り返し、その凄みに、畏敬の念に打たれる。農業の機械化により牛馬が不要になり、雑草が生えるから除草剤を使い、土中細菌が減ってバランスが崩れ、虫が発生するから除虫剤を散布し、植物の力が弱まるから肥料を使い、ますます植物の生命力が弱まる悪循環。知識は失くしても生き物の、土の、地球の力を信じる心は失くさないことだと思う。リンゴの木の育て方も教えてくれる。土いじりをするならバイブルにしたい本。山の土の匂いを嗅ぎに行こう。
読了日:08月31日 著者:木村 秋則,石川 拓治 ファイル

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)感想
今通っているお稽古を辞めたい思いが消えず、再読。『やめるまで、やめないでいる』という著者の言葉を何度も反芻して、私もここまできた。でも、苦しいのだ。解き放つことができない。何より自分で自分を苛んでいる。『心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一心に味わいなさい。(中略)自由になる道は、いつでも今ここにある』。そう感じられることがないわけではないけれど、それすら本物かどうか、自分でも信じられない。今回目に沁みた言葉は『会いたいと思ったら、会わなければいけない』。師匠だと感じた人に会いに行こう。
読了日:08月29日 著者:森下 典子

都市と野生の思考 (インターナショナル新書)都市と野生の思考 (インターナショナル新書)感想
対談本は、その二人の志向や人柄を知る入門本として読むことが多いのだが、これは手に負えなかった。山極氏の専門であるゴリラの生態から人間の性質の根源を見、人間社会つまり都市の現象を読み解こうという趣向だと推測するのだが、読んでいてもすぐに取り残される。少しのヒントからすぐに高次元の考察に移ってしまうからだ。交流がすでに深いこともあってか、論の展開も話題の移り変わりも速い。タイトルがレヴィ=ストロースの著作名を踏んでいることにすら気づかない私の知性がそもそも足りてない。ゴリラについてのエッセイを読むのが先かな。
中高年の日本人が、余暇やお金を自身の趣味に費やす件が面白かった。趣味は自分のため、「やってもやらなくてもいいこと」なので、人が集まってやっても本当の人のつながりは育たない。大切なのは「命の世話を一緒にやること」で、それこそ共同体の役割、中高年の果たすべき役割であるという論だ。時間をおいて再読だな。
読了日:08月29日 著者:鷲田 清一,山極 寿一

トヨタの片づけ (中経の文庫)トヨタの片づけ (中経の文庫)感想
事務所も倉庫も物だらけ。溜まっていく一方だ。しかし『人を責めるな。しくみを責めろ』なのである。考え方とノウハウがセットになっている。曰く「いつかは使う」には期限をもうける。「いらないもの」探しは壁ぎわから。「使わないもの」「使えないもの」を明らかにする。「見よう」としなくても「見える」が大事。様々なノウハウはすぐに取り入れたいところだが、重要なことに気づいてしまった。「決めたことができない」のはリーダーの責任。社長自身が5Sのわからない人である場合、社長にはどのようなきび団子を用意すればよいのか。悩む。
読了日:08月28日 著者:(株)OJTソリューションズ

美森まんじゃしろのサオリさん (光文社文庫)美森まんじゃしろのサオリさん (光文社文庫)感想
杉江松恋の書評が気にかかった小説。よくできたラノベと思いきや、どこか変わっている。住民が高齢化した山村が舞台だ。何でも屋の若者と最新技術や機械で生活が持続できている設定。風景描写が、ただ今見ているかのように美しい。住んでいる者の複雑な気持ちが、自分のそれのように詳しい。『時代が進むとともに、入ってくる人たちも昔よりはるかに異質になった』。ここは著者の住む村なのか。新しい者と古くから住む者を融合させるための祭。変えるのではなく、生むための。最後の真っ白な大仕掛けも劇的で面白い。ミステリとしては少々難あり。
読了日:08月27日 著者:小川 一水 ファイル

猫びより 2018年 09 月号猫びより 2018年 09 月号感想
特集「保護猫ばんざい!」。メディアは世相を反映し、逆もしかり。だから、こういう特集が各誌で組まれるようになったのは嬉しい。個人が草の根で広めるよりも格段に早い速度で、保護猫という常識が広まることだろう。ミグノンやネコリパ、キャットガーディアンのような、組織のしっかりした団体が各地に根を下ろし、取材に対して体系立った知識を伝えられるようになったことも大きい。体験と知識を持ったタレントも増えた。「NO KILL」から「LOW KILL」へなど、動物愛護の流れに変化が起きていることもしっかり書かれていて良い。
読了日:08月26日 著者:

独裁の宴 - 世界の歪みを読み解く (中公新書ラクレ)独裁の宴 - 世界の歪みを読み解く (中公新書ラクレ)感想
「ウルトラ・ダラー」現実化の確認から、恒例のディープな話題へ。信頼関係と話題への踏込程度のコンセンサスができているので、安定感がある。実はあれはね、と舞台裏の「真実」を明かされる快感に私はすっかりはまっている。インテリジェンスの肝である近未来予測は健在で、それ故に世界の一寸先を脅かす不安要素が現実味を増す。”ほっぺたのおでき”こと、北朝鮮の核武装への短期的戦略についての議論には、凄まじい忌避感を覚える。日本が本物の主権国家として国を守る為に核は不要、ではすまないなんて、認めたくなくても広く議論は必要、か。
読了日:08月25日 著者:手嶋 龍一,佐藤 優 ファイル

まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)感想
都会って怖いとこやわ。偽装するとか、騙すとか、ヤられるとか、自傷するとか。まあ都会に限らないのだろうけど、なーんか見失って、自分を損なってしまうのは、なぜなんだろうね。そして尽果には、都会に跋扈するあれこれのものがない。食べることや相手を気遣うことをはじめ、人が生きることの大事なところを取り戻して、彼らは帰って行く。同じ場所で生きる他人を家族と、尽果を新しい故郷と思えるようになるという宝物付きで。…ってか、ほんまの母ちゃん生きとるんやけん、さっさと帰らんかー! 彼らの名前に特別な意味があるのかが気になる。
読了日:08月23日 著者:原田 マハ

朝、目覚めると、戦争が始まっていました朝、目覚めると、戦争が始まっていました感想
1文字当たり単価に鼻白むも、企画は興味深い。真珠湾攻撃すなわち太平洋戦争開戦の日、報道を聞いて著名人が何を書き残したか。検閲の厳しい時勢を考えると、心にもない文筆もあったのではないかと疑われ、執筆及び発表のタイミングが気になるところだが、ごく少数の激怒落胆を除いたほとんどの人は、どうも本当に感激し、喜び、陶酔したようなのだ。この日までに国内の鬱屈は最高潮だった。その空気を皆して醸成したことを、彼らは後年悔やみ、いまも声高に反戦を掲げている。もう少しで戦後80年。同じことを繰り返さずに済むか不安で仕方ない。
折口信夫『宣戦のみことのりの降ったをりの感激、せめてまう十年若くて、うけたまはらなかったことの、くちをしいほど、心をどりを覚えた』。こんなことを書かせても、美しい響きの文章になるんだなと変に感心した。
読了日:08月22日 著者:

ジャングル・ブック (文春文庫)ジャングル・ブック (文春文庫)感想
健やかな物語。ジャングルで動物たちに育てられた少年の話は有名だが、私には今までに観たどの映画よりも、少年の心も身体も伸びやかに感じた。『ぼくにはジャングルがあるし、ジャングルの恵みがある! 陽の昇るところから沈むところまで、どこを探したってほかに欲しいものなんかない』。なんと羨ましい自由さだろう。『きみもぼくもひとつの家族だ』。ジャングルの動物たちがお互いに敵意のないことを伝える言葉だ。オオカミもクマも黒ヒョウも、ゾウもニシキヘビも共に生きる。共に闘う。村がジャングルに呑まれていく様子は圧巻だった。
読了日:08月21日 著者:ラドヤード キプリング ファイル

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)ウルトラ・ダラー (新潮文庫)感想
面白かった! 外務省やインテリジェンス機関の描写が深い。それもそのはず、プロなのだから。それどころか、佐藤優氏曰く本物の情報が埋め込まれているという。『本当のような嘘』と『嘘のような本当』。告発、だろうか。虚構の中に、読む人が読めば気づく世界の様相と真実。そして10年後の今、北朝鮮の核兵器などいくつも実現化しているではないか。対談でも触れていたが、国境をまたいで仕事をする人たちは、自国や相手国の歴史や文化に造詣が深いことが必須だという。著者が着物の意匠や浮世絵、果ては競走馬を描くのも意外すぎて良かった。
『今後も日本が主権国家として“鋭い牙”を持たないのなら、ウサギがそうであるように、少なくとも“長い耳”は持っていなければいけません。長い耳をそばだてて、遥か彼方の微かな異変を、他者よりも何層倍の鋭敏さで感じ取り、それが引き起こす危機を予測し、危険を避けなければならない』
読了日:08月15日 著者:手嶋 龍一

風の谷のナウシカ 7風の谷のナウシカ 7感想
コミック連載で達した結論。巨神兵の行く末もあり、シュワの解明もあり、トルメキアの王の進軍、民族間の対立も難航して、解決しなければならないことはたくさんある中、宮崎駿の行き着いた結末はこれかと、息を吐いた。命は、生きる限りより良い方へ向かおうと日々修正を重ねる。それを、1,000年も前にどうせ人間は駄目だからと修正プログラムを仕込むことが、生命への冒涜だとナウシカは怒ったのだろう。生命はより良く適応する。そして民族が自民族優先であることは、人類が適応する方向を多様化させる意味において、意義があると思った。
読了日:08月13日 著者:宮崎 駿

パゴダの国のサムライたち―「ビルマ国軍士官学校」出身者が築く、日本とミャンマーの絆パゴダの国のサムライたち―「ビルマ国軍士官学校」出身者が築く、日本とミャンマーの絆感想
亡祖父に戦友が贈った本らしい。日露戦争後、強いアジアを目指したアジア各国が日本の陸軍士官学校に送り込んだ人材は、その後日本軍の侵略に水を差されながらも、戦後の対日関係の礎となったという主旨。祖父はビルマへ出征しており、終戦後も何度となくビルマを訪れている。昭和57年、イラワジ河畔からアラカン山に沈む夕日を一緒に見た思い出を書いた手紙が挟まったままになっていた。祖父が当時現地で何をし、何を思っていたかは、何も語らなかった祖父が亡き今はわからないままで、少なくともその手がかりになる本ではなかった。
読了日:08月12日 著者:大田 周二

風の谷のナウシカ 6 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 6 (アニメージュコミックスワイド判)感想
『人間の汚したたそがれの世界で私は生きていきます』。ナウシカが還ってきた。しかし寄りによってヤツを連れてこなくていいだろう。と思いながら、千尋がカオナシがついてくるのを拒まなかったのを思い出した。ただ優しいのとは違う。それも私の一部だから、か。拒まないことはたくさんを背負うこと。それでも思い描いていたものを目の当たりにすることで、いっそう強くなったように見える。そしてひょんな成り行きとはいえ、最大級の厄介を抱えこんでしまった。そもそも原因の悪人はあっさり退場してしまうし、最終巻どうするんだろね。
読了日:08月11日 著者:宮崎 駿

風の谷のナウシカ 5 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 5 (アニメージュコミックスワイド判)感想
いろんな謎が解けつつある5巻。なんと、ナウシカは粘菌の声も聞こえるのか。王蟲は世界を自浄する術を知っている。オアシスの植物の苗床となるアフリカのゾウの話を思い出した。王蟲の目の美しい青色が印象深い。人間たちも、失ったものを悼みながら、民族の確執を越えて生きていく道を探るんじゃないか、なんて想像は、楽観的すぎるんだろう。また変なの出てきたし、片づいていない案件が多すぎる。物語はどんどこ進んだようで、道半ば。
読了日:08月10日 著者:宮崎 駿

風の谷のナウシカ 4 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 4 (アニメージュコミックスワイド判)感想
ナウシカは再び旅立ち、戦争は続く。人々は武器を手に進攻し、上空で機銃掃射し爆撃を繰り返す攻撃では飽き足らなくなってきた。自然に人為を加えた生物兵器や核爆弾みたいに、この世界では粘菌や巨神兵を利用して、戦争はエスカレートしていく。やればやるほど人間の「想定外」の事態が手に負えなくなり、人間も蟲も住めない土地が増えていくわけで、希望が見えない。この時期、宮崎駿には見えていただろうか。一緒に惑っていた感じもする。それにしてもいくつもの民族が入り交じって、5巻まで読んで誤解に気づいたので書き直し。
読了日:08月10日 著者:宮崎 駿

父帰る父帰る感想
私の祖母のような言葉遣いだから、菊池寛にはあえて現代讃岐弁で書いた小説、になる。さて20年前に家を捨てた父を迎え入れるか否か。賢一郎の啖呵は小気味良く、道理だ。そこで迎え入れては我こそが父代わりと踏んばってきた賢一郎が報われんやないか。我がが選んだ道なんやけんどこででも野垂れ死ねと私は思うのだが、母も弟も妹も迎え入れたい様子。最後には賢一郎も宗太郎を捜しに飛び出して行く、そこにはやはり親子の情愛があった…という落ち。なんやろな。私はそこに情愛が発生するとは思わん。説教臭く偉そうな菊池寛、やっぱ好かんわ。
読了日:08月09日 著者:菊池 寛 ファイル

十五の夏 下十五の夏 下感想
下巻は佐藤少年がソ連に親しみを抱いた経緯と、ソ連横断からの帰国、その後の進路へ続いた道程だ。佐藤少年の目に映る世界が、40日間の旅の間にも、画一的な公立高校を離れてどんどん変わっていく。人生はなんと面白いのだろう。画一的な学生生活を送った私はなんとつまらない、成長のない日々だったか。そして、私たちは正しく知らずにロシア(ソ連)という国を忌避している。佐藤少年の目に映るソ連は優しかった。『日本人とロシア人、それからロシアの少数民族はお互いをあまりに知らなすぎる。政治体制、社会体制が違っても人間は人間です』。
読了日:08月08日 著者:佐藤 優 ファイル

風の谷のナウシカ 3 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 3 (アニメージュコミックスワイド判)感想
クシャナを裏切ったのは実父だった。自らを慕う軍隊を取り戻すべくクシャナは進軍、ナウシカも同行する。「トルメキアの白い魔女」と「青き衣の者」。この巻は二人の関係がおもしろい。クシャナがナウシカを「戦友」と呼んだ。クシャナの中でナウシカが敵でも隷属者でもない関係になった近しいひと時、二人は実によく似て見える。陰と陽の双子みたいだ。血塗られた道を割り切ったクシャナに対し、蟲と人間と動物、全ての命を大切にすることができない戦乱の世界にナウシカは打ちのめされている。しかしもちろん、挫けることはない。
読了日:08月07日 著者:宮崎 駿

Lily ――日々のカケラ――Lily ――日々のカケラ――感想
彼女の手や顔にはそれなりに年齢が表れている。しかし嫌らしさがない。年齢を重ねれば、生活の跡が手に、心の中が顔に表れる、はずが、こんなに美しいなんて。女優であれ一般人であれ、美しく力強くい続けるために大切なことをよく知っていて、自身を律せる人は美しい。ここに書かれていることが彼女の魅力を生む全てではないけれど、こういうことのひとつひとつがその人の佇まいをつくるのだ。ひとつ真似したいのは毎晩「微笑んだ顔で眠ること」。しわや筋肉の癖のことだけではなくて、それは世界を、自分自身を、とりあえず肯定する行為だから。
読了日:08月07日 著者:石田ゆり子

風の谷のナウシカ 2 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 2 (アニメージュコミックスワイド判)感想
血なまぐさい。映画では最低限まで取り除かれていた戦闘シーン、飛行シーンに大きく頁が割かれている。映画ではクライマックスであった王蟲たちとの交流あたりから、物語は映画と大きく離れていく。異民族もたくさん出てきて、ナウシカの意思で物語が進むというよりは、ナウシカはいつもトルメキアや諸民族の謀に巻き込まれては、風の谷のため蟲たちのために独り飛び立っていくのだ。クシャナもまた孤立している。黄金の三つ編みが失われたくだりは切ない。アスベルの『戦場がいつも自分の国の外にあると思うのはまちがいだ』という台詞が印象深い。
読了日:08月06日 著者:宮崎 駿

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)感想
先月読んだ本で、漫画のナウシカにはライフワークの意味合いがあったと知り、大人買い。奥付を見ると1983年の発行からなんと135刷を重ね、国民的と言っていい作品だ。しかし当初のあとがきには『「アニメージュ」の人々にマンガを描くようにすすめられて、ついうかうかと自分流のナウシカを描きたいと思ったのが運のつき』と自嘲されるあたり、このような売れ行きになるとはつゆほども思われていなかったらしい。映画版の半分ほどまでの展開。馴染みがあるようで、ナウシカの内なる声や「辺境の民の誇りと自治」など不穏を予感させる。
読了日:08月05日 著者:宮崎 駿

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)感想
自分の子供を産めないとわかった後、養子を考える女性は2割という調査結果があるという。この本は不妊治療等と並行して、特別養子縁組を選択肢に入れることを提案する。なので、紹介されるケースは不妊治療を経た夫婦が多く、子供を授かることへの熱意は強い。最近はワーキングマザーでも育て親になれるというが、私にその意志があるかを強く問われていると感じた。子供のいる人生といない人生、優劣ではない。善悪でもない。どちらを選ぶか、自分の心に問い、あとは夫との話し合いだ。まだ間に合う。特別養子縁組の方法、条件、手続きも詳しい。
読了日:08月03日 著者:後藤 絵里

十五の夏 上十五の夏 上感想
いや、15歳じゃないやろ。とツッコミを入れたくなるくらい、公立高校一年生の佐藤君は破格である。勉強したての外国語でハンガリーの男子と文通し、一人で訪れた諸国の人々に暮らし、思想、国のことを訊ねまくる。コミュニケーション能力が高い。ご両親は佐藤氏に外国への関心という種を撒き、芽を育てた。それがこの旅なのだが、これが佐藤氏の人生に与えた影響は計り知れない。外国にさほど接触の無い両親でも、的確な教育指向があれば子供の未来を世界に広げていける事実に瞠目する。上巻は東欧諸国経由ロシア入国まで。食べ物がとかく旨そう。
読了日:08月02日 著者:佐藤 優 ファイル


注:ファイルはKindleで読んだ本。
  

Posted by nekoneko at 09:39Comments(0)読書

2018年08月04日

大山(鳥取県)

中国地方に誇る名峰、大山に登ってきました。

高速道路上からもそれとすぐ判る異様さ、ザ・火山といった容貌。
西から見ると富士のような、きれいな形ですが、
北や南から見ると、溶岩が流れ落ちた形がそのまま残ったかのような、
ざれざれの岩肌と岩肌の間に植物がしがみついているみたいです。



きれいに整備された駐車場やモンベルを見て、大山の人気を実感。
しかし、夏登山コース登山口からずっとずっとずっと、階段!!!
それも数少ない登れるルートを確保せんとばかりに急勾配の、ざれざれの。

これは、ひたすらつらい。

ということで道中の写真がほぼありません。
この右側から尾根を左へ上がった先が山頂、これが8合目あたりだったかと。


9合目手前からは頂上までずっと、ダイセンキャラボクの植生保護のため、
木製の歩道が敷かれています。


登山客が行けるのはここまで。
ここから先は崩落がひどく、立入禁止になっています。
崩落でどんどん大山は低くなっているのだそうです。


ここには、名峰霊峰と呼ばれる山によくある、祠がありません。
信仰の山である大山ですから、行けない場所のどこかにあるのでしょうね。
がんばったご褒美は、この景色。
反対側、北の海のずっと向うには、ウラジオストックにかかる白雲が見えた…かも。


この登山道は私の好みに合いませんでした。
暑さもあってほんとうに辛かったから、大山はもう来ないかな。
頂上の避難小屋でだけ買えるTシャツ、これはかっこいい!

  
タグ :大山登山


Posted by nekoneko at 10:16Comments(0)歩く、登る